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2017年8月11日 (金)

「ダーク」をコンセプトとした13作目

Title:13
Musician:cali≠gari

メジャー15周年を迎えるヴィジュアル系ロックバンドcali≠gariのニューアルバム。基本的に彼らのフルアルバムはリリース順に番号が付されており今回は13枚目。西洋で縁起が悪いとされる「13」という数字をストレートにタイトルとした本作は、その数字から導き出されたのか、「ダーク」ということをコンセプトとしているそうです。

「13」といえば毎回、挑戦的かつどこかユーモラスを感じる音楽性に挑戦しており一種独特のスタイルを貫くバンドとして非常に魅力的なバンド。今回のアルバムはここ数作の中では断トツでバリエーションが多く、かつ挑戦的で独特な楽曲が目立った作品になっていました。

タイトルに沿った13秒のイントロを経てスタートする「ゼロサムゲーム」は非常にパンキッシュでアバンギャルドな楽曲。「汚れた夜-暗夜行路篇-」も疾走感あるヴィジュアル系っぽいちょっと妖艶なビートロックなのですが、トライバルなパーカッションとフリーキーなサックスが魅力的。途中、童謡の一節を取り入れているのがユニークな「トイレでGO!」はパンキッシュでユーモラスながらも歌詞の世界がどこか狂っていて怪しげな感じになっています。

またアバンギャルドな色の濃い前半から後半はバラエティー富みながらもポップでメロディアスなナンバーが続きます。「三文情死エキストラ」は怪しげな歌謡ファンクチューン。「一切を乱暴に」はハイテンポなパンクナンバー。さらには「ファニソン」はエレクトロサウンドを取り入れたダンスチューンと彼らの幅広い音楽性が垣間見れる楽曲が続きます。

今回、「ダーク」というコンセプト性があるということですが、正直なところ歌詞はともかくサウンドやメロディーからはあまり「暗さ」は感じません。むしろいつも以上にポップなメロディーが光ったインパクトある楽曲が並んでいるように感じます。上に紹介した曲以外でも「トカゲのロミオ」などパンキッシュでちょっとアバンギャルドさもあるバンドサウンドが心地よい疾走感あるナンバー。サビは非常にメロディアスでインパクトあるフレーズを展開しており、ちょっと90年代っぽいフレーズは多くのリスナーが楽しめそうな楽曲に仕上がっています。

このポップでインパクトあるメロディーラインといい、実験的でバリエーションの多い作風といい、cali≠gariの魅力をしっかりと詰め込んだアルバムだったと思います。個人的にはここ最近のcali≠gariのオリジナルアルバムの中では一番の出来だったように感じました。最後はアルバムのコンセプトに沿ったダークな雰囲気を醸し出しつつ哀愁感あるメロディーでゆっくり聴かせる「深夜、貨物ヤード裏の埠頭からコンビナートを眺めていた」で締めくくり。確かに聴いた後の印象としては「ダーク」というアルバムコンセプトが印象に残る展開になっていました。

評価:★★★★★

cali≠gari 過去の作品
10
cali≠gariの世界

11
12


ほかに聴いたアルバム

Friends Again/シャムキャッツ

今、注目されているインディーロックバンドの一組、シャムキャッツ。これが4枚目のアルバムとなります。以前からその名前は知っていたのですが、今回はじめて聴いてみました。郷愁感あるメロディーラインとフォーキーなサウンド。日本語詞にこだわりつつ楽曲的には洋楽からの影響も強く感じさせるいい意味でバタ臭さのある楽曲。イメージとしてはサニーデイサービスに近い雰囲気を感じます。フェス受けしそうなストレートなパンクバンドが注目される昨今ではちょっと独特という印象すら受けてしまう彼らですが、徐々に注目度は高まりそうな予感も。これからの活躍に期待です。

評価:★★★★★

BABEL/9mm Parabellum Bullet

歌謡曲テイストを感じさせる哀愁感あるメロディーラインとメタルやハードコアの影響も強いダイナミックなバンドサウンドの融合が魅力的な9mm Parabellum Bullet。メンバー全員が作詞作曲で参加した前作から一転、本作はメインライターの滝善充がすべての曲を手掛けたという、いままでのスタイルに戻った作品に。そのため全体的な出来としてはやはり前作を上回る内容になっています。ただ基本的にはどの曲もいつも通りのスタイルといった感じで、良くも悪くも大いなるマンネリ的な感じに。一種の様式美といった印象も受けますが、もうちょっとバリエーションもほしいかな、といった印象も。

評価:★★★★

9mm Parabellum Bullet 過去の作品
Termination
VAMPIRE
Revolutionary
Movement
Dawning
Greatest Hits
Waltz on Life Line

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コメント

オルタナでありながらメインストリームな作りでもある「13」を聴いて、cali≠gariの不動の人気を実感しました。

投稿: ひかりびっと | 2018年5月31日 (木) 20時56分

あと、シャムキャッツのは60-70年代のアメリカン・ロックのような優しく、そしてしっかりとした音色は今のシーンではなかなかヒットに辿り着きにくいでしょうけどこれはいい当たりを引いたって感じです。

投稿: ひかりびっと | 2018年6月 1日 (金) 10時05分

>ひかりびっとさん
ご感想ありがとうございました。

投稿: ゆういち | 2018年6月 3日 (日) 23時12分

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