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2017年8月14日 (月)

いつもと違うキノコホテルだが・・・

Title:プレイガール大魔境
Musician:キノコホテル

今年、結成10周年を迎えたガールズバンド、キノコホテル。60年代のグループサウンズやガレージロック、歌謡曲の要素を取り入れたちょっとレトロで、ちょっと怪しげな雰囲気が魅力的な彼女たち。本作はその結成10周年を記念してリリースされた企画盤。彼女たちの過去の楽曲を再録音したリメイクアルバムとなっています。

今回の企画盤、まずなかなか選曲がユニーク。彼女たちの代表曲ではなくアルバムの中の隠れた名曲たちをピックアップ。それを新たにレコーディング。アレンジも変えており、そのため実感としては「ベストアルバム」というよりも「オリジナルアルバム」的な感覚で楽しめるアルバムとなっています。

また本作で特徴的だったのはアレンジの幅広さ。スペーシーでサイケなアレンジの「球体関節」「悪魔のファズ」では途中に入る「ウッ!ハッ!」という掛け声が非常にユニーク。「愛の教育」は歌い方含めてメタルっぽい雰囲気の曲になっていますし、さらに「惑星マンドラゴラ」ではシンセを使ったアップテンポなサウンドも印象的ですが、なによりも疾走感あるポップなメロディーがどこか90年代J-POP的でインパクトがあります。

そんな中でも特に印象に残ったのが「風景」。ハワイアン的なリズムにパーカッションを軸としたシンプルなサウンド。サイケフォークな雰囲気の楽曲で空間を聴かせるその楽曲には独特なグルーヴ感があり、あえていえば坂本慎太郎の楽曲に近い雰囲気も。比較的ポップな曲が多い彼女たちにしては珍しい実験的な作風となっています。

「昭和歌謡GS風ガレージロックバンド」というイメージの強いキノコホテルですが、意外と幅広い音楽性を感じることが出来るアルバムだったと思います。そしてもうひとつ大きな特徴に感じたのは今回のアルバム、いつも以上にギターサウンドを前に押し出してロックバンド色が強くなっていた点でした。キノコホテルといえばもちろんガレージロックバンドなのですが、まず第一にマリアンヌ東雲のエレピが前に出てくることが多く、それがバンドの色となっていました。今回のアルバムはこのエレピの音はあまり目立ちません。むしろ迫力のあるギターサウンドやドラムスの音が前に出ており、ロックバンドらしさがよい出ていたと思います。またいつもより分厚くなったバンドサウンドが、このアルバムに統一感を与えていました。

そんな訳で音楽性といいバンドサウンドといいいつのもキノコホテルとはちょっと異なる今回のアルバム。しかし楽曲は間違いなくキノコホテルの曲になっていました。いかにもGS風なガレージサウンドや、わかりやすいエレピの音に頼らずとも、キノコホテルらしさを楽曲にきちんと反映させることが出来る・・・10周年を迎えてリリースされた今回のアルバムは、そんなバンドとしての自信を感じることもできました。そんな10年を迎えて一回り大きくなった彼女たちの姿を感じることが出来る作品。これからの彼女たちの活躍も非常に楽しみです。

評価:★★★★★

キノコホテル 過去の作品
マリアンヌの憂鬱
マリアンヌの休日
クラダ・シ・キノコ
マリアンヌの恍惚
マリアンヌの誘惑
キノコホテルの逆襲
マリアンヌの呪縛
マリアンヌの革命


ほかに聴いたアルバム

All Time Best Album THE FIGHTING MAN/エレファントカシマシ

デビュー30周年を迎えた彼らが、すべてのキャリアを通じた代表曲をまとめたベスト盤をリリース。え?こないだレコード会社毎に代表曲をまとめた「自選作品集」をリリースしたばかりじゃん、と思ったのですが、それから既に8年もたったんですね・・・早いなぁ。

今回のベスト盤、2枚組なのですが、1枚目に「悲しみの果て」のようなポップな曲が並び、2枚目に「ガストロンジャー」のようなハードな曲が並ぶ構成になっており、エレカシの持つハードソフト2つの側面の魅力をわかりやすく感じることが出来る内容になっています。そういう意味でも初心者にもピッタリのベスト盤。今回、2枚目の方で「ガストロンジャー」と最初期の代表作「デーデ」「奴隷天国」などが違和感なく並んでおり、一時期、「ポップになった」といわれたエレカシですが、本質的な部分は大きな変化はなんだな、ということをうれしく感じました。

「自選作品集」と異なり発表順ではないため紆余曲折のあったエレカシの歴史を感じることはできません。ただ代表曲がほどよくまとめられておりエレカシの魅力は存分に感じることの出来るベスト盤となっていました。

評価:★★★★★

エレファントカシマシ 過去の作品
STARTING OVER
昇れる太陽
エレカシ自選作品集EPIC 創世記
エレカシ自選作品集PONY CANYON 浪漫記
エレカシ自選作品集EMI 胎動記

悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~
MASTERPIECE
THE BEST 2007-2012 俺たちの明日
the fighting men's chronicle special THE ELEPHANT KASHIMASHI LIVE BEST BOUT
RAINBOW

HIT/三浦大知

「HIT」と題された三浦大知の新作は、その名の通り、最近の音楽シーンに「HIT」しそうなエレクトロダンスミュージックを主体としたアルバム。彼のボーカリストとしての才能を感じる伸びやかなボーカルは非常に心地よいものの、楽曲的にはいかにも「流行」といった感じで目新しさはない印象。良くも悪くも「HIT」を意識したアルバムといったところなのでしょうか。

評価:★★★★

三浦大知 過去の作品
D.M.
The Entertainer
FEVER

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