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2017年5月

2017年5月31日 (水)

今週もアイドル勢が1位

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もアイドル勢が1位獲得。今週は韓流の男性アイドルが1位獲得となりました。

今週の1位はGOT7「MY SWAGGER」。韓国の7人組アイドルグループ。日本でのシングルリリースは2015年の「LAUGH LAUGH LAUGH」以来、1年9ヶ月ぶりとなります。CD売上・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位、Twitterつぶやき数で2位を獲得。一方、PCによるCD読取数は64位と低迷。ラジオオンエア数は圏外とK-POPらしい局所的な人気となりました。オリコンでは初動売上3万4千枚で初登場3位を獲得。前作の初動3万5千枚(2位)からの若干のダウンとなっています。

2位初登場はコブクロ「心」。映画「ちょっと今から仕事やめてくる」主題歌。ストリングスとピアノでスケール感もって聴かせるバラードナンバー。先週の65位からCD発売にあわせて一気にランクアップです。実売数2位のほか、ラジオオンエア数でも9位を記録。一方、PCによるCD読取数は12位、Twitterつぶやき数20位と伸び悩みました。オリコンでも初動3万6千枚で2位初登場。

3位には人気女性声優3人組によるユニットTrySail「adrenaline!!!」が入ってきています。アニメ「エロマンガ先生」エンディングテーマ。軽快なスカパンク調のナンバーになっています。実売数3位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数15位と上位に入ってきているのに対してラジオオンエア数は圏外というのが声優系のユニットらしい感じ。オリコンでは初動1万8千枚で6位初登場。前作「オリジナル。」の1万2千枚(7位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位に渋谷凛(福原綾香),上条春菜(長島光那),神谷奈緒(松井恵理子),神崎蘭子(内田真礼),三船美優(原田彩楓) 「エチュードは1曲だけ」が入ってきています。アニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ劇場」エンディングテーマ。この手のキャラソンとしてはちょっと珍しさを感じる、かなりベタベタな昭和ムード歌謡曲路線に。実売数4位、PCによるCD読取数4位以外はすべて圏外という典型的な固定ファン集中型のキャラソンっぽい感じです。ちなみにオリコンでは同作が収録されている「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS! エチュードは1曲だけ」が初動売上3万7千枚で1位初登場。アイドルマスターがらみでは同じアニメのエンディングテーマ「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS! キラッ!満開スマイル」の初動売上5万2千枚(2位)よりダウンしています。

初登場はもう1曲。10位にBeverly「I need your love」が先週の15位からランクアップ。初登場から6週目にしてベスト10入りしてきました。彼女はアメリカ出身の女性シンガー。ちなみに「ビバリー」と読みます。ハイトーンボイスでシャウト気味のロック調のポップスナンバーを歌っています。本作はフジテレビ系ドラマ「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」主題歌。5月31日にデビューアルバムがリリースされましたが本作はそこからの先行配信となり、見事ベスト10ヒットを記録しました。

公式サイトの紹介ではアメリカ、フィリピン等の音楽祭で数々の受賞歴を持ち、日本が初めて体感するハイトーンボイスを持つ世界レベルの実力派シンガーと紹介されていますが、アメリカより売りやすい日本に出稼ぎにしたといった感じでしょうか。ちなみに同じ出稼ぎ系シンガーの先輩格(?)Che'nelle「Destiny」も先週から同順位をキープし今週も6位にランクインしロングヒットを記録しています。これでBeverlyもヒットを記録したら同じような出稼ぎシンガーが増えそうな予感が。

今週の初登場は以上。ロングヒット系は今週は全体的に落ち気味。西野カナ「パッ」は7位から9位にダウンしており今後は厳しい感じ。星野源「恋」は11位にランクダウンしてベスト10落ち。倉木麻衣「渡月橋~君 想ふ~」は21位までランクダウンし、ロングヒットもここまでかといった感じになっています。

今週のHot100は以上。アルバムチャートは明日に!

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2017年5月30日 (火)

突然の解散劇

Title:LOVE
Musician:WHITE ASH

このサイトを見ればわかる通り、個人的にいろいろなミュージシャンを片っ端から聴いていくタイプですし、シングルチャートも一通りチェックしてアイドル系やらアニソンやらも一応はチェックしていますし、そういう意味でこんなことを思うケースはあまり多くないのですが・・・もっと早く聴いておけばよかった・・・White Ashに関しては、今となって以前からチェックしていなかったことを後悔しています。

本作を持ってバンド解散となったWhite Ashのはじめてで最後となる2枚組のベストアルバム。彼らをはじめて知ったのはオリジナルアルバムで直近作の「SPADE3」。あくまでもイメージ的に最近よくありがちなJ-POP的でルーツレスなギターロックバンドを想像していたのですが、ノイジーなギターサウンドを聴かせる洋楽テイストも強いオルタナ系のロックサウンドをカッコよく聴かせるバンドと知り、一気にはまってしまいました。

今回のベスト盤についてもまさに「SPADE3」で感じたイメージを裏付けるような洋楽テイストの強いへヴィーなバンドサウンドをしっかり聴かせるカッコいいオルタナ系ギターロックの作品が並んでいました。ガレージ風な疾走感あるサウンドを聴かせる「Thunderous」、スピード感あるメロディーにエッジの利いたギターサウンドがカッコいい「Number Ninety Nine」、ミディアムテンポで聴かせる幻想的なギターサウンドがシューゲイザー系からの影響を感じる「Aurora」、ファンキーなサウンドをリズミカルに聴かせる「New Wave Surf Rider」など、それなりにバラエティーを持ったサウンドを聴かせつつ、バンドサウンドでグイグイと攻めてくるような楽曲が多く展開されていきます。

ただその一方、楽曲の構成としては抑えたAメロBメロからわかりやすいフレーズのサビに入っていくという、意外とJ-POP的な楽曲も多く、またメロディーラインもポップでわかりやすいフレーズの曲が少なくありません。中には「Xmas Present For My Sweetheart」みたいな楽曲のテーマの選び方を含めてJ-POP的な楽曲も含まれています。この洋楽的なサウンドと意外とJ-POP的なメロディーラインのバランスも彼らの大きな魅力でしょう。

もっとも彼らが所属している事務所はサザンや福山雅治などが所属していることでも知られる業界大手のアミューズで、このJ-POP的な構成の楽曲は売れるために求められたものかもしれません。実際彼らはアニメ「モンスターストライク」とのタイアップなどタイアップ曲に恵まれていたのもアミューズ所属だからこそ。今回の解散劇に関しては、そんな事務所との軋轢や、その中で生じたメンバーとの不和が要因ということで噂されています。

実際、各種のタイアップの割には売上はいまひとつ伸び悩みましたし、彼らみたいな洋楽テイストが強いバンドは、スタイル的にはパンクバンド的な装いをしながらも中身はベタベタなルーツレスのJ-POPという最近の売れ筋ロックバンドがメインの音楽シーンの中ではなかなか売れるのは難しいのかもしれません。同じく洋楽テイストが強いながらも大ブレイクしているONE OK ROCK(同じアミューズ所属・・・)のような、ある種のわかりやすさもありません。

とはいえ彼らみたいな本格志向のロックバンドは、売り方さえもうちょっと工夫すればもっと売れたと思うんですけどね・・・。また本作はそんなに「売れる」ことに主眼を置くべきバンドではなかったのかもしれません。そういう意味で今回のベスト盤を聴いて、これで彼らが最後というのは非常に残念に感じましたし、またもっと早くから聴いておけばよかったと強く後悔しました。いいバンドだと思うのですが・・・これからはメンバーそれぞれのソロでの活躍に期待したいところです。

評価:★★★★★

WHITE ASH 過去の作品
SPADE3
Quest


ほかに聴いたアルバム

PARADISE/KEYTALK

人気上昇中のギターロックバンドの新作。「ギターロック」というよりは前半はツインボーカルによるむしろアイドルポップみたいな軽快でダンサナブルなポップソングが続きます。後半、ロック寄りの作品もあるものの、全体的にはアイドルソング、それも一昔前のようなダンスポップが続き、ポップでライブ受けはするかもしれませんが、正直言って聴いていてかなりつらい・・・つーか、簡単に表現するために「アイドルポップ」という書き方をしているけど、アイドルだってもっとおもしろい曲を歌っているよねぇ。

評価:★★

KEYTALK 過去の作品
HOT!

80:06/80KIDZ

80KIDZが以前からリリースしていたダンストラックシリーズ「80(ハチ・マル)」が3年ぶりに再開。1月にリリースされた3曲入りの「80:05」を皮切りに4か月連続リリースとなりました。今回、「80:06」は4曲入りでミニアルバム扱いだったためここでも紹介。ミニマルなダンスチューン「Etape02」、ちょっと歪んだピアノの音色がユニークな「IFDB」、お祭り的なビートで楽しげな「Loup」、近未来的なエレクトロビートの「Bougie」と4曲四様でクラブユースのダンスビートが楽しめます。ちなみにこのシリーズをまとめた「80:XX-05060708」も先日リリースされたようなので、他の「80」シリーズの曲についてはそちらのアルバムで。

評価:★★★★★

80kidz 過去の作品
THIS IS MY SHIT
THIS IS MY WORKS
WEEKEND WARRIOR
TURBO TOWN
80:XX-01020304
FACE
Gone EP
5

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2017年5月29日 (月)

「メタの合間につくりました。」

Title:EMO
Musician:TOWA TEI

最近ではMETAFIVEでの積極的な活動が目立つTOWA TEI。それもあってか本作の宣伝文句がそのまま「メタの合間につくりました。」(笑)。METAFIVEでの活動の中でもしっかりと自作を制作していたということからも彼の旺盛な活動意欲を感じます。ただ今回、「メタの合間」ということを宣伝文句として強調したのはもうひとつ大きな理由があるように感じます。それは今回のアルバムはMETAFIVEからの影響をアルバム全体に強く感じ、まさにメタの合間につくったアルバムらしい作品となっていたからです。

1曲目「Exformation」は高橋幸宏とLEO今井がボーカルで参加。他にもコーネリアス以外のMETAFIVEのメンバーが参加している作品に。ファンキーでリズミカルなナンバーはバンド色も強く、METAFIVEからの影響を強く感じます。続く「Brand Nu Emo」はミュージシャン名義からしてMETAFIVE with MIZUHARA SISTERSとMETAFIVE名義の楽曲。こちらもMETAFIVEらしいバンド色も強いファンキーなリズムが心地よいポップチューンに仕上がっています。

この2曲に関してはTOWA TEI本人もインタビューで「METAFIVEに入れてもいい曲だった」というだけにもともとMETAFIVEを意識して書かれた楽曲なのでしょう。ただその後の曲に関しても基本的にはこの2曲の流れに沿った楽曲が並んでいます。続く「GBI」も軽快なエレクトロファンクなナンバーが続きますし、「Sugar」はUAがボーカルに入ることによりトライバルな雰囲気が加わり、中盤のひとつのインパクトとなっていますが、その後に続く「Xylocopa」「TG」はTOWA TEIソロとしての色合いが強い、実験的な側面も強いナンバーとなっているものの前半同様にエレクトロファンクな楽曲に仕上がっています。

また彼の楽曲に以前から共通するように女性ボーカルが多く起用されているのも特徴的。前述の「Brand Nu Emo」では水原希子・佑果の姉妹、「Sugar」ではUA、「GBI」ではカイリー・ミノーグが参加しているほか、「REM」ではアイドルグループゆるめるモ!のあのが参加。ちょっとウイスパー気味なボーカルが楽曲に見事マッチしています。

ここらへんの女性ボーカルに関しても、METAFIVEは基本的に男性主体だっただけにMETAFIVE的なサウンドに女性ボーカルがのるという対比もおもしろいところ。またインスト曲に関してはTOWA TEIらしいサウンドを強く入れてきており、METAFIVEの影響をほどよく受けつつ、その中できちんとTOWA TEIのアルバムとして仕上げているのが実に見事です。

TOWA TEIのアルバムは基本的に毎作それなりに楽しめたのですが、さらっと聴きながすことが出来ていまひとつ物足りなさを感じていましたが今回のアルバムは楽曲にしっかりとしたフックも利いており、非常に楽しむことが出来た傑作でした。METAFIVEの活動がTOWA TEIのソロでの活動へも良い意味で影響を与えた結果だったと思います。個人的にいままで聴いたTOWA TEIのアルバムの中では間違いなく最高傑作だと言える1枚でした。

評価:★★★★★

TOWA TEI 過去の作品
BIG FUN
MACH2012
LUCKY
CUTE


ほかに聴いたアルバム

I STAND ALONE/GLIM SPANKY

ルーツ志向のブルースロック路線が人気となっている男女2人組デゥオの新作ミニアルバム。Superflyの二番煎じというイメージが強かったのですが、本作ではボーカル松尾レミのしゃがれ声のボーカルをより押し出し、ルーツロック志向が強まった印象があります。また「美しい棘」ではフォーキーな路線、「お月様の歌」ではアコギとストリングスでしんみりポップとルーツロック志向とは異なるベクトルの曲も聴かせてくれます。ただ5曲だけだとちょっと中途半端さを感じてしまう部分もあり、次のフルアルバムに期待したいところです。

評価:★★★★

GLIM SPANKY 過去の作品
ワイルド・サイドを行け
Next One

COLORS/DEPAPEPE

途中ベスト盤をはさみ、オリジナルアルバムとしては約2年8ヶ月ぶり、ちょっと久々となってしまったギターインストデゥオの8枚目となるフルアルバム。全編、アコースティックギターを爽快にかきならし、メロディアスなポップスを奏でるインスト曲。「Letter from the forest」のように爽快なサウンドの中、ちょっと切なさを感じるメロを聴かせるような曲が大きな魅力でしょうか。デビュー以来のDEPAPEPEサウンドを守り続けている感じで、良くも悪くもいつも通りのギターインスト。安心して楽しめるアルバムです。

評価:★★★★

DEPAPEPE 過去の作品
デパクラ~DEPAPEPE PLAYS THE CLASSIC
HOP!SKIP!JUMP!
デパナツ~drive!drive!!drive!!!~
デパフユ~晴れ時どき雪~
Do!
デパクラII~DEPAPEPE PLAYS THE CLASSICS
ONE
Acoustic&Dining
Kiss
DEPAPEPE ALL TIME BEST~COBALT GREEN~
DEPAPEPE ALL TIME BEST~INDIGO BLUE~

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2017年5月28日 (日)

ミニマルメロウがグルーヴ感が魅力的

Title:Tempest
Musician:D.A.N.

