2017年を象徴する1枚
Title:DAMN.
Musician:Kendrick Lamar
今、最もアメリカで高い人気と話題を誇るラッパー、Kendrick Lamar。アルバムをリリースするたびにアメリカのみならず世界中で大きな話題となり、かついずれもアルバムも高い評価を受けているのですが先月、突然ニューアルバムのリリースを発表。そこからわずか1週間でリリースされたアルバムが本作です。チャート的にもビルボードチャートでは初動売上60万3千枚という今年1番という驚異的な売上を記録。3週目にしてミリオンセールスを達成するなど相変わらず怒涛の勢いを続けています。
彼は毎回、アルバムの中でアメリカの現代社会が抱える問題点や矛盾を鋭く描写し、それが賛否両論含めて大きな話題となっています。そのため彼の楽曲の何が話題になるかと言えばやはりそのリリック。ただ残念ながら突然リリースされたということもあってか、対訳付きの国内盤リリースは今年の7月を予定とかなり先になっています。ここらへん、確かに彼の書くリリックはアメリカ社会、それも黒人社会を反映しているため日本人にとっては複雑でわかりにくい部分も多いのでしょうが、これだけ話題になっているアルバムなだけにリリースから3ヶ月もインターバルが出来てしまうのは非常に残念に感じます。
以前のDrakeのアルバムでも参考にしたのですが、今回も「RO69」のサイトで音楽評論家の高見展氏により1曲毎に彼が何を綴っているのか解説したページがあったので今回もそれを参考にしつつアルバムを聴きすすめました。英語が出来ない私にとっては非常に参考になります。
【完全解読】ケンドリック・ラマー『DAMN.』は、これを読みながら聴け(前編)
【完全解読】ケンドリック・ラマー『DAMN.』は、これを読みながら聴け(後編)
このサイトを参考にすると本作でもこのアルバムで綴られているのはアメリカ社会が抱える問題点。それも単純な白人vs黒人みたいな手法ではなく、アメリカ社会の問題点を自分たちの内面で抱えている問題ではないかと問いかけています。この単純に「社会の責任」としないような手法は前作でも見られましたが、ここらへんの考察が賛否を産むとともに大きな評価を得る要因ではないでしょうか。
このリリックが直接的には理解できないのは非常に残念なのですが、本作が日本人にとっても十分楽しめるアルバムである点は間違いありません。例えば前作に収録されていた「Aright」に対する批判報道に対する反論として話題となった「DNA.」はまさにその強いメッセージ性を反映するかのような力強いラップが耳を惹きます。
今回の作品は、ソウルやファンク、ジャズ寄りの嗜好が強かった「To Pimp A Butterfly」や「untitled unmastered.」に比べてアーバン・ヒップホップ寄りに戻った作品となっていますが、それでもやはりジャジーでメロウなトラックやファンキーなサウンドが大きな魅力に。前作にも参加し、先日も傑作アルバムをリリースしたばかりのThundercatが参加した「FEEL.」はグルーヴィーなベースラインが非常に心地よいサウンドを醸し出していますし、RIHANNAが参加した「LOYALTY.」もスローファンクなナンバーがとても気持ちの良いグルーヴ感を作り出しています。
また「XXX.」ではあのU2が参加して話題も。ただテンポよいエレクトロトラックのどこにU2が?と思いつつ、最後にオチのように顔を出してくるという構成がユニーク。ほかも全体的に音を絞ったシンプルなトラックでメロウでグルーヴィーに聴かせるサウンドが非常に魅力的。聴いていてうっとり来るようなトラックだけでも十分聴ける傑作となっていました。
7月にリリースされる国内盤も対訳がついてくるだけに非常に気になるのですが・・・とりあえず今の段階でも十二分に今年を代表するアルバムと言える作品だと思います。トランプが大統領に就任した2017年という年を象徴するようなアルバムです。
評価:★★★★★
Kendrick Lamar 過去の作品
Good Kid M.a.a.D City
To Pimp A Butterfly
untitled unmastered.
ほかに聴いたアルバム
Sometimes I Sit & Think & Sometimes I Just Sit/Courtney Barnett
本作は先日聴いたグラミー賞ノミネート作品を集めたオムニバスアルバム「2016 Grammy Nominees」ではじめて知ったオーストラリアの女性シンガーによるアルバム。グラミー賞最優秀新人賞にノミネートされた彼女ですが、80年代から90年代のオルタナ系インディーギターロックを彷彿とさせる粗いギターサウンドが特徴的。イメージで言えばPIXIESやSONIC YOUTHを一人で演っているような感じ。そんな粗いギターロックに対してメロディーラインは至ってポップ。個人的には完全に壺にはまりました。本作は2015年リリース作なのでちょっと前のアルバムということなのですが・・・そろそろ次のアルバムがリリースされないかな。これからが非常に楽しくなってくるミュージシャンです。
評価:★★★★★
automaton/Jamiroquai
多分アラフォー世代にとってはその名前だけで懐かしさを覚えるイギリスのロックバンドJamiroquaiの7年ぶりとなる最新作。オリコンチャートではきちんとベスト10入りを記録し根強い人気を感じさせます。楽曲的にはJamiroquai風のダンスポップを今時なエレクトロサウンドにきちんとアップデートしてきた作品に。目新しさみたいなものは感じませんが、一方できちんと現役感は伝わってくる作品になっており、まだまだ第一線で活躍を続けるバンドなんだということがヒシヒシと伝わってくるアルバムになっています。
評価:★★★★
Jamiroquai 過去の作品
Rock Dust Light Star
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コメント
Jamiroquaiの「automaton」はまだまだ現役感が彼らにはあるということを証明した作品ですね。
投稿: ひかりびっと | 2019年1月24日 (木) 18時14分
>ひかりびっとさん
ご感想どうもありがとうございました。
投稿: ゆういち | 2019年1月26日 (土) 23時03分