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2017年7月

2017年7月31日 (月)

様々な作風に挑戦した2作目

Title:Melodrama
Musician:Lorde

デビューシングル「Royals」が大ヒットを記録。続くアルバム「Pure Heroine」も大きな話題となったニュージーランド出身の女性シンガーソングライターLordeの2ndアルバム。日本の悪いところで、デビューアルバムで評判になっていも2枚目のアルバムはよっぽどよくなければなかなか話題にのぼりません。ただ本作はアメリカではアルバムチャートで前作を上回る最高位1位を記録し、前作に引き続き大ヒットを記録しています。

そんな彼女の注目すべき2枚目のアルバムですが、基本的には前作のスタイルを踏襲したようなアルバムになっていました。前作同様、あくまでもメロディーラインと歌を主軸としたポップソングがメイン。前作で「ポップになったビョーク」という書き方をしましたが、誤解をおそれずにいえば本作に関してもそんなイメージを強く抱きました。

ただ前作よりは音的なバリエーションは増えたのも大きな特徴でした。前作はミニマルで音数を絞ったエレクトロトラックがメインだったのですが、本作はグッと音数が増えています。特にアルバムのちょうど真ん中に位置する「Hard Feelings/Loveless」は最初はファンタジックな雰囲気からスタートするものの、中盤では歪んだギターサウンドが登場し、その雰囲気は一転。サイケな雰囲気に展開していきます。かと思えばラストではアイドルポップを彷彿とさせるようなかわいらしいポップソングで締めくくり。ある種「プログレ」的に複雑な構成の楽曲が展開されます。

他にもEDMテイストの強い「Supercut」のような楽曲もあるのですが、なんといっても彼女の魅力をフルに発揮しているのは「Liability」「Writer In The Dark」(なんかビョークの「Dancer In The Dark」を彷彿させるタイトルですね・・・)でしょう。ピアノをメインに軽くストリングスが入るだけのシンプルなサウンドをバックに彼女がその表現力豊富な歌声を聴かせてくれるナンバー。その美しくも切ないメロディーラインと共に、Lordeのボーカリスト、あるいはソングライターとしての魅力が存分に発揮された楽曲になっています。

そんな様々な楽曲に挑戦しつつもアルバム全体としてはメロディー主体のシンプルなポップというイメージが先行する作品になっていました。そういう意味で前作と聴いた後の感触としては大きくは変わりません。

ただ正直なところ前作で感じたような衝撃は薄かったような感じはします。最初は「よくあるポップスアルバムだな」という印象すら受けました。・・・ただ、よくよく考えると彼女みたいなスタイルの女性シンガー、今、いそうでいないんですよね。ビョークはもっとエキセントリックですし、もちろんAdeleやテイラー・スウィフトとも違います。ケイティ・ペリーやラナデルレイほどのポップといった感じでもありません。そういう意味では彼女、よくいそうなタイプに思いつつ、今のシーンでは唯一無二の存在なのかもしれません。まただからこそ彼女の楽曲が大ヒットを記録したのでしょう。

前作同様、シンガーソングライターとしての彼女の魅力が存分につまった傑作アルバムなのは間違いありません。前作ほどの話題性や派手さはないのですが・・・いい意味で広くお勧めできるポップスアルバムの傑作です。

評価:★★★★★

Lorde 過去の作品
PURE HEROINE


ほかに聴いたアルバム

Planetarium/Sufjan Stevens, Bryce Dessner, Nico Muhly, James McAlister

シンガーソングライターSufjan Stevensと、現代音楽家Nico Muhly、The Nationalとしても活躍しているBryce Dessner、そしてThe Album Leafの作品にも参加しているドラマーJames McAlisterの4人によるプロジェクト。占星学や天文学をモチーフとした17曲から構成されるアルバムで、スペーシーなエレクトロサウンドを主導とした幻想的な雰囲気の楽曲が並んでいます。壮大なテーマ性を持った作品が多いものの、基本的にメロディアスな作品が多く、聴きやすさも感じされる作品。タイトル通り、星空満点のプラネタリウムの中で聴くと気持ちよさそうなアルバムです。

評価:★★★★

Sufjan Stevens 過去の作品
The Age of Adz
Carrie&Lowell

Is This The Life We Really Want?/Roger Waters

ピンク・フロイドの中心メンバーだったRoger Watersによるソロアルバム。「この生活は我々が本当に欲したものか?」というタイトル通り、トランプ政権やら世界の紛争や差別問題など混沌した社会の中ではっきりと反戦、反差別を訴える作品。ただ楽曲自体はピンク・フロイドのイメージとは異なりギターロックなサウンドをメインにピアノやアコギを入れつつ、シンプルにまとめあげたメロディアスな内容となっています。また彼の渋めなボーカルも大きな魅力に。大ベテランの彼だからこそつくれた重厚感のある作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

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2017年7月30日 (日)

Googleでは検索しずらいバンド・・・。

Title:0'年代の電車 3TITLES
Musician:電車

今回紹介するのは「電車」なるバンド。非常に奇妙な名前のバンドで、Googleでも非常に検索しずらいバンドですが、このバンドは筋肉少女帯の大槻ケンジを中心に2001年に結成されたバンド。他には筋肉少女帯の元メンバーである石塚"BERA"伯広、マルコシアス・バンプの佐藤研二、すかんちの小畑ポンプによる4人組バンド。「30代の男たちのアングラロマン」をテーマに活動を続け、2004年に大槻ケンジの脱退により活動を休止するまでにオリジナルアルバム2枚、ライブアルバム1枚をリリース。その後2014年に再始動し、セルフカバーアルバム1枚をリリースしています。

今回のアルバムは2000年代にリリースされたアルバム3枚をこのたびリパッケージされて再発された3枚組のアルバム。今となっては入手困難なアルバムもあり、ファンにとってはありがたい再発盤となったのではないでしょうか。

さてバンドのテーマとして「30代の男たちのアングラロマン」をかかげて活動を行った彼らですが、基本的にバンドのスタイルとしてはエフェクトかかったノイジーなギターを前に押し出したちょっとサイケデリックな要素を取り入れたギターロック。ただ、楽曲によってはジャジーな要素を上手く取り入れて妖艶な雰囲気を醸し出したり、歌謡曲なテイストを入れてきたりして「アングラ」という雰囲気を出してきています。

ただ本作のDisc1でありバンドとしても1枚目の「電車トーマソ」はこのアングラ的な怪しさはちょっと薄め。この「アングラロマン」というバンドとしての方向性がより明確に感じられるのは2ndアルバムであり本作のDisc2として収録されている「勉強」からでしょう。「OUTSIDERS」ではストリングスを入れて妖艶な雰囲気を醸し出していますし、「星屑と赤い闇のブルース」はうさん臭い音楽プロデューサー(?)による語りがオーケンらしいユーモラスを出しつつ、非常に怪しげなナンバーになっています。

そしてこの方向性がより強調されたのがライブアルバムであり本作のDisc3である「電車英雄」。序盤「私のビートルズ」は客席からのテープ録音のような非常に録音状態の悪い音になっているのですが、この音の感じがいかにも「アングラ」といった感じになっていますし、「OUTSIDERS」「喰らわれた女の歌」などサイケな楽曲はよりサイケな雰囲気が増しています。このライブ盤が電車というバンドのひとつの完成形だと思われます。

オーケンらしいユーモアセンスや自嘲的な歌詞も要所要所に登場しており、筋肉少女帯あたりが好きでももちろん文句なしに楽しめそうな内容。3枚組のボリュームですが、ダレることなく楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。~Wonderful Summer~/野宮真貴

元ピチカート・ファイブのボーカル、野宮真貴による、渋谷系、あるいはその周縁部やルーツとなる曲をカバーする企画「野宮真貴、渋谷系を歌う。」。本作が4作目のアルバム。今回は「夏のヴァカンスの名曲」をテーマにカバーを行っています。

このシリーズももう第4弾ということでそろそろネタ切れ気味・・・と思いつつも、本作では爽やかなポップソングが野宮真貴のボーカルにピッタリ。特に小西康陽がPUFFY吉村由美に提供した「V・A・C・A・T・I・O・N」など、野宮真貴と非常に相性が良く、小西康陽と野宮真貴の相性の良さを感じます。なにげにここ数作の中では一番楽しめたカバーアルバムでした。

ただ、とはいえ全12曲中5トラックがボーナストラック、うち2トラックがライブMCとネタ切れ気味は否めません。そろそろこのプロジェクトも区切りをつける時期かも。次回作は彼女の新たなプロジェクトを期待したいところです。

評価:★★★★★

野宮真貴 過去の作品
実況録音盤!「野宮真貴、渋谷系を歌う。~Miss Maki Nomiya Sings Shibuya-kei Standards~」
世界は愛を求めてる。-野宮真貴、渋谷系を歌う。-
男と女~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。

XXL/岡崎体育

今、もっとも話題のシンガーソングライターながらも個人的には前作「BASIN TECHNO」を大酷評した岡崎体育。新作も聴くのは迷ったのですが・・・ただ大森靖子みたいなずっと酷評していたものの最新作で傑作に出会えた、というケースもあるだけに聴いてみました。

「自分はわかってます」的なメタ視点が非常に鼻についた前作と比べると今回は「ネタ的」な曲は少な目。聴いていてイライラした前作に対すると今回はそういう感情は抱かずにアルバムを聴くことが出来ました。ただ今回もONE OK ROCK風のサウンドにのせて楽曲とはアンマッチな歌詞を歌う「感情のピクセル」や、日本語なのに英語に聴こえるような日本語の歌詞を歌う「Natural Lips」などが話題になっているのですが、ねえ、これおもしろい???サウンドと歌詞のアンマッチなんて、SEX MACHINEGUNSみたいにそのネタだけでブレイクしたミュージシャンもいるし、日本語を英語風に歌うって、SOUL'd OUTが既にやっているよね・・・(苦笑)。

今回、比較的アルバムとして聴けたのは、アルバムの後半にはネタ曲がなくなり真面目な曲が並んでいたという点。この真面目な曲に関しては確かにメロディーもインパクトはあるし、エレクトロサウンドやラップを取り入れた楽曲もバリエーションがあるのですが、逆にミュージシャンとしての芯の部分がちょっと弱いように感じてしまいました。

前作のように聴いていて腹が立つということはなかったのですが、逆にそれだけ薄味になってしまったようにも感じます。正直、本作を聴いてもやはりまだ「ハイプ」という印象は否めませんでした。次回作・・・聴くかどうか微妙だな・・・。

評価:★★★

岡崎体育 過去の作品
BASIN TECHNO

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2017年7月29日 (土)

釈迦兎最後のアルバム

Title:Her
Musician:SHAKALABBITS

1999年に結成し、2002年には175Rとのコラボによりリリースされた「STAND BY YOU!!」が大ヒットを記録し一躍ブレイクを果たした4人組パンクロックバンドSHAKALABBITS。2000年代には高い人気を誇っていましたが、2000年代終盤あたりから徐々に人気が下落。その後、一時期の人気からは落ち着いたものの一定の支持を得つつ、活動を続けていました。

しかしそんな彼女たちも結成17年目になる2017年いっぱいで活動休止を発表。そして彼女たちのラストアルバムであり5年ぶりとなるニューアルバムを発表しました。今回紹介するアルバムがそのアルバムです。

もともとは「スカパンクバンド」という枠組みでデビューした彼女たちでしたが、以前からが楽曲はポップでメロディアスなシンプルなギターロック。今回のアルバムでも基本的にそのスタンスは変わりありません。楽曲によってはスカの要素を入れている曲もあるのですが、アルバム全体としてはスカパンクというよりもシンプルなギターロックという印象を受けます。

楽曲的には非常にポップで聴きやすい内容。UKIのハイトーンで人なつっこいようなかわいらしいボーカルも楽曲のポピュラリティーに大きく寄与しています。バンドサウンドは適度にヘヴィーでノイジーなギターが心地よい感じ。今回のアルバムでも「至福のトランジスタ」「Climax」などそれなりにへヴィーなバンドサウンドを聴かせてくれるのですが、バンドサウンドのほどよい分厚さが聴いていてとても気持ちよく感じさせてくれます。

また楽曲の勢いも結成17年たった今でもあまり変わりありません。確かに結成直後らしい初期衝動的な部分はなく、いい意味でのベテランバンドらしい安定感はあるものの、軽快でパンク色も強いギターロックにはいまでも十分勢いがあり、いい意味での若々しさを感じます。メンバー全員30代後半の彼女たちですが、今でも若手バンドに負けない力強さを楽曲からは感じることが出来ます。

デビュー当初からスタンスとしてほとんど変わっておらず、そういう意味では17年たった今、なぜ無期限の活動休止になるのか、若干疑問に感じる部分もあるのですが、長くやってきたからこそ、メンバーの間にちょっとずつズレが生じてきたのでしょうか。この無期限が事実上の解散なのか、将来的な活動再開を前提としたものなのかは不明なのですが、残念に感じます。

もっとも本作もアルバムとしては目新しさもなく、良くも悪くも大いなるマンネリといえる部分もチラホラ。そういう意味でも17年たってメンバーそれぞれ新たな一歩を進むため、とりあえずSHAKALABBITSとしての活動はお休みということにしたのでしょうか。目新しさがないという意味でもは4つが最適な感じはするのですが、ただこれが彼女たちにとって事実上最後のアルバムということでこれまでの活動に敬意を表して下の評価で。またいつかの活動再開を願っています。

評価:★★★★★

SHAKALABBITS 過去の作品
SHAKALABBITS
4 ALL AGES
Phasemeter Trippin' Bug Shake
Condenser Baby
BRACKISH
Rabbits,Rabbits,All the way 1
Rabbits,Rabbits,All the way 2

What do I crave to see?