ここのサイトでもよく取り上げているのですがここ最近、メロウなグルーヴを聴かせるシティポップの系譜にあるミュージシャンがひとつのブームとなっています。昨年大きな話題となったサニーデイサービスの新譜もその系統ですし、先日紹介したばかりのBase Ball Bearの新譜にもそんな影響を強く感じます。さらに今年アルバム「THE KIDS」が大きな話題となったSuchmosなどはそんなムーブメントの中心にいるミュージシャンと言って間違いないでしょう。

得てしてブームというのは似たようなタイプのミュージシャンが雨後の竹の子のようにあらわれてつまんなくなってしまう傾向にあるのですが、このムーブメントはまだ大ブレイクしたミュージシャンが少ないからでしょうか、各々のミュージシャンが個性を発揮しており、「似たミュージシャンが乱立」という状況になっておらず、いまなお数多くの傑作がリリースされ続けています。そして今回紹介するD.A.N.というミュージシャンもその系譜の中で紹介されるようなミュージシャンの一組といえるかもしれません。

昨年4月にリリースしたアルバム「D.A.N.」が大きな話題となり2年連続でフジロックへも出演。公式サイトの紹介文をそのまま引用すると「ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求したニュージェネレーション」だそうですが、この紹介文が示すとおり、クラブ系にカテゴライズされる彼ら。メロウに聴かせるミニマルなサウンドにトリップできるようなそんな音を奏でています。

今回紹介するアルバムは新曲が3曲のみで残り2曲は別バージョンというスタイルなのですが、この3曲がまずとても心地よいサウンドを奏でています。1曲目「SSWB」はまずメロウにループするサウンドがとても心地よいのですが、ここにスチールパンの美しい奏がのることにより南国風の素敵な空気が流れてきます。また後半に流れてくるグルーヴィーなベースラインの心地よいこと。そのサウンドに軽くトリップできる作品になっています。

続く2曲目「Shadows」はダークなサウンドに物悲しげなメロディーラインが耳に残る楽曲。ちょっとチープさを感じるシンセの音色も楽曲に幻想的な雰囲気を与えていてとても心地よいものがあります。全体的に物憂げな雰囲気が流れるドリーミーなポップチューンに仕上がっています。

タイトルチューンとなった「Tempest」はトライバルなコーラスからスタートし、怪しげな雰囲気満点なスタート。その後もどこかサイケちっくなサウンドが耳をひく一方、スチールパンの奏でるさわやかなサウンドとベースが奏でるグルーヴ感の対比がおもしろいミニマルでメロウなサウンドが続いていきます。

アルバムの最後に収録された2曲のリミックスナンバーはいずれもD.A.N.の楽曲のミニマルグルーヴが強調されたようなアレンジに。「SSWB(AOKI takamasa Remix)」ではエレクトロサウンドが前面に押し出されており、オリジナルで感じた雰囲気とは異なる無機質的なアレンジに仕上げています。

わずか5曲入りのミニアルバムながらもどの曲もそれぞれ異なるアイディアのつまったトラックに惹きこまれる内容になっていました。ただいずれの曲に共通するのは、そのミニマルでメロウな心地よいグルーヴ感。これがとても心地よいリズムを作り出しており、聴いていてどんどんその世界に引き込まれます。軽くトリップ感を味わうことができる楽曲が並んでいました。

またどこかけだるさを感じるボーカルとメロディーラインもサウンドのトリップ感に大きく寄与しておりアルバムの大きな魅力となっています。このボーカルとメロディーの雰囲気、ちょっとOGRE YOU ASHHOLEに似たようなものを感じるかも。ボーカルやメロディーも一体となって楽曲のグルーヴ感を作り出していました。

話題となっているのも納得の傑作な1枚。また新たに注目すべきバンドがあらわれました。今回はミニアルバムということで曲数はわずか5曲でしたが、ぜひとももっと聴いてみたいです。これからの活躍がとても楽しみになってくるバンドでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

TRACES VOL.2/the GazettE

the GazettE3枚目となるベスト盤。ただ選曲は「歌モノ」のみに絞っており、事実上のバラードベストとなっています。歌謡曲テイストの強い哀愁感あるメロディーの楽曲が並んでおり、良くも悪くもベタという印象も。耽美的な雰囲気の曲が多く、いかにも「ヴィジュアル系」らしい雰囲気が強くなってしまっているので、この手の曲が好きならはまりそうですが、そうでないとちょっと苦手な感じの選曲かも。

評価:★★★

the GazettE 過去の作品
TRACES BEST OF 2005-2009
DIM
TOXIC
DIVISION
BEAUTIFUL DEFORMITY
DOGMA

まばたき/YUKI

約2年半ぶり、ちょっと久々となってしまったYUKIのニューアルバム。決して派手で強いインパクトがあるといった感じではないためちょっと地味にも感じられるのですが、ロックからジャズ、エレクトロなど様々な要素を取り込みながらもポップにまとめている幅広い楽曲が魅力的。特に洋楽っぽい雰囲気とJ-POP的なベタさをほどよくブレンドされたバランス感覚は絶妙。卒なく落ち着いた雰囲気でまとめあげた「大人のポップス」に仕上げています。ここらへんのセンスの良さがジュディマリ時代のような派手なヒット曲がなくても高い人気を持続させている大きな要素なんでしょうね。

評価:★★★★★

YUKI 過去の作品
five-star
うれしくって抱きあうよ
megaphonic
POWERS OF TEN
BETWEEN THE TEN
FLY

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2017年5月27日 (土)

全曲「GET WILD」

Title:GET WILD SONG MAFIA
Musician:TM NETWORK

出ました!ネタ的な意味でもかなり話題となった本作。全4枚組4時間超以上というボリュームある内容のすべての曲が「GET WILD」というとんでもないアルバム。私の記憶ではもともとネット上で全曲「Lifetime Respect」という三木道山のアルバムが発売されたという嘘情報のネタが発端。その後実際に織田裕二の「Love somebody」やm.c.A.T.の「Bomb A Head」、松崎しげるの「愛のメモリー」など、アルバム1枚が1曲の別バージョンの曲が並ぶというネタ的なアルバムがリリースされました。

本作はある意味、その「アルバム全曲が1曲の別ヴァージョン」の究極的な形態。もともと「GET WILD」はいろいろなアルバムに様々なバージョンが形をかえて収録されていたり、シングル曲としても別バージョンが何度も発売されていたりといろんなバージョンがあることは認識されていました。実際、「アルバム1枚すべて同じ曲」のアルバムの先駆け的な存在として2004年にリリースされたボックス盤「WORLD HERITAGE DOUBLE-DECADE COMPLETE BOX」の中に全曲が「GET WILD」という「ALL the “Get Wild” ALBUM」が既にリリースされていたりしました。

それだけTM NETWORKの代表曲として人気を誇る「GET WILD」というナンバー。ただアルバムの中でのメンバーへのインタビューでも語られているとおり若干不思議な曲で、TM NETWORKで一番売れた曲でもなければデビュー曲でもありません。またファンへの人気投票を行っても、ひょっとしたらこの曲が一番好きというファンは決して多くはないかもしれません。個人的にも同じ「シティーハンター」のエンディングテーマとしても「GET WILD」よりも「STILL LOVE HER」の方が好きかもしれません。

しかし楽曲が登場した時のインパクトとしては他の曲と比べてずば抜けたものがあるのではないでしょうか。何よりも本作がタイアップとなったアニメ「シティーハンター」のエンディングの衝撃は今でも忘れられません。アニメ本編の最後のシーンに重なるようにピアノのイントロが静かにスタート。そのアニメの余韻を残すように楽曲がはじまるのですが、このアニメ本編からエンディングテーマへの流れが鳥肌が立つほどカッコいいものがあります。このアニメタイアップの衝撃が「GET WILD」が話題となった大きな要因なのは間違いありません。

そんな「GET WILD」は時代を経て様々なアレンジを施して変化していきます。今回のアルバムではバージョンがリリースされた順に並んでいるだけに、メンバーが、特に小室哲哉が「GET WILD」に対するスタンスの変化がわかり興味深いものがありました。「GET WILD」が最初に大きな変化を見せるのが89年にリリースされた「GET WILD '89」。原曲に対して宇都宮隆のボーカルのサンプリングが効果的に用いていたりして、よりテクノ色が強くなる本作。小室哲哉本人が「最初に僕が『こうなったら良いな』というアレンジに仕上がった」と語っているとおり、完成形と考えていたのか、その後、TM NETWORKがTMNとなり1994年に解散するまでのバージョンは基本的に「'89」に準拠するバージョンとなっています。

ただ「'89」ではアニメでも印象的だったピアノのイントロが削除されています。おそらく小室哲哉はこのピアノのイントロはあくまでもタイアップ向けで楽曲にとっては本来不必要と考えていたのでしょう。ところがおもしろいことにDISC2以降、再結成後のバージョンについてはこのピアノのイントロが復活しており、「'89」よりもむしろ原曲に準拠したアレンジが多くなります。それだけ「シティーハンター」のエンディングに流れたピアノのイントロからスタートするバージョンがファンにとっては印象的だったということでしょうし、TM NETWORKとしてもそんなファンの意向は無視できなくなってきた、ということでしょう。また94年までの活動についてはメンバーの意向が第一となっていたのに対して、再結成後はそうはいかなくなかった、ということを意味しているのかもしれません。

また「GET WILD」の傾向としてもうひとつ顕著だったのが、最近のバージョンになればなるほどイントロが長くなってくるという点でした。もともと94年の最初の解散時までのバージョンも徐々に長くなっていたのですが、ここ最近ではそれがさらに顕著。Disc3に収録されている2015年以降のバージョンでは20分近い長いバージョンとなっているのですが、10分以上がイントロと、既にイントロ部分だけで別の曲になってしまっています。

その長~いイントロを聴いて気がついたのですが、(うすうす感じていたのですが)正直言って、このイントロ部分がいまひとつつまんない・・・。はっきりいって単調なトランスで、特におもしろみもない単調なリズムが鳴っていて、音としてもはっとするような驚きのある一音がほとんどありません。

その事実にあらためて気が付いたのが今回のアルバム、あの石野卓球によるリミックスが収録されていたため。この石野卓球によるリミックスは、電気グルーヴの最新作「TROPICAL LOVE」に通じるような雰囲気を持ったラテン風のリミックスなのですが、リズムパターンとかも聴かせるものがあり、また宇都宮隆のボーカルをサンプリングしているのですが、このサンプリングもリズムパターンやサウンドとピッタリマッチ。見事ラテン風な雰囲気の曲に仕上がっています。

しかし興味深いのはインスト曲としてはおもしろさを感じない小室哲哉のサウンドがポップスの「アレンジ」として流れると断然おもしろく曲を引き立てているという点。この言い方がピッタリ来るのが微妙なのですが小室哲哉が立っている土俵ってあくまでも「テクノ」ではなく「J-POP」なんでしょうね。本作ではそのことを再認識することが出来ました。

また今回のアルバム、DISC4として「GET WILD」の曲を様々なミュージシャンがカバーしていたのですが、女性ボーカル曲がイマイチで男性ボーカル曲が曲にマッチしていた点も興味深かったです。おそらく原曲が宇都宮隆のボーカルを意識して作られた影響なんでしょうね。カバー曲をこうやって並べることによってその事実にも気が付かされました。

流れてくる曲が次から次への「GET WILD」なのでファン以外にはあまりお勧めできません。ただ楽曲によってバリエーションが様々だったため、4時間以上の長さにも関わらず、意外とダレずに最後まで聴くことが出来ました。またこれがおそらく「GET WILD」という曲が持っている「曲の力」なんでしょう。万人にお勧めのアルバム、という訳ではありませんがファンにとっては間違いなく聴くべきアルバムでしょう。

評価:★★★★

TM NETWORK 過去の作品
SPEEDWAY
TM NETWORK THE SINGLES 1
TM NETWORK THE SINGLES 2
TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999
DRESS2
QUIT30


ほかに聴いたアルバム

SHISHAMO 4/SHISHAMO

人気上昇中の女性3人組ロックバンドSHISHAMOのニューアルバム。チャットモンチーブレイク以降、ねごととか赤い公園とか女性オンリーのバンドが増えていますね。彼女たちはその中でも非常にシンプルなギターロックが特徴。歌詞も素直な女の子の気持ちをストレートに描いた曲が多く、良くも悪くも癖のないギターロックを聴かせてくれます。サウンドにもメロにももう一癖あればよりおもしろいと思うのですが・・・。

評価:★★★★

SHISHAMO 過去の作品
SHISHAMO 3

LIFE IS A MIRACLE/黒猫チェルシー

黒猫チェルシーといえば最近はバンドよりもボーカル渡辺大知の俳優としての活躍が目立ちますが、バンドとしても活動を再開。約4年3ヶ月ぶり、久々のアルバムがリリースされました。黒猫チェルシーといえば以前からガレージサウンドがメインながらもどこかポップの色合いを強く感じましたが、久々の新作に関してもガレージサウンドをメインとしつつポップで端整にまとめあげているのが特徴的。以前の作品に比べてより「ポップ」としての側面が強調されたアルバムになっていました。もっと多くのリスナー層に受け入れられてもよさそうな印象が。残念ながら俳優渡辺大知の知名度がバンドに及んでいないようで売上的には苦戦しているようですが、今後の彼の活躍次第ではバンドのブレイクもありえそう。

評価:★★★★

黒猫チェルシー 過去の作品
All de Fashion
猫Pack
NUDE+
猫Pack2
HARENTIC ZOO
Cans Of Freak Hits

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2017年5月26日 (金)

2017年を象徴する1枚

Title:DAMN.
Musician:Kendrick Lamar

今、最もアメリカで高い人気と話題を誇るラッパー、Kendrick Lamar。アルバムをリリースするたびにアメリカのみならず世界中で大きな話題となり、かついずれもアルバムも高い評価を受けているのですが先月、突然ニューアルバムのリリースを発表。そこからわずか1週間でリリースされたアルバムが本作です。チャート的にもビルボードチャートでは初動売上60万3千枚という今年1番という驚異的な売上を記録。3週目にしてミリオンセールスを達成するなど相変わらず怒涛の勢いを続けています。

彼は毎回、アルバムの中でアメリカの現代社会が抱える問題点や矛盾を鋭く描写し、それが賛否両論含めて大きな話題となっています。そのため彼の楽曲の何が話題になるかと言えばやはりそのリリック。ただ残念ながら突然リリースされたということもあってか、対訳付きの国内盤リリースは今年の7月を予定とかなり先になっています。ここらへん、確かに彼の書くリリックはアメリカ社会、それも黒人社会を反映しているため日本人にとっては複雑でわかりにくい部分も多いのでしょうが、これだけ話題になっているアルバムなだけにリリースから3ヶ月もインターバルが出来てしまうのは非常に残念に感じます。

以前のDrakeのアルバムでも参考にしたのですが、今回も「RO69」のサイトで音楽評論家の高見展氏により1曲毎に彼が何を綴っているのか解説したページがあったので今回もそれを参考にしつつアルバムを聴きすすめました。英語が出来ない私にとっては非常に参考になります。

【完全解読】ケンドリック・ラマー『DAMN.』は、これを読みながら聴け(前編)
【完全解読】ケンドリック・ラマー『DAMN.』は、これを読みながら聴け(後編)

このサイトを参考にすると本作でもこのアルバムで綴られているのはアメリカ社会が抱える問題点。それも単純な白人vs黒人みたいな手法ではなく、アメリカ社会の問題点を自分たちの内面で抱えている問題ではないかと問いかけています。この単純に「社会の責任」としないような手法は前作でも見られましたが、ここらへんの考察が賛否を産むとともに大きな評価を得る要因ではないでしょうか。

このリリックが直接的には理解できないのは非常に残念なのですが、本作が日本人にとっても十分楽しめるアルバムである点は間違いありません。例えば前作に収録されていた「Aright」に対する批判報道に対する反論として話題となった「DNA.」はまさにその強いメッセージ性を反映するかのような力強いラップが耳を惹きます。

今回の作品は、ソウルやファンク、ジャズ寄りの嗜好が強かった「To Pimp A Butterfly」や「untitled unmastered.」に比べてアーバン・ヒップホップ寄りに戻った作品となっていますが、それでもやはりジャジーでメロウなトラックやファンキーなサウンドが大きな魅力に。前作にも参加し、先日も傑作アルバムをリリースしたばかりのThundercatが参加した「FEEL.」はグルーヴィーなベースラインが非常に心地よいサウンドを醸し出していますし、RIHANNAが参加した「LOYALTY.」もスローファンクなナンバーがとても気持ちの良いグルーヴ感を作り出しています。

また「XXX.」ではあのU2が参加して話題も。ただテンポよいエレクトロトラックのどこにU2が?と思いつつ、最後にオチのように顔を出してくるという構成がユニーク。ほかも全体的に音を絞ったシンプルなトラックでメロウでグルーヴィーに聴かせるサウンドが非常に魅力的。聴いていてうっとり来るようなトラックだけでも十分聴ける傑作となっていました。

7月にリリースされる国内盤も対訳がついてくるだけに非常に気になるのですが・・・とりあえず今の段階でも十二分に今年を代表するアルバムと言える作品だと思います。トランプが大統領に就任した2017年という年を象徴するようなアルバムです。

評価:★★★★★

Kendrick Lamar 過去の作品
Good Kid M.a.a.D City
To Pimp A Butterfly
untitled unmastered.


