11年ぶり・・・ちょっと意外
Title:Mellow Waves
Musician:CORNELIUS
先日開催されたフジロックで、CORNELIUSと小沢健二が同じ日に出演するということで大きな話題になりました。もちろん(?)両者の共演はなかったようですが、両者とも違う道を歩みつつ、それぞれが違うベクトルでその音楽活動に大きな評価を得ている点、いまさらなからフリッパーズギターというバンドはものすごいバンドだったんだな、ということを思ってしまったりします。
さて、ここに来て活動を開始したものの、ここ数年は散発的な活動しか見せていなかったオザケンに対してCORNELIUSはここ数年、むしろ積極的な活動が目立ちました。攻殻機動隊への音楽提供やSalyu x Salyuとしての活動、あるいはMETAFIVEへの参加も大きな話題となりました。それだけに今回のニューアルバム、前作「SENSUOUS」から11年ぶりというのが逆に意外にすら感じました。確かにそういわれてみれば・・・と思ってしまいます。それだけここ最近のCORNELIUSは逆に積極的な活動が目立ってすらいました。
さて、非常にシンプルで空間を聴かせるようなエレクトロサウンドを軸に、実験的ともいえる作風に仕上げていた前作「SENSUOUS」。今回のアルバムに関しても基本的にはその路線を引き継いだ作品になっています。そういう意味では今回のアルバムに関しては目新しさのようなものを求めるとちょっとがっかりするかもしれません。
一方、今回の作品で大きく変わったのは非常にポップでメロディーラインを聴かせるような曲が並んでいるという点でした。その今回のアルバムを象徴するような作品が1曲目の「あなたがいるなら」。サウンドは空間を生かしたシンプルなエレクトロサウンドと微妙にテンポをずらしたリズムが特徴的で前作からつながるようなものなのですが、切ないメロディーラインが印象に残りますし、非常にシンプルでわかりやすいラブソング風の歌詞ながらもシンプルな言葉を綴っているからこそいろいろと解釈できそうな、坂本慎太郎が書いた歌詞も強く心に響きます。ここ最近のCORNELIUSの興味がつまったような楽曲に仕上がっていました。
他にも同じく作詞を坂本慎太郎が手掛けた「未来の人へ」やドリーミーなサウンドや韻を踏んだポップな歌詞がかわいらしさすら感じるポップソング「夢の中で」(これ、攻殻機動隊サントラで相性の良さを感じた坂本真綾が歌ったらおもしろいかも・・・)などメロディーを主眼とした楽曲が並んでいます。
さらに最後を締めくくる「The Rain Song」「Crepuscule」はアコースティックな作風のポップな曲で締めくくられており、ちょっと冷たさを感じるエレクトロな作風でスタートした本作ですが、最後はむしろアコースティックな暖かみを感じさせる後味がありました。また他の曲に関してもギターなどのバンドサウンドも入っていたりして、暖かさを感じさせるアルバムになっています。そういう意味ではサウンドの方向性は似ていても、ここ数作「POINT」や「SENSUOUS」とはまた異なった作風ともいえるのかもしれません。
また今回の作品、暖かみを感じさせる曲調といいポップでメロディアスな作風といい、個人的にはCORNELIUSも参加したMETAFIVEからの流れも感じさせました。もっともMETAFIVEが影響を与えた、というよりはMETAFIVEにCORNELIUSの今の興味ある音が入り込んだ、という要素の方が大きいのかもしれませんが・・・。
斬新さ、実験性という意味ではここ数作の中ではちょっと後ろに下がるかもしれません。ただポピュラリティー、いい意味での聴きやすさという意味ではここ数作の中では断トツの出来だったと思います。なによりも暖かさを感じさせるポップなアルバムに仕上がっていました。本作も間違いなく今年を代表しそうな傑作です。
評価:★★★★★
cornelius 過去の作品
CM3
FANTASMA
「NHKデザインあ」
CM4
攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.music by Cornelius
ほかに聴いたアルバム
FLY/清水翔太
R&B回帰をみせ、傑作アルバムに仕上げた前作「PROUD」。今回のアルバムもR&B路線が続きます。ただHIP HOPやファンク、ソウルなどの要素を取り入れて、それがピタリとはまった前作と比べると本作は、今時の音を取り入れつつも、よくありがちなメロウなR&Bといった感じにとどまってしまっています。彼の実力は感じることが出来、それなりに悪いアルバムではないと思うのですが、傑作だった前作と比べるとちょっと見劣りしてしまった印象も。
評価:★★★★
清水翔太 過去の作品
Umbrella
Journey
COLORS
NATURALLY
MELODY
ENCORE
ALL SINGLES BEST
PROUD
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