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2017年7月 1日 (土)

ギターという楽曲のカッコよさを体現

Title:ALL TIME BEST "DAY2"
Musician:MIYAVI

最近は国内のみならず海外での活躍も話題になることが多いギタリストMIYAVI。今年は彼がソロデビューして15年となる記念の年なのですが、彼のソロでのキャリアを総括するベストアルバムがリリースされました。

MIYAVIというとご存じの方も多いかと思いますが、以前はいわゆるヴィジュアル系として活動していたミュージシャン。それがEMIに移籍して名前を「雅-MIYAVI-」としてからヴィジュアル系から距離を置き、オルタナティヴロックの方面に軸足を移しての活動が目立つようになりました。今回はEMIに移籍した2010年以降の楽曲を中心としたベスト盤となっています。

さてそんな彼の楽曲ですが、基本的には彼のギターの特徴であるスラップ奏法をメインとしたエッジの利いたファンキーなギターサウンドを中心に構成されたシンプルなサウンドがメイン。歌モノがあったりエレクトロサウンドを取り入れた曲があったりバリエーションを持たせつつも、基本的にはギターを中心に置いた楽曲という点で共通しています。

そしてこのギターサウンドが文句なしにカッコいい!ギターロックというジャンルが必ずしも音楽シーンの中心ではなくなりつつある現在において、あらためてギターという楽器のカッコよさに気が付かされるようなアルバムになっています。ただ、このベスト盤を聴いて感じたのは、このカッコよさを感じる理由としてある意味「ベタさ」があるような印象も受けました。

エッジを利かせたギターの音というのはカッコよさとしてはある意味わかりやすいですし、例えば「Ahead Of The Light」なんかも文句なしにカッコいい楽曲なのですが、後ろで鳴っているのはわかりやすい四つ打ちのリズム。「Afraid To Be Cool」などもカッコいいギターの音が鳴っているのですが、メロディーラインはわかりやすいJ-POP。全体的にわかりやすい要素が目立ちます。

ただこのわかりやすさは決してマイナスの要素になっていません。逆にベタだからこそすんなり彼の曲が耳になじみ、素直にギターのカッコよさを楽しめるのではないでしょうか。難しいこと抜きにして楽曲のカッコよさを楽しめる、彼の楽曲にはそんな魅力があふれています。

今回、初回限定盤にはDisc2として、彼が「ヴィジュアル系」として活動していた2010年以前の曲も含まれています。彼自身インタビューで「今の自分にはもう聴けない」と言っていますが、確かにいかにもJ-POPな楽曲は、今現在の彼の楽曲からするとかなり厳しいものがあります。

とはいえこの時期の楽曲が今の彼から切り離されているか、と言われるとそうではなく、例えば「Selfish love-愛してくれ、愛してるから-」みたいに今の彼に通じるカッコいいギターサウンドが流れている曲は少なくありません。逆にこの時期のいかにもJ-POPなベタさは、上にも書いた通り今の楽曲にも感じることが出来、今のMIYAVIの原点のひとつであることは間違いありません。

彼のように途中、音楽的なキャリアを大きく変えた人は以前のキャリアを否定してしまう人が少なくありません。しかしそんな中でも以前の活動をしっかりと自分の歴史として捉えている彼のスタンスは素晴らしいと思います。またこれらの楽曲に関しても今のMIYAVIが出来るまでの歴史を感じることが出来るため、非常に興味深く聴くことが出来ました。そういう意味では初回盤限定なのは残念。通常盤に含めてほしかったな・・・。

ちなみに今回のベスト盤のタイトル「Day2」とは、インディーズ時代がDay0、ヴィジュアル系時代をDay1として今がDay2である、という解釈だそうです。今後はさらにDay3、Day4と進化していくのでしょうか。まだまだギタリストとしていろいろな顔を見せてくれそうな彼。これからの活躍も非常に楽しみになってくるベスト盤でした。

評価:★★★★★

MIYAVI 過去の作品
WHAT'S MY NAME?(雅-MIYAVI-)
SAMURAI SESSIONS vol.1(雅-MIYAVI-)
MIYAVI
THE OTHERS
FIRE BIRD

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