あくまでもアナログ盤の名盤集
本日はまた最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。
今回紹介するのはブルースやソウルの専門誌「Blues&Soul Records」編纂による「アナログ・レコードで聴くブルースの名盤50選」。タイトル通り、ブルースの名盤、それもアナログ・レコードでリリースされたアルバムを50枚紹介している名盤ガイドです。
アルバムは1枚につき基本4ページにわたって紹介。うち最初の2ページはアナログ盤のジャケットとレーベルをカラーで紹介。次の1ページでそのアナログ盤に関しての解説を載せた後、最後の1ページは収録曲の演者や録音年などの解説という流れとなっています。
この書籍、いわゆる名盤ガイドなのですがひとつ大きなポイントがあります。それはあくまでもアナログ・レコードの名盤ガイドという点。それもブルースが再評価された60年代70年代あたりにリリースされたようなアナログ盤がメインとなっており、今の時点においてCDで聴ける「ブルースの名盤」とはちょっと異なるセレクトになっています。
例えばT-BONE WALKERに関しては「THE GREAT BLUES VOCALS AND GUTIAR OF T-BONE WAKER」が紹介されていますが本作はCD化されておらず、彼に関してのアルバムの紹介では同作のジャケットのイラストをつかった「モダン・ブルース・ギターの父」が紹介されるケースがほとんど。またB.B.KINGは「THE JUNGLE」が紹介されており同作はCD化もされているのですが、CDの「名盤集」にはあまり取り上げられていない印象を受けます。
最後の方は主に戦前ブルースを集めたオムニバスアルバムが多く紹介されていますが、戦前ブルースのミュージシャンに関して多くの編集盤がリリースされている現在、ここで取り上げられているオムニバス盤が紹介されるケースは少ないように思います。ただ、ラストに紹介されている「RCAブルースの古典」はCD化された今でも不朽の名作として紹介される作品。私もこのアルバムではじめて戦前ブルースに触れました・・・。
この書籍はどちらかというと60年代70年代のブルース再評価の流れの中でブルースミュージシャンがどのような取り上げられ方をしたか、ということが主眼になっているように感じます。実際、解説文にもそのような視点からの解説が多かったように思います。そういう意味では戦後のブルース再評価の雰囲気、または70年代の日本におけるブルースブームを追体験する1冊と言えるかもしれません。
そんなこともあって本作は若干お勧めできるユーザー層が限られてきそう。具体的に言うと
(1)ブルースブームをリアルタイムで体験し、あの時代を懐かしみたい方
(2)ブルース好きが高じてLP盤を集めようと思っている方
にはかなりお勧めできる1冊だと思います。一方で
(3)ブルースは好きだけどLP盤まで手が回らない方(あるいはCDで十分と思っている方)
(4)これからブルースを聴こうと思っている初心者
にはあまりお勧めできないかもしれません。一応最後にCD化の状況の紹介もありますが、こちらはおまけ的。値段も税別2,500円とそこそこ値が張りますし、(3)(4)のタイプの方は無理に手に取らない方が無難かも・・・。私自身はこの中で(3)なのですが、正直ちょっと高かったかな・・・という印象も受けました。
もっとも編者の方向性としてはあくまでもアナログ盤の名盤ガイドを意図している訳で、(3)(4)のタイプが同書の対象外となってしまうのは仕方ないのかもしれません。実際、仕事ぶりは非常に丁寧。オールカラーで紹介されるジャケット写真や裏表紙は私が見てもワクワクしてきますし、解説文もわずか1ページとはいえ読み応えはあります。ブルースのアナログ盤に興味があるのなら間違いなく必読の1冊です。
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