様々な作風に挑戦した2作目
Title:Melodrama
Musician:Lorde
デビューシングル「Royals」が大ヒットを記録。続くアルバム「Pure Heroine」も大きな話題となったニュージーランド出身の女性シンガーソングライターLordeの2ndアルバム。日本の悪いところで、デビューアルバムで評判になっていも2枚目のアルバムはよっぽどよくなければなかなか話題にのぼりません。ただ本作はアメリカではアルバムチャートで前作を上回る最高位1位を記録し、前作に引き続き大ヒットを記録しています。
そんな彼女の注目すべき2枚目のアルバムですが、基本的には前作のスタイルを踏襲したようなアルバムになっていました。前作同様、あくまでもメロディーラインと歌を主軸としたポップソングがメイン。前作で「ポップになったビョーク」という書き方をしましたが、誤解をおそれずにいえば本作に関してもそんなイメージを強く抱きました。
ただ前作よりは音的なバリエーションは増えたのも大きな特徴でした。前作はミニマルで音数を絞ったエレクトロトラックがメインだったのですが、本作はグッと音数が増えています。特にアルバムのちょうど真ん中に位置する「Hard Feelings/Loveless」は最初はファンタジックな雰囲気からスタートするものの、中盤では歪んだギターサウンドが登場し、その雰囲気は一転。サイケな雰囲気に展開していきます。かと思えばラストではアイドルポップを彷彿とさせるようなかわいらしいポップソングで締めくくり。ある種「プログレ」的に複雑な構成の楽曲が展開されます。
他にもEDMテイストの強い「Supercut」のような楽曲もあるのですが、なんといっても彼女の魅力をフルに発揮しているのは「Liability」や「Writer In The Dark」(なんかビョークの「Dancer In The Dark」を彷彿させるタイトルですね・・・)でしょう。ピアノをメインに軽くストリングスが入るだけのシンプルなサウンドをバックに彼女がその表現力豊富な歌声を聴かせてくれるナンバー。その美しくも切ないメロディーラインと共に、Lordeのボーカリスト、あるいはソングライターとしての魅力が存分に発揮された楽曲になっています。
そんな様々な楽曲に挑戦しつつもアルバム全体としてはメロディー主体のシンプルなポップというイメージが先行する作品になっていました。そういう意味で前作と聴いた後の感触としては大きくは変わりません。
ただ正直なところ前作で感じたような衝撃は薄かったような感じはします。最初は「よくあるポップスアルバムだな」という印象すら受けました。・・・ただ、よくよく考えると彼女みたいなスタイルの女性シンガー、今、いそうでいないんですよね。ビョークはもっとエキセントリックですし、もちろんAdeleやテイラー・スウィフトとも違います。ケイティ・ペリーやラナデルレイほどのポップといった感じでもありません。そういう意味では彼女、よくいそうなタイプに思いつつ、今のシーンでは唯一無二の存在なのかもしれません。まただからこそ彼女の楽曲が大ヒットを記録したのでしょう。
前作同様、シンガーソングライターとしての彼女の魅力が存分につまった傑作アルバムなのは間違いありません。前作ほどの話題性や派手さはないのですが・・・いい意味で広くお勧めできるポップスアルバムの傑作です。
評価:★★★★★
Lorde 過去の作品
PURE HEROINE
ほかに聴いたアルバム
Planetarium/Sufjan Stevens, Bryce Dessner, Nico Muhly, James McAlister
シンガーソングライターSufjan Stevensと、現代音楽家Nico Muhly、The Nationalとしても活躍しているBryce Dessner、そしてThe Album Leafの作品にも参加しているドラマーJames McAlisterの4人によるプロジェクト。占星学や天文学をモチーフとした17曲から構成されるアルバムで、スペーシーなエレクトロサウンドを主導とした幻想的な雰囲気の楽曲が並んでいます。壮大なテーマ性を持った作品が多いものの、基本的にメロディアスな作品が多く、聴きやすさも感じされる作品。タイトル通り、星空満点のプラネタリウムの中で聴くと気持ちよさそうなアルバムです。
評価:★★★★
Sufjan Stevens 過去の作品
The Age of Adz
Carrie&Lowell
Is This The Life We Really Want?/Roger Waters
ピンク・フロイドの中心メンバーだったRoger Watersによるソロアルバム。「この生活は我々が本当に欲したものか?」というタイトル通り、トランプ政権やら世界の紛争や差別問題など混沌した社会の中ではっきりと反戦、反差別を訴える作品。ただ楽曲自体はピンク・フロイドのイメージとは異なりギターロックなサウンドをメインにピアノやアコギを入れつつ、シンプルにまとめあげたメロディアスな内容となっています。また彼の渋めなボーカルも大きな魅力に。大ベテランの彼だからこそつくれた重厚感のある作品に仕上がっていました。
評価:★★★★
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