ほかに聴いたアルバム

AKG TRIBUTE

AKG=ASIAN KUNG-FU GENERATIONの楽曲を彼らに影響を受けた若手ミュージシャンがカバーしたカバーアルバム。参加しているミュージシャンはいわゆる今時のバンドなのですが、正直言って全体的に力不足。小粒感は否めません。あえていえばアジカンの楽曲を完全に自分たちの曲として作り替えているamazarashiくらいでしょうか。ただ一方でLILI LIMITなどキラリと光るようなカバーもチラホラあったため、今後次第ではおもしろくなってくるバンドもいるかも。全体的にそれなりに悪くはないので聴いて損のないアルバムだとは思いますが。

評価:★★★★

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2017年7月28日 (金)

アラフォー世代感涙の選曲

Title:オニカバー90's
Musician:鬼龍院翔

90年代J-POPをこよなく愛するゴールデンボンバーのボーカル、鬼龍院翔によるカバーアルバム。タイトル通り、90年代のヒット曲をズラリと並べてカバーしたアルバムで、アラフォー世代の私にとってはちょうど中学生や高校生の頃に聴いていたような曲が並んでおり、壺をつきまくるような選曲に、おもわず聴いてしまいました。

ただ、彼自体は今、33歳。90年代というと小学生の低学年か、せいぜい中学生あたりの頃の曲でありリアルタイムで聴いていたといった感じではありません。後追いで聴いたのか、それとも小中学生とはいってもマセた餓鬼だったり上に兄や姉がいる場合はヒット曲を聴いていたりするのでその流れで聴いていたりしたのでしょうか。WANDSの「世界が終るまでは...」などはアニメ「スラムダンク」のテーマソングだったりするので当時小学生だった彼がリアルタイムで聴いていても不思議ではないのですが。

さて今回のカバーアルバム、その選曲を見て食指が動くのはおそらく私と同じアラフォー世代の方ではないでしょうか。ただ一方、思い入れのあるヒット曲がどのようにカバーされるのか気になるかもしれません。しかしその点はご安心を。楽曲はカバーというよりはむしろコピー。原曲そのままのアレンジに歌い方も原曲に沿った歌い方をしています。また鬼龍院翔自体、(一応は?)ビジュアル系ということでビジュアル系特有の鼻にかかったような歌い方をするのですが、今回のカバーに関しては比較的素直な歌い方に徹しています。彼自身、歌唱力はそれなりにあるので聴いていても苦になりませんし、おそらく原曲に思い入れがあるようなアラフォー世代にとっては安心して懐かしい曲の世界に浸れるのではないでしょうか。

また選曲についても誰もが知っているようなあの頃のヒット曲ばかり。「愛は勝つ」「それが大事」「どんなときも。」あたりはいかにも90年代のJ-POP!といった感じ。ただCHAGE&ASKA、B'z、ミスチルといった90年代J-POPの最重要ミュージシャンのカバーがないのは大人の事情なのでしょうか、それとも彼の趣味なのでしょうか。ドリカムあたりはさすがに原曲準拠だと歌えなかったからかもしれませんが。

またちょっと意外だったのは(個人的にファンということで注目してしまうのですが)LINDBERGの曲として「今すぐKiss Me」でも「BELIEVE IN LOVE」でもなく「君のいちばんに...」が選曲されていること。ヒットや知名度という点からは他のに比べると低く、ちょっと浮いてしまっているような印象も受けます。ひょっとしたらこの曲がリリースされたのが彼がちょうど13歳の頃で、この手のヒット曲を主導的に聴き始めるような頃。彼にとって何らかの思い入れがある曲なのかもしれません。

そんなアラフォー世代にとっては非常に懐かしさを感じるアルバムなのですが、正直言ってしまうとカバーアルバムとしては失格です。上にも書いた通り、基本的に原曲準拠のアレンジに歌い方も原曲に沿った内容。はっきりいってしまえばカラオケです。企画の趣旨的にそういう指摘はわかった上であえて「コピー」に徹したのかもしれませんが、プロのミュージシャンとして自分なりの解釈を全く入れない「カバー」を評価することはできません。アルバムとしての評価としては決して絶賛は出来ない内容かと思います。

まあただそこらへんをわかった上で純粋にあの頃の思い出に浸って懐かしく聴くアルバムとしては十分すぎるほど楽しめるアルバムになっていました。ただちょっと気になるのが(前のチャート評のコーナーでも書いたのですが)このジャケット写真。妙にド派手なメイクといい、タイトルの極太ゴシックな書体といい完全に90年代ではなく80年代。リアルタイムにその時代を生きていた世代だからわかるのですが、90年代って、この手の80年代的スタイルがもっとも「カッコ悪いもの」と捉えられていた時代なんだよなぁ。この時代的なギャップをわかっていてあえてやったのか、それともわからなかったのか。前者なら、今の時代、90年代ってこうやって捉えられているのか、とその頃に青春時代を送ったような私にとってはちょっと悲しくなりますし、後者なら「90年代J-POPをこよなく愛する」というのなら曲の背景となったその時代の文化風俗をもうちょっと勉強してほしいなぁ・・・。

評価:★★★


ほかに聴いたアルバム

和と洋/AI

AIのニューアルバムはなかなかユニーク。2枚組となった本作はタイトル通り、Disc1が「和」をイメージ、Disc2が「洋」をイメージしたような楽曲が並んでいます。「和」の方ではゲストに鼓動や姫神といったいかにもなミュージシャンを迎え、和太鼓やら三味線やら「和風」な音を入れつつ、全体的にはいつものAIらしいパワフルなバラード曲がメイン。一方、「洋」の方は、今風のエレクトロサウンドを取り入れた、洋楽からの影響をストレートに取り入れた垢抜けたポップスが並んでいます。

「和」の方はいかにもなお決まりの「和風」な音だったのがちょっと残念だったのですが、全体的にはAIらしい楽曲がきちんと並んでいるため統一感もあり、和風と洋楽風を対比させるという構成もなかなかユニーク。AIの魅力と彼女の音楽的多様性をきちんと出せていた傑作でした。

評価:★★★★★

AI 過去の作品
DON'T STOP A.I.
VIVA A.I.
BEST A.I.
The Last A.I.
INDEPENDENT
MORIAGARO
THE BEST
THE FEAT.BEST

何度でも新しく生まれる/MONDO GROSSO

大沢伸一によるソロプロジェクトMONDO GROSSO。2003年頃から活動休止状態でしたが、このほどなんとオリジナルアルバムとしては14年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

全11曲入りとなる本作は、女性ボーカルを中心にMONDO GROSSO初となる全曲日本語によるボーカル曲。ただエレクトロサウンドを中心とした作風で、メロディーをしっかり聴かせる曲もあれば音の一部となっているような曲も。ダビーな曲からトライバルなリズムを聴かせる曲、シティポップな曲などなどバリエーション豊富な作風に大沢伸一の音楽に対する旺盛なスタンスを感じる一方、ちょっと核となるような曲がなくバラバラな統一感のない作風が気になりました。

評価:★★★★

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2017年7月27日 (木)

こちらもAKB系が1位

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

Hot 100に続きアルバムチャートでもAKB系が1位獲得です。

今週1位は欅坂46のデビューアルバム「真っ白なものは汚したくなる」が初動売上27万9千枚で1位獲得となりました。タイトルはいかにも秋元康っぽい言語センスですね。

2位は韓国の男性アイドルグループSHINeeのメンバー、テミンによるソロアルバム「Flame of Love」が獲得しました。初動売上5万枚はソロ前作「さよならひとり」の4万5千枚(3位)からアップしています。

3位にはまだまだ強い。スピッツのベスト盤「CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-」が今週も2万1千枚を売り上げ、先週から変わらず3位をキープ。ロングヒットとなりそうな予感がします。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位には韓国の男性アイドルがもう1組。MYNAME「MYNAME is」が入ってきています。初動売上は2万枚。「ALIVE~Always In Your Heart~」の2万4千枚(2位)からダウン。

5位と7位にはB-PROJECT「S級パラダイス WHITE」「S級パラダイス BLACK」がそれぞれランクインしています。B-PROJECTはアニメキャラによるアイドルプロジェクト。要するにラブライブ!の男性版といった感じでしょうか。ちなみに総合プロデューサーとして西川貴教が参加しているそうです。本作はデビューアルバムで、それぞれ初動1万6千枚、1万5千枚を記録しています。

6位初登場はMY FIRST STORY「ALL LEAD TRACKS」がランクインです。初動売上1万5千枚は前作「ANTITHESE」の1万8千枚(4位)から若干のダウン。ちなみに彼ら、ボーカルのHiroはONE OK ROCKのTakaの弟(=森進一、昌子の息子)としても話題のロックバンドです。

最後8位には徳永英明「BATON」がランクイン。途中、ベスト盤のリリースやおなじみ「VOCALIST」シリーズのリリースはあったものの、オリジナルアルバムとしては約4年ぶりとなる新作です。初動売上1万4千枚は前作「STATEMENT」の2万枚(4位)からダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年7月26日 (水)

水樹奈々が・・・

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のまず人気声優水樹奈々が目立つチャートとなりました。なんといっても2位3位に「TESTAMENT」「Destiny's Prelude」がそれぞれ初登場でランクイン。前者はアニメ「戦姫絶唱シンフォギアAXZ」オープニング・テーマ、後者はアニメ映画「魔法少女リリカルなのは Reflection」主題歌。どちらもマイナーコードで哀愁感たっぷりのメロでダイナミックに展開するいかにも水樹奈々節ともいえるナンバー。ちなみにどちらもCD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数は2位3位と順位通りだったものの、ラジオオンエア数は「Destiny's Prelude」がギリギリ40位で「TESTAMENT」が圏外。他にTwitterつぶやき数が「TESTAMENT」22位「Destiny's Prelude」30位という、典型的な一部の固定ファンのみが支持されるような結果に。ちなみにオリコンでは「TESTAMENT」が初動3万2千枚で2位、「Destiny's Prelude」が初動3万1千枚で3位という結果になっています。どちらも前作「STARTING NOW!」の3万枚(3位)から若干のアップ。

さらに今週オリコンでは、7位に風鳴翼「戦姫絶唱シンフォギアAXZ キャラクターソング3(月下美刃)」がランクインしていますが、この風鳴翼を担当する声優も水樹奈々。そういう訳で今週オリコンでは彼女のシングルが事実上3枚同時にランクインしています。なお、同作はHot100ではベスト20圏外となっています。

さて今週1位はAKB48の姉妹グループで名古屋を中心に活動をするSKE48「意外にマンゴー」が先週の57位からCDリリースにあわせて一気にランクイン。実売数1位、Twitterつぶやき数2位、PCによるCD読取数6位と上位にランクインした一方、ラジオオンエア数は68位に留まっています。ちなみにオリコンでも1位初登場。初動売上27万2千枚は前作「金の愛、銀の愛」の25万1千枚(1位)から若干のアップ。

続いては4位以下の初登場曲です。まず5位にTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「Dirty Disco」が初登場でランクイン。ミュージシャン名通り、EXILEの弟分のボーカルグループ。楽曲は80年代を彷彿とさせるディスコチューン。既にこの手のディスコチューンは一部では再評価されてきましたが、ようやくEXILE系のような売れ線系も取り入れてきた模様。実売数5位、ラジオオンエア数13位、PCによるCD読取数23位、Twitterつぶやき数12位といずれもそこそこの上位に食い込んでいます。オリコンでは初動2万3千枚で5位初登場。前作「FRONTIERS」の2万9千枚(3位)からダウンしています。

7位にはパンクロックバンド10-FEET「太陽4号」が先週の35位からランクアップしてベスト10入り。実売数8位、ラジオオンエア数5位、PCによるCD読取数9位といずれも上位に入ってきましたが、Twitterつぶやき数のみ62位と奮いませんでした。オリコンでは同作も収録されているシングル「太陽の月」が初動2万4千枚で4位初登場。前作「ヒトリセカイ×ヒトリズム」(4位)から横バイとなっています。

8位初登場はハチ「砂の惑星 feat.初音ミク」が初登場でランクイン。ハチというのはシンガーソングライター米津玄師がボカロPとして活動した時に用いていたペンネーム。そう、米津玄師が初音ミクを用いて久々にリリースした新曲です。9月に幕張メッセで行われるイベント「初音ミク『マジカルミライ 2017』」として作成されたこの曲。すっかり米津玄師名義での活躍が板についた彼でしたが、その活動の原点である初音ミクの作品を久々にリリースしてきたということで大きな話題となりました。そのため同作はTwitterつぶやき数で1位のみで他はすべて圏外にも関わらず見事ベスト10入りを記録しました。まあ、例のごとく、Hot100の算定基準はちょっとTwitterつぶやき数の比重が大きすぎないかという疑念はあるのですが・・・。

9位にはMr.Children「HANABI」が先週の23位からランクアップして見事ベスト10入り。ご存じの通り、2008年にリリースして大ヒットしたミスチルの代表曲のひとつ。7月スタートのフジテレビ系ドラマ「コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON」に起用されて配信を中心にヒットを記録し、ベスト10入りしてきました。実売数6位、ラジオオンエア数47位、Twitterつぶやき数55位と配信売上以外はまだ上位に食い込んでいませんが、ドラマはまだまだ続きますのでロングヒットも期待できそうです。

今週の初登場曲は以上。ロングヒット組ではまずTWICE「TT」。先週の4位からランクダウンしたものの6位をキープ。You Tube再生回数ではまだ1位を保持しています。SEKAI NO OWARI「RAIN」は今週も4位と先週から同順位をキープ。実売数4位、PCによるCD読取数8位と上位に食い込んでおり、まだまだロングヒットが期待できそう。一方米津玄師「ピースサイン」は今週11位にランクダウンしてベスト10落ち。ちょうどハチ名義の新曲がベスト10入りしてきており、入れ替わりという結果になりました。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日!

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2017年7月25日 (火)

ラストアルバム

Title:Chuck
Musician:Chuck Berry

巨星、墜つ。今年3月、ロック界に大きな衝撃の走ったチャック・ベリーの逝去。まさにそう表現するのがピッタリでしょう。ロックンロールの創始者のひとりとしてまさにロックの歴史を語るには欠かせない人物であり、多くのロックミュージシャンへ影響を与えた彼。享年90歳という年は大往生といっていい年なのですが、ひとつの時代の終わりを感じる出来事でした。

そして彼の逝去後にリリースされたのが、なんと約40年ぶりとなる彼のオリジナルアルバム。もともと彼の逝去のニュースが入ってくる前から2017年にアルバムリリース予定であることがアナウンスされていました。もっとも彼に関しては特に「がんで余命〇年」といった感じではなかったようですので、死を覚悟しての1枚、といった感じではありません。ただ年齢からいっておそらくこれが最後だろうな、ということを感じつつのアルバムだったのではないでしょうか。

ただそんな本作ですが、これが最後だ、というような雰囲気はほとんど感じられません。もともとさすがに全米ツアーなどは行っていなかったものの、逝去のちょっと前まで地元で積極的なライブ活動を行っていたということは聴いていましたし、最後の最後まで現役ミュージシャンだった彼。「これが最後だろうな」ということは思いつつも、一方であわよくば、このアルバムの次にももう1枚・・・と思っていたのかもしれません。

Chuck Berryといえば主に50年代のロックンロール黎明期。シンプルなギターリフとメロディアスなメロディーライン、また当時のティーンエイジャーの心境をそのまま歌ったような歌詞でロックンロールというジャンルを確立し数多くのヒット曲をリリースしました。そして彼の最後となったオリジナルアルバム、そんな彼のロックンロールは全く変わっていません。90歳になってもそのスタイルを貫きとおしています。

しかし今回のアルバムを聴いても50年代のロックンロールそのままといっても全く古さを感じませんでした。その理由としてまず感じるのは、このアルバムでも感じられる若々しさ。今回のアルバムでも決して今時の音を入れているわけではありませんが、その楽曲には現役感があり勢いすら感じさせます。さすがに90歳近い歳ということもあり声の艶は感じられませんし、ギターの迫力という点では昔にはかなわないかもしれません。それでも下手な若手にはまだまだ負けないという気迫を感じます。

また非常にギターリフ主導のロックンロールというシンプルなスタイルだからこそ時代を超えても全く古くならない魅力があるのでしょう。まさにシンプルイズベスト。彼の全盛期から60年以上の月日を経て、いまなお感じられるロックンロールの魅力がこのアルバムにはつまっています。

2015年にはB.B.KINGがこの世を去り、そしてChuck Berryがこの世を去り、長生きだったポピュラーミュージック界のレジェンドたちがここ最近、次々とこの世を去って行っており、ひとつの時代の終わりを感じます。そんな中リリースされたChuck Berryのラストアルバム。まずはチェックしておきたいマストなアルバムと言えるでしょうし、またそういう事情抜きにしても十分お勧めできる傑作アルバムでした。最後の最後までロックンローラーであり続けたChuck Berry。あらためて彼の冥福をお祈りします。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Love&Hate/Michael Kiwanuka

前作「Home Again」が話題となったイギリスのソウルシンガーの2枚目。日本での注目度は残念ながら1枚目ほどではありませんでしたが、イギリスでは前作を上回るチャート1位を記録しています。それだけに内容も素晴らしく、前作とほとんど遜色ない傑作に。ブルージーな雰囲気のレトロなソウル路線は前作と同様。彼のボーカルによるスモーキーな雰囲気が実に心地よい作品になっています。基本的に前作の路線を踏襲しているのですが、前作同様、実に魅力的な傑作でした。

評価:★★★★★

Michael Kiwanuka 過去の作品
Home Again

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2017年7月24日 (月)

1日1曲 第2弾

以前紹介した日本のポピュラーミュージックの名曲を1日1曲というコンセプトで1年かけて紹介しようという企画「大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs」。以前、第1弾として1月から3月分を紹介しましたが今回は第2弾。4月から6月分の紹介です。

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「4月 桜」

ここ最近はちょっと落ち着いたものの、例年、嫌というほどリリースされる「桜」を題材とした楽曲たち。この4月バージョンではDisc1のテーマは「桜」ということで、その桜ソングがズラリと並んでいます。「桜」の曲をCD1枚分くらい収録するのは余裕でしょうね。ただ河口恭吾の「桜」は収録されているのですが、福山雅治の「桜坂」やコブクロの「桜」、森山直太朗の「さくら(独唱)」あたりのヒット曲が収録されていないのはちょっと残念です。

