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2017年8月28日 (月)

ヴィジュアル系の先駆的バンド

Title:プラチナムベスト BY-SEXUAL
Musician:BY-SEXUAL

あるミュージシャンの代表曲をUHQCDを使用してリリースしたベスト盤シリーズ「プラチナムベスト」。先日、最新のラインナップがリリースされましたがその中でちょっと興味を惹かれる名前を見かけました。BY-SEXUAL。アラフォー世代ならかなり懐かしく感じるバンド名ではないでしょうか。80年代終盤から90年代前半にかけて活躍したバンド。とにかくその当時、楽曲というよりもそのビジュアルイメージに大きなインパクトのあるバンドでした。

その当時のビジュアルイメージがこれ。

Bysexual

まあ今で言えば完全にヴィジュアル系な訳ですが、当時にしてみれば、かなり奇抜なヴィジュアルイメージでした。

BY-SEXUALの人気が一区切りした90年代中盤以降、ヴィジュアル系が最初のブームを迎える訳で、そういう意味ではヴィジュアル系の先駆的存在ともいえる彼ら。ただ一方、彼らのデビュー前にヴィジュアル系の先祖的な存在としてのX JAPANやBUCK-TICKは既にブレイクを果たしており、そういう意味ではヴィジュアル系の歴史の中では彼らの立ち位置は若干微妙という印象を受けます。

また正直言って人気という側面でもさほど大ブレイクしたという印象も薄く、実際、シングルでベスト10入りしたのは本作にも収録されている90年の「FLAPPER」の1曲のみ。またアラフォー世代には牧瀬里穂主演で話題となった映画の主題歌「幕末純情伝」も聴き馴染みある方も少なくないかもしれません。もっともアルバムはデビューアルバム「Culture Shock」から4枚目の「4D Pocket」までベスト10入りを記録しており一定以上の人気を確保していたという点は間違いないと思います。

ヴィジュアル系黎明期のバンドとして若干微妙な立ち位置の彼ら。今回のベスト盤ではそんな彼らの代表曲がリリース順に並んでいるのですが、事実上、わずか4年間の活動の間にリリースされた楽曲の音楽性は見事にバラバラ。ある意味、そのヴィジュアル的なイメージが先行してしまい、音楽的にはその方向性を見失った迷走ぶりが見て取れます。

まずデビュー直後の彼らに関してはデビュー作「SO BAD BOY」をはじめとして楽曲はビックリするほどの硬派なパンクロック。ヴィジュアル系の先駆者はX-JAPANにしろBUCK-TICKにしろどちらかというとメタル色が強いだけにこの方向性はちょっと意外な感じもします。また彼ら唯一のベスト10ヒット「FLAPPER」では今で言えば身体の性と心の性のギャップに悩む子を描いており、BY-SEXUALというバンド名をきちんと反映させた楽曲をつくっていたりして、意外と硬派な側面も見ることが出来ます。

ところがこの後、徐々に音楽性が変化。「DYNAMITE GIRL」はもっとポップなビートロック路線に。映画主題歌になった「幕末純情伝」では今のヴィジュアル系の流れに続きそうなポップスロックな楽曲を聴かせてくれます。さらに時代が下り「DEEP KISS」「HAPPY BIRTHDAY FOR ME」ではパンクロックな面影がほとんど消え去り、むしろアイドルポップ調。初期のイメージからかなり変わってしまいます。

初期の作風で一定の人気を確保していたのに、なぜ音楽的にここまで迷走したのか、今となっては謎なのですが、ビジュアルイメージからアイドル的な人気を狙ったのかもしれません。ただその結果、人気は低迷し、デビューからわずか5年でボーカルのSHOが脱退し、事実上の活動休止。インパクトは非常に強いバンドでしたが、活動期間はそのインパクトに反して非常に短いものがありました。

ただこの短い活動期間での激しい音楽的変遷はヴィジュアル系というジャンルがまだ世間に浸透していない頃だからこそ、周りとしても彼らをどう取り扱っていいのか、どう人気を確保していっていいのかよくわからない結果だったのかもしれません。もし彼らがもっと早くデビューしていればヴィジュアル系の先祖的バンドとしてX JAPANやBUCK-TICKと並び称されたかもしれませんし、もっと遅ければ、ヴィジュアル系ブームの波に乗ってもっと人気を得ていたかもしれません。そういう意味では実にタイミングの悪いバンドと言えるのかもしれません。

いかにもJ-POP的な楽曲や甘口のアイドルポップなんかもあった一方、正統派なパンクロックな楽曲も少なくなく、個人的には最初の予想よりも楽しめたアルバムでした。昨年はヴィジュアル系を集めたイベントライブ「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」で再結成を果たしてたりと、最近、徐々に再評価されつつある彼ら。その曲や名前を懐かしく感じるアラフォー世代には懐かしさも感じられる最適なベストアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

THE YELLOW MONKEY IS HERE.NEW BEST/THE YELLOW MONKEY

昨年、待望の再結成を果たしたTHE YELLOW MONKEYが、彼らの代表曲を2017年の今、再録音してリリースした、THE YELLOW MONKEYの「今」を示したベスト盤。収録曲は2013年にリリースされたファンの選曲によるベストアルバム「イエモン -FAN'S BEST SELECTION-」と同じ曲となっており、いわば同作のアンサーアルバム的な立ち位置となっています。

今回、彼らの代表曲をあえて再度録音することによって、タイトル通り、イエモンの今の立ち位置をはっきりと示した作品でベスト盤というよりも「オリジナルアルバム」的な要素すら強いアルバムとなっています。全体的にサウンドは分厚くなり、演奏も安定し、ある種の貫録すら感じられます。ただ一方、オリジナル作のような勢いは薄れ、ある種の怪しさがなくなり毒気が抜けてしまったような印象も。良くも悪くも「安定感あるベテランバンド」になってしまったのかな、という印象も受けてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

THE YELLOW MONKEY 過去の作品
COMPLETE SICKS
イエモン-FAN'S BEST SELECTION-
砂の塔

MAJESTIC/Dragon Ash

ここ数作、ミクスチャーロックに回帰しているDragon Ashですが、約3年4ヶ月ぶりとなる新作も、基本的にはかつての彼ららしいミクスチャーロック路線。「Stardust」「光りの街」のような哀愁感あるメロディーラインを軸に、全体的にどこか郷愁感ある世界を作り上げているのも彼ららしいところ。目新しさはないもののいい意味で安心して聴いていられる作品でした。

評価:★★★★

Dragon Ash 過去の作品
The Best of Dragon Ash with Changes Vol.1
The Best of Dragon Ash with Changes Vol.2

FREEDOM
MIXTURE
LOUD&PEACE
THE FACES

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コメント

BY-SEXUAL、僕は結構好きですよ。

投稿: ひかりびっと | 2017年8月29日 (火) 17時37分

>ひかりびっとさん
思ったよりも楽しめたアルバムでした。

投稿: ゆういち | 2017年9月23日 (土) 00時06分

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