ほかに聴いたアルバム

Sometimes I Sit & Think & Sometimes I Just Sit/Courtney Barnett

本作は先日聴いたグラミー賞ノミネート作品を集めたオムニバスアルバム「2016 Grammy Nominees」ではじめて知ったオーストラリアの女性シンガーによるアルバム。グラミー賞最優秀新人賞にノミネートされた彼女ですが、80年代から90年代のオルタナ系インディーギターロックを彷彿とさせる粗いギターサウンドが特徴的。イメージで言えばPIXIESやSONIC YOUTHを一人で演っているような感じ。そんな粗いギターロックに対してメロディーラインは至ってポップ。個人的には完全に壺にはまりました。本作は2015年リリース作なのでちょっと前のアルバムということなのですが・・・そろそろ次のアルバムがリリースされないかな。これからが非常に楽しくなってくるミュージシャンです。

評価:★★★★★

automaton/Jamiroquai

多分アラフォー世代にとってはその名前だけで懐かしさを覚えるイギリスのロックバンドJamiroquaiの7年ぶりとなる最新作。オリコンチャートではきちんとベスト10入りを記録し根強い人気を感じさせます。楽曲的にはJamiroquai風のダンスポップを今時なエレクトロサウンドにきちんとアップデートしてきた作品に。目新しさみたいなものは感じませんが、一方できちんと現役感は伝わってくる作品になっており、まだまだ第一線で活躍を続けるバンドなんだということがヒシヒシと伝わってくるアルバムになっています。

評価:★★★★

Jamiroquai 過去の作品
Rock Dust Light Star

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2017年5月25日 (木)

19年2ヶ月ぶりの1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

根強い人気を感じます。

今週1位を獲得したのはTHE YELLOW MONKEY「THE YELLOW MONKEY IS HERE. NEW BEST」。昨年再結成を果たした彼らの再結成後初となるアルバムでもある本作はタイトル通りのベスト盤。え?またベスト盤・・・?と思ってしまうそうなのですが本作はベスト盤はベスト盤なのですが全曲新録という内容。2013年にリリースしたベスト盤「イエモン-FAN'S BEST SELECTION-」の楽曲を新たに録音したアルバムとなっており、ファンにとってはオリジナルアルバム感覚で聴けるうれしいアルバムであるのと同時に、メンバーにとっては再度自分たちの立ち位置を確認した再結成後の第一歩としてふさわしいアルバムとも言えるかもしれません。

初動売上は4万5千枚。直近作はベスト盤の「イエモン-FAN'S BEST SELECTION-」の初動4万2千枚(2位)よりアップ。なんと彼らがアルバムで1位を獲得したのは1998年の「PUNCH DRUNKARD」以来19年2ヶ月ぶりという快挙。もっともいくらCDが売れないからといって初動4万5千枚はちょっと寂しい感じもするのですが、ただ本作はデビューした記念日にリリースされたということで月曜日のリリース。チャート的にはもっとも不利な発売日でのリリースとなり、それでも1位を獲得するあたり、彼らの人気の高さをうかがわせます。

2位初登場はLinked Horizon「進撃の軌跡」がランクイン。Sound Horizonの別名義でのプロジェクトによる2枚目のアルバム。アニメ「進撃の巨人」に使用されたタイアップ曲を中心とした選曲になっています。初動売上2万5千枚は前作「ルクセンダルク大紀行」の1万6千枚(15位)からアップ。Linked Horizonとしてはアルバムでの初のベスト10ヒットとなりました。

3位にはさユり「ミカヅキの航海」が入ってきました。これがアルバムではデビュー作となる女性シンガーソングライター。「酸欠少女」というキャッチコピーを使用したり、彼女をそのまま描いたアニメキャラを登場させ「2.5次元パラレルシンガーソングライター」と名乗ったり、中2病的な雰囲気がちょっと狙いすぎな感じもします。初動売上2万3千枚でデビューアルバムながらも見事ベスト3入り。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に小泉今日子「コイズミクロニクル~コンプリートシングルベスト 1982-2017~」がランクインしてきました。デビュー35周年を記念してリリースされた、彼女の全シングルを網羅した3枚組のベスト盤。最近では天野春子名義で歌ったNHKの「あまちゃん」に使用された「潮騒のメモリー」がヒットして話題となりましたが、音楽活動としては散発的な活動が続いている彼女。そんな彼女ですが、このベスト盤では見事ベスト10ヒットを果たしました。初動売上1万6千枚。直近作「Koizumi Chansonnier」の3千枚(21位)より大幅増。彼女のアルバムでのベスト10入りは1992年3月にリリースしたベスト盤「K2 Best Seller」で記録した2位以来、25年2ヶ月ぶり(!)となります。

5位には日本でも高い人気を誇るアメリカのロックバンドLinkin Park「One More Light」が初登場でこの位置に。初動売上1万5千枚は前作「The Hunting Party」の2万7千枚(4位)からダウン。ただし全世界同時リリースの影響で金曜日リリースとなった影響も。

7位初登場は「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ COMPLETEBEST」。タイトル通りTBS系アニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」を収録したベスト盤。初動売上1万3千枚でベスト10入りを記録しています。

初登場最後は8位にランクインしたカイワレハンマー「BegInner2」。You Tuberである男性2人によるラップユニット。初動売上8千枚で前作「Prequel」の2千枚(24位)からアップ。初のベスト10入りとなりました。しかし、You TuberがこうやってCDデビューしちゃう時代なんですね・・・。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年5月24日 (水)

アイドル勢の1位獲得が続く

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

アイドル勢の1位獲得が続いている最近のHot100。今週はジャニーズ系。1位は亀と山P「背中越しのチャンス」が獲得しました。名前の通り、KAT-TUNの亀梨和也と山下智久とのユニット。2人が共演している日テレ系ドラマ「ボク、運命の人です。」主題歌として起用されています。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数3位を獲得し、CD販売にあわせて先週の41位からランクアップして1位獲得となりました。ちなみにこの2人、2005年に修二と彰名義でシングル「青春アミーゴ」をリリースしており、それ以来の顔合わせとなっています。なおオリコンでも初登場1位を獲得。初動売上17万5千枚は12年前の「青春アミーゴ」で記録した初動52万枚(1位)から大幅減。まあ、12年前とはCD市場の状況が全く違うので単純比較はできませんが。

2位にはスリーピースパンクバンドWANIMA「CHARM」が先週36位からCD発売にあわせてランクインです。リクルート「タウンワーク」CMソング。爽快なポップスパンクなナンバーで、おそらくパンク系では最も今、勢いのあるバンドと言えるでしょう。実売数3位、ラジオオンエア数3位、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数8位、You Tube再生回数10位と万遍なく上位にランクインしています。オリコンでも同曲が収録されたシングル「Gotta Go!!」が3位初登場。初動売上4万5千枚は前作「JUMP UP!!」の3万6千枚(4位)からランクアップし、シングルアルバム通じて初のベスト3ヒットとなりました。なお前作「JUMP UP!!」の間に配信シングル「やってみよう」がリリースされておりHot100では最高位8位を記録しています。

3位は韓国の男性アイドルグループMONSTA X「HERO」が初登場でランクインしています。実売数2位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数5位を記録。ラジオオンエア数が圏外なのは相変わらずのK-POPらしい傾向。途中、効果音としてスーパーマリオでつかわれる効果音が入ってくるのですが、歌詞にも「囚われの城からだって救い出して」「マンマミーアじゃ済まされないかも」など明らかにマリオを意識した歌詞が登場するので、そういうことなのでしょう。本作がデビューアルバムでいきなりのベスト10入り。オリコンでも初動売上4万8千枚で2位に入ってきています。

今週は他にもK-POP勢も目立つチャートに。4位に防弾少年団「血、汗、涙」が先週の1位からランクダウンしながらもこの位置をキープしていますし、さらに5位にはTWICE「SIGNAL」が初登場でランクイン。こちら9人組のK-POPの女性アイドルグループなのですが、メンバーのうち3人が日本人、1人が台湾人と日台での販売を意識した構成になっています。本作はシングルリリースはありませんが、You Tube再生回数で1位、Twitterつぶやき数で2位を獲得し、見事ベスト10入りしてきました。6月28日に日本でのデビューアルバム「#TWICE」のリリースも予定されていて注目されているのですが、以前、彼女たちが行っている「TTポーズが女子中高生の間で流行」なんていうかな~~り怪しいニュースが流れただけに、一部メディアによるごり押しぶりが気になるところなのですが・・・。

今週の初登場組は以上。なおロングヒット組ですが、まず星野源「恋」。今週は9位から8位にランクアップ。You Tube再生回数はついに1位を明け渡したものの、まだ2位をキープ。PCによるCD読取数でも10位に入っており、まだまだ根強い人気を感じます。またロングヒットの気味だった倉木麻衣「渡月橋~君 想ふ~」は6位から10位にランクダウンし、後がない状況になりました。

また主にダウンロードの売上のみで先週4位にランクインしたChe'nelle「Destiny」が今週6位をキープ。また西野カナ「パッ」は先々週の3位から5位→7位とランクダウンしているもののスローペース。今後の動向も気になります。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2017年5月23日 (火)

3人組となった新たな一歩

Title:光源
Musician:Base Ball Bear

昨年、ギターの湯浅将平が脱退。それも突然、レコーディングの現場にあらわれなくなり「失踪」という形での脱退という非常に衝撃的な脱退劇となりました。その結果、制作活動が一時ストップしたのかベスト盤を挟み、1年5ヶ月ぶりにリリースされたのが本作。メンバーが3人となって初のオリジナルアルバムとなりました。

そんな突然の脱退劇という予期せぬ事態で3人組となったBase Ball Bearですが今回のアルバムを聴くと、その脱退劇がむしろプラスに働いたのではないか、と思うほどの出来になっていました。今回のアルバムの大きな特徴は楽曲的にブラックミュージック寄りになったという点。前作「THE CUT」でもファンクやソウル的な要素を強く感じましたし、いままでのBase Ball Bearの楽曲にもそのような要素は感じることが出来たのですが、今回のアルバムではファンクやソウルの要素をより明確に感じることが出来ます。

「すべては君のせいで」はファンキーなサウンドでリズミカルに聴かせるディスコチューンでいきなり黒っぽいギターとベースの音が楽しめますし、「(LIKE A)TRANSFER GIRL」も同じくファンキーなサウンドが楽しいディスコチューンになっています。さらにアルバムの中で耳をひくのが「Low way」「寛解」で、メロウな雰囲気あふれる楽曲になっておりサウンドにもグルーヴ感を感じとても心地よいシティポップ風な楽曲に仕上がっています。

いままではギターロックバンドというイメージが強く、実際にあくまでもバンドサウンドを重視した曲作りをしていた彼ら。ただ今回、メンバーのうちギタリストが抜けることによりバンドサウンドという枠組みにとらわれない曲づくりが出来、その結果、より黒さが増したサウンドになったように思います。特にサウンドのバランスとしてベースラインを前に出したような曲が多く、この点もギタリストがサポートとなった結果、遠慮なく本人たちのやりたい音づくりが出来た結果かもしれません。

最後2曲に関しては以前の彼らと同様のギターロックになっていましたがこちらに関しては悪くはないのですが平凡という印象でちょっと残念な締めくくり。ただアルバム全体としては間違いなく傑作アルバムだったと思います。特にいままでのBase Ball Bearらしさをきちんと残した上で新機軸をきちんと押し出したという意味では非常にバランスのよい作品だったと思います。

ちなみに今回の歌詞は「青春」をテーマとしているそうで、この点もBase Ball Bearらしい感じ。特に1曲目「すべては君のせいで」は学生時代の恋愛を描写しており、甘酸っぱい気持ちになれます。ここらへんもBase Ball Bearらしさをきちんと保ったアルバムになっており、歌詞の側面でも楽しむことが出来るアルバムになっていました

ギタリストが失踪、脱退という衝撃的な展開となっていまったBase Ball Bearでしたが、むしろこれからの活動が楽しみになってくるようなアルバムをリリースしてきました。3人組となって新たな一歩を踏み出した彼ら。その第1弾としてこれからの彼らの方向性をしっかりと示すことができたアルバムでした。

評価:★★★★★

Base Ball Bear 過去の作品
十七歳
完全版「バンドBについて」
(WHAT IS THE)LOVE&POP?
1235
CYPRESS GIRLS
DETECTIVE BOYS

新呼吸
初恋
バンドBのベスト
THE CUT
二十九歳
C2
増補改訂完全版「バンドBのベスト」


ほかに聴いたアルバム

Q/女王蜂

フルアルバムとしては復帰後2作目となるアルバム。前作に比べるとダンサナブルなエレクトロサウンドがメイン。妖艶さとダンサナブルでポップな楽曲のバランスが中途半端に感じた前作に比べると、ダンサナブルなポップという方向性に舵を切った印象が。全体的にはグッとポップで聴きやすいアルバムに仕上がっています。一方、妖艶さという観点ではかなり薄味になってしまった印象が。ポップスさ妖艶さどちらも中途半端だった前作から比べるとグッとよくなっている感じはするのですが、彼らの個性という意味では妖艶さという要素ももうちょっとほしいような。

評価:★★★★

女王蜂 過去の作品
孔雀
蛇姫様
奇麗
失神

SPLASH☆WORLD/miwa

途中、バラードベストのリリースを挟み、1年10ヶ月ぶりとなるmiwaのニューアルバム。もともと典型的なJ-POPというイメージが強い彼女でしたが、本作では悪い方向にそれが顕著にあらわれてしまっています。楽曲にはインパクトはあるものの単調でおもしろみがありません。安易にストリングスを入れてスケール感を出そうとしているのも悪い意味でJ-POP的。いままで聴いた彼女のアルバムの中で、一番厳しい出来だったかも・・・。