Disc2も「花の歌」をテーマに、花を題材とした曲が並んでいます。この桜ソングも花をテーマとした曲も共通しているのが切なく聴かせるような曲もあるものの、全体的に爽やかさを感じる点。「花」に対する想いに共通するものを感じます。

また今回の選曲で特に耳を惹いたのが川本真琴の「桜」。久しぶりに聴いたのですが、めくるめく展開を見せる楽曲の構成といい、友人との別れの心境を桜を背景に描写した歌詞といい、非常に魅力的かつ独特。最近はスキャンダラスな話題でネガティブに捉えられてしまった川本真琴ですが、やはり彼女を称する時は「天才」という2文字を与えざるを得ないな、と強く感じる名曲。それだけに今の彼女をめぐる状況が残念で仕方ないのですが・・・。

評価:★★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「5月 東京」

続く5月のテーマは「東京」。Disc1は「母の日」があるということで「母の歌」がテーマ。タイトル通り、母親に対して歌われた曲が並んでいます・・・が、正直言ってつまんなかった・・・なんか単純に母親への感謝が歌われるばかりでいまひとつひねりがなく、単独で聴くならともかく、それだけ並んでいると聴いていて辛いものがありました。例えばDreams Come Trueの「晴れたらいいね」とかウルフルズの「かわいいひと」みたいな母親に対する曲でも単純な感謝ではなく、ちょっとひねりが入った曲があればもうちょっとおもしろかったと思うのですが。

また、海援隊の「母に捧げるバラード」って「名曲」とされているけど今から聴くと微妙だよね・・・息子を罵倒する歌詞も、まあ愛情の裏返しというのはわかるのですが、一歩間違えると「毒親」と捉えられかねませんし、

「人間働いて、働いて、働きぬいて、
もう遊びたいとか、休みたいとか思うたら
一度でも思ったら、はよ死ね。」

(「母に捧げるバラード」より 作詞 武田鉄矢)

という歌詞は文脈から判断しても完全にダメでしょ。多分、武田鉄矢あたりの世代にとってはこの考え方が常識だったのかもしれませんが、こういう考え方の管理職が多いから、いまだに「過労死」だの「サービス残業」だの「パワハラ」なんかが横行するんだよなぁ。(いや、この曲自体はその時代性を考えれば「名曲」なのは十分わかりますけどね)

Disc2は「東京ソング」ということで東京をテーマとした曲が並んでいるのですが、こちらはほとんどが70年代あたり以前の歌謡曲ばかり。確かにJ-POPの時代になって地名を織り込んだ曲が極端に減っているということはわかるのですが、ただ東京だけに関しては、以前、「東京こんぴ」なるコンピレーションが組まれるなどいまでも多くのミュージシャンが題材として取り上げています。この企画のおもしろさは60年代70年代あたりの歌謡曲と80年代以降のJ-POPを同じ俎上に載せているということだと思っているのですが、それならJ-POPでも「東京」をテーマとした曲が多いのだから、もっと最近の曲も取り上げてほしかったです。残念ながら5月についてはこれまでの中で一番おもしろみのない内容でした。

評価:★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「6月 結婚」

6月といえばジューンブライド。というわけで6月のテーマは結婚。Disc1ではウェディングソングが並んでいます。ユニークなのは昔の曲から最近の曲に、厳密な順番ではありませんが並んでいるという点。昔から現在までの「結婚観」を読み取れる構成なのがユニークです。加山雄三の「お嫁のおいで」などは女性が男性の家に「嫁入り」するという結婚観がある一方、吉田拓郎の「結婚しようよ」くらいからは結婚に対して男女平等という関係が構築されているのがユニーク。ただこの結婚観がその後さほど変化していないのが気になるところなのですが。

個人的にはさだまさしの「関白宣言」とか西野カナの「トリセツ」あたりが入ると面白かったな、とは思うのですが、ここらへんは大人の事情もあって難しかったんでしょうね。ちょっと残念です。

一方Disc2は6月らしく「雨の歌」。じめっとした「雨」にふさわしい、哀愁感ある楽曲が何でいます。ただこちらも歌謡曲がメインとなってしまい、最近の曲が少ないのが残念。雨を題材とした曲はいまでも少なくないと思うのですが。もっともそんな中、ラストにRCサクセション「雨あがりの夜空に」を持ってきた構成は良いですね。ちょっとじめっとした曲が並ぶ中、最後は爽快なこの曲を持ってきてカラッと終わらせるという流れは聴いていて気持ちいいものを感じました。

評価:★★★★

大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs 過去の作品
1月 新年
2月 告白
3月 卒業

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2017年7月23日 (日)

学生時代にまつわる日常ネタ

Title:手のひらを満月に
Musician:ブリーフ&トランクス

2012年の再結成以来、ほぼ1年に1枚というハイペースでアルバムをリリース。前作ではメジャー再デビューを果たすなど積極的な活動が続くブリーフ&トランクス。ただ短期間でのリリースが相次いだためか前作では正直なところ若干ネタ切れでは?という事態になり、それだけにそこからわずか1年ちょっとのインターバルでリリースされた本作も、どうなんだろうか、と思いつつアルバムを聴き始めました。

しかし、ここでまさかのブリトラ復活!日常生活の中の「あるある」ネタをユニークな視点から織り交ぜつつ、2人によるシンプルなアレンジとハーモニーによって繰り広げるスタイルは本作も健在。特に本作はここ数作の中でもっとも「ブリトラ」らしいネタがつまっていました。

例えば「奇跡のアレ」はサイモン&ガーファンクルばりの美しいギターアルペジオと2人のハーモニーをきかせながら歌っているネタはうんこネタというギャップはいかにもブリトラらしい感じ。「へーへーへー」「逆に」なんかは日常生活の中でつい口にしてしまうフレーズをユニークに切り取っているのも彼ららしい感じ。「チンポジ」なんかは男性あるあるネタ。ネタ的にはよくありがちなのですが、タイトル通りのテーマを歌詞に取り入れてポップに歌い上げているのは彼ららしいところでしょう。

「虫女」のような異常に虫に好かれる女性という若干ありえないテーマ設定ながらも笑えるようにまとめているのも彼ららしい感じ。そんな中でも特におもしろかったのが「大寝坊」。タイトル通り、大切なテストの日に大寝坊した朝の模様を描いたのですが、歌詞の内容と曲の疾走感がピッタリとマッチ。オチもなかなか秀逸で非常に笑えるネタに。また「ジェットコースター」もジェットコースターにのりながら愛の歌を歌いというある意味一発ネタが笑えます。

今回のアルバムは「学生時代にまつわる半径5メートル以内の日常」をテーマとしたコンセプトアルバムだそうですが、その通り、基本的に学生時代のネタがほとんど。アラフォー世代の彼らが学生あるあるネタを歌うテーマ設定は若干違和感を覚えるものの、この手のネタは彼らにとってまさに十八番。自分も学生時代に似たようなことがあったなぁ・・・なんてことをちょっと懐かしく感じつつ、同時にクスッと笑いながら一気に楽しめたアルバムでした。

前作でネタ切れか?と思われたのですが、彼らが温めているネタはまだまだありそう。まだまだこれからの活躍も期待できそうですね。次回作でも是非ともまた私たちをクスッと笑わせてほしいです。

評価:★★★★★

ブリーフ&トランクス 過去の作品
グッジョブベイベー
ブリトラ道中膝栗毛
ブリトラ依存症

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2017年7月22日 (土)

「月9ドラマ」でブレイクという印象とは反して

Title:PLAY
Musician:藤原さくら

昨年、ほぼ無名の状態ながらもフジテレビの月9ドラマ「ラヴソング」のヒロイン役として抜擢され、一気に注目を集めた女性シンガーソングライター。同ドラマこそ、さほどヒットはしなかったものの、主役の福山雅治が作詞作曲を手掛けた「Soup」が大ヒットを記録し、彼女自身も一躍ブレイクを果たしました。

それから約1年を経てようやくリリースされたニューアルバムが本作。ブレイクのタイミングからするとちょっと遅い印象は受けるのですが、チャート的にはオリコン最高位5位を記録しています。

彼女の楽曲については聴いたことあったのは「Soup」のみ。その曲も決して悪くはなかったのですが、平凡なJ-POPという印象を受けており、そんな高い期待を持って聴いてみたアルバムではありませんでした。なんといってもブレイクの経緯からして、「売れ線のJ-POPシンガー」という印象も強く受けていました。しかし、本作で収録されている楽曲は「月9ドラマでブレイクした女性シンガーソングライター」という一般的なイメージとは大きく乖離したものでした。

彼女の歌っている楽曲はJ-POPという枠組みからははずれている、むしろ洋楽テイストの強いオーガニックな楽曲がメイン。冒頭を飾る「My Way」など、全英語詞でオーガニックテイストの強い作品ですし、「play with me」ではフォーク、「赤」「SPECIAL DAY」ではブルース、「neckless」はロックンロールといった様々なジャンルからの影響を強く感じます。

ピアノやアコギ、あるいはエレピなどをメインとして非常にシンプルにまとめあげたアレンジも実に魅力的ですし、情報過多なアレンジを行う影響にあるJ-POPとは対極的。またスモーキーな雰囲気のあるボーカルも楽曲にマッチして味わいがあるのですが、今時の「売れ線」の傾向とは異なります。

彼女自身、影響を受けたミュージシャンとしてまずポール・マッカートニーをあげており、これはまあ誰もが知っているようなミュージシャンですが、次にあげているのがビル・ジョーンズやケイト・ラズビーといった日本で決して知名度が高いとはいえないフォーキーな女性シンガーたち。またワールドミュージックも好んで聴いているそうで、メインストリーム系のシンガーソングライターとは異なるものを感じます。

それだけにそんな彼女をなぜ月9ドラマに抜擢し、さらに福山雅治作詞作曲の楽曲を歌わせてヒットさせたのか、かなり疑問に感じます。その結果、確かにブレイクしましたがおそらく彼女を最も支持しそうな層は、「月9ドラマ挿入歌」「福山雅治の曲」といったキーワードからもっとも遠くいるような層のはず。事務所的には彼女の実力にほれ込んでブレイクさせようとしたのでしょうが、その時にこのような方法論しか取れなかったという部分に日本の音楽業界の底の浅さを感じてしまいました。

そんな訳で、予想外によかったこのアルバム。月9ドラマ挿入歌でヒットした彼女ですが、上にも書いた通り、むしろそんなキャリアに全く食指の動かないような方にお勧めしたいミュージシャン。タイプ的には彼女も影響を受けたというノラ・ジョーンズや、あるいはジョニ・ミッチェルあたりが好きなら気に入りそうなタイプかと。確かにあの曲のヒットがなかれば今の日本ではブレイクしにくそうな楽曲だとは思うのですが・・・このブレイクの方法が今後の彼女のキャリアにとってマイナスにならなければいいのですが。今後の彼女の活躍に期待したいところでしょう。

評価:★★★★★

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2017年7月21日 (金)

ストリーミングオンリーでのリリース

Title:Popcorn Ballads
Musician:サニーデイ・サービス

Popcornballads

昨年、傑作アルバム「DANCE TO YOU」をリリース。2008年の再結成以来、比較的マイペースな活動が目立っていた彼らでしたがその健在ぶりをあらためてアピールしました。そのアルバムリリースから約10ヶ月。突然リリースされたニューアルバムが大きな話題となっています。話題となった大きな要因はなによりもそのリリース形態。本作はApple Music及びSpotifyでのストリーミングオンリーでのリリース。ダウンロード及びCD形態での販売は一切なしというスタイルとなっています。日本でも配信オンリーでのアルバムを突然リリースするケースは少なくなくなってきましたがストリーミングサイトオンリーでのアルバムリリースはまだ珍しいケースだと思われます。

そんなストリーミング限定でのリリースでありアルバムの長さに制限がないことから22曲85分というフルボリュームの内容となった本作。ただこれだけ長いアルバムであるにも関わらず聴いていて全くだれることのない傑作に仕上がっていました。まず聴いた感触としては傑作アルバムだった前作「DANCE TO YOU」の流れをひいているように感じます。全体的にメロウさを感じつつもちょっとネチッとした熱量も同時に感じるようなシティポップが多く、前作から10ヶ月というインターバルやストリーミング限定というリリース形態から、「DANCE TO YOU」のアウトトラック的なアルバムなのか?と最初は感じました。

しかし聴き進めていくとアルバム全体、非常に様々なバリエーションのある楽曲が並んでいます。例えばMVも作成されアルバムの代表曲的な位置づけになっている「青い戦車」は前作からの流れを感じるファンクポップになっているのですが、「花火」はフィルスペクターばりの分厚いサウンドにキュートなメロが印象的なポップスになっていますし、続く1分に満たない小曲である「Tシャツ」はオールドスタイルのロックンロール。「虹の外」は80年代を感じさせるポップチューンになっていますし、タイトルチューン「ポップコーン・バラッド」は昔のサニーデイを彷彿とさせるようなフォーキーな楽曲に仕上がっています。

また数多い楽曲の中には少々実験的というか挑戦的というか、22曲という曲数だからこそ入れられたような楽曲も見受けられました。例えば「街角のファンク」はゆっくりとした強いビートを刻みつつ、途中にラップも登場。HIP HOPテイストも強いファンクナンバーとなっていますし、「クジラ」は挑戦的ともいえるエレクトロサウンドを取り入れています。「透明でも透明じゃなくても」もサニーデイらしいフォーキーなメロを楽しめる楽曲ながらも微妙にサイケな雰囲気なサウンドも印象的。また「恋人の歌」はアコギ1本で聴かせるデモ音源のようなつくりになっています。

曽我部恵一らしいメロというゆるい統一性はあるもののアルバム全体としてはバラバラといった感じで、コンセプチャルだった前作とは対照的ともいえるかもしれません。またストリーミングオンリーでのリリースということもあって、ひとつのコンセプトにまとまった「アルバム」というよりは出来上がった曲を並べた「プレイリスト」的な感覚の作品と言えるかもしれません。

しかしそんなアルバムにも関わらず実に魅力的な作品がズラリと並んでいた本作。再結成後は煮え切らないような作品が続いたサニーデイが前作「DANCE TO YOU」で驚くような傑作をリリースしてきたのですが、続く本作を聴く限り、むしろ今がサニーデイにとって全盛期ではないのかと思われるような脂ののった傑作となっています。他にも7分におよぶ楽曲ながらもグルーヴィーなサウンドに魅了される「クリスマス」や、軽快でバンドサウンドが心地よいギターロック「サマー・レイン」などこれだけでアルバムの中心曲として機能しそうな名曲も惜しみなく収録されています。これだけの作品を惜しみなくアルバムに収録してくるあたり、いかに今、曽我部恵一の創作意欲があふれてだしているかを実感させられます。

個人的にはむしろ前作以上に気に入った、今年を代表するような最高傑作だったと思います。Apple MusicかSpotifyに加入しないと聴けないアルバムなのですが、このアルバムを聴くためだけにでも同サービスに加入することをお勧めしたい傑作アルバムです。デビューから20年以上が経過したベテランである彼らですが、ここに至ってこれだけのアルバムをリリースしてくるとはかなりのビックリ。ストリーミングオンリーであるがゆえに宣伝もあまり行われていないようなのが残念なのですが・・・是非ともチェックしてほしいアルバムです。

評価:★★★★★

サニーディ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

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2017年7月20日 (木)

ベスト盤が上位に並ぶ中・・・

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

まず今週のアルバムチャートではベスト盤が上位に並びました。3位には先週1位だったスピッツ「CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-」が3万9千枚を売り上げて2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。そして2位初登場だったのが平井堅「Ken Hirai Singles Best Collection 歌バカ2」がランクイン。こちらは2005年にリリースしたベスト盤「歌バカ」の続編的なベスト盤。「歌バカ」以降にリリースした代表曲を収録したベスト盤となっています(「歌バカ」と重複する期間の曲も収録したベスト盤もあり)。ただ初動売上は4万枚と、92万7千枚(1位)を売り上げた前作「Ken Hirai 10th Anniversary Complete Single Collection '95-'05 歌バカ」の10分の1以下という、2005年からのCD売上の環境の変化を考慮してもかなり厳しい結果となっています。ちなみに直近のアルバム「THE STILL LIFE」の3万4千枚(4位)よりはアップしています。

