« 本領発揮? | トップページ | 今週はK-POPが1位 »

2017年5月16日 (火)

平凡?個性的?

Title:平凡
Musician:ドレスコーズ

志磨遼平がスーツ姿に眼鏡をかけたインパクトあるヴィジュアルイメージが多いに話題となったドレスコーズの最新作。ドレスコーズが志磨遼平のソロプロジェクトとなって3枚目となるアルバムなのですが、今回は彼にとって初となるコンセプトアルバム。アルバムタイトルにもなっている「平凡」をコンセプトとしている今回のアルバムは全歌詞を公式サイトで公表しており、その力の入れようが伺えます。

そんなコンセプチャルに力を入れたソロアルバムなだけにかなり冴えまくった作品に仕上がっています。1曲目「common式」からファンキーで疾走感ある楽曲でインパクトありまくりなのですが、続く「平凡アンチ」もラテン風なリズムにアジテートのように叫びまくるボーカルに強いインパクトを受けます。さらに「人民ダンス」ではラテン調のリズムの軽快なダンスナンバーが楽しい楽曲にまとめあげています。

かと思えば「towaie」「ストレンジャー」は彼らしいちょっとレトロな雰囲気が胸をうつ歌謡曲風のポップチューンになっており彼のメロディーメイカーとしての才を十分に発揮した名曲に。さらにPVも公開されアルバムの中のメイン楽曲的な位置づけにある「エゴサーチ&デストロイ」も軽快なファンキー調でダンサナブルなリズムに、彼らしいちょっと哀愁感ある切ないメロディーラインが強い印象を受けるアルバム。リズムもメロもこのアルバムを象徴するようなインパクトの強いポップチューンになっています。

バンド色の強かった前作「オーディション」と比べて今回はバンド色は薄めなソロアルバムらしい作品。またファンクやソウル的な要素が強く、終盤の「20世紀(さよならフリーダム)」はシティポップ調のナンバーになっています。ある意味ここ最近のポップシーンの流れに沿った作品ともいえるかもしれませんが、ファンクやシティポップ的なサウンドと、レトロポップで歌謡曲風のキュートな志磨遼平のメロディーラインの相性は抜群。いままでのアルバムの中で最も強いインパクトを感じるアルバムになっていました。

さて今回のアルバムのもうひとつの売り。それは「平凡」というコンセプトに沿った歌詞でしょう。ただ本作はあきらかに「平凡」をテーマとした歌詞が続々と登場するのですが、その平凡であることを肯定しているのか否定しているのか、歌詞の中でははっきりとしません。

「人は生まれながら
誰もが皆 common」

(「common式」より 作詞 志磨遼平)

と歌い平凡を肯定したかと思うと

「これがぼくの政治的思想
わかってたまるか」

(「平凡アンチ」より 作詞 志磨遼平)

と個性を強調するかのようなフレーズを書いてきています。実際、レビューサイトでも「平凡」に対して肯定的に捉える方と否定的に捉える方がいるみたいですし、志磨遼平へのインタビューでもそこらへんのことがあやふやになっているように感じます。

ただ私は志磨遼平はこの「平凡」であることに肯定も否定もしていないように感じました。特に「マイノリティーの神様」で歌われる

「ありふれた人になるよ ぼくらは
それは自然で とてもかなしいこと」

(「マイノリティーの神様」より 作詞 志磨遼平)

という一文はまさに多くの人が結局は「平凡」になってしまう事実を受け止めつつも、「個性的」であることを否定していません。ある意味、この「平凡」になってしまうことと「個性的」であろうとすることの葛藤がアルバムのひとつのテーマのように感じます。

しかしこの歌詞も含めていままででもっともインパクトがある、志磨遼平の個性がもっとも発揮された傑作アルバムだったと思います。間違いなく本年度のベスト盤候補。「平凡」を歌った今回のアルバムで彼の非凡さが際立つ結果になりました。

評価:★★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

オーディション


ほかに聴いたアルバム

METRO/浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS

浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS名義でリリースされた約2年8カ月ぶりのニューアルバム。ちょっとくすんだ雰囲気の世界観やダークな雰囲気のアレンジ、悲し気でメロディアスなメロディーライン等、また例のごとくいつもの浅井健一サウンド。大いなるマンネリ路線の楽曲は悪くはないのですが、BLANKEY時代の輝きから考えるとかなり物足りないというのが正直な印象。

評価:★★★

浅井健一 過去の作品
Sphinx Rose
PIL
Nancy

Paradise Has NO BORDER/東京スカパラダイスオーケストラ

スカパラの新作はコラボ作が目立つ作品に。10-FEETのTAKUMAにクリープハイプの尾崎世界観、Ken Yokoyamaに片平里菜、さらにはなんとさかなクンとのコラボも。今回のアルバムではこの多様なコラボを上手くもちいてバラエティー豊かな作風に仕上げてきているのが特徴的。ロック調の強い曲からラテン、歌謡曲風、軽快なスカポップなどスカパラの様々な顔が楽しめる作品に。今回は歌モノが多く、ポップ路線を取った彼らでしたが、その中でもきちんとスカパラの魅力を感じさせてくれるアルバムでした。

評価:★★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~

|

« 本領発揮? | トップページ | 今週はK-POPが1位 »

アルバムレビュー(邦楽)2017年」カテゴリの記事

コメント

志磨遼平の稀有な才能を感じ取れましたね。

投稿: ひかりびっと | 2017年8月16日 (水) 17時46分

>ひかりびっとさん
志磨遼平は天才ですね。

投稿: ゆういち | 2017年8月17日 (木) 23時21分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 平凡?個性的?:

« 本領発揮? | トップページ | 今週はK-POPが1位 »