評価:★★★

miwa 過去の作品
guitarium
Delight

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2017年5月22日 (月)

ハイペースでの3枚目

Title:Arca
Musician:Arca

Kanye West、FKA Twigs、さらにはBjorkのアルバムへプロデューサーとして参加するなど、数々の大物ミュージシャンとのコラボで話題となったベネズエラ出身のトラックメイカーArcaの約1年5ヶ月ぶりとなるアルバム。オリジナルアルバムのインターバルが1年5ヶ月というのは比較的短めのスパンなのですが、その前のアルバム「Xen」から前作「Mutant」の間もわずか1年弱というインターバルでのリリース。さらにはその間に無料ダウンロードで「Sheep」をリリースしており、そのハイペースなリリースぶりが目立ちます。

今回のアルバムは1曲目「Piel」ではいきなり人の声からスタートします。ハイトーンボイスで静かに歌い上げつつ、そのバックに静かだけども無機質なエレクトロサウンドが鳴る展開。さらに2曲目「Anoche」も静かなエレクトロサウンドの響きの中で静かに歌い上げるハイトーンボイスの悲しげな歌声が響きます。1、2曲も幻想的な曲調の中、徐々にスケール感が増していくのですが、3曲目「Saunter」はダイナミックなエレクトロサウンドの中、静かな歌声が響く荘厳さを感じるナンバー。教会音楽にも通じるような荘厳な響きをエレクトロサウンドで再現した聴かせるナンバーが続きます。

この音数を絞ることにより空間を聴かせ、結果重厚感を醸し出しているサウンドにハイトーンボイスの歌声がのるというスタイル。その後も「Reverie」「Coraje」と続き、このアルバムの中で示されたひとつの方向性となっています。彼の奏でる無機質で散発的なエレクトロサウンドの響きは決して聴きやすいものではなく、実験的と感じられるものなのですが、今回は重厚な歌が重なることによりアルバム全体として非常に聴きやすい楽曲が並んでいました。

特に後半、「Desafio」などはメロディーラインにもインパクトがありポップとすら感じられる楽曲になっていますし、続く「Fugaces」も重厚なエレクトロサウンドの中で歌われる歌は、どこか物悲しく、しんみり心に響くようなポップソングに仕上がっています。楽曲はいずれもどこか底知れない不気味さを同時に感じさせる部分はありつつも、ポップという印象を受けるアルバムでした。

もっともポップで意外と聴きやすいという印象はいままでのアルバムでも感じられました。今回のアルバムに関しては、「歌」の部分を押し出すことによりそのポピュラリティーがより強まったように感じます。また1曲あたり3、4分という、1曲をだれずに聴くにはちょうどよい長さなのは本作も同様。今回はさらに全13曲43分という短さにおさめており、前作のように最後の方はだれてしまった・・・ということもありませんでした。Arcaらしい強い癖はそのままにいい意味で聴きやすく仕上がっているアルバムだったと思います。その勢いはまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

Arca 過去の作品
Xen
Sheep(Hood By Air FW15)
Mutant


ほかに聴いたアルバム

ArtScience/Robert Glasper Experiment

新世代のジャズミュージシャンとして高い注目を集めているピアニスト、Robert Glasperの最新作。ジャズピアニストといっても、ジャズをベースにAOR、サイケロック、フリージャズ、HIP HOP、R&Bなどの多彩なジャンルを自由自在に取り入れ、なおかつポップにまとめあげている作品になっています。自由度が増した反面、良い意味でよりポップに聴きやすくなった印象も。

評価:★★★★★

Robert Glasper 過去の作品
Black Radio
Black Radio 2(Robert Glasper Experiment)

Paradise/ANOHNI

昨年リリースされた「Hopelessness」が大きな話題となった、Antony&the Johnsonsとして活動していたAntony Hegartyの新名義、ANOHNI。「Hopelessness」に続く新作は6曲入りのEP盤。ダイナミックで破壊的なサウンドを聴かせるエレクトロサウンドを主軸に据えつつ、そこに美しい彼女のボーカルがのるというスタイルは「Hopelessness」と同様。非常にスケール感も覚えるアルバムで、力強さを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

ANTONY AND THE JOHNSONS(ANOHNI) 過去の作品
The Crying Light
SWANLIGHT
CUT THE WORLD

Hopelessness

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2017年5月21日 (日)

25周年企画第1弾

Title:ウルフルズTribute~Best of Girl Friends~

今年デビュー25周年を迎えたウルフルズ。25周年という記念の年の今年、ニューアルバムのリリースや野外ライブの開催など様々な企画が用意されているようですが、その第1弾的企画になるのが本作。様々なミュージシャンが参加して彼らの曲をカバーするトリビュートアルバムです。

〇周年企画にトリビュートアルバムをリリースする試み、ここ最近では珍しくない・・・どころかむしろ「ありがち」な企画。ただそんな中で本作がユニークなのはタイトルにもある通り、すべて女性ミュージシャンによるカバーになっている点。ウルフルズの歌を女性シンガーがどのようにカバーするのか、ある意味とても興味深い企画でもありました。

その結果として非常にユニークなカバーが多く収録された聴きどころの多いアルバムになっていました。特にウルフルズの曲をそのままカバーすると女性ボーカルだと違和感があるからでしょうか、原曲を大きくいじった自由度の高いカバーが多かったのが特徴的。1曲目Superfly「ヤング ソウル ダイナマイト」こそ、Superflyもウルフルズと同様、ファンク色強い曲も演るだけに原曲に比較的近い雰囲気でのカバーになっていましたが、続くチャットモンチー「かわいいひと」は軽快なチンドン風の鐘が鳴り響くかわいらしいアレンジのポップチューンになっていますし、UAの「歌」も静かで空間を生かしたアレンジに彼女の歌を前に押し出した楽曲になっており、完全にUAの曲に仕上がっています。

ハンバートハンバートの「SUN SUN SUN '95」もレトロポップ調の軽快で楽しいポップナンバーになっていますし、原曲だとパワフルなボーカルが前に出ていたふくろうずによる「バンザイ~好きでよかった~」もシンプルなポップにまとまっています。

久しぶりにその名前を聞いた松崎ナオ「暴れだす」も特徴的なそのボーカルが耳を惹きます。リズムが微妙にラテン風なのもユニークなところ。BONNIE PINKの「僕の人生の今は何章目だろう」もレゲエ風なアレンジがちょっと意表をつかれますが、完全にBONNIE PINKの曲になっているのも面白い感じ。そしてラストを飾るのはおなじみ「ガッツだぜ!!」を木村カエラがエレクトロパンク調にカバーしています。

全12曲を12組のミュージシャンが12通りの解釈でカバーしており、そのいずれも自らの曲としてしっかりと取り込んでいます。基本的にこの手のトリビュートは名カバーがあっても一方ではずれも少なくないのですが、このアルバムに関しては基本はずれはありませんでした。

また一方で楽曲がこれだけ自由度の高いカバーに耐えられるのもやはりひとえにウルフルズの原曲がしっかりとしたメロディーラインを持った曲ばかりだからなのでしょう。またよくよく考えるとウルフルズの楽曲は、トータス松本の力強いボーカルとファンキーでソウルなサウンドから男っぽいというイメージはありつつ、歌詞についてはマッチョっぽさは薄く、そういう意味でも女性シンガーのカバーでもしっくりくる内容だったのかもしれません。

ウルフルズの楽曲を違う側面からスポットを当て、あらなた魅力を引っ張り出してきたアルバム。ウルフルズが好きならもちろん、個々のミュージシャンのファンでも満足できるトリビュートアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Babe./阿部真央

前作「おっぱじめ」からちょうど2年ぶりとなる新作。この2年の間に出産、離婚を経た彼女。今回の新作では特に母であることを意識した曲を収録しています。それが「母である為に」「この時を幸せと呼ぼう」で、どちらも子供への惜しみない愛情を歌った歌になっています。この2曲も大きなインパクトがあるのですが、アルバム全体としてはロック色の強いアルバムに。以前の彼女の曲といえば、いろいろなジャンルに手を出しすぎてバラバラになっていた印象が強いのですが、前作あたりから楽曲にまとまりが出てきたような感じがします。いい意味でアルバムに安定感が出てきた作品。「母」となった彼女が今後どのような曲を聴かせてくれるのか、非常に楽しみです。

評価:★★★★

阿部真央 過去の作品
ポっぷ
シングルコレクション19-24
おっぱじめ

Superfly 10th Anniversary Greatest Hits “LOVE, PEACE & FIRE”/Superfly

タイトル通り、デビュー10周年を記念してリリースされたSuperflyのベスト盤。もっともベスト盤は4年前にリリースされたばかりで、かつその後リリースされたオリジナルアルバムが1枚のみという状況なので、感想としては前のベスト盤とほぼ一緒(^^;;洋楽的な部分と歌謡曲的な部分のバランスが絶妙で垢抜けた部分といい意味でベタな部分が同居しているポップスがとても心地よいアルバムです。内容的には5つですが、あまりにもベスト盤のスパンが短いということで。

評価:★★★★

Superfly 過去の作品
Superfly
Box Emotions
Wildflower&Cover Songs:Complete Best 'TRACK3'
Mind Travel
Force
Superfly BEST
WHITE
黒い雫 & Coupling Songs:`Side B`

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2017年5月20日 (土)

デビュー5年目で早くもベスト

Title:5th Anniversary Best
Musician:家入レオ

タイトル通りデビュー5周年を記念してリリースされる女性シンガーソングライター初のベストアルバム。デビューからわずか5年、アルバムも4枚のみでベスト盤リリースというのは昔ならばかなり早いペースという印象を受けるのですが・・・ただここ最近、ともすれば「10周年」でベスト盤を出した後、「15周年」「20周年」でのベスト盤をリリースしてくるようなミュージシャンが少なくない中、5年目のベスト盤というのは妥当なのかもしれません。

直近のオリジナルアルバム「WE」でよりその傾向が強くなったのですが、家入レオの楽曲のイメージといえばもろ90年代のガールズポップ路線。「ガールズポップ」というと最近ではアイドルの楽曲を指して使われることも多いようですが、ここで言うガールズポップというのは90年代のアイドル冬の時代と呼ばれた頃、女性シンガーを実力派として売り出しつつもアイドル的な要素を織り込んで売り出したようなミュージシャンたちのこと。個人的にも高校生の頃、結構好んで聴いていたジャンルなのですが、彼女はその中でも特にポップスロック寄りのシンガーに似たようなものを感じます。具体的に言えば久宝留理子、久松史奈、田村直美、永井真理子、近藤名奈・・・彼女からイメージされるシンガーは次々と出てきます。

彼女はメロディーのインパクト、特にサビのインパクトが非常に強く、その点は良くも悪くも「売れ線」といった印象も強く受けます。「Bless You」など「愛なんていつも残酷で もう祈る価値ないよ」というこれでもかというほどのインパクトを持った歌詞からスタート。デビューシングルとなった「サブリナ」もサビ先でインパクトあるフレーズからスタートしますが、彼女の楽曲は売れるポップスのお手本と言ってしまっても過言でないインパクトを持っています。

90年代のガールズポップ路線といえばその傾向をもっとも強く感じたのは「Shine」。特にサビに入る直前からサビへの入りに関しては高校時代によく聴いていたポップスを思い出す、どこかノスタルジックな雰囲気すら感じてしまいます。90年代風といえば「Hello To The World」にもそんな懐かしい空気を感じます。多保孝一が楽曲を提供しているこの曲はちょっと70年代ロックの匂いも感じてSuperflyっぽい雰囲気もあったりするのですが。

90年代ポップ色の強いインパクト重視の楽曲は目新しさはないのですがアラフォー世代にとってはある種の懐かしさを感じるポップスの連続だと思います。ただ彼女の楽曲でちょっと気になるのは、彼女は「シンガーソングライター」という肩書がついているのですが、ほとんどの曲は単独作曲ではなく西尾芳彦や多保孝一との共作であるという点。なんとなくのイメージ論なのですが、彼女が中心となっているというよりも、彼女が口ずさんだ1フレーズ程度のメロディーラインを他の作家陣がむりやり引き延ばして楽曲にしているように思います。今後も作家陣に恵まれればいいのですが、この手のシンガーは一度売れなくなると作家陣に恵まれなくなり、一気に落ちていくというケースが多いだけに気になるところ・・・。まだ22歳の彼女、まだまだ成長していく余地のあるシンガーだと思うので、今後の活躍も気になるのですが。

評価:★★★★

家入レオ 過去の作品
LEO
a boy
20
WE

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2017年5月19日 (金)

弦楽四重奏によるセルフカバー

Title:la RINASCENTE
Musician:KAN

KANちゃんの新作はセルフカバーアルバム。今回のセルフカバーは彼の過去の名曲を弦楽四重奏によるアレンジがほどこされた内容になっており、優雅なストリングスの調べを楽しめるアルバムになっています。タイトルの「la RINASCENTE」とはフランス語で「生まれ変わる」という意味だとか。一時期「フランス人になりたい」とフランスに移住していた彼らしいタイトルになっています。

ちなみにジャケット写真もDonald Fagenの「The Nightfly」のパロディー。まあ、「The Nightfly」のジャケットはよくパロディーに用いられるジャケットなのでパロとして用いるにはちょっとベタなセレクトなのですが、歌詞カードを1ページめくってあらわれる写真はKANらしいお遊びがあらわれます。

さてJ-POPのミュージシャンのセルフカバーでストリングスアレンジを用いてくるというのも正直言ってしまえばよくあるケース。特にオーケストラアレンジをほどこして「ロックとクラシックの融合」と謳い文句のアルバムをつくってくるミュージシャンは昔からゾクゾクと登場してきます。

ただ個人的にこの手のストリングスアレンジアルバムであまり「これ」といった傑作に出会えたことはほとんどありません。一番の理由はその企画の安直さ。原曲をそのままクラシック風にアレンジしただけの結果、ただ単にスケール感を増そうとしたストリングスアレンジが非常に平凡に仕上がったケースがほとんど。ストリングスアレンジとしてもセルフカバーとしても中途半端という出来になってしまっているケースが大半です。

それだけに今回のアルバムに関してもあまり高い期待はしていなかったのですが・・・ただそこはさすがにKANちゃん!私が知っている限りではこの手のセルフカバーアルバムでは一番の出来だったように思います。

ストリングスアレンジによって原曲のイメージが大きく変わった作品はありません。KANの曲の大きな特徴であるピアノの音も変わらず入っています。ただ、弦楽四重奏という最小限のストリングスにおさえられたアレンジは比較的シンプルでムダを感じません。公式サイトの紹介にも「KAN自身による丁寧な編曲」という書き方をしていますが、よくよく練り込まれたアレンジの妙技を感じます。

ご存じ「愛は勝つ」は原曲を持っていたダイナミズムを今回のセルフカバーでも感じられますし、「まゆみ」などは原曲でもストリングスを用いたアレンジでしたが今回のセルフカバーではより優雅さを感じるカバーになっています。また全体的にも楽曲に「優雅さ」を増したように感じた今回のセルフカバー。大衆音楽であるポップソングを貴族的にクラシカルに優雅にまとめているというのもKANらしいある種のユーモアさを感じました。

