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2017年6月17日 (土)

音楽性に「厚み」が

Title:thickness
Musician:中田裕二

椿屋四重奏を解散させ、その後ソロとしてコンスタントに活動を続ける中田裕二。椿屋時代も哀愁ただよう歌謡曲テイストのメロディーに強いインパクトがあったのですが、その傾向はソロになってからさらに強くなっています。「SONG COMPOSITE」のような歌謡曲のカバーアルバムを挟みつつ、ミュージシャンとしてしっかりとした軸を感じる活動を続けているようです。

さらに彼がユニークなのは歌謡曲テイストのメロディーラインを書きつつ、洋楽のテイストも感じられること。たとえば前作「LIBERTY」ではファンキーな楽曲もあり、アルバムの中のインパクトとなっていました。この歌謡曲志向という方向性と洋楽テイストという方向性がほどよくミックスされているのですが、今回のアルバムに関してはそんな中田裕二の進んでいる方向性でのひとつの完成形のように感じました。

今回のアルバム、「thickness」=厚みというタイトルとなっていますが、それは音楽性の厚みを意味しているのだとか。実際、「femme fatale」ではワウワウギターを入れてソウル風のサウンドを聴かせてくれますし、続く「静かなる三日月」はカントリー、「Deeper」ではジャジーなトランペットも顔をのぞかせますし、ラストの「THE OPERATION」はファンキーなディスコチューンとなっています。

また個人的に一番インパクトが大きかったのが「愛に気づけよ」。モータウンっぽい雰囲気の楽曲なのですが、イメージ的には70年代のニューミュージック系のミュージシャンが歌謡曲の歌手に提供したような楽曲。歌謡曲らしい泥臭さと洋楽らしいバタくささが同居している、日本のポップスならではの楽曲に仕上がっています。

サウンド面では、本人もインタビューで述べているのですが、「厚み」というタイトルとは裏腹に比較的シンプルなサウンドがメイン。どんどん音が増えていってしまっている日本の音楽シーンの中であえて音をそぎ落としたそうです。歌謡曲というと今に限らず、音は足し算で積み重ねられていくケースが少なくありません。メロディー的には歌謡曲を目指しつつ、音作りの方向性は逆というのが非常にユニーク。中田裕二らしさを感じることができます。

全体的にメロディーラインはムーディーさを感じる歌謡曲という感じで統一させつ、様々なジャンルを取り込み音楽性に「厚み」を増した本作。上にも書いた通り、中田裕二のひとつの到達点のように感じました。ソロ作の中では文句なしの最高傑作。さらに一皮むけた彼。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
BACK TO MELLOW
LIBERTY


ほかに聴いたアルバム

Fabula Fibula/BIGMAMA

前作がHYとのコラボアルバムだったので純粋なオリジナルアルバムとしては2年ぶりとなる新作。ピアノやストリングスを多用して仰々しいというのが彼らのイメージでしたが、今回はギターロックなバンドサウンドを前面に押し出したためサウンド的には引き締まった印象を強く持ちました。またそのためメロディーのポップスさとロックバンドとしての側面が比較的ほどよくバランスしたアルバムになっていたと思います。ただそうなると、彼らのサウンドの特徴なのでこういう指摘をしてしまうのは心苦しいのですが、ストリングスの音色が浮いてしまっていて、楽曲の中で「邪魔」とすら感じてしまう曲も。ここらへん、サウンドのバランスは難しいところなのですが、ストリングスを入れてしまった彼らのさらなる課題ということで・・・。

評価:★★★★

BIGMAMA 過去の作品
Dowsing For The Future
君がまたブラウスのボタンを留めるまで
君想う、故に我在り
Synchronicity(HY+BIGMAMA)

ガガガSPオールタイムベスト~勘違いで20年!~/ガガガSP

結成20周年を記念してリリースされたオールタイムベスト。ただレンタル限定とはいえ3年前にベスト盤をリリースしたばかりなので、感想としてはその時とは大きく変わりありません。勢いあるパンクロックながらもメロディーは意外とフォーキーなのが魅力的。情けない男性の素直な心境をストレートに歌詞とした内容も強く惹かれます。楽曲にしろ歌詞にしろ一本調子な部分があるのが気になりますが、やはり聴いていてグッとくるものがある名曲が並んでいました。

評価:★★★★★

ガガガSP 過去の作品
くだまき男の飽き足らん生活
自信満々良曲集

ガガガを聴いたらサヨウナラ
ミッドナイト in ジャパン

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アルバムレビュー(邦楽)2017年」カテゴリの記事

コメント

気が早いようですが、今年上半期のベストアルバムの発表を楽しみにしております。
僕の場合、Suchmosが良かったかなと思っています。

投稿: ひかりびっと | 2017年6月20日 (火) 21時33分

>ひかりびっとさん
今年の上半期ベストはもうちょっとお待ちください。Suchmosのアルバムもよかったですね!

投稿: ゆういち | 2017年6月24日 (土) 23時24分

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