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2017年6月 2日 (金)

時代がNONAに追いついた?

Title:POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES
Musician:NONA REEVES

最近、80年代的なメロウなソウルチューンをよく耳にするようになりました。一昔前は「時代遅れ」的な扱いとなっていた80年代サウンドがいつの間にか回りまわって「新しい」という感覚でとらえられるようになりました。そんな潮流になったのがいつ頃からなのかは詳しくはわからないのですが、ひとつの大きなきっかけとなったのが2013年にリリースされたDaft Punkのアルバム「Random Access Memories」に80年代を代表するプロデューサー、ナイル・ロジャースが参加したことだと思われます。

NONA REEVESといえば、デビュー作以来一貫して80年代的な影響が色濃いディスコポップチューンを奏でてきました。特にボーカルでNONA REEVESのメインライターをつとめる西寺郷太の80年代洋楽ポップスに対する造詣の深さは、マイケル・ジャクソンに関する著作などのヒットにより広く知られるようになりました。むしろ失礼ながら今やNONA REEVESのボーカリストというより80年代洋楽ポップの評論家としての方が知られているほどかもしれません。

ただ1997年にワーナーミュージックからメジャーデビューした彼らですが、残念ながらお世辞にもヒットしたとはいえず、様々なレコード会社への移籍を経て、2011年からインディーズに戻り活動を続けていました。ところがこの80年代再評価の流れがあってか、それとも西寺郷太の評論家的な活動が功を奏したのか見事にメジャー復帰。それも古巣のワーナーミュージックへの返り咲きとなりました。

今回のベスト盤はそんな彼らのメジャー復帰を記念してリリースされたベストアルバム。そのため本作は彼らのインディーズ時代(2011年~2016年)にかけての楽曲は収録されずメジャー時代の楽曲が収録されたベスト盤となっています。そこで一貫して流れているのは彼ららしいファンキーなディスコチューン。ストレートに80年代ポップの影響を受けた楽曲は、今聴くとむしろ一周回って新しさを感じさせます。最初に書いた通り、ここ最近80年代的な音の再評価が進んでいますが、まさに時代がNONA REEVESに追いついたといってもいいかもしれません。

さらに本作、過去の代表曲に加えて新曲が1曲収録されているのですが、この曲がまたかなりの傑作に仕上がっています。その新曲「O-V-E-R-H-E-A-T」はある意味ベタともいえる80年代のディスコポップなのですが、西寺郷太の80年代ポップスに対する知識を総動員しつつ、さらには深い敬意を感じる楽曲。リズムの強度といいメロディーのインパクトといい、むしろ2000年代のメジャー時代の楽曲よりも進化しており、インディーズ時代の彼らの成長ぶりを感じさせます。

また最後に収録されている「ENJOYEE! (YOUR LIFETIME) 2017」は2002年にリリースされたシングル曲の再録なのですが、こちらもアレンジを微妙に今風にアップデート。さらになによりも西寺郷太のボーカルにはある種の自信を感じさせます。それは彼らがデビュー以来ずっと信じて追い続けてきた80年代ポップスの評価がようやく高まってきているということから来る自信なのかもしれません。

ちなみに6月にはインディーズ時代の楽曲をまとめたベスト盤もリリースされるようでこちらも楽しみな作品。NONA REEVESというバンドの魅力を非常に強く伝えてくれているベスト盤でした。

評価:★★★★★

NONA REEVES 過去の作品
GO
Choice
ChoiceII
BLACKBERRY JAM


ほかに聴いたアルバム

なぜ小西康陽のドラマBGMは テレビのバラエティ番組で よく使われるのか。/小西康陽

まるで最近流行りの新書本によくありがちなタイトルにジャケット写真もどこぞの新書本の装丁そのままというユニークな小西康陽の新作。タイトル通り、過去にテレビドラマの劇伴音楽として使用された曲をまとめたサントラ的なアルバム。クラシックをクラブ音楽風に大胆にアレンジしたり、「スポーツ行進曲」をいろいろなアレンジでリミックスしたりとユニークな作品が並んでいます。サントラ盤は単なるBGMで退屈になってしまうケースが多い中、このアルバムに関しては1曲1曲が個性的に出来上がっており、ドラマを見ていなくても楽しめるアルバムになっていました。なぜバラエティ番組でよく使われるのかはわかりませんでしたが、でもおそらく多くのテレビ関係者から彼の曲が支持されているというのは納得できる1枚でした。

評価:★★★★

小西康陽(PIZZICATO ONE) 過去の作品
ATTRACTIONS! KONISHI YASUHARU Remixes 1996-2010
11のとても悲しい歌(PIZZICATO ONE)
わたくしの二十世紀(PIZZICATO ONE)

メテオ/馬喰町バンド

馬喰町バンドの6枚目となるアルバム。日本の民謡やわらべ唄を楽曲に取り入れた独特の音楽性が話題となっていますが、その一方で例えば本作では「なかうちくるまえくっとさけるまでゆけゆけ」ではトリップ感あるサウンドを聴かせたり、「Wajaja」ではグルーヴィーなドラムを聴かせたりとおもしろさを感じます。ただ全体的に似たような節回しの曲が多く、若干もったいない感じもしてしまいました。

評価:★★★★

馬喰町バンド 過去の作品
あねこみあほい

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