ちなみに今回のセルフカバーアルバムに書き下ろしの曲が1曲ありますが、イントロ的なインスト作なので過大な期待は不要かと。ただアルバム全体としては彼の名曲をあらたな側面で切りとった非常にユニークなセルフカバーの作品になっていたと思います。KANのアレンジャーとしての才能が光るアルバムでした。

評価:★★★★★

KAN 過去の作品
IDEAS~the very best of KAN~
LIVE弾き語りばったり#7~ウルトラタブン~
カンチガイもハナハダしい私の人生
Songs Out of Bounds
何の変哲もないLove Songs(木村和)
Think Your Cool Kick Yell Demo!
6×9=53
弾き語りばったり #19 今ここでエンジンさえ掛かれば


ほかに聴いたアルバム

Change your pops/雨のパレード

最近注目を集めている新人バンドのメジャー2作目となるアルバム。自らを総合芸術の「創造集団」を名乗っているようで、バンドメンバー4名のほか、デザイナー集団もメンバーを擁するグループだそうです。なんだか「意識高い系」みたいな感じが気になるのですが、ピアノとシンセを主軸としたドリーミーな美しいサウンドに、歌謡曲テイストも感じる哀愁感あふれるメロディーラインにはとても耳を惹くものがあります。ちょっとどこかで聴いたような・・・感が否めず、サウンドにしろメロにしろもうちょっとインパクトが欲しいな、と思う部分は強いのですが、確かにおもしろそうな新人バンドであることは間違いなさそう。今後の成長に期待です。

評価:★★★★

Mr.KingKong/The Mirraz

何の事前告知もなく4月1日にいきなり配信限定でリリースされたThe Mirrazの新作。配信のみでいきなりリリースという形態は海外ではよくあるのですが日本ではまだまだ珍しい感じ。最近はEDM方向にシフトしてしまった彼らですが、この新作はまたパンキッシュなギターロック路線に戻ってきています。

ハイテンポなリズムに早口気味の歌というスタイルも以前のThe Mirrazそのままのスタイル。「ミュージシャンライフ!」「ボクハ芸能人」のように自虐的に自らの生活を描写するスタイルもThe Mirrazらしさを感じます。ある意味原点回帰的で、世の中を斜めから見たような彼ららしい痛快さも感じるのですが、一方では「飯マズ嫁と僕の物語」のようにネタ的にはユニークなのですが歌詞の内容は薄っぺらい楽曲もチラホラ。早口の歌で歌詞を詰め込んでいるんだから、もうちょっとネタを深掘りしてほしいのですが・・・ここらへんがThe Mirrazがいまひとつブレイクできない原因なのかも・・・。

評価:★★★★

The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
言いたいことはなくなった
選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ
夏を好きになるための6の法則
OPPOTUNITY
しるぶぷれっ!!!
BEST!BEST!BEST!
そして、愛してるE.P.

ぼなぺてぃっ!!!

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2017年5月18日 (木)

1位返り咲き!

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

なんと3週目にして1位返り咲きです。

今週1位はゆず「YUZU 20th Anniversary ALL TIME BEST ALBUM 『ゆずイロハ 1997-2017』」。売上は2万3千枚と1位としてはかなり寂しい数字とはいえ、3週目にして見事1位返り咲き。根強い人気を見せつける結果となりました。

2位は先週1位のKis-My-Ft2「MUSIC COLOSSEUM」がワンランクダウンでこの位置。そして3位にランクインしたのがゲスの極み乙女。「達磨乙女」が入ってきました。ボーカル川谷絵音のベッキーとの不倫騒動、さらにタレントほのかりんとの交際の際に生じた未成年への飲酒騒動と悪い意味でお茶の間レベルで有名になってしまった彼ら。その影響で昨年12月に活動を休止したものの、今年4月に早くも活動を再開。そして昨年にリリースが予定されていた本作が満を持しての発売となりました。

ただ初動売上はわずか1万4千枚で前作「両成敗」の7万1千枚(1位)より大幅減というかなり厳しい結果に。前作「両成敗」をリリースした頃は不倫騒動が逆に売上的にプラスへと働いたのですが今回は大きくファン層を減らす結果となりました。

個人的には別に不倫騒動も未成年の飲酒騒動もどうでもいい話なんですが、さすがに現状を全く把握していない川谷絵音の軽率な行動もマイナスとなりましたし、さらにわずか5ヶ月の活動自粛という、それ単なるオフじゃん、という中途半端な責任回避行動もマイナスに働いてしまったような感じもします。あんな中途半端な活動自粛をするくらいならば、「音楽活動とは関係ない」といって突っぱねればよかったのにね。まあ先行シングルなどによるプロモーション活動が出来なかった点や収録曲のタイアップなどが一切取れなかった点も売上減の大きな要因なのでしょうが。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に角松敏生「SEA IS A LADY 2017」がランクイン。本作は1987年にリリースしたインストアルバム「SEA IS A LADY」を再録した上に新曲を加えた作品。初動売上1万2千枚は前作「SEA BREEZE 2016」の7千枚(7位)よりアップ。前作は彼にとって久々のベスト10ヒットとなりましたが、ひょっとしたら久々のベスト10入りということ自体がアナウンス効果となり、このヒットに結びついたのでしょうか。

5位には藤原さくら「PLAY」がランクインです。昨年、フジテレビ系ドラマ「ラヴソング」に出演し、主題歌「Soup」も大ヒットを記録、一躍話題となった女性シンガーソングライター。ブレイクからアルバムリリースまで1年近くインターバルをあけるというのは戦略的には機を失した感もあるのですが、見事ベスト10ヒットを記録しています。初動売上は1万1千枚。前作「good morning」の1千枚(44位)から大きくアップしています。

6位にはチバユウスケ率いるロックバンドThe Birthday「NOMAD」がランクイン。約1年7ヶ月ぶりとなる新作。初動売上1万枚は前作「BLOOD AND LOVE CIRCUS」の1万1千枚(5位)から若干のダウン。

初登場最後は10位、9mm Parabellum Bullet「BABEL」がランクイン。ベスト10入りは2013年の「Dawning」以来、ベスト盤含めて3作ぶり。ただし初動売上8千枚は前作「Waltz on Life Line」の1万枚(12位)からダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年5月17日 (水)

今週はK-POPが1位

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

最近、アイドル勢の1位獲得が続いていますが今週は韓流男性アイドルが1位獲得です。

今週1位は防弾少年団「血、汗、涙」が先週の28位からCDリリースにあわせてランクアップ。1位獲得となりました。CD販売・ダウンロード・スクリーミング数(以下「実売数」)及びTwitterつぶやき数1位、PCによるCD読取数5位、You Tube再生回数6位と、ラジオオンエア数は圏外でしたが、K-POPとしては比較的各種チャート万遍なく上位にランクインしてきています。オリコンでは初動23万8千枚で1位獲得。前作「RUN-Japanese Ver.-」の12万4千万(2位)からアップ。個別握手券がついてきているのが初動売上増の大きな要因のようです。

2位はRADWIMPS「サイハテアイニ」が先週の20位からCDリリースにあわえてベスト10入り。アクエリアスCMソング。Hot100ではご存じのように映画「君の名は。」で使用された「前前前世」「なんでもないや」「スパークル」「夢灯籠」のいずれもロングヒットを記録しましたが、続く本作もそれなりに快調なスタート。実売数2位、ラジオオンエア数及びPCによるCD読取数いずれも1位を記録いています。オリコンでも初動3万4千枚で2位を獲得。ちなみに前作は「君の名は。 English edition」で初動1万4千枚(6位)とここからはアップしているものの、既存曲の英語バージョンという企画モノのためあまり比較にはならず。前々作「記号として」は初動1万4千枚(13位)よりアップしていますが、こちらもアルバムからのリカットシングルのため参考程度。その前の「ピクニック」(初動1万5千枚(7位))も完全生産限定という特殊な形態。というわけで、通常の販売形態での純然たる新曲は2013年の「五月の蠅」以来ということに。同作の4万3千枚(3位)からはダウン。映画「君の名は。」のタイアップ効果による人気回復の傾向もあったかもしれませんが、以前の全盛期の人気までには残念ながら回復していないようです。

3位も男性アイドルグループ。M!LK「テルネロファイター」が初登場でランクイン。「テルネロ」という意味不明なコミカルな言葉を繰り返しており、80年代あたりのコミカルなジャニーズ系のアイドルポップを彷彿させるナンバーに。実売数は3位ながらもラジオオンエア数67位、PCによるCD読取数25位、Twitterつぶやき数18位といずれも下位に。オリコンでも初動売上3万2千枚で3位初登場。前作「疾走ペンデュラム」の3万5千枚(3位)よりダウン。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にChe'nelle「Destiny」が先週の13位からCDリリースにあわせてランクイン。TBS系ドラマ「リバース」主題歌。実売数5位、PCによるCD読取数7位と上位にランクインした一方、ラジオオンエア数29位、Twitterつぶやき数87位と伸び悩みました。ちなみにオリコンは初動1千枚で36位という結果になっており、完全に上位ランクインはダウンロードでの発売の影響が大きくなっています。なお初動売上は前作「Happiness」の3千枚(36位)よりダウンしています。

7位初登場はEXILEの事務所、LDH所属のHIP HOPユニットDOBERMAN INFINITY「DO PARTY」。タイトル通り、アゲアゲのパーティーチューン。実売数は4位でしたが、ラジオオンエア数72位、PCによるCD読取数41位、Twitterつぶやき数73位が足を引っ張る結果に。オリコンでは初動2万7千枚で4位初登場。前作「GA GA SUMMER」の2万4千枚(7位)から若干アップしています。

8位にはCYaRon!「近未来ハッピーエンド」が初登場でランクイン。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」からのキャラクターソング。実売数9位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数12位ですがラジオオンエア数が圏外というのがキャラソンらしい感じに。オリコンでは初動2万4千枚で6位初登場。前作「元気全開DAY!DAY!DAY!」の2万2千枚(6位)からアップ。

最後10位には韓国のバンドCNBLUE「SHAKE」が初登場でランクイン。ただ軽快なエレクトロダンスポップでバンド色は皆無。実売数8位、PCによるCD読取数10位、Twitterつぶやき数8位だったのに対してこちらもラジオオンエア数圏外が足を引っ張りました。オリコンでは5位初登場。初動売上2万5千枚で、前作「Puzzle」の2万8千枚(4位)からダウンしています。

さて今週のロングヒット組ですが、まず星野源「恋」。今週は先週の7位から9位にランクダウンしたもののまだベスト10に健在。You Tube再生回数は今週も1位を記録しています。またロングヒットの気配のある倉木麻衣「渡月橋~君 想ふ~」は8位から6位にランクアップ。好調に推移しています。一方Austin Mahone「Dirty Work」は12位にランクダウン。ただYou Tube再生回数は2位となっていますのでまだ盛り返しもあるかも。Ariana Grande,John Legend「Beauty and the Beast(邦題 美女と野獣)」も13位にランクダウン。こちらは思ったほど伸びませんでした。

今週のHot 100は以上。明日はアルバムチャート。

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2017年5月16日 (火)

平凡?個性的?

Title:平凡
Musician:ドレスコーズ

志磨遼平がスーツ姿に眼鏡をかけたインパクトあるヴィジュアルイメージが多いに話題となったドレスコーズの最新作。ドレスコーズが志磨遼平のソロプロジェクトとなって3枚目となるアルバムなのですが、今回は彼にとって初となるコンセプトアルバム。アルバムタイトルにもなっている「平凡」をコンセプトとしている今回のアルバムは全歌詞を公式サイトで公表しており、その力の入れようが伺えます。

そんなコンセプチャルに力を入れたソロアルバムなだけにかなり冴えまくった作品に仕上がっています。1曲目「common式」からファンキーで疾走感ある楽曲でインパクトありまくりなのですが、続く「平凡アンチ」もラテン風なリズムにアジテートのように叫びまくるボーカルに強いインパクトを受けます。さらに「人民ダンス」ではラテン調のリズムの軽快なダンスナンバーが楽しい楽曲にまとめあげています。

かと思えば「towaie」「ストレンジャー」は彼らしいちょっとレトロな雰囲気が胸をうつ歌謡曲風のポップチューンになっており彼のメロディーメイカーとしての才を十分に発揮した名曲に。さらにPVも公開されアルバムの中のメイン楽曲的な位置づけにある「エゴサーチ&デストロイ」も軽快なファンキー調でダンサナブルなリズムに、彼らしいちょっと哀愁感ある切ないメロディーラインが強い印象を受けるアルバム。リズムもメロもこのアルバムを象徴するようなインパクトの強いポップチューンになっています。

バンド色の強かった前作「オーディション」と比べて今回はバンド色は薄めなソロアルバムらしい作品。またファンクやソウル的な要素が強く、終盤の「20世紀(さよならフリーダム)」はシティポップ調のナンバーになっています。ある意味ここ最近のポップシーンの流れに沿った作品ともいえるかもしれませんが、ファンクやシティポップ的なサウンドと、レトロポップで歌謡曲風のキュートな志磨遼平のメロディーラインの相性は抜群。いままでのアルバムの中で最も強いインパクトを感じるアルバムになっていました。

さて今回のアルバムのもうひとつの売り。それは「平凡」というコンセプトに沿った歌詞でしょう。ただ本作はあきらかに「平凡」をテーマとした歌詞が続々と登場するのですが、その平凡であることを肯定しているのか否定しているのか、歌詞の中でははっきりとしません。

「人は生まれながら
誰もが皆 common」

(「common式」より 作詞 志磨遼平)

と歌い平凡を肯定したかと思うと

「これがぼくの政治的思想
わかってたまるか」

(「平凡アンチ」より 作詞 志磨遼平)

と個性を強調するかのようなフレーズを書いてきています。実際、レビューサイトでも「平凡」に対して肯定的に捉える方と否定的に捉える方がいるみたいですし、志磨遼平へのインタビューでもそこらへんのことがあやふやになっているように感じます。

ただ私は志磨遼平はこの「平凡」であることに肯定も否定もしていないように感じました。特に「マイノリティーの神様」で歌われる

「ありふれた人になるよ ぼくらは
それは自然で とてもかなしいこと」

(「マイノリティーの神様」より 作詞 志磨遼平)

という一文はまさに多くの人が結局は「平凡」になってしまう事実を受け止めつつも、「個性的」であることを否定していません。ある意味、この「平凡」になってしまうことと「個性的」であろうとすることの葛藤がアルバムのひとつのテーマのように感じます。

しかしこの歌詞も含めていままででもっともインパクトがある、志磨遼平の個性がもっとも発揮された傑作アルバムだったと思います。間違いなく本年度のベスト盤候補。「平凡」を歌った今回のアルバムで彼の非凡さが際立つ結果になりました。

評価:★★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

オーディション


ほかに聴いたアルバム

METRO/浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS

浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS名義でリリースされた約2年8カ月ぶりのニューアルバム。ちょっとくすんだ雰囲気の世界観やダークな雰囲気のアレンジ、悲し気でメロディアスなメロディーライン等、また例のごとくいつもの浅井健一サウンド。大いなるマンネリ路線の楽曲は悪くはないのですが、BLANKEY時代の輝きから考えるとかなり物足りないというのが正直な印象。

評価:★★★

浅井健一 過去の作品
Sphinx Rose
PIL
Nancy

Paradise Has NO BORDER/東京スカパラダイスオーケストラ

スカパラの新作はコラボ作が目立つ作品に。10-FEETのTAKUMAにクリープハイプの尾崎世界観、Ken Yokoyamaに片平里菜、さらにはなんとさかなクンとのコラボも。今回のアルバムではこの多様なコラボを上手くもちいてバラエティー豊かな作風に仕上げてきているのが特徴的。ロック調の強い曲からラテン、歌謡曲風、軽快なスカポップなどスカパラの様々な顔が楽しめる作品に。今回は歌モノが多く、ポップ路線を取った彼らでしたが、その中でもきちんとスカパラの魅力を感じさせてくれるアルバムでした。

評価:★★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~

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2017年5月15日 (月)

本領発揮?