そんな中、1位を獲得したのがGLAYのニューアルバム「SUMMERDELICS」でした。最近は「BEAT out! Anthology」「SPEED POP Anthology」と過去作のリメイクが続いており、約2年8ヶ月ぶりとなる新作となりました。初動売上は5万2千枚。直近作は「BEAT out! Anthology」で、こちらの6千枚(8位)よりはさすがに大幅増。オリジナルアルバムとしての前作「MUSIC LIFE」の5万7千枚(2位)よりは若干ダウンしています。

続いては4位以下の初登場盤です。まずは5位にsumika「Familia」が入ってきました。sumikaは最近、人気上昇中の男性4人組ロックバンド。本作は初となるフルアルバムなのですが、初となるベスト10入りを記録しています。初動売上は1万8千枚。直近のミニアルバム「SALLY e.p.」の7千枚(12位)を大きく上回りました。

6位には女性声優南條愛乃「サントロワ∴」がランクイン。初動売上1万6千枚は前作「Nのハコ」の2万5千枚(4位)からダウンしています。

9位初登場は韓国の男性アイドルグループBOYFRIENDのミニアルバム「Summer」。国内盤では2015年にリリースしたベスト盤「BOYFRIEND LOVE COMMUNICATION 2012~2014 -Perfect Best Collection-」以来、久々のアルバムとなります。初動売上は8千枚。その前作であるベスト盤の初動2千枚(27位)よりアップしています。

最後はゲスの極み乙女。のボーカルで、いろいろとお茶の間を騒がした川谷絵音の別働バンド(というよりは本当はこちらが「本家」なのですが)indigo la End「Crying End Roll」がランクインしています。ゲスに続き、こちらも本格的に活動再開。初動売上5千枚は前作「藍色ミュージック」の7千枚(10位)からダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年7月19日 (水)

またジャニーズ系が1位

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位はKinki Kids「The Red Light」が獲得。これで3週連続ジャニーズ系がらみのシングルが1位獲得となりました。リブート「Bijourde」CMソング。CD売上・ダウンロード・ストリーミング数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数で1位を獲得した他、ラジオオンエア数でも15位にランクインしています。前作「道は手ずから夢の花」は当時ヒットしていた「PPAP」「恋」に阻まれ3位に終わったのですが、今回は難なく1位獲得となりました。久保田利伸が楽曲提供した本作は彼らしいロッキンなギターサウンドで奏でるファンキーなリズムが印象的な作品。オリコンでも初動売上20万枚で1位獲得。前作の初動17万5千枚(1位)を上回りまいたなお、これでシングル1位連続獲得年数は21年となり、B'zとタイ記録だった20年を上回ったそうです。

2位はUVERworld「DECIDED」が先週の89位からシングルリリースにあわせて一気にランクアップしベスト3入り。映画「銀魂」主題歌。実売数2位、PCによるCD読取数3位だった一方、ラジオオンエア数は21位とこの手のロックバンドの割には若干低め。Twitterつぶやき数も95位、You Tube再生回数も46位に留まっています。オリコンでも初動4万枚で2位初登場。前作「一滴の影響」の4万7千枚(2位)からダウン。

3位には宇多田ヒカル「大空で抱きしめて」がランクイン。サントリー天然水TVCMソング。Epic Records Japan移籍第1号となる配信限定のシングルです。実売数で3位、ラジオオンエア数でも5位を記録。初登場でベスト3入りとなり相変わらずの強さを見せつけました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週、初登場曲は1曲のみでした。それが先週の75位からランクアップしてベスト10入りしてきた水谷果穂「青い涙」。彼女は最近人気上昇中の女優で、同作は映画「明日、アリゼの浜辺で」主題歌。デビューシングルとなります。90年代あたりに女優が歌手デビューする時に歌われていたような、爽やかでメロディアスだけど無難な感じのポップスに仕上がっています。実売数は14位ながらもラジオオンエア数で1位を獲得し、ベスト10入りとなりました。ちなみにオリコンでも初動9千枚で6位に初登場してきています。

今週の初登場組は以上。一方、ロングヒット組ではまずTWICE「TT」。今週は5位と先週の4位からワンランクダウンしているもののYou Tube再生回数では1位をキープしており、まだまだロングヒットが続きそう。また米津玄師「ピースサイン」が先週の9位から6位にランクアップ。これで4週目のベスト10入りですが、1位→4位→9位→5位と推移しており、今後の展開次第ではロングヒットになりそう。またSEKAI NO OWARI「RAIN」は先週の2位よりダウンしたものの今週も4位にランクイン。同作が主題歌となっている映画「メアリと魔女の花」もヒットを記録しているようで、まだまだロングヒットが続きそうな予感がします。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2017年7月18日 (火)

至近距離のパフォーマンスに大興奮!

水曜日のカンパネラ IN THE BOX TOUR

会場 DIAMOND HALL 日時 2017年7月7日(金) 19:15~

個人的に今、最もはまっているミュージシャンのひとり、水曜日のカンパネラのライブに行ってきました。彼女のライブに行くのは正真正銘これがはじめて。昔はライブで鹿の解体を披露したり奇抜なパフォーマンスを行っていた、という噂を聞いたことがあったのですが、どのようなステージを見せてくれるのか、非常に楽しみにしながら会場に足を運びました。

会場に入ってまず驚かされたのはステージ上に設置された大きなモニュメント。たらいでつくられた大きな木のようなモニュメントと向日葵の形の鏡のような大きなモニュメントが設置されており、ファンタジックな雰囲気のセットになっていました。

ライブは開始予定時間10分後にスタート。最初は水泡の音が鳴る中、エフェクトがかけられたコムアイの歌がまず流れ出してライブセットと同様、ファンタジックな雰囲気でのスタートとなりました。1曲目は「ゴッホ」からスタート。その後「マリーアントワネット」「チャップリン」と続きます。

基本的にステージはコムアイ一人だけ。演奏はカラオケでバンドメンバーは全くいませんでした。序盤は幻想的な雰囲気の中、コムアイがステージ上でちょっと奇妙なダンスを踊りながらのステージ。正直言ってしまえば演奏はカラオケですし、コムアイ一人で淡々と歌うだけのステージに音源は素晴らしいけどライブはいまひとつなんではないか、不安な気持ちになりました。

その後もライブは徐々に盛り上がりつつ、「メロス」ではファンをステージ上にあげて一緒に踊らせました。このパフォーマンスに会場は盛り上がったものの、ファンをステージ上にあげるというのは一般的に終盤のクライマックスで行うような盛り上がるためのお約束のようなパフォーマンス。それを前半にやってしまって大丈夫だろうか、正直、この段階でもそう感じていました。

ただ、前半に感じたライブの不安が解消してきたのがその後の中盤から。「メロス」終了後、ステージには一度幕がかかります。続いてはじまった「バク」では最初、幕の向こうでシルエットの状態でコムアイが踊っていたかと思うと、ステージ上の幕がいきなり持ち上がり、客席の上を後ろの方に滑っていきます。そして幕に覆われた客席の中心にいきなりコムアイが!ライブハウスという狭い会場ながらも客席の中にセンターステージをつくって至近距離でのパフォーマンスにいきなりビックリしてしまいました。

さらにその後、客席の中を様々な場所へ移動。一時は私のいた場所のほんの1m程度向こうという超至近距離でその歌声を聴くこともできて大興奮!さらには2階席にまで移動。ちょうどコムアイがあらわれたあたりには小さな子供連れの家族がいたみたいで、子供たちも大喜びのようでした。

その後もセンターステージなどで「ライト兄弟」を披露しつつ会場は大盛り上がりの中、再び前方のステージ上へ。続く「ツチノコ」ではピラミッド型のかぶりものが登場。ここに虹色の光をあててなぜかピンクフロイド「狂気」のジャケ写を再現したようなパフォーマンスが。さらに続く「ミツコ」では冒頭の歌詞を忘れてしまうというちょっとしたトラブルが。ただ会場のファンが大合唱でフォローしておりコムアイに「なんで私より知ってるの?」なんて言われていました。

ここからライブは終盤に。終盤は会場はディスコさながらにダンサナブルなナンバーの連続で一気に会場のテンションはあがっていきます。「シャクシャイン」では会場みんなで北海道の地名を連呼!みんな歌詞をスラスラと歌えてちょっとビックリしました。さらに「世阿弥」と続き本編ラストはおなじみの「桃太郎」へ。ここでコムアイは大きな風船のボールの中に入り客席にダイブ!客席の中でみんなにボールをまわされながら会場全体のテンションは最高潮へ。最後は無事ステージ上に戻り、ライブ本編は終了となりました。

その後はもちろん盛大なアンコールへ。比較的短いスパンで再びコムアイはステージへ。ここで簡単なMCでライブグッズの紹介をした後「一休さん」、そして「アマノウズメ」へ。「アマノウズメ」では再び客席の中を進み、黒いダンボール箱を取り上げたかと思うと、中からミラーボールが。ミラーボールで観客席を照らし、盛り上げていました。

最後は再びセンターステージへ進み「マルコ・ポーロ」で締めくくり。ラストはまた幻想的な雰囲気となり、最初とおなじく静かな水泡の音が鳴る中、ライブが終了。きちんと一番最初と最後がつながるきれいな構成となっていました。

約1時間半のステージ。MCは途中、軽いMCが数度あった程度で基本的には歌とダンスのみでつながるステージになっていました。選曲は最新アルバム「SUPERMAN」の曲だけではなく懐かしい曲からおなじみのナンバーまで万遍なく選曲されており、いわばベスト的な選曲。正直、昔の曲より最近の曲の方が盛り上がっていましたが、満足感のあるセットリストだったと思います。

上にも書いた通り、最初はあまり盛り上がれず、ちょっと不安に感じたライブでしたが、途中からコムアイが観客席の中に飛び込んで歌うパフォーマンスに大興奮。後半は最近の曲を中心にアゲアゲに盛り上がるダンスチューンが連続して一気に会場のテンションもあがっていき、気が付けばそのステージにすっかりはまっている自分がいました。

バンドメンバーなしのカラオケの状態でのライブでコムアイ一人だけのステージながらも、次から次へと登場するパフォーマンスに惹かれる非常に楽しいエンタテイメント性高いステージになっていました。彼女たちの楽曲にはすっかりはまりまくっている私ですが、ライブも予想以上に楽しい内容ですっかりはまってしまいました。本当に水曜日のカンパネラ、素晴らしいミュージシャンですね。また彼女たちのライブは是非とも足を運びたいです!

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2017年7月17日 (月)

「バンドメンバー」として参加してきました。

清 竜人TOWN全国ツアー

会場 SPADE BOX 日時 2017年7月6日(水) 20:00~

Town1

最近では清竜人25というアイドルグループを立ち上げたことでも話題となった男性シンガーソングライター清竜人。その「25」の活動を休止し、活動をスタートさせたのがTOWNというプロジェクト。これは清竜人とリスナーの関係性を演者と観客という関係ではなく同じバンドの一員として同じ目線でライブを楽しもうというコンセプトの下にはじまったプロジェクト。その後、音源が無料で公開され、ライブでは楽器の持ち込みを自由として、みんなでライブに参加するというライブが行われました。

個人的にこの企画には非常に興味を惹かれ、名古屋でもライブが行われたということで参加してきました。場所は新栄町のSPADE BOXというライブハウス。はじめて足を運んだライブハウスでしたが、ダイアモンドホールと同じビルの地下1階に位置する新しくきれいな箱でした。

ライブは20時10分過ぎにスタート。バンドセットはステージ上ではなくステージの下に置かれ、ライブスタートと共にいきなり清竜人が登場。清竜人は上半身裸。背中には入れ墨が・・・。ただ髪形はモヒカン、ではなく、デビュー当初の彼のように、真ん中訳のストレートヘアーの髪形になっていました。「TOWN」を短く演奏した後、「それでいい!それがいい!」では会場全体で盛り上がり、いきなり会場に一体感をもたらしました。

通常の客席スペースにバンドセットが置かれたため、観客の入りはおそらく満員の会場の7割程度といった感じでしょうか。楽器が持ち込み自由ということで、鈴やカスタネットを持ち込んで一緒に打ち鳴らしているファンも目立ちました。中にはドラゴンズの応援バットを持ち込んだ人がいたのも名古屋らしい感じ(笑)。それ以外もみんなこぶしを振り上げて一緒に歌を歌い、ライブに参加していました。

Town2

基本的にTOWNの曲はパンキッシュなナンバーがメイン。非常にシンプルなメロディーラインと歌詞で、なおかつみんなで合唱できるような曲ばかりが並んでいます。誰でも簡単に参加できるように、といった感じなんでしょうね。それだけに会場では大盛り上がりの状態が続きます。「やりたくないぜ!」「青春」と続き、さらに「I Don't Know! I Don't Care!」では清竜人本人が観客スペースの真ん中まで登場。みんなで輪になって大盛り上がりとなりました。

「縮んでどこにもありゃしない!」を挟み、清竜人はおもむろにステージ上へ。このライブハウスでは会場にピアノがあるということで、特別にピアノの演奏で「糞小便の歌」を披露。その後も「おい!ハゲ!ボケ!カス!」でもピアノの演奏を披露し盛り上がります。「大丈夫!大丈夫さ!」では再びステージ下へ降りて盛り上がり、「ケツの穴ちっちゃいね!」ラストは「ほどほどに生きましょう!」で締めくくりとなりました。

Town3

ライブは30分強程度。終わりはあっけなくいきなり清竜人が去って行ったといった感じで、最初は「あれ?終わったの?」と思ってしまったほどでした。正直かなりあっという間のライブだったのですが、まあ無料のステージだったから仕方ないかな・・・。

みんなで演奏というスタイルのライブだっただけにかなり音量は大きく、音が悪かったのはちょっと残念。また、みんなで歌うスタイルなら、プロジェクターで歌詞を映し出すとか、当日、歌詞カードを配るとかすればよかったようにも思うのですが、そこもちょっと残念でした(セットリストについては事前にTwitterでアップされていたみたいですが)。

ただ、ライブ全体としては会場全体が大盛り上がりの非常に楽しいステージでした。もともとTOWNの楽曲がすべて盛り上がるために作られた曲ということもあるのですが、みんなで曲を作り上げるというスタンスの元でのプロジェクトだけに参加したファンはみんなライブに参加する気持ちが強く、会場全体が一体となって盛り上がっていたのが印象的でした。

30分が本当にあっという間に感じられたステージ。このTOWNというプロジェクト、おもしろいプロジェクトだなと感じたのですが実際にライブに参加してみて、その思いがより強まりました。おそらく今年中にライブアルバムがリリースされると思うのですが、私もTOWNの一員として参加したそのアルバムの発売がとても楽しみです。

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2017年7月16日 (日)

すべてのシングルを網羅

Title:HIROKO TANIYAMA 45th シングルコレクション
Musician:谷山浩子

1972年のデビュー以来、根強い支持を集め長くにわたり活動を続けてきた女性シンガーソングライター谷山浩子。そのデビュー45周年を記念してシングルベストがリリースされました。3枚組となる本作はデビューシングル「銀河系はやっぱりまわってる」から2012年にリリースした現時点での最新シングル「同じ月を見ている」までのシングル曲すべてをカップリングを含めて収録したアルバムとなっています。

デビューから45年、コンスタントに活動を続けてきた彼女ですが、実は私、彼女の曲をこれだけまとめて聴くのは今回がはじめて。もちろんその名前は昔から知っていたのですが、彼女のシングル曲をデビュー作から最新作まではじめてまとめて聴いてみました。そこでまず感じたのは彼女の作風がその時期にあわせてかなり変化しているな、ということでした。

デビュー曲「銀河系はやっぱりまわってる」はプログレロック風な作品になっており、まずかなりビックリさせられます。ところがそのカップリング曲でもあった「天使のつぶやき」はフォーク風の作品。しかし「河のほとりに」からはグッと雰囲気が変わり、哀愁たっぷりのメロディーに悲しい別れや片想いの歌が多い歌謡曲的な楽曲が続きます。

