日本人ならば知っておきたい東ティモールの事実
映画「カンタ・ティモール」上映会+エゴ・レモス来日ライブ
会場 喫茶モノコト 日時 2017年5月26日(金)19:00~
先日、「カンタ!ティモール」という映画の上映会に足を運んできました。この映画、21世紀最初の独立国、東ティモールのドキュメンタリー映画。普通の映画館でのロードショーなどの形態ではなく、ミニシアターや有志が主催する各地の上映会で上映され続けられています。もともと私がこの映画のことを知ったのは私が大ファンのバンド、ソウル・フラワー・ユニオンが同作のラストに流れる「星降る島~オーマルシーラ・オーウルシーラ」を歌っており、また中川敬が監修を手掛けていたため。以前から気になってはいたのですが、ちょうど足を運びやすいタイミング、日時で上映会が行われると知り、足を運んできました。
場所は名古屋では有名な書店、ちくさ正文館の2階にある喫茶モノコトという小さなカフェ。参加していたのは50名強くらいでしょうか。一般的な知名度は決して高くなく、かつ大々的な宣伝も行っていない割りにはにぎわっているな、という印象を受けました。
さて肝心の映画の感想ですが、まず一言で言えば非常に深い衝撃を受けました。
東ティモールについて言えば、21世紀最初の独立国であるこということの他、独立運動が行われたこと、その中でインドネシアとの激しい衝突が起こったこと、程度のことしか知りませんでした。またこの映画についても東ティモールの独立運動を追ったということは知っていたのですが、どちらかというと東ティモールの今を紹介した音楽ドキュメンタリーという認識で見に行きました。
しかしこの映画で描かれていたのは東ティモールの独立運動をめぐる壮絶なドキュメンタリーでした。同作の監督、広田奈津子氏が現地にて様々な証言を得ているのですが、無差別な殺戮、レイプ、インドネシア軍による残忍な行為。インドネシア軍による一方的な殺戮行為の後、生き残った人たちを「陸軍病院」と呼ばれる施設に連れていき、毒薬を注射され無意味に殺されていったという証言。ティモール人を根絶やしにするために女性に危険な避妊薬をむりやり投与されたという話・・・生き残った人たちの証言だけでも辛くなるような事実が次々と語られています。さらには東ティモール独立運動を取材したジャーナリストたちによる貴重な映像や写真も流されます。この写真や映像は思わず目をそむけたくなるような残酷な写真なども紹介されているのですが、それだけに強いショックを受けました。
ただそんな描写が続く中でこの映画が素晴らしいと思うのは、そんな独立運動に関する衝撃的な証言、映像の合間合間に東ティモールの子供たちの笑顔が流される点でした。おそらく壮絶な独立運動を直接は知らないであろう子供たちの無垢な笑顔はまだ独立まもない若きこの国の未来を感じさせます。今回の映画ではこの子供たちの笑顔がとても印象的に流され、東ティモールという国の希望を感じさせる構成になっていました。
またこの映画では東ティモール独立運動と日本との関わりについても紹介されています。日本はインドネシアで採掘される石油利権を守るため、残酷な独立運動についてヨーロッパ諸外国から強い批判を受ける中、一貫してインドネシアを支持し、資金供与をしていたという酷い事実が紹介されます。さらにこれによって私たち日本人が安価な石油を入手でき恩恵を受けていたという事実を紹介し、この独立運動が私たちにとっても無関係でないという事実を突きつけていました。
さらにこの映画は東ティモール独立運動について日本にも知らせたいという強い意思を感じるとともに、ティモール人を通じて「生きる」という意味を考えたかったのではないか、この日の映画の後に行われた広田監督の挨拶からもそんなことを感じましたし、映画の中からもそのようなことを感じました。
映画の中では独立運動と共に素朴なアニミズム信仰に寄り添って生きているティモール人たちの生きざまも紹介されています。特に印象的だったのは先祖代々農家をやっているというお父さんのインタビューで「田んぼが一つあれば一生飢えることはない」というお話。自然に寄り添い生きていく彼らの生き様に、(すごーーく陳腐な表現で申し訳ないのですが)日本人がなくなった何かを感じたように思いました。
この映画の後には監督の広田美津子氏の挨拶もありました。映画からの想像からするとちょっと意外な、小柄でかわいらしい方だったのはちょっとビックリ。上にも書いた生きるということに対するメッセージが印象に残りました。
そしてその後に登場したのが、エゴ・レモスという映画の中でも登場した東ティモールを代表するミュージシャンによる来日ライブ。彼がアコースティックギター一本持って登場。映画でも助監督をつとめた小向サダムがパーカッションで参加してのアコースティックなステージとなりました。
最初は「ティモールの平和」という楽曲。しんみりと伸びやかな歌声で聴かせてくれる、フォーキーな雰囲気の作品。続く曲も(「証人」というタイトルらしいです)同じくフォーキーでしんみり聴かせる曲になっていました。
しんみりと聴かせる曲が続いたかと思えば、続く曲は軽快でウキウキしてくるポップなナンバー。この曲は東ティモールでは「ABC」のアルファベットにのせてアルファベットを覚えるために歌われる曲として有名な曲とのこと。会場の雰囲気も徐々に盛り上がってきます。さらには「IT'S RIGHT TO BE FREE」という曲ではタイトル通り、自由であることを訴える力強い楽曲を聴かせてくれました。
さらにその後は「みんなで踊ろう」という曲では観客全員が立ち上がり、みんなで手をつないで会場一体となって踊りました。もちろん私も(笑)。ダンスは東ティモールでよく踊られる歌にあわせてみんなでステップを踏むだけの簡単な踊りなのですが、この曲とアンコール含めて2曲、会場全体で盛り上がりました。
そしてアンコールラストはソウルフルなボーカルで力強い歌声を聴かせるパワフルなナンバー。会場全体で彼の歌声に聴き入ります。ライブは全6曲(確か)、40分程度の短いステージでしたが、彼の楽曲はシンプルで素朴なポップスがメイン。その力強い歌声と共に非常に心に残るステージを見せてくれ、満足度の高いライブを体験することが出来ました。
スタートが19時過ぎで終了が22時半という長丁場のイベントでしたが、映画、ライブともども、メッセージや歌が私の心に強く刻まれた貴重な経験をすることが出来ました。映画は今なお全国いろいろな場所で公開されているようなので機会があれば是非。お勧めです。
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