ハイペースでの3枚目
Title:Arca
Musician:Arca
Kanye West、FKA Twigs、さらにはBjorkのアルバムへプロデューサーとして参加するなど、数々の大物ミュージシャンとのコラボで話題となったベネズエラ出身のトラックメイカーArcaの約1年5ヶ月ぶりとなるアルバム。オリジナルアルバムのインターバルが1年5ヶ月というのは比較的短めのスパンなのですが、その前のアルバム「Xen」から前作「Mutant」の間もわずか1年弱というインターバルでのリリース。さらにはその間に無料ダウンロードで「Sheep」をリリースしており、そのハイペースなリリースぶりが目立ちます。
今回のアルバムは1曲目「Piel」ではいきなり人の声からスタートします。ハイトーンボイスで静かに歌い上げつつ、そのバックに静かだけども無機質なエレクトロサウンドが鳴る展開。さらに2曲目「Anoche」も静かなエレクトロサウンドの響きの中で静かに歌い上げるハイトーンボイスの悲しげな歌声が響きます。1、2曲も幻想的な曲調の中、徐々にスケール感が増していくのですが、3曲目「Saunter」はダイナミックなエレクトロサウンドの中、静かな歌声が響く荘厳さを感じるナンバー。教会音楽にも通じるような荘厳な響きをエレクトロサウンドで再現した聴かせるナンバーが続きます。
この音数を絞ることにより空間を聴かせ、結果重厚感を醸し出しているサウンドにハイトーンボイスの歌声がのるというスタイル。その後も「Reverie」「Coraje」と続き、このアルバムの中で示されたひとつの方向性となっています。彼の奏でる無機質で散発的なエレクトロサウンドの響きは決して聴きやすいものではなく、実験的と感じられるものなのですが、今回は重厚な歌が重なることによりアルバム全体として非常に聴きやすい楽曲が並んでいました。
特に後半、「Desafio」などはメロディーラインにもインパクトがありポップとすら感じられる楽曲になっていますし、続く「Fugaces」も重厚なエレクトロサウンドの中で歌われる歌は、どこか物悲しく、しんみり心に響くようなポップソングに仕上がっています。楽曲はいずれもどこか底知れない不気味さを同時に感じさせる部分はありつつも、ポップという印象を受けるアルバムでした。
もっともポップで意外と聴きやすいという印象はいままでのアルバムでも感じられました。今回のアルバムに関しては、「歌」の部分を押し出すことによりそのポピュラリティーがより強まったように感じます。また1曲あたり3、4分という、1曲をだれずに聴くにはちょうどよい長さなのは本作も同様。今回はさらに全13曲43分という短さにおさめており、前作のように最後の方はだれてしまった・・・ということもありませんでした。Arcaらしい強い癖はそのままにいい意味で聴きやすく仕上がっているアルバムだったと思います。その勢いはまだまだ続きそうです。
評価:★★★★★
Arca 過去の作品
Xen
Sheep(Hood By Air FW15)
Mutant
ほかに聴いたアルバム
ArtScience/Robert Glasper Experiment
新世代のジャズミュージシャンとして高い注目を集めているピアニスト、Robert Glasperの最新作。ジャズピアニストといっても、ジャズをベースにAOR、サイケロック、フリージャズ、HIP HOP、R&Bなどの多彩なジャンルを自由自在に取り入れ、なおかつポップにまとめあげている作品になっています。自由度が増した反面、良い意味でよりポップに聴きやすくなった印象も。
評価:★★★★★
Robert Glasper 過去の作品
Black Radio
Black Radio 2(Robert Glasper Experiment)
Paradise/ANOHNI
昨年リリースされた「Hopelessness」が大きな話題となった、Antony&the Johnsonsとして活動していたAntony Hegartyの新名義、ANOHNI。「Hopelessness」に続く新作は6曲入りのEP盤。ダイナミックで破壊的なサウンドを聴かせるエレクトロサウンドを主軸に据えつつ、そこに美しい彼女のボーカルがのるというスタイルは「Hopelessness」と同様。非常にスケール感も覚えるアルバムで、力強さを感じさせるアルバムでした。
評価:★★★★★
ANTONY AND THE JOHNSONS(ANOHNI) 過去の作品
The Crying Light
SWANLIGHT
CUT THE WORLD
Hopelessness
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