と思えば80年代の「カントリーガール」あたりからはむしろニューミュージックの色合いが強い楽曲になりますし、その後は徐々に比較的シンプルなアレンジながらもファンタジックな色合いの強い楽曲へと変化していきます。いい意味で言えば、その時代時代の雰囲気にあわせて柔軟に変化していったと言えるのですが、一方ではサウンド面で「これが谷山浩子だ」と言えるような強い個性が若干希薄なようにも感じました。

もっとも一方ではそんな変化していく楽曲の中でも谷山浩子としての共通点を感じる部分があって、それがデビュー当初から最近の作品まで共通している、どこか非現実的、幻想的に感じるその世界観。それも時代時代により強弱があるのですが、この世界観は一貫しています。またこの幻想的な世界観は80年代後半あたりからサウンド面にも強く反映されるようになってきてより顕著になってきたように感じます。

おそらく谷山浩子の曲としてもっとも知名度が高い曲のひとつとしてNHK「みんなのうた」で人気を博した「まっくら森の歌」があるかと思います。この曲、シングルカットはされていないのですが、2012年のシングル「同じ月を見ている」のカップリングとして収録されたため本作にも収録されています。もともと1985年に放送された曲らしいのですが、不思議な世界観の歌詞と、それにマッチしたサウンドがとても魅力的な曲。アルバム全体を通じて聴くと、谷山浩子サウンドの一種の完成形のように感じました。

ただ一方、70年代の歌謡曲路線の楽曲にも強い魅力を感じます。特に歌詞の世界はかなり悲しい恋愛模様を描いたものが多いのですが、どこか非現実的な表現にちょっと怖さを感じるような歌詞が多く、強い印象に残ります。個人的にはどこか柴田淳に近いものを感じる部分も。メロディーはちょっとベタな歌謡曲といった感じの曲も多いのですが、聴き終わった後、不思議な感覚を覚えるような楽曲も多く収録されています。

谷山浩子といえば一部で熱狂的な支持を集める根強い人気を誇るミュージシャンなのですが、一方で他人への提供曲を除き大きなヒット曲はありません。確かに時代時代で作風が変化しているため、谷山浩子サウンドというものをあまり強く感じられない点や、特にメロディーの面でわかりやすいインパクトある曲が少ないという点から、大きなヒット曲がないという理由はわかるようにも思います。ただ歌詞の面では確実にその世界観を確立しており、魅力的な楽曲が多く収録されているベスト盤でした。特にその歌詞の世界観ゆえに聴いた後にちょっと不思議な感触を覚える楽曲が多く、それが彼女の大きな魅力のように感じます。3枚組でボリューム感あるベスト盤でしたが、はじめて彼女に触れる方にも最適なベスト盤でした。

評価:★★★★★

谷山浩子 過去の作品
ひろコーダー☆栗コーダー(谷山浩子と栗コーダーカルテット)

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2017年7月15日 (土)

文字通り「初のオールタイムベスト」

Title:YUZU 20th Anniversary ALL TIME BEST ALBUM 「ゆずイロハ 1997-2017」
Musician:ゆず

タイトル通り、デビューから20年を迎えたゆずの初となるオールタイムベスト。最近、「初のオールタイムベスト」を名乗るベスト盤が多くリリースされています。ただ、その自称「初のオールタイムベスト」の中には、つい数年前に同じく通常のベスト盤を出しているミュージシャンも少なくなく、「この前リリースしたベスト盤とどこが違うの?」と思ってしまうケースも少なくありません。

ゆずに関しても最初は「あれ?この前ベスト盤出したばっかりじゃ・・・?」と思ったのですが、彼らの場合、いままで3枚のベスト盤をリリースしてきましたが、いずれも1997年~2000年、2001年~2005年、2006年~2011年とベスト盤同士の収録曲が重ならないように期間を区切っており、そういう意味では文字通り、キャリア通じてのオールタイムベストはこれが初のリリースとなります。

ゆずといえばご存じの通り、横浜桜木町でのストリートライブで人気を集めたことがデビューのきっかけ。ゆずのブレイク後、一時期街角という街角にストリートミュージシャンがあふれ、一種のブームとなりました。

彼らのデビューシングルでありこのベスト盤の1曲目に入っている「夏色」はまさにそんなストリート時代の空気をそのままパッケージした楽曲。基本的にアコースティックギターがメインの構成のシンプルなポップソングでストリートの現場がそのまま伝わってくる勢いと瑞々しさを感じます。

ただ今回のオールタイムベストを聴いてあらためて感じたのは彼らがデビューから20年たった今でもストリートのあの頃の雰囲気をそのまま持っている、ということでした。もちろんアコースティックギターのみで曲を奏でていた20年前から彼らも様々な曲に挑戦しています。ストリングスやピアノなどを入れてスケール感のある曲も数多く披露しています。しかし、基本的な路線はデビュー当初から今に至るまで変わらないように感じました。具体的に言えば彼らの曲はおそらく今、彼らが2人だけでストリートに出てアコギ1本で演奏してもしっかりと映えるような曲ばかり。それはどの曲もシンプルなメロディーラインと歌詞で成り立っているから、という言い方もできるかもしれませんが、ストリート時代の曲の作り方は今に至るまでそのスタンスはほとんど変わっていないように感じます。

今回のアルバムに関しても1曲目にデビューシングル「夏色」が来たかと思えば2曲目にいきなり「栄光の架橋」と続きます。ご存じアテネ五輪のNHK中継テーマソングとして大ヒットしたこの曲はストリングスを大胆に入れ、少々仰々しいアレンジが印象的な楽曲。アレンジという観点で言えばストリートに直結している「夏色」とは対照的な曲なのですが、この2曲を並べて聴いても意外なほどに違和感がありません。それだけ彼らの曲は根本の部分に大きな変化がないことの証拠ともいえるでしょうし、彼らもひょっとしたらそれを示すためにあえてこの2曲を並べたのかもしれません。

ちなみに今回のベスト盤でユニークなのは3枚のCDの最後に、それぞれいきものがかり、back number、SEKAI NO OWARIとのコラボでゆずの曲をカバーしています。これが3バンドとも彼らの色とゆずの色がしっかりと混じっていてなかなかユニークなコラボになっています。いきものがかりとの「イロトリドリ」はさすが両者ともストリート出身なだけに息もピッタリ。back numberとの「サヨナラバス」はバンドサウンドが入って分厚いサウンドとなり原曲とはちょっと雰囲気が異なる曲に。そしてセカオワとの「悲しみの傘」はセカオワらしいキラキラした音作りがゆずの世界観とはちょっと異なるものの、これはこれでなかなかおもしろい組み合わせになっていました。

全3枚組というボリューム感あるベスト盤でしたが、どの曲もポップなメロディーと心に響く歌詞ばかりであっという間に聴けてしまったアルバムに。懐かしい曲からここ最近の曲まで並んでいるのですが、要所要所にきちんと耳に残るヒット曲を20年間断続的にリリースしているのはさすがといった感じでしょうか。まだまだ彼らの活躍は次の20年間もその先も続いていきそうです。

評価:★★★★★

ゆず 過去の作品
WONDERFUL WORLD
FURUSATO
2-NI-
YUZU YOU[2006-2011]
LAND
新世界
二人参客 2015.8.15~緑の日~
二人参客 2015.8.16~黄色の日~

TOWA

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2017年7月14日 (金)

まさかの17年ぶりの新作

Title:in・ter a・li・a
Musician:At The Drive-In

2000年にリリースしたアルバム「Relationship Of Command」が日本でも大きな話題となったロックバンド、At The Drive-In。その後の大きな飛躍が期待された矢先にバンドは解散を発表。メンバーのうちボーカルのセドリック・ビクスラーとギターのオマー・ロドリゲスはThe Mars Voltaを、ギターのジム・ワードとベースのポール・ヒノジョス、ドラムスのトニー・ハジャーはSPARTAをそれぞれ結成し、活動を続けていました。

しかし、2011年にバンドはなんと再結成。その後、残念ながらジム・ワードは脱退してしまったもののついに待望となるニューアルバムがリリース。実に17年ぶりとなるファンにとっては待ちに待ったアルバムが完成しました。

その久々となるニューアルバムなのですが、率直に言って非常にカッコいいアルバムだな、と感じます。久々の新作の冒頭を飾る「NO WOLF LIKE THE PRESENT」からズシリと重いサウンドながらも疾走感あるギターが心地よいダイナミックなナンバー。まずロックを聴く快感さ、ダイナミズムを体現できるような楽曲になっています。

基本的にジムが脱退してしまったことからイメージ的にはThe Mars Voltaにつながるバンドという感じが強いのですが、楽曲的にはThe Mars Voltaよりも疾走感あってパンキッシュな楽曲が多く、The Mars Volta以上にロックリスナーへの訴求できそうなアルバムになっているように感じました。

その後も「GOVERNED BY CONTAGIONS」「PENDULUM IN A PEASANT DRESS」など疾走感あるヘヴィーな楽曲が続き、いい意味で耳なじみやすく聴きやすさを感じる楽曲が並びます。構成としてはThe Mars Voltaほどの複雑さはないのですが、それでもプログレからの影響も感じる凝った構成も随所で見ることができ、The Mars Voltaと同様、何度か聴くうちに出てくる味わいも持ったアルバムとなっています。

解散前の傑作アルバムだった「Relationship Of Command」に比べると若干見劣りしてしまう部分は否めませんし、ダイナミックさ、エモさに関しては前作の方が身体にズシリと響いてくるような魅力はあったのですが、これはこれで傑作アルバム。少なくとも17年待ったファンにとっては十分楽しめるアルバムだったと思います。今後はコンスタントに活動を続けていくのでしょうか。これからの彼らの活動も楽しみです。

評価:★★★★★

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2017年7月13日 (木)

スピッツ強し!

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週はスピッツのシングルコレクションが1位を獲得しました。

「CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-」が初動売上13万1千枚で見事1位獲得となりました。2006年にリリースされた「CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection」「CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection」のリマスター盤に、あらたにこの2枚のシングルコレクションの後にリリースされたシングルをまとめた「CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection」をまとめて3枚組のボックス盤としてリリースされたもの。3枚中2枚は過去にリリースされたアルバムのリマスターかつ定価4,000円強という決して安くない設定ながらも1位獲得となりました。なお、今回あらたに加わった「CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection」は単品での発売。こちらも初動1万枚で8位にランクインしています。

なお直近のアルバム「醒めない」は初動8万3千枚(2位)でしたので、ボックス盤はこちらよりアップ。以前リリースされた「CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection」「CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection」は前者が初動17万9千枚(2位)、後者が初動16万3千枚(3位)なのでさすがにこちらよりはダウンしていますが、2006年からのCDをめぐる販売状況の違いや、ボックス盤の3枚のうち2枚はリマスター再発でかつ残り1枚も別途単品で販売されていることを考えれば大健闘な結果と言えるでしょう。また、このシングル集と同時リリースで過去の全アルバムのアナログ盤がリリースされましたが、こちらも全作品がベスト100入りしてくるという快挙を達成。スピッツ強し!を強く印象づけられた今週のチャートでした。

2位初登場はEXILEの弟分グループ、GENERATIONS from EXILE TRIBE「涙を流せないピエロは太陽も月もない空を見上げた」がランクインしてきました。初動売上9万4千枚は前作「SPEEDSTAR」の7万1千枚(1位)からアップしています。

3位には先週2位の韓国の女性アイドルグループTWICE「#TWICE」がワンランクダウンでベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にニコニコ動画で人気を集める男性ボーカルグループ浦島坂田船「Four the C」が入ってきました。初動売上は2万9千枚。前作「CRUISE TICKET」の1万4千枚(5位)からアップしています。

5位にはthe HIATUSでの活動でも知られる細美武士率いるロックバンドMONOEYESの2枚目となるアルバム「Dim The Lights」がランクインしてきました。初動売上は2万8千枚。前作「A Mirage In The Sun」の3万4千枚(3位)よりダウン。

7位初登場は三浦祐太朗「I'm Home」が入ってきました。ご存じかの三浦友和と山口百恵夫妻の長男。以前はPeaky SALTというロックバンドでも活動していました。本作は母親である山口百恵の曲をカバーしたアルバム。以前の彼のアルバムはいずれもベスト100にも入れないレベルだったのですが、本作は母親の曲のカバーということで話題になったこともあり初動1万1千枚でベスト10ヒットとなりました。ただ・・・100%親の七光り型のヒットであまりにも情けないなぁ。この手のカバーはやっちゃいけない禁断の実だと思うのですが。ミュージシャンとしてのプライドはないのでしょうか。

最後10位にはLOVE PSYCHEDELICO「LOVE YOUR LOVE」がランクイン。途中、ベスト盤やライブ盤のリリースはあったのですがオリジナルアルバムとしては4年ぶりとなる新作。初動売上7千枚は前作「IN THIS BEAUTIFUL WORLD」の1万1千枚(5位)からダウン。少々厳しい結果となっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年7月12日 (水)

今週もジャニーズ系

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も先週に続きジャニーズ系が1位獲得。Hey!Say!JUMP「Precious Girl」が1位となりました。コーセーコスメポート「フォーチュン」CMソング。化粧品のCMソングらしい爽やかなサマーポップ。CD売上・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数で1位を獲得した一方、ラジオオンエア数では24位、Twitterつぶやき数では15位に留まっています。オリコンでは初動25万5千枚で1位獲得。前作「OVER THE TOP」の27万1千枚(1位)よりダウンしています。

2位にはSEKAI NO OWARI「RAIN」が先週の5位からランクアップ。シングルリリースにあわせてベスト10入り3週目にしてこの位置まであがってきました。実売数2位の他、ラジオオンエア数及びPCによるCD読取数で3位、Twitterつぶやき数10位といずれも高順位を記録しています。オリコンでも今週、初動売上5万8千枚で2位を記録。前作「Hey Ho」の5万9千枚(3位)より微減となっています。

3位はBUMP OF CHIKEN「記念撮影」が初登場でランクイン。日清カップヌードルCMソング。配信オンリーのシングルとなります。実売数3位、ラジオオンエア数6位と上位にはいってきた一方、Twitterつぶやき数は21位、You Tube再生回数は31位と若干足を引っ張る結果になっています。ただ配信オンリーでここまで上位に食い込むあたり、バンプの人気の高さを感じます。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位にAAA「No Way Back」がランクインしています。実売数4位、PCによるCD読取数5位を記録した一方、ラジオオンエア数は19位、Twitterつぶやき数17位、You Tube再生回数は18位に留まっています。楽曲はエレクトロファンクポップでいかにもいまどきの売れ線の中心線を走っているような感じ。オリコンでは初動3万4千枚で3位初登場。前作「MAGIC」の4万3千枚(3位)からダウンしています。

7位にはジャズやソウル、ファンクなどの要素を取り入れたブラックミュージックテイストの強いロックを奏でることで今、もっとも話題となっているバンド、Suchmos「WIPER」がランクインしています。実売数6位、PCによるCD読取数14位である一方、ラジオオンエア数では見事1位を獲得。まあ、このタイプの音楽はラジオ受けしそうではありますが。ちなみにオリコンでは同作が収録された「FIRST CHOICE LAST STANCE」が初動売上2万7千枚で初登場4位を獲得。ちなみにCDシングルが本作が初となります。

8位はGENERATIONS from EXILE TRIBE「空」が先週の24位からランクアップして初のベスト10入り。映画「兄に愛されすぎて困ってます」主題歌。アルバム「涙を流せないピエロは太陽も月もない空を見上げた」収録曲で同じくEXILEの弟分ユニットDEEPが2010年にリリースした「SORA~この声が届くまで~」のカバーとなります。実売数5位、You Tube再生回数8位を記録。一方、ラジオオンエア数は65位、Twitterつぶやき数は45位に留まっています。

最後10位には女性アイドルグループフェアリーズ「恋のロードショー」がランクイン。実売数は7位ですが、PCによるCD読取数は76位。8種同時リリースなので、複数枚買いの影響も大きそう。ちなみにオリコンでは初動2万3千枚で6位初登場。前作「Synchronized ~シンクロ~」の2万枚(4位)から若干アップしています。

