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2017年8月27日 (日)

30年、大きなブレイクもなく。

Title:ブッチーメリーSIDE C(2003-2005 selection)
Musician:Theピーズ

1987年、いわゆるバンドブームの流れの中、結成。主に90年代に活動し、ミュージシャンをはじめ一部では熱烈な支持を得たものの、大きなヒット作がなく97年に活動を休止。その後、2002年に活動を再開し現在に至っているパンクバンドTheピーズ。その結成30周年を記念してリリースされたベスト盤が本作。タイトルは再結成直前の2001年にリリースしたベストアルバム「ブッチーメリーSIDE A」「ブッチーメリーSIDE B」に続く形でのタイトルで、再結成後の楽曲からセレクトされたベスト盤になっています。

ちなみにベースボーカルである大木温之は元カステラ、現在はTOMOVSKYとして活動をしている大木知之の双子の弟。声質はそっくり、歌い方もどこか似ています。またジャケ写を見て気が付く方も多いかと思いますが、ドラムスはthe pillowsでも活躍している佐藤シンイチロウが参加しています。

昔、どこかの音楽雑誌か何かでTheピーズの紹介文として「楽曲が他の日本のパンクロックバンドのような行進曲になっていない珍しいバンド」という紹介をされていました。確かに今、日本のいわゆるパンクバンドはTHE BLUE HEARTSを含めて均等なリズムでアップテンポなビートを刻む楽曲がほとんど。一方Theピーズの楽曲は、パンクロックにカテゴライズされつつも60年代のロックンロール的な空気も色合いも感じつつ、独特のビート感を刻んでおり、あきらかに他の日本のパンクバンドとは一線を画しており、そこに大きな魅力を感じます。

また大木温之が書く歌詞も大きな魅力。平易な言葉で構成され、日常を描いた歌詞ながらもどこか深読みが出来る内容。シニカルでどこか自嘲的、ダメ人間を描きつつも、そんなダメさを含めて許容するような歌詞はぶっきらぼうな印象を与えつつも暖かさも同時に感じます。ちなみにどこかコミカルで独特な視点を持った歌詞の世界は、やはりTOMOVSKYに近いものも感じたりして・・・。

Theピーズの楽曲について、私自身は90年代の活動は知らず、2000年代の再活動後に後追いで知った口。はじめて聴いたアルバムも、前述の2001年にリリースされたベスト盤だったりします。そんな私が抱いた感想なので熱心なファンの方にとっては何をいまさら感もあるのかもしれないのですが・・・今回のベスト盤で収録された曲は再活動後の作品であるにも関わらず、90年代の頃の作品と全く変わらない勢いと瑞々しさを感じました。

大木温之のどこか気だるさがあるボーカルはベテランらしい「落ち着き」がいい意味でなく、演奏にもいまだにどこか新鮮味があります。そしてなにより楽曲自体が90年代の楽曲と比べて全くも勝るとも劣らない名曲揃いであるという点が大きいように思います。

今回のベスト盤は活動再開後の楽曲を収録されていますが、Theピーズというバンドを知るための入門盤としてはこの作品でも十分。それだけしっかりTheピーズの魅力、実力を感じられるアルバムになっていたと思います。バンドとしては30年間、大きなブレイク作もなく活動を続けてきたのですが、今年6月には初の武道館ワンマンを決行し、根強い人気を見せつけました。そしてその根強い支持も納得の名曲揃いだった本作。ブルハ直系のパンクバンドや今はやりに夏フェス仕様のバンドとは大きく異なるかもしれませんが・・・是非若い世代も聴いてほしい実力派。その入門盤としてお勧めの1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

BATON/徳永英明

最近はすっかり「カバー歌手」としての活動がメインとなってしまった徳永英明。とはいえオリジナルアルバムもきちんとリリース・・・とはいえ4年ぶりとなってしまったオリジナルアルバム。ただ、「VOCALIST」シリーズの影響か、4年前の前作「STATEMENT」同様、歌謡曲テイストが強い作品に。良くも悪くも保守的な作品になってしまっており、残念。決して「時代の先端を行く」ようなシンガーではないのかもしれませんが、もうちょっとバタ臭さがあった方がおもしろいのでは。

評価:★★★

徳永英明 過去の作品
SINGLES BEST
SINGLES B-Side BEST

WE ALL
VOCALIST4
VOCALIST&BALLADE BEST
VOCALIST VINTAGE
STATEMENT
VOCALIST 6
ALL TIME BEST Presence
Concert Tour 2015 VOCALIST&SONGS 3 FINAL at ORIX THEATER
ALL TIME BEST VOCALIST

はじめてのMrs. GREEN APPLE/Mrs.GREEN APPLE

Mrsgreenapple

配信限定でリリースされたMrs.GREEN APPLEの入門盤的なミニベスト盤。先日も10-FEETが似たようなアルバムをリリースしてきましたが、いわばフェスではじめて彼らを触れる人たちにとってリリースされる作品といった感じでしょうか。シンセを入れつつ終始明るいポップソングが並び、爽快感もあって聴いていて楽しくなってくる作品。いい意味でフェス向けといった感じのバンドだということをあらためて実感させられました。

評価:★★★★

Mrs.GREEN APPLE 過去の作品
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Mrs.GREEN APPLE

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