Title:ごちそんぐDJの音楽
Musician:DJみそしるとMCごはん

「食」をテーマにした歌詞でゆる~いラップを聴かせることで話題のDJみそしるとMCごはん。名前だけだと2人組ユニットのようですが、女の子のソロラッパー。彼女は現在、NHK Eテレで「ごちそんぐDJ」という番組を担当して話題になっています。この番組は音楽と料理をかけあわせた新感覚の料理番組。毎回この番組で料理を素材とする楽曲をつくってきたのですが、本作はその番組で取り上げられた楽曲をまとめたアルバムになっています。

まあテレビの曲をあつめたいわゆる「企画盤」的なアルバムな訳ですが、もともと彼女は一貫して「食」をテーマとした曲を作り続けているだけに、ある意味平常運転。「企画盤」というよりも彼女のニューアルバムとしても普通に通用するアルバムになっています。

いやむしろこのアルバム、普段のアルバムよりも本領発揮といってもいいかもしれません。いままで聴いてきた彼女のアルバムは「食」をテーマにしつつさすがに特定の料理のレシピを歌にするだけでは音楽的な幅が狭いと感じたのか、「食」を主軸にしつつ歌詞の幅を広げようとしています。もちろん彼女が今後長く活動を続けていくためにはそれはそれで重要なことなのですが、やはり彼女が本領を発揮するのは料理のレシピをそのままラップにまとめるスタイル。この「ごちそんぐDJ」では彼女を特異とするスタイルを遠慮なく発揮しています。

もちろんレシピを主軸にしつつも、そこの中にうまく心象風景やら「ネタ」やらを織り込んで非常にユニークにまとめています。なので曲によっては「あれ?レシピだっけ?」と思ってしまう曲も。ここらへん、ただレシピをラップするだけではなく、レシピを織り込みつつしっかりと「曲」としてまとめあげているのは非常に上手いなぁ、と感じます。

さらに今回特に印象に残ったのがトラック。いままで以上にバリエーションが多く、かつ聴かせるトラックが耳に残ります。基本的には音数控えめのシンプルなトラックで明るい雰囲気の楽曲が多いのですが、ラテン風のリズムの「ポテサマ」やラウンジ風の「パンプキンぜんざい」(楽曲も渋谷系っぽいメロディアスなポップでユニーク)、ファンキーな「アイスクリーム」、ロック風の「ブリ照り」などバラエティー豊富。ここらへんはあくまでも1曲勝負のテレビ番組からの企画盤らしい構成ともいえるでしょう。ただ逆にこのバリエーションの豊富さがあるからこそ、最後まで飽きずに楽しめるアルバムになっていたと思います。

個人的にはいままで聴いてきた彼女のアルバムの中ではベストの内容。いままでの作品の中では一番彼女の個性が発揮されたアルバムですらあったと思います。とりあえずはこれからもしばらくは、無理に歌詞の幅を広げるよりもこの路線で行ってほしいなぁ。

評価:★★★★★

DJみそしるとMCごはん 過去の作品
ジャスタジスイ
味の向こう側~入り口~

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2017年5月14日 (日)

「歌詞」を聴かせる

Title:メッセージボトル
Musician:amazarashi

ギターボーカル秋田ひろむの描く独特な歌詞の世界観が評判を集め人気上昇中のロックバンドamazarashi。メジャーデビューから7年を経た今年、初となるベスト盤がリリースされました。

公式サイトの本作の紹介ページをひらくといきなり「歌詞を見ながら聴きたい曲が、いまいくつあるだろう」というメッセージが表示されます。今回のベスト盤であらためて思うのはやはりamazarashiの魅力といえばまず1にも2にも歌詞の世界。物語性あり具体性ある歌詞の中で、現実の厳しさを描きながらもその向こうにある希望を歌おうとする歌詞。まずはその歌詞が強い印象に残ります。

秋田ひろむの書く歌詞はよく「死」が登場するのが特徴的。その方向性ではある意味典型的な「僕が死のうと思ったのは」という曲もありますし、「夏を待っていました」「ひろ」などでも「死」が登場します。「死」をよく登場させることからいわば「中2病バンド」的なイメージも強い彼ら。もっとも彼らの歌詞は「死」を取り上げつつ、その対比としての「生きる」ということを強調しています。

また秋田ひろむの書く歌詞が上手いな、と思うのはインパクトあるフレーズを効果的に用いてリスナーの耳を惹きつけている点です。歌詞を売りにしようとしているミュージシャンでも、インパクトあるフレーズがかけず、歌詞にフックのないミュージシャンが多くいます。逆に売れているミュージシャンは歌詞の内容はありふれていてもきちんとインパクトある歌詞をサビに持ってくることが出来ます。

例えば「多数決」では「賛成か 反対か 是非を問う 挙手を願う」と「多数決」からイメージされるインパクトある歌詞を楽曲の中でも一番フックの効いたフレーズに重ねています。「空っぽの空に潰される」でも

「楽しけりゃ笑えばいいんだろ 悲しい時は泣いたらいいんだろ
虚しい時はどうすりゃいいの?教えて 教えて」

(「空っぽの空に潰される」より 作詞 秋田ひろむ)

と楽曲のテーマをインパクトある歌詞をつけて上手くサビにのせています。ここらへんのインパクトある歌詞の使い方の上手さもamazarashiの大きな魅力でしょう。

サウンドの方はピアノを入れて美しき聴かせる比較的シンプルなギターロック。フリーキーな要素を入れたり、ちょっとラテン風だったり、ポエトリーリーディングを入れてきたり、それなりにバリエーションも入れてきますが、歌詞の世界を尊重するような美しいサウンドで歌詞やメロディーを前に押し出したようなサウンド。ここらへんのサウンドと歌詞のバランスにもうまさを感じます。

また秋田ひろむの力強い、どこか情熱的な部分を感じるボーカルも歌詞をひきたてる大きな要素に。歌詞は一語一語丁寧に歌われ、耳に残ります。総じてamazarashiはどの要素もまず歌詞を聴かせるという点に重点を置いているということにあらためて気が付かされます。かなり重い曲が並んでいますがそれだけインパクトが強いということ。amazarashiの最初の1枚としても最適なベスト盤。公式サイトの売り文句のように、「歌詞をきちんと聴かせる曲を聴きたい」と思っている方には間違いなく最適なバンドです。

評価:★★★★★

amazarashi 過去の作品
千年幸福論
ラブソング
ねえママ あなたの言うとおり
あんたへ
夕日信仰ヒガシズム
あまざらし 千分の一夜物語 スターライト
世界収束二一一六
虚無病

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2017年5月13日 (土)

13曲13組13通り

Title:re:Action
Musician:スキマスイッチ

非常におもしろいスキマスイッチのニューアルバムが発売されました。「re:Action」と名付けられた今回のアルバムはスキマスイッチの過去の名曲を他のミュージシャンたちがプロデュースを行い再録音したアルバム。それも奥田民生や田島貴男、TRICERATOPSにGRAPEVINE、Rhymesterや澤野弘之など、様々なタイプの異なる総勢13組のプロデューサーがスキマスイッチの楽曲を手掛けています。

1枚のアルバムに様々なミュージシャンがプロデュースを手掛けた曲が並んでいるというケースは珍しくはありません。また、ある楽曲を他のミュージシャンのプロデュースにより再録音するというケースも珍しくありません。このアルバムでユニークなのは、そのプロデューサーたちが自分たちのミュージシャンカラーを出しまくっている点。そのためそれぞれの曲が非常に個性的なアレンジをほどこされて収録されていました。

例えば奥田民生がプロデュースを手掛けた「全力少年」は思いっきりロック色が強くなり、ギターやドラムスの音は完全に奥田民生。GRAPEVINEの「ユリーカ」はギターやドラムスが黒くグルーヴィーになり、いかにもバインといった感じ。RHYMESTERが手掛けた「ゴールデンタイムラバー」はホーンセッションも入ってファンキーなRHYMESTERの色がしっかりとついた楽曲にまとまっています。

スキマスイッチのアレンジは、比較的シンプルで歌を前に出して生かしたようなアレンジが多いのに対して今回のアルバムのプロデュースはサウンドを強調したアレンジが多く、原曲のイメージとはかなり異なる雰囲気の曲が多いのも特徴的。特にスキマスイッチというとシンプルなポップユニットというイメージなのですが、アレンジひとつでガラッとロックバンドやファンクユニットというイメージに早変わりするような曲も。彼らの曲は特にメロディーラインがしっかりとしている名曲が多いからこそ、様々なプロデューサーのほどこす多様なアレンジにも対応が出来るのでしょう。

初回限定盤にはDisc2として今回取り上げられた曲の原曲を並べたアルバムがついてくるのですがこれによって聴き比べが出来るのがおもしろいところ。ただ彼らの楽曲はアレンジが良くも悪くもシンプル。曲によってはスケール感を出すために安易なストリングスの使い方を感じてしまう部分も少なくなく、他のプロデューサーによるプロデュース作の方がよかったのでは?とすら感じてしまう曲も少なくありませんでした。

そんな中でも今回のアルバムでの聴きどころはラストを締めくくるKANプロデュースによる「回奏パズル」。あれ?こんな曲あったっけ?と思う方も多いかもしれませんがこの曲はスキマスイッチのすべての楽曲と歌詞を素材として作り出された「新曲」。こんな企画、考える方も考える方だし、人に頼む方も頼む方だし、それを受ける方も受ける方だし、そしてやってしまう方もやってしまう方です(笑)。いやもう、KANじゃないとこんな企画、とても完成できなかったでしょう。結果出来た作品は実にスキマスイッチっぽいし、どこかで聴いたことあるような、でも違うような、そんな不思議な新曲に仕上がっていました。

どの曲もミュージシャンそれぞれの個性があらわれており、聴きごたえのある13曲。スキマスイッチの曲の良さを再認識できましたが同時に参加したミュージシャンそれぞれの「個性」をあらためて感じることが出来、それぞれのミュージシャンの魅力にも触れることが出来ました。毎年恒例のベストアルバムに「企画賞」という部門を設けるとしたら間違いなく今年のNo.1でしょう。最初から最後まで楽しめた傑作でした。

評価:★★★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
POPMAN'S ANOTHER WORLD
スキマスイッチTOUR2016"POPMAN'S CARNIVAL"


ほかに聴いたアルバム

Soul Renaissance/ゴスペラーズ

メンバー北山陽一の病気療養というインターバルがあり若干久々となるゴスペラーズの新作。2000年にリリースしたアルバム「Soul Serenade」を彷彿とさせるタイトルなのですが、その「Soul Serenade」と同様、ソウル、R&Bという彼らの原点を意識した作品になっているそうです。確かにそのため今回のアルバム、ソウル色を強く感じるアルバム。80年代的な楽曲もあり、全体的にちょっと懐かしい雰囲気もあります。ただ一方でサビ先の「angel tree」やブリッジ→サビで転調という「Let it shine」などいかにもJ-POP調という楽曲も目立ちます。個人的にはJ-POPからはなれてもっとソウル寄りを目指してもよかったのでは、と思わないこともないのですが、このJ-POP調の曲がほどよいインパクトとなっており、アルバム全体としてとても耳なじみやすく聴きやすい作品となっていました。

評価:★★★★★

ゴスペラーズ 過去の作品
The Gospellers Works
Hurray!
Love Notes II
STEP FOR FIVE
ハモ騒動~The Gospellers Covers~
The Gospellers Now
G20

継ぐ/Ivy to Fraudulent Game

おそらく今、最も注目をあつめているバンドの一組。バンド名が非常にユニークでなんと読めばよいのかわからないのですが、これで「アイヴィー トゥー フロウジュレント ゲーム」と読むそうです。注目のバンドということで期待をもって聴き始めたのですが、前半はちょっと期待外れ。ボーカルの歌い方は良くも悪くもヴィジュアル系っぽい雰囲気ですし、楽曲的にもちょっとシューゲイザーが入っており悪くはないのですが、思ったよりも平凡なギターロック。正直なところ最初はちょっとがっかりしたのですが、断然おもしろくなったのは終盤。インターリュードの楽曲を経ての「徒労」「夢想家」が実におもしろい。幻想的でサイケな雰囲気の入った楽曲でメロディーもどこか哀愁感入ったポップなメロが印象的でした。この2曲のような曲をもっと聴きたいのですが・・・。今度に要注目なバンドです。

評価:★★★★

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2017年5月12日 (金)

兄弟バンド、復活

Title:Damage&Joy
Musician:The Jesus And Mary Chain

イギリスのロックバンドで「兄弟」といえば、おそらく今は誰もがまずoasisのノエル・ギャラガー、リアム・ギャラガーのギャラガー兄弟を思い浮かぶでしょう。ただ、そのギャラガー兄弟より先にイギリスのロック界を席巻した兄弟がもう一組いました。それがThe Jesus And Mary Chainのジム・リード、ウィリアム・リード兄弟。所属レーベルもoasisと同じクリエイション。最後は兄弟喧嘩をしてバンド解散、という流れもoasisと一緒です。

彼らが1984年にリリースしたデビューシングル「Upside Down」は強烈なフィードバックノイズが流れる暴力的なサウンドが耳をつんざくナンバー。このシングルが他のバンドにも大きな影響を与え、その後のシューゲイザーの走りとも言われています。凶暴的なフィードバックノイズを流しながらもメロディーはキュートともいえるポップスさを出している点も後のシューゲイザー系と同様。その影響力は海を渡り、シューゲイザー系ではありませんがかのPixiesも彼らの楽曲「Head On」をカバーしています。イギリス、アメリカのオルタナ系のロックバンドに多大な影響を与えたバンドです。

そんな彼らが兄弟喧嘩の末に解散したのが1998年。しかしその後兄弟の仲は回復したようで、2007年には再結成を果たしました。ただその後もライブ活動などは続けるものの新作リリースはなく約10年。今年ようやく待望となる約19年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムタイトル「DAMEGE&JOY」。意味は「他人の不幸を喜ぶ」という意味だそうで、ネットスラングでいえば「メシウマ」(笑)。こういう皮肉的なタイトルをつけるのも彼ららしい感じです。

そんな19年、待ちに待った(・・・といっても19年前のアルバムはリアルタイムで聴いていないのですが(^^;;)新作は、最初はギターアンプのつまみをまわしてスイッチをオンにするような音からスタート。否応なしに期待が高まる粋な出だしに。その後は待ちに待ったといった感じでノイジーなギターサウンドが登場。さらには彼ららしいポップなメロディーが流れ、これぞジザメリといった感じの「AMPUTATION」からスタートします。