ちなみに今週は初登場が多かった影響でロングヒット組は不調。先週までベスト10をキープしていた平井堅「ノンフィクション」は15位にランクダウンしてしまいました。一方、ロングヒットの兆しを見せるのがTWICE「TT」。先週の3位からランクダウンしたもののいまだに4位をキープ。特にYou Tube再生回数では3週連続1位をキープしており、その強さを感じます。ベスト10入りはこれが3週目ですが、最初のランクインから今週で37週目を記録しており、今後のロングヒットが予想できます。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2017年7月11日 (火)

ドリーミーでポップな楽曲が心地よい

Title:Volcano
Musician:TEMPLES

前作「SUN STRUCTURES」がノエル・ギャラガーやジョニー・マーに大絶賛されたということで話題となったイギリスの4人組ロックバンド。その彼らの約3年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

話題となった前作「SUN STRUCTURES」はリバーブがかかったノイジーなギターにキュートなメロディーが印象的な作品に仕上がっていました。今回の作品に関しても基本的にその延長線上といった感じでしょうか。リバーブがかかりまくったノイジーなギターに非常にキュートでポップなメロディーラインが耳を惹くアルバムになっています。

「(I Want To Be Your)Mirror」は哀愁感あるメロディーラインが日本人の琴線にも触れそうなインパクトがありますし、「Celebration」はミディアムテンポながらもスケール感のある、タイトル通りの祝祭色が豊なナンバー。ラストを飾る「Strange Or Be Forgotten」も明るさを感じるインパクトあるポップチューンに仕上がっています。

また前作で大きな魅力だったドリーミーな雰囲気も健在。シンセとギターの音で非常に分厚い音を楽しめる「Born Into the Sunset」などがその典型例でしょうか。ドリーミーなサウンドの中で鳴り響くギターリフはどこかマイブラっぽさを感じられたりして、シューゲイザー好きにはかなりはまりそうな楽曲になっています。

基本的には前作の路線を引き継いだ本作ですが、ただ前作に比べるとシンセのサウンドが増えてエレクトロ色が強くなったような印象を受けます。例えば「Open Air」などはシンセの音が前に出てエレクトロポップという色合いが強い楽曲になっていますし、他の曲に関してもシンセの音が目立つ印象を受けました。

とはいえ全体的には前作の印象を大きく変えるものではなく、前作を気に入った方にとっては間違いなく楽しめる傑作アルバムだったと思います。前作の踏襲という点で目新しさが減った反面、前作で気になったメロよりもサウンドを押し出したような楽曲が減り、後半まで基本的にポップなメロ主導の楽曲が並んでいました。前作はバンドとしての足腰の弱さを感じました。本作で決定的に強くなったという印象を受けたわけではありませんが、バンドの弱点をあまり表に出さない曲づくりは上手くなったように感じます。

話題になり全英チャート7位といきなりベスト10入りした前作に比べて本作は最高位23位にとどまったようで、売上面での失速ぶりは気になるところなのですが・・・ただ内容的には前作に負けず劣らずの傑作だったと思います。今年のフジロックへの出演も決定したみたいですし、日本での盛り上がりに期待したいところです。

評価:★★★★★

TEMPLES 過去の作品
SUN STRUCTURES

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2017年7月10日 (月)

ただただ単純にカッコいい!

Title:NOMAD
Musician:The Birthday

約1年7ヶ月ぶりとなるThe Birthdayのニューアルバム。ギタリストをフジイケンジに交代し早くも5枚目となるニューアルバム。フジイケンジをギタリストとして迎えてからあきらかにギアがチェンジしたThe Birthdayですが、最新アルバムではその路線をさらに突き進め、The Birthdayとしての路線が完成しつつあることを感じさせます。

まずアルバム全体として圧倒的に目立つのがそのギターの音。1曲目「24時」からまず怪しげな雰囲気の先頭を行っているのがギターの音ですが、「GHOST MONKEY」「DEVOLA」などギターサウンドがまず先頭に立って目立たせるような構成の楽曲が続きます。特に「夜明け前」はギターとボーカルがコール&レスポンスのような形をとっておりまさにギターとボーカルがともに主役を担っているような楽曲になっていますし、ラストの「月の上のイライザ」も全編ノイジーなギターが目立つ内容になっています。

もちろんギターを支えるバンドサウンドもしっかりそれぞれのメンバーがその音を主張しており、バンドとしての一体感も感じます。ギターがこれだけ目立てるのは逆に言えばそれだけバンドとしての安定感が増しているからでしょう。バンドとしての実力ももちろんこのアルバムから十分に感じることが出来ます。

また疾走感あるアップテンポなリズムにポップでメロディアスな楽曲が多いのも特徴的。このポップな楽曲が目立つのも魅力的。メロがグッとポップになったというのもここ最近の傾向なのですが、「ROCK'N'ROLL GIRL」やラストの「月の上のイライザ」などインパクトあるいい意味でわかりやすいメロディーラインの曲が目立ち、これがアルバムの中で強いインパクトとなっていました。

ここ最近のThe Birthdayに関して言えるのは総じてわかりやすいという点。ギターを前面に押し出したような構成も良くも悪くもいかにもですし、ポップなメロディーラインを書いてきているという点も「わかりやすさ」の大きな要因と言えるでしょう。ただわかりやすいがゆえに彼らの楽曲を変な雑音なしに素直に楽しむことが出来ます。聴いていておもわず身体が動き出し楽曲にあわせてリズムをとっていたという感覚、このアルバムの中で何度も味わいました。それはもちろんアルバムとして非常に出来のよいガレージロックが流れているということもあるのですが、難しいこと抜きに素直に楽しめるというアルバムの「わかりやすさ」が大きな要因であるような印象も受けました。

なんかThe Birthdayといえば「THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケとクハラカズユキらが結成したバンド」という紹介のされ方をよくするようなバンドなのですが、ここ最近、ようやくそんな枕詞なしにThe Birthdayを聴いてもらえるようになってきたような感じもします。ロックバンドとしてさらなる進化を続ける彼ら。まだまだこれからの活動も楽しみです。

評価:★★★★★

The Birthday 過去の作品
TEAR DROP
MOTEL RADIO SiXTY SiX
NIGHT ON FOOL
WATCH YOUR BLINDSIDE
I'M JUST A DOG
VISION
GOLD TRASH
BLOOD AND LOVE CIRCUS


ほかに聴いたアルバム

LET'S SWEET GROOVE/楠瀬誠志郎

90年代に自ら歌った「ほっとけないよ」や郷ひろみに提供した「僕がどんなに君を好きか、君は知らない」のヒットで一躍話題となったシンガーソングライター。2000年代に入って活動を休止していたそうなのですが、久しぶりに活動を再開。実に14年ぶりとなるアルバムがリリースされました。

全6曲入りのミニアルバムとなった本作。序盤の「Daisy」「ルージュが溶ける夜」はシティポップテイストの心地よいナンバーとなっています。全体的にメロディーラインにセンスの良さは感じ、往年の活躍のほどを思い出させるナンバーに。ただインパクトと、後半の楽曲に関してはいまひとつ個性が薄く、良質のポップアルバムなのですがいまひとつ印象が薄くなってしまった感じもしました。ただいいアルバムだとは思うので、これからの本格的な活動再開に期待したいところです。

評価:★★★★

Extended/YOUR SONG IS GOOD

ちょっと久々、3年半ぶりとなるYOUR SONG IS GOODのニューアルバム。もちろん本作も全編インスト。基本的にポップでメロディアスなメロディーラインを主軸に、スカやダブの要素を取り入れたサウンドが非常に心地よい作品に。サウンドはシンプルにまとめながらもシンセやギターの音色で奏でられるトリップ感が実に心地よいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

YOUR SONG IS GOOD 過去の作品
THE ACTION
B.A.N.D.
OUT

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2017年7月 9日 (日)

ポップなアルバムかと思いきや・・・

Title:Different Days
Musician:The Charlatans

The Charlatansといえば1990年のデビューから既に27年というキャリアを誇るベテランバンド。かのブリットポップのミュージシャンの一組としても紹介されています。ただブリットポップのミュージシャンたちのほとんどが解散したり、事実上、活動休止状態になっている中、彼らは途中、オリジナルメンバーの急逝といった悲劇を乗り越えつつ、コンスタントな活動を続けています。

そんなベテランバンドの彼らですが、その活動状況としてはむしろここに来て、再び脂がのってきているのでは、とすら感じてしまいます。前作「Modern Nature」は中毒性高いグルーヴ感が味わえる傑作アルバムとなっていましたし、その後約2年のインターバルを経てリリースされた本作も、前作同様の傑作アルバムに仕上がっていました。

アルバム全体としては決して派手なアルバムといった感じではありません。アルバム冒頭を飾る「Hey Sunrise」はアコースティックなサウンドでしんみりとメロを聴かせるようなナンバーですし、タイトルナンバーとなった「Different Days」も哀愁感あるメロディーラインを聴かせるようなナンバーとなっています。

その後も「There Will Be Chances」のようなテンポのよいリズムが入りつつ爽やかなポップを聴かせるナンバーが入って来たり、「The Same House」のようにピアノとシンセで軽快なポップスを聴かせてきたりと、メロディーラインを聴かせる曲が並び、全体的にはポップなアルバムという印象を受けます。

しかし強く印象に残るのはこのポップなメロディーラインではありません。むしろアルバムを聴いている最中から妙なひっかかりを覚えるかもしれません。それは前作同様に感じる絶妙なグルーヴ感。前作に比べてよりポップなメロの中にグルーヴ感を溶け込ませており、知らず知らずのうちにその独特のグルーヴ感にはまっていくようなアルバムになっています。

特にこのグルーヴ感はアルバム後半から強烈な印象をリスナーに与えます。「Not Forgotten」は軽いシンセのリズムの向こうでベースラインによってしっかりと奏でられるどす黒いリズムが耳に、というよりも身体に残りますし、上にも書いた「There Will Be Chances」もポップなメロディーを奏でつつ、テンポよいベースとドラムスに絶妙なリズム感を覚えます。さらに「Let's Go Together」もシンセのサウンドにへヴィーなベースラインやドラムスのリズムが絡み、メロディーラインはポップながらもどこかサイケちっくなサウンドの世界が構築されており、心地よいサウンドとリズム感が楽しめる作品に仕上がっています。

ポップなメロディーラインの後ろに流れているこの独特なグルーヴ感が実にたまらない、前作同様中毒性高い傑作アルバムに仕上がった本作。デビュー30年近いバンドがまさかの2作連続、キャリア最高傑作ともいえるようなアルバムをリリースしてきました。その傑作アルバムに呼応するかのようにアルバムの売上も、前作が全英7位、本作ではさらに前作を上回り全英4位を記録。売上の側面でもその勢いを取り戻しつつあります。前作に引き続き、年間ベスト候補の大傑作アルバム。ロックが好きなら是非ともチェックしてほしい1枚です。

評価:★★★★★

The Charlatans 過去の作品
You Cross My Path
Modern Nature


ほかに聴いたアルバム

One More Light/Linkin Park

Linkin Parkの最新作はロック色が薄くなりポップの色合いが強くなったのが大きな特徴。ミディアムテンポのナンバーがほとんどとなり、スケール感あるサウンドでメロディアスに聴かせる曲が並んでいます。これはこれで彼らなりの挑戦なんでしょうが・・・正直、あまり成功しているとは思いません。これといったインパクトも薄く、個性もあまり感じません。決して長いアルバムではないのですが、聴いていて最後の方はだれてきてしまいました。ちょっと残念に感じるアルバムでした。

評価:★★★

LINKIN PARK 過去の作品
A THOUSAND SUNS
LIVING THINGS
The Hunting Party

HITnRUN Phase Two/PRINCE

昨年4月、わずか57歳という若さでの急逝に多くの音楽ファンがショックを受けたプリンス。なによりショッキングだったのは彼がバリバリ現役のミュージシャンであり、アルバムもコンスタントにリリース。それもどのアルバムも一定以上の水準を保っていた傑作をリリースしていたという事実。本作はその彼の生前最後にリリースしたオリジナルアルバム。タイトル通り、2015年にリリースした「HITnRUN Phase One」の続編的なアルバムで、実際に女性ボーカルやエレクトロサウンドを取り入れた軽快なファンクという形態は前作と同様。「HITnRUN Phase One」と同様、ある種の若々しさすら感じられる軽快なポップソングが楽しめる作品で、これが最期というのは信じられません・・・。本当にあまりにも早すぎる最期が惜しまれる傑作です。

評価:★★★★★

PRINCE 過去の作品
PLANET EARTH

ART OFFICIAL AGE
PLECTRUMELECTRUM

HITnRUN Phase One

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2017年7月 8日 (土)

心待ちにしていたライブ

マキシマム ザ ホルモン 耳噛じる真打TOUR

会場 Zepp Nagoya 日時 2017年6月21日(水)18:30~

Hormone

ライブをここまで心待ちにしたのは久しぶりかもしれません。今、もっともライブチケットが取りにくいと言われているバンド、マキシマム ザ ホルモン。チケット抽選に応募した段階でほとんど期待はしていなかったのですが、なんと奇跡的にチケットが当選!ここ最近、ホルモンにはすっかりはまっていただけにこの日のライブも非常に楽しみにしていました。ただもっともホルモンのライブ自体は2006年に一度、イベントライブで見たことがあるだけにこれが2回目となりました。

メンバーであるナヲの妊娠出産によるライブ活動休止を経て、久しぶりとなったライブツアーなだけに久々のステージを今か今かと待ちわびる腹ペコ(=ホルモンのファン)で会場は超満員。会場は熱気にあふれていました。

まず18時40分くらいからスタートしたのがこの日の対バンバンド、10-FEET。ホルモンと同世代の彼らは付き合いも長いということで1曲目はいきなり彼らのデビューシングルに収録されていた「BE FRIENDS AGAIN」というファンにとっては非常に懐かしいナンバーからのスタートとなりました。

その後も「1sec」「その向こうへ」「RIVER」などといった代表曲や最新作である「ヒトリセカイ」などベスト的な選曲でのライブ。最後は「superstomper」「goes on」というおなじみのナンバーで締めくくり。全8曲40分程度のステージでした。メロコア路線のベテランらしい安定感あるステージ。その後のホルモンのライブに備えてか、大暴れといった感じではなかったのですが、会場は大いに盛り上がり、ホルモンのステージまでの会場を温めてくれたステージでした。

そして20分近いセットチェンジが終了。会場が再び暗くなるとステージ上には封印のお札が貼られた炊飯器の絵が浮かび上がります。千葉繁(だと思う)の豪華なオープニングのアナウンスに続いてステージ上に煙がたちこめついにホルモンのメンバーが登場。会場はもちろん一気にヒートアップしました。

ライブはいきなり「握れっっっっっっっっ!!」からスタート。まさに「maximum the hormone」といきなりキラーチューンの連発からスタートします。その後短いMCを挟んで「ぶっ生き返す!!」「爪爪爪」「ハイヤニ・スペイン」とツアータイトルとなっている「耳噛じる真打」や直近の「予讐復讐」に留まらず、ライブの定番曲が続々と続いていきます。

続いてもMCへ。基本的にこの日は2、3曲演奏した後MCを挟むという構成に。さすがにメンバー全員アラフォー世代なだけにあれだけ激しい曲を何曲も続けるのは厳しいということでしょうか?ちなみに名古屋でのライブということもあり、ダイスケはんが「燃えよドラゴンズ」をワンフレーズ歌うなんていうサービス(?)も。言うまでもないことですが基本的にMCはダイスケはんとナヲの2人の漫才のようなMCになっていました。亮君は結局この日、一言もMCで発しなかったな・・・(^^;;

さらに「耳噛じる真打」から「アバラ・ボブ」で盛り上がったかと思うと、続くMCではダイスケはん曰く「(ライブ活動を休止していた間の)2年間のバンド活動の集大成」ということでいきなりバズーカが登場。「2階まで届くで」と煽っておきながらもいざ発射すると、1階の最前部までしか届かないというお約束の展開。おなじみダイスケはんの地元、香川の銘菓「かまど」がバズーカから発射されるというオチでした。

