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2017年6月 4日 (日)

一度見たら忘れられないジャケット

Title:L'etoile Thoracique(邦題 あばら骨の星)
Musician:Klo Pelgag

今回紹介するアルバムはとにかくこのジャケット写真に強烈なインパクトがあります。一度見たら忘れられないのではないでしょうか。さらに邦題が「あばら骨の星」ってなんじゃそりゃ?って感じもします。とにかく奇抜なアルバムという印象を受けるのではないでしょうか。

本作はカナダ東部ケベック州出身の女性シンガーソングライター。今回、このアルバムを聴いたのは、8月に富山で行われるワールドミュージックの音楽フェスティバル、「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」への出演が決まったから。同イベントは何度か足を運んだのですが、家庭的な事情からここ数年、足を運べていません。ただ毎年ワールドミュージックの分野で素晴らしいミュージシャンを招集するイベントなだけに、今回参加が決まった彼女のアルバムを聴いてみました。で、調べてみたら最新作が本作。このインパクトありすぎなジャケット写真を知っていたので、「ああ、あのアルバムか」と思い聴いてみました。

ただこのインパクトあるジャケット写真に反して楽曲の方は非常に美しい彼女のクリアボイスからスタートします。ピアノをバックにコーラスを入れつつスタートする楽曲は幻想的ですらある美しさを感じさせるポップソング。ちょっと切なさを感じつつ、フランス語での歌詞で歌われる歌は日本語、あるいは英語の歌に慣れている私たちにとっては不思議な感覚を持ちつつも、その美しい歌声に酔いしれるポップなナンバーになっています。

その後も彼女の美しい歌声で歌われるメロディアスなポップチューンを聴かせる曲が並んでいます。ハイトーンボイスを上手くつかいこなし聴かせる彼女の歌は、どこか哀愁感あって切なさを感じさせます。「Le sexe des etoiles」はムーディーなストリングスとアコギをバックに胸をかきむしられるような切ないメロディーの歌を聴かせてくれますし、「Les animaux」もアコギのアルペジオをバックに郷愁感あるフォーキーなメロディーが特徴的なナンバー。そのほかもピアノやアコースティックギターで美しい調べを奏でながらもシンプルで美しいメロディーラインの歌を聴かせてくれる楽曲が並んでいます。

ただファンタジックな雰囲気を醸しつつどこか奇妙な雰囲気を見せるジャケット写真同様、楽曲にもどこか奇妙な歪みみたいなものがあるのが大きな特徴となっています。例えば1曲目「Samedi soir a la violence」は最初は陽気になっていたストリングスやホーンセッションが終盤には不気味な雰囲気を醸し出してきますし、メロディーが美しい「Au musee Grevin」も終始、不協和音のようなピアノの音色が響いており、不思議な雰囲気を作り出しています。さらにラストの「Apparition de la Sainte-Etoile thoracique」に至ってはワンコードの和音がひたすら続くという構成になっており、彼女の奏でる音楽の世界の不思議な部分が強調されるような楽曲になっています。

アルバムに終始感じられるファンタジックながらもどこか歪みを感じる世界観が魅力的。この妙な歪みのような部分が聴いていて癖になり、単純なポップシンガーという側面からは一線を画しているように感じます。基本的にはポップス、ロックに連なるようなミュージシャンなのでワールドミュージック的な要素は薄いのですが、フランス語で歌われる歌詞も私たちにとっては普段聴くポップスとはまた異なる雰囲気を与えてくれます。聴いていて最初は美しい彼女の歌声にはまり、そして徐々にその独特の音世界にはまってしまうような傑作。これ、ライブではどんな雰囲気のステージを見せてくれるんでしょうか?見てみたいなぁ~。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ニマイメ/Scott&Rivers

親日家として知られるWEEZERのリバース・クオモとALLiSTERのスコット・マーフィーのユニットがリリースする「J-POPのアルバム」第2弾。本作ではMONGOL800のキヨサク、RIP SLYMEのPESさらにはmiwaがゲストとして参加し、よりJ-POPなアルバム作りを目指した作品となっています。

前作「スコットとリバース」では彼らの書く美メロがさく裂した、J-POPと洋楽が見事融合した名作に仕上がりましたが、今回の作品についてはちょっと中途半端。確かに今回も彼ららしいポップでキュートなメロディーの曲が連続しているのですが、あまりにJ-POP的なものを意識しすぎたのか、美メロを惜しげもなく聴かせてくれた前作と比べると、どこかせせこましくなってしまった部分を感じます。前作に続きWEEZERやALLiSTERのファンにとっても楽しめるアルバムだとは思うのですが・・・大傑作だった前作と比べると若干物足りなさを感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

Scott&Rivers 過去の作品
スコットとリバース

Risk to Exist/Maximo Park

デビュー当初はあのテクノの名門レーベルWARP初のギターロックバンドとして話題となった彼ら。いつの間にかレーベルを移籍し、6枚目となる本作。日本ではさほど大きく取り上げられなくなったもののイギリスでは前作もベスト10入りを記録するなど、なにげに根強い人気を保っています。

そんな彼らの3年2ヶ月ぶりとなる新作。シンセを入れた軽快なギターロックが特徴的。サウンドもメロディーも非常にシンプルでかつリズミカル。いい意味で聴きやすいアルバムになっています。確かに目新しさはない部分、日本で大きく取り上げにくいのかもしれませんが、逆にこれは売れそうといった印象も。UKギターロック好きには素直に楽しめそうなアルバムです。

評価:★★★★

Maximo Park 過去の作品
Our Earthly Pleasures
Quicken The Heart

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