アルバムはほどよく心地よいフィードバックノイズに「キュート」ともとれるメロディアスでポップな楽曲が並んでいます。「ALL THINGS PASS」も疾走感あるポップなメロが非常に心地よいナンバーですし、続く「ALWAYS SAD」「SONG FOR A SECRET」はゲストに女性ボーカリストのベルナデット・デニングが参加。楽曲の爽快さ、キュートさがさらに強調されています。

その後もへヴィーなギターサウンドでガレージ色を増した「FACING UP TO THE FACTS」やシンセを入れてちょっとサイケ風になった「SIMIAN SPLIT」といった曲もありますが基本的にはポップなメロディーにノイジーなギターというジザメリというバンドを象徴するような楽曲が並びます。

「THE TWO OF US」「PRESIDICI(ET CHAPAQUIDITCH)」「BLACK AND BLUES」などバンドサウンド以上にポップなメロディーラインが耳を惹くような曲も並んでおりリード兄弟のメロディーメイカーとしての才を感じますし、ちょっとけだるさもあるメロディーがノイジーなギターサウンドにもピッタリ。決して目新しいことをやっている訳でもないのですが、最初から最後まで全くだれることなく楽しめることが出来るアルバムでした。

19年ぶりの復帰作としてはファンにとってもうれしさを感じる、いい意味で安心して聴ける傑作アルバムだったと思います。さあリード兄弟が仲直りしてアルバムを出した今、次はギャラガー兄弟の仲直りか??(笑)

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

÷/Ed Sheeran

日本でも大きな話題となったイギリスのシンガーソングライターによる最新作。おそらく今、世界的に最も勢いのあるシンガーのひとりだと思います。ラップを入れたりトライバルなサウンドを入れたり、かと思えばトラッド風なギターがあったりAORなナンバーがあったりと多種多様なサウンドを取り入れ、かつそんな楽曲を貫くポップでメロディアスなメロディーラインが魅力的。いい意味で器用さを感じるミュージシャンで、良質なポップソングはいかにも売れそうだなぁ・・・といった感じ。話題性の高さも納得の最新作です。

評価:★★★★

Ed Sheeran 過去の作品
+

Elektrac/Shobaleader One

SQUAREPUSHER率いる謎の覆面バンドによるデビューアルバム。エレクトロサウンドをベースにしつつ、SQUAREPUSHERらしい複雑なリズムを奏でるドラムをはじめとしたバンドサウンドも聴かせます。ファンクやAOR、ジャズなどの要素も加えつつ、技巧的なプレイもふくめてフュージョン色が強いのも特徴的。いかにもSQUAREPUSHERがはじめそうなバンドというイメージを強く感じました。そういう意味ではSQUAREPUSHERのファンなら素直に楽しめるかも。

評価:★★★★

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2017年5月11日 (木)

ベスト盤が並ぶ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週のアルバムチャートは上位にベスト盤が並びました。まず2位に先週1位ゆず「YUZU 20th Anniversary ALL TIME BEST ALBUM 『ゆずイロハ 1997-2017』」がワンランクダウンながらもまだまだ売れています。

3位4位は女性シンガーAimerの初となるベスト盤「BEST SELECTION "blanc"」「BEST SELECTION "noir"」が並んでラインクイン。「blanc」がエモーショナルな曲をメインに、「noir」がバラード曲メインの収録となっているそうです。初動売上はどちらも3万4千枚。直近のオリジナルアルバム「daydream」の4万枚(2位)からは若干のダウンです。

さらに5位もベストアルバム。ハロプロ系女性アイドルグループ℃-ute「℃OMPLETE SINGLE COLLECTION」がランクインです。今年6月のライブでの解散が決まった彼女たちのラストアルバムであり3枚目となるベスト盤。初動売上は1万4千枚。直近のオリジナルアルバム「℃maj9」の1万1千枚(9位)からアップ。ただしベスト盤としては前作の「②℃-ute神聖なるベストアルバム」の1万6千枚(12位)よりはダウンしています。

そんなベスト盤が2位から5位まで並んだ今週のアルバムチャート。ただし1位はおなじみのジャニーズ系。Kis-My-Ft2「MUSIC COLOSSEUM」が1位獲得です。初動売上は20万5千枚。前作「I SCREAM」の24万3千枚(1位)からダウンという結果になっています。

続いてその他の4位以下の初登場盤です。8位9位に女性アイドルグループAnge☆Reveの2枚同時リリースのミニアルバム「Lumière ~天使盤~」「Lumière ~堕天使盤~」がそれぞれランクイン。これがアルバムではデビュー作となります。初動売上はいずれも6千枚。

また今週はベスト10圏外からランクアップし、初のベスト10入りを果たしたアルバムが1作ありました。7位にDJ FUMI★YEAH!「♯1 -2nd- mixed by DJ FUMI★YEAH!」がランクイン。クラブシーンなどでヒットした洋楽のナンバーを並べたDJ MIXアルバム。DJ KAORIみたいな感じの方でしょうか。これが初のベスト10ヒット。初登場から3週目にして初のベスト10入りとなっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年5月10日 (水)

いつものドラマ主題歌

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週Hot100で1位を獲得したのはジャニーズ系、V6「COLORS」が獲得。PC販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位、PCによるCD読取数で4位、Twitterつぶやき数で11位。ラジオオンエア数は92位とアイドル系らしく苦戦しましたが初登場で1位を獲得です。テレビ朝日系ドラマ「警視庁捜査一課9係」主題歌。メンバーの井ノ原快彦が出演しているシリーズ物の刑事ドラマで毎作、V6が主題歌を担当しています。特に4月からスタートした新シリーズでは主役である渡瀬恒彦がドラマスタート前に亡くなり、今回のドラマに注目があつまっています。オリコンでも初登場で1位を獲得。初動売上8万7千枚は前作「Can't Get Enough」の12万8千枚(2位)から大幅ダウンとなっています。

2位初登場はBUMP OF CHICKEN「リボン」。配信限定のシングルながら実売数4位、Twitterつぶやき数10位、You Tube再生回数21位と上位にランクイン。特にラジオオンエア数では1位を獲得しており注目度の高さをうかがえます。楽曲はバンプらしいギターサウンドを美しく聴かせつつメロディアスな歌を聴かせるロックナンバー。わかりやすいインパクトあるサビはないものの最後まできちんと聴かせる点、彼らの実力を感じます。

3位は西野カナ「パッ」がランクイン。大塚食品「MATCH」CMソング。先週の16位からCDリリースにあわせてベスト10入り。タイトル通りかわいらしくて明るいポップチューン。実売数5位、ラジオオンエア回数10位、PCによるCD読取数15位、Twitterつぶやき数6位、You Tube再生回数7位と平均的に上位にランクインし、見事ベスト3入りしています。オリコンでは初動1万6千枚で5位初登場。前作「Dear Bride」の2万枚(9位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位に韓流男性アイドルグループBTOB「MOVIE -JPN ver.-」が初登場でランクイン。実売数3位、Twitterつぶやき数2位以外、すべてランク圏外という状況がいかにも韓流らしい感じ。オリコンでは初動売上4万1千枚で3位初登場。前作「L.U.V.」の7万6千枚(1位)からダウン。

もうひとつ男性アイドルグループ。MAG!C☆PRINCE「UPDATE」が8位初登場。名古屋を中心に活動する彼ら。サウンドは今風のEDM風のダンスポップ。実売数は2位を記録しましたが、ラジオオンエア数80位、Twitterつぶやき数48位でその他はすべてランク圏外という結果に。オリコンでは初動売上4万5千枚で2位初登場。前作「Over The Rainbow」の4万枚(6位)よりアップしています。

さて、今週は初登場曲は以上でしたが、ベスト10圏外からの返り咲きが1曲。そう、星野源「恋」が先週の12位から7位にランクアップし2週ぶりの1位返り咲きとなりました。You Tube再生回数は今週も1位を獲得。PCによるCD読取数は5位といまだに上位にランクインしています。まだまだしばらくはヒットが続きそう。

他のロングヒット曲ではAustin Mahone「Dirty Work」が4位から7位にランクダウン。You Tube再生回数は先週から変わらず2位ですので、まだまだヒットは続きそう。またここに来て根強い人気をみせているのがAriana Grande,John Legend「Beauty and the Beast(邦題 美女と野獣)」。ランクイン9週目にしてベスト10入りした後、今週まで3週連続10位をキープ。実売数8位に加えラジオオンエア数13位と健闘。さらなる上位に食い込んでくるのでしょうか。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2017年5月 9日 (火)

伝説のライブ映像も収録

Title:20周年リクエストベスト+レアトラックス
Musician:Cocco

相変わらず非常にシンプルなタイトルが印象的なCoccoのベスト盤。タイトル通りファンからのリクエストを中心に選曲した30曲を2枚のCDに収録。また3枚目にはタイトル通りのレア曲を収録。くるりの岸田繁らと組んだバンドSINGER SONGERの曲や尾崎豊、松田聖子のカバー、さらに2001年にリリースされた最初のベストアルバム「ベスト+裏ベスト+未発表曲集」の初回版にのみ収録された「ひよこぶたのテーマ PART2。」も収録されています。

タイトル通り、メジャーデビューから20年を迎える彼女。彼女のデビューシングルで本作も収録されている「カウントダウン」はその力強くも狂ったようなボーカルとサウンドが非常に衝撃的ではじめてこの曲を聴いた時の印象は今でも覚えています。それだけにあれからもう20年かぁ・・・と思うと感慨深いものもあります。

ただベスト盤という話となると6年前にベスト盤「ザ・ベスト盤」がリリースされてこれが早くも3作目。特に近年はコンスタントに活動をしているもののアルバムのリリースペースは寡作気味でこの間リリースされたアルバムはわずか2枚。さすがにちょっとベスト盤をリリースするのは早くないか・・・と思うのですが(まあ、そう思うベスト盤が最近はあまりにも多いのですが)。

その、先のベスト盤でも強く感じたのが2001年の活動休止前と後との作品の違い。「ザ・ベスト盤」のレビューでも書いたのですが、人との関係を絶望視するようなところがあった活動休止前の作品と比べると活動休止後の作品は人に対して非常に優しい視点を感じるところが大きな特徴に感じます。また活動休止後では「カウントダウン」のように静と動の視点からインパクトある構成となっている曲はありません。

また活動休止後の作品に強くみられる傾向としては沖縄を意識したような曲がグッと増えたという点があげられると思います。このベスト盤に収録されている曲でも「ジュゴンの見える丘」「ニライカナイ」「三村エレジー」など沖縄をテーマとした曲が並んでいます。いずれも2001年の活動休止が彼女の音楽活動にとって大きな分岐点となったことはこのベスト盤からも強く感じられました。

さて、今回のベスト盤の一番の目玉はやはり初回版についてくるDVDでしょう。活動中止前最後のライブ、2000年10月6日に行われたの日本武道館でのライブ映像を収録したDVDがついてきます。このライブ、実は私も見に行ったライブ(ちょっとした自慢(笑))なのですが、彼女がその思いをストレートにぶつけたステージは非常に迫力があり、個人的には私のいままで行った中のベストライブのひとつに挙げられる素晴らしいステージでした。

このDVD、さらにうれしいのはライブのMCがほぼそのまま収録されている点。活動休止前最後ということで自らの言葉で思いを語ったMCは正直今でも覚えていますし、このライブ映像を見て、あらためて胸が熱くなってくるようでした。ステージ上にマイクを置いて逃げるように走り去っていったCoccoの最後の姿もそのまま収録。もう17年も前のライブになってしまったのですが、あの日見たステージの思い出がそのまま蘇ってくるライブ映像でした。

そんな訳で是非ともDVDがついた初回版で入手してほしい本作。もちろんベスト盤に収録された30曲やレアトラックスも魅力的な名曲揃い。あらためてCoccoの魅力を強く感じることが出来たベスト盤でした。

評価:★★★★★

Cocco 過去の作品
エメラルド
ザ・ベスト盤
パ・ド・プレ
プランC
アダンバレエ


ほかに聴いたアルバム

TOSS/トクマルシューゴ

日本のみならず海外でも高い評価を受ける宅録系シンガーソングライタートクマルシューゴの最新作。今回もアコギやピアノ、ストリングスなどをベースにおもちゃ箱のようなワクワクする非常に楽しい音でポップな世界を作り上げている一方、いきなりフリーキーなサウンドが飛び出したり、へヴィーなギターが展開されたりとポップで明るい世界の中で絶妙に繰り出される「歪み」の部分が非常にユニーク。いい意味で彼らしさが出た安定感ある傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

トクマルシューゴ 過去の作品
Port Entropy
In Focus

not not me/Charisma.com

「毒舌現役OLエレクトロラップユニット」というスタンスで活動を続けていたCharisma.com。しかし昨年11月、OLをやめミュージシャン一本で新たな一歩を踏み出しました。そして最新アルバムはさらに「エレクトロ」という枠組みも取り払い、ファンク、スウィングジャズ、ロックなどの要素も入れたアルバムに。西寺郷太や蔦谷好位置など1曲毎にプロデューサーを変え、かなり挑戦的な作品に仕上がっています。

ただ・・・正直言ってちょっと期待していたほどじゃなかったなぁ。「毒舌」的な要素も薄くなり全体的にはちょっと中途半端。脱エレクトロといっても今回のアルバムも基本的には打ち込みのサウンドがベースとなっておりエレクトロ色は強め。ただその結果、エレクトロとして吹っ切れていない、「脱エレクトロ」というほど生音も多くない、ちょっと中途半端な出来に仕上がってしまったような感じもします。もちろん彼女たちらしいインパクト満点なご機嫌なナンバーも少なくなく、全体的な出来栄えは悪くはないと思うのですが・・・ちょっと残念な惜しい1枚でした。

評価:★★★★

Charisma.com 過去の作品
DIStopping
OLest
愛泥C

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2017年5月 8日 (月)

あくまでもアナログ盤の名盤集

本日はまた最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

今回紹介するのはブルースやソウルの専門誌「Blues&Soul Records」編纂による「アナログ・レコードで聴くブルースの名盤50選」。タイトル通り、ブルースの名盤、それもアナログ・レコードでリリースされたアルバムを50枚紹介している名盤ガイドです。

アルバムは1枚につき基本4ページにわたって紹介。うち最初の2ページはアナログ盤のジャケットとレーベルをカラーで紹介。次の1ページでそのアナログ盤に関しての解説を載せた後、最後の1ページは収録曲の演者や録音年などの解説という流れとなっています。

この書籍、いわゆる名盤ガイドなのですがひとつ大きなポイントがあります。それはあくまでもアナログ・レコードの名盤ガイドという点。それもブルースが再評価された60年代70年代あたりにリリースされたようなアナログ盤がメインとなっており、今の時点においてCDで聴ける「ブルースの名盤」とはちょっと異なるセレクトになっています。