その後も「平成ストロベリーバイブ」「恋のスウィート糞メリケン」などちょっと懐かしいナンバーを挟みつつ「耳噛じる」より「薄気味ビリー」。さらにはMCを挟んで「中2 ザ ビーム」で大盛り上がり。途中のMCではナヲよりライブの応募倍率は名古屋が一番高かったという情報も。これが事実か会場を盛り上げるためにどこでも似たようなことを言っているのかは不明なのですが、名古屋といえば他の都市に比べてライブチケットがなかなか売れないことで有名なのですが、その名古屋でこれだけ人気を集めるとは・・・ホルモン、おそるべしです。

さらに終盤は「人間エンピ」などを挟み、その後はホルモンライブ恒例の恋のおまじない。「めんかた~」で手を上であわせて「こってり~」でこの超満員の会場でみんなしゃがみ、最後は「やった~」で上にジャンプというライブお決まりのノリ。ワンマン初参戦の私にとっても恋のおまじない初参加でした。そしてそのまま「恋のスペルマ」に突入。会場の前方にはサークルも出現し会場のテンションは最高潮で本編が終了しました。

その後のアンコールは比較的あっさり短めでメンバー再登場。この日、ライブ終了後、ホルモンTシャツ着用者限定での競技イベントが行われたのですが、その競技が騎馬戦。アンコール後のMCでは10-FEETのメンバーが再登場し、10-FEETのメンバーと上ちゃんによって騎馬戦の騎馬をつくっていました。

アンコールでは「もっとポリスマンファック」へ。この曲、なぜかラストはLINDBERGの「BELIEVE IN LOVE」のイントロのギターで終わるのですが、この日はナヲがそのまま「BELIEVE IN LOVE」をワンフレーズ、カラオケで歌っていました。さすがに若い世代の腹ペコたちは若干「キョトン」とした感じだったのですが、昔LINDBERGの大ファンだった私にとってはかなりうれしいネタでした(笑)。

その後は「パトカー燃やす~卒業~」「川北猿員」で盛り上がり、再び恋のおまじない。今度はしゃがんで立ち上がるバージョンではなく、親指を立てた腕を前に突き出した後、後ろに反り返り、また前に手を伸ばすバージョン。このフリを考案したのが10-FEETのメンバーだったらしく、この日2度目の恋のおまじないへ。そしてラストは「恋のメガラバ」へ。再び会場にはサークルが登場。最高のテンションのまま約2時間に及ぶライブが終了しました。

はじめてワンマンライブに足を運んだホルモン。まず一番印象に残ったのはライブ会場全体が盛り上がっていたという点。さすがにアラフォーになってモッシュやダイブはキツイな、と思ってほぼ最後尾で見ていたのですが、一番後ろの後ろまで曲にあわせてこぶしを振り上げたりヘドバンをしたりする盛り上がり。基本的にどんなライブでも一番後ろは腕を組んだりしながら冷静に見ていたりする人が多数なのですが、ホルモンのライブは一番後ろの後ろまでみんな盛り上がっていたライブでした。

かく言う私も、その盛り上がりに同調してこぶしを振り上げたりヘドバンをしたりおそらくここ最近のライブでは一番「暴れた」ライブでした。最近、ライブは比較的おとなしい大人なライブがメインだったのですが、昔、この手のパンクバンドのライブにも行きまくって、時としてモッシュにも参加していた20年近く前に戻ったようなそんな感覚を覚えたライブでした。

今回のライブは「耳噛じる真打」リリースにあわせてのステージだったのですが、その「耳噛じる」が全編30分に満たないアルバムだったということもあり、その「耳噛じる」の曲もやりつつこれでもかというほどライブの定番曲を披露してくれる、いわばベスト的な選曲。そういう意味では非常にお得感のあるステージだったと思います。ライブバンドとしての実力をあらためて感じられるステージだったと思います。

また今回久しぶりに見たホルモンのライブだったのですが、やはり上手いですね、彼らの演奏は。Zepp Nagoyaはお世辞にも音のよい会場ではないのですが、それでも迫力ありなおかつクリアな音を聴かせてくれたのは彼らの実力あってのことでしょう。

とにかく、非常に楽しみにしていたライブだったのですが、その期待にしっかりと応えてくれたとても楽しいステージでした。やはりマキシマム ザ ホルモン最高!!!またチケットはとれるかどうかかなり微妙なのですが、次のライブツアーも是非足を運んでみたいなぁ。久しぶりに20代前半に戻ったような、そんな素敵な夜でした。

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2017年7月 7日 (金)

大ボリュームのライブ盤

Title:キュウソネコカミ -THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー
Musician:キュウソネコカミ

めちゃくちゃ長いタイトルが特徴的な本作は、今、特にライブシーンで人気上昇中のロックバンド、キュウソネコカミの初となるライブアルバム。全3枚組というボリューミーな内容で、2016年から2017年にかけて実施した、自身最長となる38公演のライブツアー「DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016-2017~ボロボロバキバキ クルットゥ! ツアー~」の音源を収録しています。

ユニークなのはその構成で、Disc1は今年1月31日の大阪・なんばHatchでの公演を収録した内容。代表曲を選曲した構成となっており、ベスト盤的にも楽しめる内容になっています。そしてDisc2、3はその他37か所での公演について1か所につき1曲を収録した内容になっています。

全編疾走感ある楽曲の連続。シンセを加えたギターロックは楽曲によってはパンキッシュに激しく、楽曲によってはシンセを前に押し出したダンサナブルなナンバーに仕上げています。いかにもライブ向けという曲ばかりで、彼らのライブの楽しさがそのまま伝わってくるようなライブアルバムに仕上がっています。

ただ、今回の彼らのライブ盤を聴いてひとつ強く感じたことがあります。それは彼らの曲って、徹底的にライブ向けに機能化されているということでした。

確かにキュウソネコカミはそのユニークな歌詞にも特徴があります。身の回りの出来事を皮肉たっぷりに怒りの表現をまぜてストレートに綴った歌詞は十分インパクトがあります。ただライブアルバムで彼らの曲を聴くと、ライブの中で歌詞はさほど重きをなしていないのではないか、ということを感じてしまいます。

歌詞で何かを主張する訳ではなく、楽曲やサウンドを主張する訳ではなく、ただ徹底的に機能化された楽曲を繰り広げている、今回のライブアルバムで感じたのはそんなこと。良くも悪くもキュウソネコカミの曲にはロックバンドとしての「主張」の希薄さを感じます。

もっともそういうバンド、最近急増しているのではないでしょうか。例えば最近話題のヤバイTシャツ屋さんもそんな傾向が強く感じます。ミュージシャンとして何かを主張するのではなく、ただ徹底的にライブで「楽しめる音楽」を奏でる・・・いわゆるフェス向けといわれるようなロックバンドでそういうバンドが増えているように感じます。

もちろんそういう方向性がバンドとして決して間違っているとは思いません。音楽的な「主張」をせずに単純に楽しむことだけに主眼を置いている方向性も十分「あり」でしょう。ただ・・・そんなロックバンドって、最近ヒットシーンで主流になったアイドル勢に対してすごく不利に感じるんですよね。

なぜならアイドル勢はいうまでもなくプロの作家陣をつかって徹底的にファンを楽しませることを主眼において活動しています。ルックス面も勝負になりません。もちろんキュウソネコカミやヤバイTシャツ屋さんみたいに楽曲面での強度が強ければアイドル勢にも負けないのかもしれませんが、そんなバンドは決して多くありません。

最近、ロックフェスにアイドル勢が参加したりして「アイドルがロックに近づいた」的な言われ方をされることが多いのですが、ロック勢が音楽的な主張を捨てて楽曲で楽しむことだけに主眼を入れ出したという点で、むしろロック勢がアイドル音楽に近づいたのではないか、このライブ盤を聴いてそんなことに気が付かされました。上にも書いた通り、そういうロックバンドも決して悪くはありません。ただそういうロックバンドばかりになったら、正直、ロックシーンはつまんなくなってしまうだろうなぁ・・・そんなことを感じました。

もっともキュウソネコカミに関してはアイドル勢に負けないようなエンタメ性あふれる曲を書いており歌詞にもインパクトがあります。そういう意味では「楽しめるロック」という機能性に特化しても十分魅力的なバンドだと思います。ただ今回のライブ盤を聴くと、機能性にばかり特化したバンドが最近増えている、ということを漠然と考えてしまいました。やはり音楽的にちょっと稚拙でも、主張を感じるようなロックバンドがもっと増えてきてほしいのですが。

評価:★★★★

キュウソネコカミ 過去の作品
チェンジ ザ ワールド
ハッピーポンコツランド
人生はまだまだ続く

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2017年7月 6日 (木)

今週はアルバムもジャニーズ系

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

先週はHot100、アルバムチャートともに非アイドル勢がジャニーズ系を下しての1位でしたが、Hot100に続きアルバムチャートでもジャニーズ系が1位を獲得しました。

今週1位を獲得したのは関ジャニ∞「ジャム」。初動売上は32万7千枚。前作「関ジャニ∞の元気が出るCD!!」の31万5千枚(1位)からアップしています。

2位初登場は韓国の女性アイドルグループTWICE「#TWICE」。Hot100で彼女たちの曲「SINGAL」がロングヒットを続け、今週は「TT」が見事ベスト3入りしてきましたが、日本でのデビューアルバムとなる本作がいきなりベスト3ヒットを記録しました。初動売上13万枚。直近作は韓国からの輸入盤「Signal:4th Mini Album」で、こちらの初動5千枚(11位)から大きくアップしています。

3位には「A3! First AUTUMN EP」がランクインしています。本作はイケメン役者養成ゲーム「A3!」からのキャラクターソング。「A3! First WINTER EP」と同時リリースとなっており、「WINTER」も5位にランクインしています。初動売上はそれぞれ3万2千枚と2万8千枚。同シリーズの前作「A3! First SPRING EP」「A3! First SUMMER EP」が同時リリースでそれぞれ2万8千枚(5位)と3万枚(3位)を記録しており、本作とほぼ同水準の売上となっています。

続いて4位以下の初登場曲です。4位には女性アイドルグループBiSH「GiANT KiLLERS」がランクインしています。初動売上2万8千枚は前作「KiLLER BiSH」の1万3千枚(7位)よりアップ。

6位には韓国の男性アイドルグループB.A.P「UNLIMITED」が入ってきました。日本では2枚目となるアルバム。初動売上2万1千枚は前作「Best. Absolute. Perfect」の2万4千枚(4位)からダウンしています。

7位初登場は刀剣男士 team新撰組 with蜂須賀虎徹「ミュージカル『刀剣乱舞』~幕末天狼傳~」。ゲーム「刀剣乱舞」を基としたミュージカルのサントラ盤。初動売上は1万9千枚。同シリーズでは前作刀剣男士 team三条 with加州清光名義での作品「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~阿津賀志山異聞~」の初動売上2万3千枚(2位)からダウンしています。

9位にはニコニコ動画の「歌ってみた」コーナーで人気の「歌い手」、luzの3枚目となるアルバム「Reflexion」がランクイン。初動売上1万3千枚は前作「Labyrinth」の1万枚(3位)よりアップ。

最後10位にはCORNELIUS「Mellow Waves」が入ってきました。日本のみならず海外でも高い評価を受ける彼のオリジナルアルバムではなんと約11年ぶりとなるアルバムとなります。初動売上は1万1千枚。直近作はリミックスワーク集「Constellations Of Music」でこちらの2千枚(30位)からは大きくアップ。11年前の前作「SENSUOUS」の2万枚(8位)からダウン。ただ11年前とCDをめぐる状況は大きく変化していますので、今回の初動1万1千枚はまずまず健闘といった感じでしょうか。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年7月 5日 (水)

さすがにジャニーズ系が1位

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週はHot100、アルバムチャートともにジャニーズ系が1位を獲得できずに終わったチャートとなりましたが今週は「つなぐ」がランクインしてきたのですがさすがに1位獲得となりました。メンバーの大野智主演映画「忍びの国」主題歌。ラジオオンエア数こそ30位に留まりましたが、CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数で1位、Twitterつぶやき数でも3位を獲得し、先週の18位からCD発売にあわせてランクアップし、1位を獲得しています。ちなみにオリコンでも初動38万9千枚で1位獲得。前作「I'll be there」の39万3千枚(1位)よりダウンしています

2位はEXILEの弟分ユニットEXILE THE SECOND「Summer Lover」が初登場でランクイン。実売数2位、PCによるCD読取数14位、Twitterつぶやき数33位に対してラジオオンエア数は9位と比較的健闘。前作「SUPER FLY」はラジオオンエア数は最高位22位でしたが、典型的な爽やかなサマーダンスポップのこのような曲はラジオ向きなのでしょうか。オリコンでは初動売上3万6千枚で2位初登場。前作「SUPER FLY」の3万4千枚(4位)から若干アップしています。

3位はTWICE「TT」が先週の5位からランクアップ。今週、彼女たちのアルバムがリリースされてアルバムチャートでも上位に入ってきておりその影響でしょう。先週同様、Twitterつぶやき数及びYou Tube再生回数で1位を獲得した他、実売数でも13位にランクアップしてきています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まう6位にスターダストプロモーションの男性アイドルグループSUPER★DRAGON「ワチャ-ガチャ!」がランクイン。TBSテレビ系アニメ「トミカハイパーレスキュードライブヘッド~機動救急警察~」オープニング・テーマ。どちらかというと特撮モノのテーマ曲みたいな感じのナンバー。実売数は3位ながらもPCによるCD読取数が54位にランクインした他、すべて圏外という典型的に一部の固定ファンに留まるヒットとなっています。ちなみに本作が2枚目のシングルですが、前作「Pendulum Beat!」はHot100では最高位11位でしたので初のベスト10ヒットとなりました。オリコンでは初動売上2万3千枚で5位初登場。前作の初動1万4千枚(7位)よりアップしています。

7位には女性アイドルグループまねきケチャ「どうでもいいや」が初登場でランクイン。分厚いサウンドに疾走感あるメロの典型的な90年代J-POP。こちらも実売数は4位ながらもPCによるCD読取数86位、Twitterつぶやき数76位、そのほかは圏外という典型的な一部の固定ファンのみのヒットになっています。オリコンでは初動2万2千枚で6位初登場。前作「タイムマシン」の2万1千枚(6位)から若干アップ。

8位はゆず「愛こそ」がランクイン。先週の「カナリア」に続いてのランクインとなっています。伊藤園「お~いお茶」CMソング。実売数7位、ラジオオンエア数、PCによるCD読取数11位と万遍なくヒットを記録しています。オリコンでは本作が収録された「『4LOVE』EP」が4位にランクイン。初動売上2万4千枚は先週ランクインした「『謳おう』EP」の2万枚(5位)からアップしています。

初登場最後9位にはアニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」のキャラクターによるユニットAqours「Landing action Yeah!!」がランクインしています。実売数8位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数15位と上位にはいってきている一方、ラジオオンエア数が圏外なのがこの手のキャラソンらしいところ。オリコンでは同作が収録された「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours CLUB CD SET(Landing action Yeah!!)」が初動3万1千枚で3位初登場。前作「HAPPY PARTY TRAIN」の5万4千枚(2位)からダウンしています。

今週、ロングヒット組はChe'nelle「Destiny」が8位から14位、神様、僕は気づいてしまった「CQCQ」が7位から15位といずれもランクダウンしてベスト10落ちしてしまっています。一方、平井堅「ノンフィクション」は先週から変わらず10位をキープ。粘りを見せています。また先行配信で先週ベスト10入りしてきたSEKAI NO OWARI「RAIN」は9位から5位にランクアップ。来週はCDがリリースされるだけにさらなるヒットが期待できそうです。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2017年7月 4日 (火)

