映画も印象的でしたが・・・
Title:CANTA!TIMOR SONGS 映画「カンタ!ティモール」サウンドトラック
先日見た映画「カンタ!ティモール」については、ここでも紹介しました(その時のレポおよび感想はこちら)。この映画自体は当初の公開日は2012年だったのですが、遅ればせながらようやくサントラ盤がリリースされたそうです。映画会場でサントラ盤がリリースされていたので思わず買ってしまいました。
映画の中でも子供たちの歌が実に効果的に流れていましたが本作でもまず目立つのはその子供たちの歌でした。映画のテーマ曲ともいえる「ヘイ マルシーラ」をはじめ、特に序盤「ロウ ロウ ロウ」や「スル ボエ」などは子供たちの無邪気で元気のよい明るい歌声に東ティモールの希望を歌からも感じることが出来ます。
本作に収録されているのは映画でも使用された東ティモールの人々の歌。ほとんどがフィールドレコーディングでの作品になっているのですが、そのため現地の人たちの生の声をそのままとらえています。
ただ印象としては音楽的なジャンルは比較的バラバラ。その中でも「テベ」という東ティモールの伝統的な踊りは村の人たちみんなで歌われるような楽曲でこぶしを聴かせて伸びやかに歌い上げるスタイルは日本の民謡にも通じるものがあります。一方で「スラット イダ」はハワイアン風ですし、「フヌ ナイン」は荘厳な教会音楽風。「ヘイ マルシーラ」も哀愁感あるメロは日本人の琴線にも触れそうな楽曲ですが、他にも「ジェスス」のように歌謡曲にも通じそうなメロにインパクトがあり日本人にも受けそうな曲もチラホラあります。
ここらへんの東ティモールの音楽のルーツについては映画の中でも突っ込まれていませんでしたし、私自身ももちろんよくわかりません。ただ、東南アジアやオセアニアの島々に囲まれた地域に位置するこの国には、いろいろな音楽の文化が入り込んできているのかもしれません。ある意味、わかりやすい「東ティモールらしい音楽」といった感じの曲はありませんが、逆に音楽的な幅の広さが東ティモールの音楽の魅力のようにも感じました。
映画でつかわれた音楽をそのまま収録しているので映画の感動がよみがえってくるようなサントラ盤。またうれしいのはエンディングにつかわれたソウルフラワーユニオンの「星降る島」もしっかり収録されています。さらに同封のブックレットにはきちんと訳詩も収録。ワールドミュージックのCDだとこの訳詩というのは省略されがちのところ、きちんと訳を収録している点もきちんと言葉を伝えたいという強いこだわりを感じます。
基本的にはCDショップやAmazonなどでの取り扱いはないようが、通販で購入可能なようです。BGM的な内容ではないため映画を見ていなくても楽しめるような内容なのですが、映画「カンタ!ティモール」を見た方にとってはこれも同時に手にとっておきたい作品です。映画ともども素晴らしい作品でした。
評価:★★★★★
Title:Sincustic Vol.1
Musician:Sincustic
で、こちらは同じく映画会場で売られていたCD。先日見た映画の後にミニライブを楽しませてくれたエゴ・レモスがかつて率いていたバンドSincusticのアルバムで、2002年にリリースされたそうです。既に本作は廃盤になっているそうですが、この日は特別にCD-R化されて発売。こちらもサントラ盤と同時に思わず買ってしまいました。
彼が歌う楽曲はアコースティックなサウンドで南国風の優しい風が吹いているような作品。まさに「Hadomi Timor」はそんな南国風な曲調が非常に心地よいナンバーになっていますし、続く「Dame Iha Timor」はハワイアン風なサウンドが心地よく響く中、しんみりと聴かせてくれるナンバーとなっています。
ただ彼の作品はそんな南国風の空気を感じる曲と並んで、日本人の琴線にも触れそうな哀愁感あるメロをフォーキーな雰囲気で聴かせる楽曲も並んでいる点でした。「Fila Mai Doben」などはまさに日本のフォークソングにも通じる雰囲気のある楽曲。「To'os Nain」もフォーキーなメロディーラインが魅力的な楽曲になっています。
ライブでも東ティモールの音楽性を取り入れつつ、比較的ポップで西洋的な色合いを持った雑多な音楽性が印象に残りました。このアルバムではよりハワイアン、南国的な作風の曲が多いものの、その中でもやはり西洋的に垢抜けたメロも感じられる雑多な音楽性も顔を出しています。ライブを見て気になり購入したのですが、こちらもライブの楽しさがよみがえってくるアルバム。ただこちらは来日公演のライブ会場ではないと入手困難かも・・・機会があれば、是非。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Africa Express Presents… The Orchestra of Syrian Musicians & Guests/The Orchestra of Syrian Musicians
The Orchestra of Syrian Musiciansは2011年から続くシリア紛争から逃れるため祖国を逃れているシリアミュージシャン。2016年にblurのデーモン・アルバーンの支援によるライブツアーが行われることになりメンバーは5年ぶりに集結しライブツアーが行われました。本作はそのライブ公演の模様を収録したライブアルバム。デーモン・アルバーンや、ポール・ウェラーがゲストとして参加した曲も収録されています。
全体的に笛や太鼓を取り入れたエキゾチックな雰囲気たっぷりのナンバー。こぶしを利かせたボーカルが特徴的ですが、「Feel You」のような女性ボーカルによる軽快なポップナンバーや「Al Ajaleh」のようなミニマルなリズムでトリップ感のあるナンバーになっているような曲もユニーク。一方、デーモンやポール・ウェラーが参加した曲は完全に彼らの曲になっていました。
評価:★★★★
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