ポップなアルバムかと思いきや・・・
Title:Different Days
Musician:The Charlatans
The Charlatansといえば1990年のデビューから既に27年というキャリアを誇るベテランバンド。かのブリットポップのミュージシャンの一組としても紹介されています。ただブリットポップのミュージシャンたちのほとんどが解散したり、事実上、活動休止状態になっている中、彼らは途中、オリジナルメンバーの急逝といった悲劇を乗り越えつつ、コンスタントな活動を続けています。
そんなベテランバンドの彼らですが、その活動状況としてはむしろここに来て、再び脂がのってきているのでは、とすら感じてしまいます。前作「Modern Nature」は中毒性高いグルーヴ感が味わえる傑作アルバムとなっていましたし、その後約2年のインターバルを経てリリースされた本作も、前作同様の傑作アルバムに仕上がっていました。
アルバム全体としては決して派手なアルバムといった感じではありません。アルバム冒頭を飾る「Hey Sunrise」はアコースティックなサウンドでしんみりとメロを聴かせるようなナンバーですし、タイトルナンバーとなった「Different Days」も哀愁感あるメロディーラインを聴かせるようなナンバーとなっています。
その後も「There Will Be Chances」のようなテンポのよいリズムが入りつつ爽やかなポップを聴かせるナンバーが入って来たり、「The Same House」のようにピアノとシンセで軽快なポップスを聴かせてきたりと、メロディーラインを聴かせる曲が並び、全体的にはポップなアルバムという印象を受けます。
しかし強く印象に残るのはこのポップなメロディーラインではありません。むしろアルバムを聴いている最中から妙なひっかかりを覚えるかもしれません。それは前作同様に感じる絶妙なグルーヴ感。前作に比べてよりポップなメロの中にグルーヴ感を溶け込ませており、知らず知らずのうちにその独特のグルーヴ感にはまっていくようなアルバムになっています。
特にこのグルーヴ感はアルバム後半から強烈な印象をリスナーに与えます。「Not Forgotten」は軽いシンセのリズムの向こうでベースラインによってしっかりと奏でられるどす黒いリズムが耳に、というよりも身体に残りますし、上にも書いた「There Will Be Chances」もポップなメロディーを奏でつつ、テンポよいベースとドラムスに絶妙なリズム感を覚えます。さらに「Let's Go Together」もシンセのサウンドにへヴィーなベースラインやドラムスのリズムが絡み、メロディーラインはポップながらもどこかサイケちっくなサウンドの世界が構築されており、心地よいサウンドとリズム感が楽しめる作品に仕上がっています。
ポップなメロディーラインの後ろに流れているこの独特なグルーヴ感が実にたまらない、前作同様中毒性高い傑作アルバムに仕上がった本作。デビュー30年近いバンドがまさかの2作連続、キャリア最高傑作ともいえるようなアルバムをリリースしてきました。その傑作アルバムに呼応するかのようにアルバムの売上も、前作が全英7位、本作ではさらに前作を上回り全英4位を記録。売上の側面でもその勢いを取り戻しつつあります。前作に引き続き、年間ベスト候補の大傑作アルバム。ロックが好きなら是非ともチェックしてほしい1枚です。
評価:★★★★★
The Charlatans 過去の作品
You Cross My Path
Modern Nature
ほかに聴いたアルバム
One More Light/Linkin Park
Linkin Parkの最新作はロック色が薄くなりポップの色合いが強くなったのが大きな特徴。ミディアムテンポのナンバーがほとんどとなり、スケール感あるサウンドでメロディアスに聴かせる曲が並んでいます。これはこれで彼らなりの挑戦なんでしょうが・・・正直、あまり成功しているとは思いません。これといったインパクトも薄く、個性もあまり感じません。決して長いアルバムではないのですが、聴いていて最後の方はだれてきてしまいました。ちょっと残念に感じるアルバムでした。
評価:★★★
LINKIN PARK 過去の作品
A THOUSAND SUNS
LIVING THINGS
The Hunting Party
HITnRUN Phase Two/PRINCE
昨年4月、わずか57歳という若さでの急逝に多くの音楽ファンがショックを受けたプリンス。なによりショッキングだったのは彼がバリバリ現役のミュージシャンであり、アルバムもコンスタントにリリース。それもどのアルバムも一定以上の水準を保っていた傑作をリリースしていたという事実。本作はその彼の生前最後にリリースしたオリジナルアルバム。タイトル通り、2015年にリリースした「HITnRUN Phase One」の続編的なアルバムで、実際に女性ボーカルやエレクトロサウンドを取り入れた軽快なファンクという形態は前作と同様。「HITnRUN Phase One」と同様、ある種の若々しさすら感じられる軽快なポップソングが楽しめる作品で、これが最期というのは信じられません・・・。本当にあまりにも早すぎる最期が惜しまれる傑作です。
評価:★★★★★
PRINCE 過去の作品
PLANET EARTH
ART OFFICIAL AGE
PLECTRUMELECTRUM
HITnRUN Phase One
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2017年」カテゴリの記事
- 今回もArcaサウンド(2017.12.29)
- oasisのイメージから離れて(2017.12.24)
- 銀熊賞受賞作のサントラ盤(2017.12.22)
- 変わっていく彼ら、変わらない彼ら(2017.12.18)
- 今年も恒例の(2017.12.15)
コメント