2人のポップス職人が参加した伝説(?)のバンド

Title:MOTORWORKS~COMPLETE BEST~
Musician:MOTORWORKS

今回紹介するMOTORWORKSは、Spiral Life、SCUDELIA ELECTROとしても活躍していた石田ショーキチが、もともとは洋楽のカバーをするためにL⇔Rの黒沢健一、スピッツの田村明浩、ドラムスのホリノブヨシの3人を誘って2003年に結成したバンド。その後、その活動に手ごたえを得た彼らはシングル3枚とアルバム1枚をリリースするものの2005年に活動を休止します。

しかしその後2014年に久々にライブ活動を再開。ドラムスのホリノブヨシに代わり、ウルフルズのサンコンJr.を迎えたものの残念ながら黒沢健一が闘病生活に入り活動休止。ご存じの通り、昨年、黒沢健一の急逝。そのため事実上、その活動に幕を下ろしてしまいました。

そんなMOTORWORKSですが、そのメンバーの名前を見ればわかる通り、石田ショーキチと黒沢健一という、日本を代表するようなポップス職人2人が組んだバンドというだけでポップス好きにはたまらないバンド。黒沢健一急逝によりファンからは再発を望む声が多くなったそうで、このほど、MOTORWORKSの音源が再発されることになりました。2枚組となる本作は、Disc1には彼らが唯一残した2004年のアルバム「BRAND-NEW MOTORWORKS」がそのまま収録。Disc2はシングル曲やカップリングなどでアルバム未収録だった曲が並んでいます。

「BRAND-NEW MOTORWORKS」はリアルタイムで聴いていたので今回、久しぶりに聞いてみたことになるのですが、もうとにかくこれでもかというほと胸がキュンとなるポップソングの連続にはまりまくるアルバム。L⇔RやSpiral Lifeが好きなら絶対聴くべきアルバムですし、そうでなくてもギターポップが好きならば必聴のアルバムだと思います。

またMOTORWORKSでおもしろいのはバンドの中の2人のソングライター、石田ショーキチと黒沢健一の音楽性が微妙に異なっていて、その違いがそのままアルバムに反映されている点でした。基本的に主軸にあるのはポップなギターロックなのですが、ノイジーなギターサウンドに疾走感あるメロディーで、どちらかというと80年代90年代のオルタナ系ギターロック寄りの石田ショーキチに対して、60年代70年代のギターポップへの影響が強い黒沢健一。その違いはかなりはっきりしていて、おそらく熱心なファンでなくてもどの曲を誰が手がけたか一発でわかるかと思います。

2004年の頃は石田ショーキチも黒沢健一もソロでの活動は停滞気味で、大きなヒットもなく正直、若干スランプ気味だったころ。ただそれでも2人の才能が融合するととこれだけの傑作が産みだされるという点、彼らのポップス職人としての実力を再認識させられます。2人ともその目指す方向性に微妙な違いがあるものの(おそらくアルバム1枚しかバンドとしての活動が続かなかったのはそれも理由なのかもしれませんが)、「キュートなポップソング」という共通項があるためアルバム全体にも統一感があり、2人の音楽性の違いがほどよい振れ幅となっています。

これほど素晴らしいバンドがアルバム1枚で終わってしまったことが非常に残念に感じます。また、ちょっと残念だったのが、ライブ音源みたいな未発表音源は残っていなかったんですね。特に2014年の活動再開後の音源があったら聴いてみたかったのですが・・・その点は非常に残念でした。ただ、全ポップス好きが聴くべき傑作アルバム。そのポップなメロディーラインに間違いなくはまる作品です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

PEACE OUT/竹原ピストル

もともとは野狐禅というバンドで活動していた男性シンガーソングライター。一部では話題になったもののブレイクしきれないままに解散。その後のソロ活動でもダウンタウンの松本人志が絶賛するなど一部で話題になるもののブレイクしきれなかったものの、ここに来て俳優としての活動がブレイク。その影響もあり本作はチャート5位を記録。ミュージシャンとしてもようやくブレイクという結果になりました。

彼の楽曲はコンピ盤の中の1曲的には聴いたことあったのですが、アルバム単位で聴くのは野狐禅以来。ただスタンスとしてはその時とほとんど変わりありません。自らの体験談を入れた力強く熱い人生の応援歌。ちょっと暑苦しさも感じる部分もありますし、良くも悪くも成り上がり志向な部分も感じる部分もあります。また全体的に感情的で熱い雰囲気を出している訳にはちょっと理屈っぽい部分も目立ったかな?そこらへんがこれだけインパクトあって話題にもなったのにいままでブレイクできなかった要因なような。ただ、アコースティックサウンドを中心に非常に強いインパクトを感じるアルバムでした。

評価:★★★★

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2017年7月 3日 (月)

厳しい現実を淡々と歌う

Title:耐えて眠れ
Musician:W.C.カラス

孤高のブルースシンガーとして話題のW.C.カラス。富山で木こりをしながらブルースシンガーとして活躍しているというそのスタイルも大きな話題に。さらに前作ではなんと女優の室井滋とのデゥオ作をリリースしてきたことでも評判を呼びました。

そんな彼の単独名義では約1年4ヶ月ぶりとなる新作。前作「うどん屋で泣いた」ではブルースというジャンルに留まらず、ソウルやフォーク的な要素も強いアルバムをリリースしてきましたが、今回のアルバムでは一転、実にブルースらしいアルバムに仕上げてきました。

例えば1曲目の「汽笛を鳴らせ」はアコギがワンコードで延々とならされる典型的なブルースナンバー。その後も基本的にはアコースティックギター1本でつむがれるブルースの世界が展開していきます。

典型的なのは9曲目の「人生のせいで」。アコースティックギターとボーカルがコール&レスポンスの形式で進む典型的なブルース進行のパターン。歌詞も人生の辛さを淡々として歌ういかにもブルースらしい内容で、特に「女が出て行ってしまった」という歌詞はまさしくブルースの王道パターン。最初、正直戦前ブルースか何かのカバーではないか?とすら思いました。

そんな訳で今回はいかにもなブルースナンバーが並んだアルバムになっているのですが、そんな中、なによりも印象に強く残ったのは歌詞でした。彼の歌う歌詞は人生の悲哀について歌っています。ただ、最近のポップスによくありがちな「厳しい現実の向こうに希望を歌う」というスタイルではなく、ただただ淡々と厳しい現実をちょっとしたユーモラスな表現を加えて歌うだけ。例えば「どうにもねぇ、どうしようもねぇ」はタイトルそのままの歌詞。最後の最後まで厳しい現実を淡々と歌われるだけですし、「今日も何とか切り抜けられた」もタイトル通り、厳しい日々を1日1日過ごしている人たちの姿をそのまま描いている曲になっています。

彼の歌はそんな現実を歌うだけ。決して人生の応援歌でもありませんし、前向きに生きる人々を描いたわけではありません。ただ淡々と歌われるその現実は、いろいろと厳しい毎日を生きている私たちにとっては胸をうつものがあります。ある意味、空虚に希望を歌っている今時のJ-POP応援歌よりも、むしろ「俺もお前も厳しいよな、まあ、がんばろうぜ」とそっと背中を押されているような、そんな感覚を覚えました。

ちなみに本作、「汽笛を鳴らせ」「機関車」「侘しい踏切」など妙に鉄道関連を題材とした曲が多いのも特徴的。これもブルースでは鉄道をよく素材として用いているだけに、王道パターンといえば王道パターン。さらにラスト「DINAH WON'T YOU BLOW」はみなさんよく知っている童謡「線路は続くよどこまでも」を労働歌風にカバーした替え歌・・・・・・・・・かと思ったら、むしろこちらの方が原曲準拠で、「線路は続くよ~」の方が替え歌でした(^^;;おなじみのメロディーがこのアルバムのラストを飾るにふさわしいブルース風にカバーされていました。

そんな訳でブルースシンガーの本領発揮といった感じのアルバム。比較的幅広い音楽を聴けた前作に比べるとリスナー層はもうちょっと絞られそうですが、ただ歌詞についてはおそらく多くの方の胸をうちそうな魅力があります。最近のJ-POPに飽き足らなくなってしまった方には是非ともお勧めしたい「大人の音楽」です。

評価:★★★★★

W.C.カラス 過去の作品
うどん屋で泣いた
信じるものなどありゃしない(室井滋&W.C.カラス)


ほかに聴いたアルバム

WAVE/Yogee New Waves

ここでも何度か書きましたが、最近、いわゆる「シティポップ」的なミュージシャンが話題となって人気を博しています。今回紹介するYogee New Wavesも今、話題になっているシティポップのバンドの一組。東京を中心に活動する男性4人組バンドで、これが2枚目のアルバムとなります。

さすがに話題になっているだけあって、爽やかでメロウさもある心地よいシティポップが並んでいます。はっぴいえんどや山下達郎、サニーデイサービスなどに影響を受けたというその楽曲はまさにシティポップの王道。ほどよくインパクトもあり、またなによりも垢抜けたポップスを聴かせてくれます。

ただ過去の偉大なるミュージシャンたちの遺産を上手くつかいこなしているという印象がまだ強く、Yogee New Wavesだけの個性みたいなものはちょっと薄い印象。まだまだ成長の余地は感じるアルバムでした。とはいえ、今の段階でも間違いなくその実力は感じられる1枚。これからのさらなる進歩が非常に楽しみになるアルバムでした。

評価:★★★★

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2017年7月 2日 (日)

懐かしの90年代パンク

Title:Stories Noticed
Musician:LOW IQ 01

90年代を代表するパンクバンドSUPER STUPIDのベースボーカルとして人気を博し、その後はソロとして活動。今でも多くのミュージシャンのリスペクトを集めるミュージシャンLOW IQ 01。彼のフルアルバムとしては3年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。とはいえ個人的には前作「Yes,LOW IQ 01」や、前作との間にリリースされたミニアルバム「THE BOP」は未チェック。2008年にリリースした「MASTER LOW FOR...」以来、彼のアルバムを聴くのはちょっと久しぶりとなりました。

それだけ久しぶりだったというのは「MASTER LOW FOR...」が正直あまりピンとこなかったというのも大きな理由なので久々に聴いてみた今回のアルバムもさほど高い期待はしていなかったのですが、これが予想を楽々超える、とても素晴らしい傑作アルバムに仕上がっていました。

今回のアルバム、豪華ゲストも大きな話題となっています。「Delusions of Grandeur」「MI-O-TO-SHI」ではthe HIATUS、MONOEYESの細美武士、「The Date」でMAN WITH A MISSIONのトーキョータナカ、さらに「Big Blue Sky」ではBRAHMANのTOSHI-LOWが参加しています。

彼の楽曲はメロディアスなパンクロック。基本的には90年代のパンクロックをそのまま継承していて、今聴くとちょっと懐かしさのようなものすら感じられます。例えば細美武士が参加した「MI-O-TO-SHI」などは良くも悪くも90年代パンクそのまんま。ハイスタやらHUSKING BEEやらが活躍していたあの頃をそのまま彷彿とさせます。

そんないわゆる思い出補正的な要素もあるのかもしれませんが、このパンクロックを中心としたほどよい楽曲のバリエーションも大きな魅力でした。例えば「Inconstant」はサウンドにちょっとバルカン音楽風な要素が入ったりしてユニークですし、「1958」はロックンロール風。かと思えば「Luster」はオルタナティヴロック的な要素は強くなりますし、「tokeru」ではアシッドジャズ風な要素も。さらに「Bajamar」はラテン風のインストナンバーになっています。

このバリエーションの幅も楽しめたのですが、なによりもメロディーがしっかりとポップにまとまっていてインパクトも強かったのが大きなプラス要素。1曲目を飾る「Delusions of Grandeur」や「Snowman」はヒットポテンシャルも感じる耳に残るメロディーラインをしっかりと書いていました。

以前聴いた「MASTER LOW FOR...」もバリエーションのあるアルバムだったもののいまひとつLOW IQ 01としての軸足を感じられなかった点がマイナスでしたが今回のアルバムに関してはメロディアスでポップなメロディーラインと、バンドサウンドを中心としたパンクロックという軸足を感じることが出来ました。ポップなパンクロックを難しいこと抜きで楽しめる傑作。LOW IQ 01の実力を存分に味わうことが出来ました。

評価:★★★★★

LOW IQ 01 過去の作品
MASTER LOW FOR...

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2017年7月 1日 (土)

ギターという楽曲のカッコよさを体現

Title:ALL TIME BEST "DAY2"
Musician:MIYAVI

最近は国内のみならず海外での活躍も話題になることが多いギタリストMIYAVI。今年は彼がソロデビューして15年となる記念の年なのですが、彼のソロでのキャリアを総括するベストアルバムがリリースされました。

MIYAVIというとご存じの方も多いかと思いますが、以前はいわゆるヴィジュアル系として活動していたミュージシャン。それがEMIに移籍して名前を「雅-MIYAVI-」としてからヴィジュアル系から距離を置き、オルタナティヴロックの方面に軸足を移しての活動が目立つようになりました。今回はEMIに移籍した2010年以降の楽曲を中心としたベスト盤となっています。

さてそんな彼の楽曲ですが、基本的には彼のギターの特徴であるスラップ奏法をメインとしたエッジの利いたファンキーなギターサウンドを中心に構成されたシンプルなサウンドがメイン。歌モノがあったりエレクトロサウンドを取り入れた曲があったりバリエーションを持たせつつも、基本的にはギターを中心に置いた楽曲という点で共通しています。

そしてこのギターサウンドが文句なしにカッコいい!ギターロックというジャンルが必ずしも音楽シーンの中心ではなくなりつつある現在において、あらためてギターという楽器のカッコよさに気が付かされるようなアルバムになっています。ただ、このベスト盤を聴いて感じたのは、このカッコよさを感じる理由としてある意味「ベタさ」があるような印象も受けました。

エッジを利かせたギターの音というのはカッコよさとしてはある意味わかりやすいですし、例えば「Ahead Of The Light」なんかも文句なしにカッコいい楽曲なのですが、後ろで鳴っているのはわかりやすい四つ打ちのリズム。「Afraid To Be Cool」などもカッコいいギターの音が鳴っているのですが、メロディーラインはわかりやすいJ-POP。全体的にわかりやすい要素が目立ちます。

ただこのわかりやすさは決してマイナスの要素になっていません。逆にベタだからこそすんなり彼の曲が耳になじみ、素直にギターのカッコよさを楽しめるのではないでしょうか。難しいこと抜きにして楽曲のカッコよさを楽しめる、彼の楽曲にはそんな魅力があふれています。

今回、初回限定盤にはDisc2として、彼が「ヴィジュアル系」として活動していた2010年以前の曲も含まれています。彼自身インタビューで「今の自分にはもう聴けない」と言っていますが、確かにいかにもJ-POPな楽曲は、今現在の彼の楽曲からするとかなり厳しいものがあります。

とはいえこの時期の楽曲が今の彼から切り離されているか、と言われるとそうではなく、例えば「Selfish love-愛してくれ、愛してるから-」みたいに今の彼に通じるカッコいいギターサウンドが流れている曲は少なくありません。逆にこの時期のいかにもJ-POPなベタさは、上にも書いた通り今の楽曲にも感じることが出来、今のMIYAVIの原点のひとつであることは間違いありません。

彼のように途中、音楽的なキャリアを大きく変えた人は以前のキャリアを否定してしまう人が少なくありません。しかしそんな中でも以前の活動をしっかりと自分の歴史として捉えている彼のスタンスは素晴らしいと思います。またこれらの楽曲に関しても今のMIYAVIが出来るまでの歴史を感じることが出来るため、非常に興味深く聴くことが出来ました。そういう意味では初回盤限定なのは残念。通常盤に含めてほしかったな・・・。

ちなみに今回のベスト盤のタイトル「Day2」とは、インディーズ時代がDay0、ヴィジュアル系時代をDay1として今がDay2である、という解釈だそうです。今後はさらにDay3、Day4と進化していくのでしょうか。まだまだギタリストとしていろいろな顔を見せてくれそうな彼。これからの活躍も非常に楽しみになってくるベスト盤でした。

評価:★★★★★

MIYAVI 過去の作品
WHAT'S MY NAME?(雅-MIYAVI-)
SAMURAI SESSIONS vol.1(雅-MIYAVI-)
MIYAVI
THE OTHERS
FIRE BIRD

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