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2017年6月 9日 (金)

ポップス職人のソロ3部作

昨年12月、脳腫瘍のため惜しまれつつこの世を去ったシンガーソングライター黒沢健一。わずか48歳という若すぎるその最期に、多くの音楽ファンが強いショックを受けました。今年に入りポニーキャニオン時代に残したソロ3部作がUHQCDで再発。さらには未発表曲やシングルのカップリング曲などのアルバム未収録曲をボーナストラックとして収録されました。この3部作、2枚目の「B」以外は以前聴いたことあったのですが、豪華なボーナストラックが収録されるということもあって再度聴きなおしてみました。

Title:first
Musician:黒沢健一

まずこちらが1998年にリリースされたソロデビュー作。L⇔R活動休止直後にリリースされたオリジナルアルバムとなります。ボーナストラックは今回再発された3作のうち最大の7曲も収録。さらには未発表曲の「What is this song?」も収録されました。

L⇔R活動休止直後にリリースされたアルバムということで全体的には非常にポップス色が強いアルバムになっており、かつ洋楽テイストも強くバタ臭さを感じるアルバムになっています。3枚のアルバムの中では一番「L⇔Rっぽさ」が残るアルバムと言っていいかもしれません。

ただ一方、やはりL⇔Rを活動休止させた直後にリリースされたアルバムだからでしょうか、アルバム全体にどこか迷いのような要素も感じました。彼らしいポップスセンスは光るもののアルバム全体の方向性はどこかチグハグ。ポップな楽曲についてもどこか吹っ切れなさも感じます。

もっともそんな中でも「LOVE LOVE」「WONDERING」などはポップス職人黒沢健一のメロディーセンスが光るキュンと来る傑作メロディーが楽しめますし、要所要所に彼の才能を感じさせる楽曲が並んでいます。L⇔R全盛期と比べると物足りなさも感じてしまいますが、それでも彼の魅力は十分に発揮されたアルバムと言えるでしょう。

ちなみに未発表曲「What is this song?」はストリングス入れて爽やかなポップチューン。確かに若干インパクト的には物足りないものの彼らしいポップスセンスはこの曲でも十分感じます。他に収録されたシングルのカップリング曲は洋楽のカバーが多く、彼のルーツを感じることが出来るポップチューンが並んでいます。さらに最後に収録されている「STAGE FRIGHT」はソロデビューシングル「WONDERING」のカップリング。こちらも軽快なリズムが魅力的。軽い雰囲気の曲なのでいかにもカップリングといった感じなのですが、気軽に楽しめる軽快なポップチューンになっています。

評価:★★★★

Title:B
Musician:黒沢健一

今回リリースされた3枚のアルバムのうちリアルタイムで聴き逃していた唯一のアルバム。なぜ聴き逃したのか、記憶にありませんが・・・「first」から2年半を経た2001年にリリースされた作品です。

このアルバム、大きな特徴となっているのがポップな方向性だった前作からうってかわって全編ロックなアルバムとなっている点。「スピードを上げてく」はダイナミックなロックサウンドが前に出ていますし、続く「トーキング・ブルース」はタイトル通りのブルースロック調の作品に。「遠くまで」もノイジーなバンドサウンドが前に出ていますし、「What You Want」もへヴィーなバンドサウンドが前に出た作品となっています。

ただロック寄りという統一感を持ったことにより前作「first」で感じたソロとしての方向性の迷いはほとんど感じなくなりました。もちろん、彼らしいキュートでポップなメロは相変わらず。シングル曲未収録のためアルバム全体のインパクトとしてはちょっと薄い感じもするのですが、統一感ある内容なだけにそのインパクト不足があまり気にならなくなっています。

ちなみにボーナストラックとしては1999年にリリースされたシングルなのですがアルバム未収録となっていた「This Song」とカップリングの「Free Bird」を収録。確かに本作のコンセプトからはちょっとずれたような内容になっていて未収録となった理由もわかるような感じ。「This Song」はミディアムテンポなちょっと地味なナンバーながらも一度聴いたら忘れられないような胸がキュンとなるメロディーが魅力的な黒沢健一節本領発揮の名曲。「Free Bird」はホーンセッション入ってソウル風のアップテンポナンバー。こちらはメロディー的には物足りなさもあるのですが・・・ちょっと他とは毛色の異なるポップチューンを楽しむことが出来ました。

