「歌詞」を聴かせる
Title:メッセージボトル
Musician:amazarashi
ギターボーカル秋田ひろむの描く独特な歌詞の世界観が評判を集め人気上昇中のロックバンドamazarashi。メジャーデビューから7年を経た今年、初となるベスト盤がリリースされました。
公式サイトの本作の紹介ページをひらくといきなり「歌詞を見ながら聴きたい曲が、いまいくつあるだろう」というメッセージが表示されます。今回のベスト盤であらためて思うのはやはりamazarashiの魅力といえばまず1にも2にも歌詞の世界。物語性あり具体性ある歌詞の中で、現実の厳しさを描きながらもその向こうにある希望を歌おうとする歌詞。まずはその歌詞が強い印象に残ります。
秋田ひろむの書く歌詞はよく「死」が登場するのが特徴的。その方向性ではある意味典型的な「僕が死のうと思ったのは」という曲もありますし、「夏を待っていました」「ひろ」などでも「死」が登場します。「死」をよく登場させることからいわば「中2病バンド」的なイメージも強い彼ら。もっとも彼らの歌詞は「死」を取り上げつつ、その対比としての「生きる」ということを強調しています。
また秋田ひろむの書く歌詞が上手いな、と思うのはインパクトあるフレーズを効果的に用いてリスナーの耳を惹きつけている点です。歌詞を売りにしようとしているミュージシャンでも、インパクトあるフレーズがかけず、歌詞にフックのないミュージシャンが多くいます。逆に売れているミュージシャンは歌詞の内容はありふれていてもきちんとインパクトある歌詞をサビに持ってくることが出来ます。
例えば「多数決」では「賛成か 反対か 是非を問う 挙手を願う」と「多数決」からイメージされるインパクトある歌詞を楽曲の中でも一番フックの効いたフレーズに重ねています。「空っぽの空に潰される」でも
「楽しけりゃ笑えばいいんだろ 悲しい時は泣いたらいいんだろ
虚しい時はどうすりゃいいの?教えて 教えて」
(「空っぽの空に潰される」より 作詞 秋田ひろむ)
と楽曲のテーマをインパクトある歌詞をつけて上手くサビにのせています。ここらへんのインパクトある歌詞の使い方の上手さもamazarashiの大きな魅力でしょう。
サウンドの方はピアノを入れて美しき聴かせる比較的シンプルなギターロック。フリーキーな要素を入れたり、ちょっとラテン風だったり、ポエトリーリーディングを入れてきたり、それなりにバリエーションも入れてきますが、歌詞の世界を尊重するような美しいサウンドで歌詞やメロディーを前に押し出したようなサウンド。ここらへんのサウンドと歌詞のバランスにもうまさを感じます。
また秋田ひろむの力強い、どこか情熱的な部分を感じるボーカルも歌詞をひきたてる大きな要素に。歌詞は一語一語丁寧に歌われ、耳に残ります。総じてamazarashiはどの要素もまず歌詞を聴かせるという点に重点を置いているということにあらためて気が付かされます。かなり重い曲が並んでいますがそれだけインパクトが強いということ。amazarashiの最初の1枚としても最適なベスト盤。公式サイトの売り文句のように、「歌詞をきちんと聴かせる曲を聴きたい」と思っている方には間違いなく最適なバンドです。
評価:★★★★★
amazarashi 過去の作品
千年幸福論
ラブソング
ねえママ あなたの言うとおり
あんたへ
夕日信仰ヒガシズム
あまざらし 千分の一夜物語 スターライト
世界収束二一一六
虚無病
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