評価:★★★★★

Title:NEW VOICES
Musician:黒沢健一

で、こちらが前作からほぼ1年のインターバルで2002年にリリースされたソロ3作目。方向性的には2作目でみせたロック寄りのサウンドをある程度残しつつ、1枚目のポップス路線に回帰した作品と言えるでしょう。ポニーキャニオン時代の集大成ともいえるアルバムとも言えるかもしれません。

その結果、3作のうちもっとも黒沢健一の魅力が発揮された傑作だったと思います。「CHEWING GUM」はノイジーなギターサウンドが鳴る中、彼らしいキュートなメロがインパクトを持った作品ですし、続く「ALL I WANT IS YOU」も彼らしいメロが強いインパクトを持ったピアノロックなナンバー。

この3作、セールス的には「first」がオリコン最高位34位だったのに対して、「B」が68位、「NEW VOICES」が65位と奮いませんでした。ただ、アルバムの内容的には右肩上がりだったようにも感じます。L⇔Rの楽曲は、正直大ヒットした「KNOCKIN'ON YOUR DOOR」以降、いまひとつ迷走気味だったように感じ、その結果として活動休止にもつながった印象もあるのですが、ただソロになってその迷いが徐々に解消し、黒沢健一本来の魅力が出てきたように感じます。

なお本作のボーナストラックは「Rock'n Roll」「Round Wound」のライブ音源。シングル「PALE ALE」のカップリング曲とちょっと寂しい感じ。もうちょっと未発表音源とかなかったのかなぁ、とは思うのですが、それは贅沢な願いなんでしょうね・・・。

評価:★★★★★

そんな訳で楽曲の出来としては徐々にあがっていっており、さらにここのサイトでも紹介した2009年にリリースしたアルバム「Focus」は全盛期を彷彿とさせるような傑作アルバムでした。それだけにポップス職人としてその才の翳りはほとんどなかったのですが・・・それだけにあまりに早すぎる逝去は日本のポップスシーンの大きな損失であることは間違いないでしょう。あらためて残念に感じてしまいました。

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アルバムレビュー(邦楽)2017年」カテゴリの記事

コメント

本日L⇔Rのニュースが飛び込んできたところで
タイムリーに黒沢健一氏の記事とは何て言う運命(笑)

「first」のボーナストラックの「What is this song?」は
晩年のソロ活動でストリングリミックスのアルバムに
収録されてはいたのですがオリジナルミックスは今回が初でしたね。
当時健一氏が「とてもいい曲を作ったんだけどアルバムの中に入れると
雰囲気が変わってしまう独裁者のような曲があって泣く泣く外した」
というようなことを言っていたのでこの曲がそうなのかなあと思います。
「B」については当時ファンの間で賛否両論がほんとに激しかったです。
昔否定の立場だったけど今聞くとすごくいいって人もいたので
評価は変わってるかもしれないですね。

頭で言ったL⇔Rのニュースというのは「Doubt tour」のDVD化が決定したことです。
「Let me Roll it tour」のDVDの売り上げがよかったのかなあ。
何はともあれすごく楽しみです。
ゆういちさんはまだ「Let me Roll it tour」のDVDの方は
見ていらっしゃらないと思いますがお時間とお金の余裕があれば
ぜひ見ていただきたいとお勧めだけさせてもらいますね。

長文乱文失礼いたしました。

投稿: Toshi | 2017年6月10日 (土) 01時57分

コメント書き忘れたことがあって
編集しなおそうと思ったらできなかった
ので連投失礼します。

「NEW VOICE」のゆういちさんのコメントで
もうちょっと未発表音源なかったのかな
という問いですが個人的にも一つ不満が
ありまして「first」に収録されている
「MADMAN ACROSS THE WATER」の英詩版が
収録されていないことです。
入手方法はあるのですがitunesで
「first」のアルバムを購入した特典
でしてファンにしてみれば「first」を
3枚買わなきゃいけない状況で(^ ^;
「first」が発売された当時これが
入ったサンプラーを中古レコードショップで
購入した人が羨ましい限りです。

投稿: Toshi | 2017年6月10日 (土) 02時12分

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