例えばT-BONE WALKERに関しては「THE GREAT BLUES VOCALS AND GUTIAR OF T-BONE WAKER」が紹介されていますが本作はCD化されておらず、彼に関してのアルバムの紹介では同作のジャケットのイラストをつかった「モダン・ブルース・ギターの父」が紹介されるケースがほとんど。またB.B.KINGは「THE JUNGLE」が紹介されており同作はCD化もされているのですが、CDの「名盤集」にはあまり取り上げられていない印象を受けます。

最後の方は主に戦前ブルースを集めたオムニバスアルバムが多く紹介されていますが、戦前ブルースのミュージシャンに関して多くの編集盤がリリースされている現在、ここで取り上げられているオムニバス盤が紹介されるケースは少ないように思います。ただ、ラストに紹介されている「RCAブルースの古典」はCD化された今でも不朽の名作として紹介される作品。私もこのアルバムではじめて戦前ブルースに触れました・・・。

この書籍はどちらかというと60年代70年代のブルース再評価の流れの中でブルースミュージシャンがどのような取り上げられ方をしたか、ということが主眼になっているように感じます。実際、解説文にもそのような視点からの解説が多かったように思います。そういう意味では戦後のブルース再評価の雰囲気、または70年代の日本におけるブルースブームを追体験する1冊と言えるかもしれません。

そんなこともあって本作は若干お勧めできるユーザー層が限られてきそう。具体的に言うと

(1)ブルースブームをリアルタイムで体験し、あの時代を懐かしみたい方
(2)ブルース好きが高じてLP盤を集めようと思っている方

にはかなりお勧めできる1冊だと思います。一方で

(3)ブルースは好きだけどLP盤まで手が回らない方(あるいはCDで十分と思っている方)
(4)これからブルースを聴こうと思っている初心者

にはあまりお勧めできないかもしれません。一応最後にCD化の状況の紹介もありますが、こちらはおまけ的。値段も税別2,500円とそこそこ値が張りますし、(3)(4)のタイプの方は無理に手に取らない方が無難かも・・・。私自身はこの中で(3)なのですが、正直ちょっと高かったかな・・・という印象も受けました。

もっとも編者の方向性としてはあくまでもアナログ盤の名盤ガイドを意図している訳で、(3)(4)のタイプが同書の対象外となってしまうのは仕方ないのかもしれません。実際、仕事ぶりは非常に丁寧。オールカラーで紹介されるジャケット写真や裏表紙は私が見てもワクワクしてきますし、解説文もわずか1ページとはいえ読み応えはあります。ブルースのアナログ盤に興味があるのなら間違いなく必読の1冊です。

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2017年5月 7日 (日)

「アルバム」ではなく「プレイリスト」

Title:More Life
Musician:Drake

3月18日に突然リリースされたDrakeの新作。最近ではさほど珍しくなくなったのですが、事前の告知などほとんどなく、ダウンロードでの突然のリリース。最近、多いですね。あまりに突然のリリースだったため本当にあのDrakeの新作なのか訝しく感じてしまったくらいです(^^;;

今回の彼の新作、ユニークだったのがこの作品を彼が「アルバム」ではなく「プレイリスト」と呼んでいる点でした。「プレイリスト」とは昨今の音楽のスクリーミングサービスなどで見られる、ある一定のテーマに沿って様々な楽曲を選曲しならべたリストのこと。本作は内容的にはもちろん事実上、「アルバム」なのですがあえて「プレイリスト」という呼称を使っています。

本作を「プレイリスト」とあえて呼ぶのは様々なミュージシャンがゲストとして参加しており、Drakeが彼らを紹介するというスタンスだからということのよう。Drakeの新作なのは間違いありませんが、Drakeとしては半歩下がった立ち位置からこの「プレイリスト」に臨んだ感じなのでしょうか。

そのこともあって今回の作品は全体的にはちょっとバラバラ。様々な作風の曲が並んでいるような印象を受けました。ラテン調の「Madiba Riddim」にハウスを取りいれた「Get It Together」、メロウなR&Bの歌モノ的な要素も強い「Teenage Fever」などなど、全22曲1時間20分にも及ぶ内容に統一感はさほどなく、ある意味コンセプチュアルな「アルバム」ではなくあくまでも「プレイリスト」であることを感じます。

さて今回のアルバムを聴くにあたって参考にしたWebページがありました。それがRockin'OnのポータルサイトRO69に掲載された下記のコラムです。

【完全解読】ドレイク『More Life』は、これを読みながら聴け(前編)
【完全解読】ドレイク『More Life』は、これを読みながら聴け(後編)

主にブラックミュージックの解説などを中心に活動している音楽ライターの高見展氏によるコラム。1曲ごとにその内容を解説しています。この手のダウンロード先行の洋楽、特に情報量の多いHIP HOPは、国内盤の解説もありませんし、この手の解説は非常にありがたく感じます。

このコラムの記載で興味深かったのは今回の作品でDrakeは多くイギリス的な言葉の言い回しを用いるという指摘でした。今回の作品の中で彼はイギリス的な言い回しを多く使うことにより、あえて「アンチ・アメリカ」的なスタンスを明確にしているそうです。これは普通に聴いているだけではなかなか日本人には気が付かない点ですね。日本に例えれば、あえて地方の方言でラップをやって、アンチ東京を意図した作品を作るような感覚なのでしょうか。なかなか興味深く感じます。

作品全般としてはバラバラですが、1曲1曲については様々なバリエーションある作風を取り入れつつ、インパクトも強く、よく作り込まれた名曲揃い。バラバラで次にどんな曲が来るのかわからないからこそ、逆に1時間20分の内容もダレることなく楽しむことが出来ました。この「プレイリスト」、また文句なしのビルボードチャート1位を獲得した模様。Drakeの活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

DRAKE 過去の作品
Thank Me Later
TAKE CARE
Nothing Was The Same
If You're Reading This It's Too Late
VIEWS


ほかに聴いたアルバム

Wonderful Crazy Night/Elton John

約3年ぶりとなるElton Johnのニューアルバム。ピアノを入れたポップソングは大好きなのですが、個人的にはエルトンよりもBilly Joel派。ただこの曲もピアノを中心としたとても楽しい軽快なポップソングの連続で、個人的に壺にはまりまくり。明るいポップスかと思いきや、微妙に影のあるメロディーラインも魅力的。既に70歳を超えた御大ですが、その才能は全く枯渇していない模様。

評価:★★★★★

Elton John 過去の作品
The Union(Elton John&Leon Russell)

Got Soul/Robert Randolph&The Family Band

スティール・ギターの名手、ロバート・ランドルフ率いるファンク・バンドによる新作。途中、ソウル色の強い曲やハワイアンな楽曲、カントリー風の曲まであったりするのですが基本的にはファンキーなサウンドが実に心地よい13曲が並んでいます。決して目新しさはないのですがルーツ志向の楽曲にほどよくバリエーションを加えて心地よく楽しめるアルバムです。

評価:★★★★

Robert Randolph&The Family Band 過去の作品
WE WALK THIS ROAD

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2017年5月 6日 (土)

保守本流

Title:新日本人
Musician:K DUB SHINE

K DUB SHINEといえば以前から靖国神社へ積極的に参拝するなど保守的な思想が強いラッパーとして知られていました。音楽業界をはじめ芸術方面は比較的リベラル系の色合いが(日本に限らず)強いのですが、「本音」的な部分はともかく表面だって保守的な思想信条を押し出すというのは珍しい印象を受けます。

そんなK DUB SHINEのニューアルバム、テーマは日本人論。保守革新という思想信条にストレートに関わるテーマをあえて選択しています。そのため今回のアルバムに関しては彼の保守的な価値観が歌詞に非常に強く反映された内容となっています。

保守と革新の大きな違いは歴史に対するスタンスの違いと思っています。革新は唯物史観が典型的なように過去から未来にかけて人類は発展していくというスタンスによる歴史観が多くみられます。一方保守はその逆。過去は素晴らしく現在は堕落している、だから過去に戻るべきだ、という考え方をとっています。

今回のK DUB SHINEの歌詞はまさにそんな保守的な歴史観が非常に強く感じられます。その典型例なのが「文明退化」「日本沈没」。前者は江戸時代の日本人を賛美して、それに対して今は・・・という歌詞の内容。一方で後者は敗戦して復興した日本人を賛美し、それに対して今は、という内容。どちらも共通するのは過去の賛美とそれに対する現在社会への批判。ある意味典型的な保守的な視点からの社会批判と言えるでしょう。

ただ個人的に彼のスタンスで感心するのは基本的に保守に立脚しつつも一方ではスタンスの左右問わずよくありがちなポジショントークを彼が取っていないという点です。例えば「沈まぬ太陽」では原発に対する強烈な批判を投げかけていますし、「星の砂」では沖縄の米軍基地問題に対しても批判的なスタンスを取っています。日本において右左関係なく原発問題や米軍基地問題など、その賛否が必ず思想的なスタンスとリンクしていない問題でも例えば左ならば原発は反対、右だから賛成といった単純なポジショントークを取る人があまりにも多すぎます。そんな中、単純にポジショントークを取らない彼には非常に信頼できるものがあります。

特にアメリカに対してのアンチというスタンスはこのアルバムでも強く感じます。ただ当然そうすると誰もが思うのが、でもあなたがやっているHIP HOPは典型的なアメリカ文化じゃん、という疑問。これの疑問に関しては彼も感じているようで「My Dear…」ではアメリカに対する複雑な心境を語っており、こういうスタンスも誠実さを感じることが出来ます。

また今回のアルバムの中でも特筆すべきは「物騒な発想(まだ斬る)」。発表直後、一部で大きな話題となったこの曲は、思想的には彼とは逆、リベラル寄りなスタンスを公表しているRhymesterの宇多丸とのコラボ。内容は強烈なネット右翼批判となっており、特にヘイトスピーチと呼ばれるネット右翼の差別的な言動を強く批判する内容になっています。このネット右翼に強く蔓延している(在日)韓国人に対する差別問題というのは日本の恥だと思いますし、保守革新問わず強く批判すべき事象だと思っていますが、保守系言論人でこの問題を強く批判している人はあまり多くありません。そんな中で思想的なスタンスを乗り越えてこの問題を批判しているこの曲は広く聴かれるべき傑作だと思っています。

個人的な思想信条はリベラル寄りなので彼の主張に関しては必ずしも賛同できない部分が多々あります。ただ、保守としてその考え方に一本筋が通っており、ポジショントークも取らず、差別など本来は左右問わず批判すべき社会問題にもきちんと声をあげている彼の今回の作品にはその賛否とは関係なく非常に感心するものがありましたし、なによりも人間的に信頼できると感じることが出来ました。ただ一方で昔に戻れ的なスタンスの保守の考え方の問題点に残念ながらはまってしまっていた部分も多くありました。

その問題点とは保守が戻れといっている理想的な過去というのは往々にして頭の中だけで作り上げたノンフィクションという点。例えば「文明退化」についてもかなり江戸時代を美化しているのですが、事実に基づかないような歌詞が多く見受けられます。例えば「もめごとがあっても一杯やって和解して秩序を保っていた」という記述があるのですが、完全に論拠不明。てーか、江戸時代にもめ事なんていくらでもあったし・・・(だからこそ「仇討ち」みたいなものが出てくるんでしょうが)。「鎖国をやっていても上手くやっていた」という描写があるのですが、そもそも今の歴史学の主流として江戸時代=鎖国という考え方は一般的ではなくなっています。

そういう問題点も含めてまさに保守本流と言える今回のK DUB SHINEのアルバム。サウンド的にもリリック的にも彼の主張が前に出すぎてしまっていて、このアルバムでの新たな挑戦みたいなものはなく、良くも悪くも無難にまとめてしまっているのですが、非常に聴きごたえのある1枚でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Noah's Ark/ぼくのりりっくのぼうよみ

動画サイトへの投稿から話題となりメジャーデビュー。デビュー時は現役高校生ラッパーとして話題となったぼくりりことぼくのりりっくのぼうよみの2枚目となるアルバム。ピアノやストリングスを多用したタイトなトラックがカッコいい作品。ラップというよりはラップ的な歌唱法も取り入れた歌モノといったイメージが強いポップな作品に。ボーカルは巻き舌を多用した歌い方ですが、このため歌詞がちょっと聴き取りにくいのが残念。もうちょっと素直な歌い方でもいいと思うのですが。

評価:★★★★

ぼくのりりっくのぼうよみ 過去の作品
hollow world
Parrot's paranoia

嘘と煩悩/KREVA

途中ベスト盤のリリースはあったもののオリジナルとしてはちょっと久しぶりとなる4年ぶりの新作。ハイトーンのリズムが目立つエレクトロなサウンドを主体としつつ、しっかりとしたメロディーラインが流れる楽曲が多く、ポップという色彩の強いアルバムになっています。ただもちろん彼のラップもしっかりと強いインパクトを持っており、HIP HOPと「ポップ」のバランス感覚がほどよく保っているのもさすが。ベテランらしい、いい意味で安定感ある作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

KREVA 過去の作品
心臓
OASYS
GO
BEST OF MIXCD NO.2
SPACE
SPACE TOUR
KX

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2017年5月 5日 (金)

ズクナシの魅力をより伝えるライブ盤

Title:サンキュー
Musician:ズクナシ

ボーカルの衣美の妊娠出産のため活動休止に入った3人組ガールズソウルバンド、ズクナシ。本作はその活動休止前最後に行った2016年6月の東京・吉祥寺STARPINE'S CAFEと京都磔磔のライブの模様を収録したライブアルバム。産休前のステージなので「サンキュー」という訳ですね(笑)。とりあえずの一区切りともいえるステージなだけにベスト的な選曲が特徴的となっており、ベスト盤的にも楽しめるアルバムになっています。

ズクナシはいままで一度だけライブを見たことあります。TOYOTA ROCK FESTIVALでの野外でのステージだったのですが、その迫力あり観客を盛り上げつつ、かつユーモアあふれるステージに非常に惹かれるものがありました。

このライブ盤は、そんな彼女たちのステージの魅力をそのままパッケージしたアルバムになっていました。録音はライブ会場の歓声も比較的大きな音で録音されています。そのため会場の盛り上がりもダイレクトに伝わってきます。なによりステージ上と観客とのやり取りが頻繁に行われるのが彼女たちのライブの大きな魅力。このライブ盤ではそんなステージと観客のやり取りもきちんとそのまま収録されています。

彼女たちの演奏や衣美のボーカルもライブ音源ではオリジナルに比べてその迫力がより増しています。冒頭のイントロ的にスタートする「kirakira」の出だしの一音からゾクゾクっとする力強い演奏が耳を襲いますが、ライブ音源では楽器ひとつひとつの音がよりはっきりと聴こえてくるように感じます。比較的狭いライブハウスでの演奏のため、ほどよく音が反響しているのも音の迫力が増した大きな要因でしょうか。またなによりこの後しばらくライブ活動が休止、ということもありライブにかける思いも強かった影響もあるのかもしれません。

おそらくそんな彼女たちのステージでの一つのクライマックスになったのが「左折右折」。私が見た彼女たちのステージでもひとつのクライマックスになったのですが、「左折右折」をファンキーなリズムにのって叫びまくるトリップ感あるこのナンバーは、観客をあおりつつどんどん盛り上げていきます。

正直言って、スタジオ録音のオリジナルアルバムよりもこのライブ盤の方が断然よかったように思います。なによりその演奏もあって彼女たちのブラックミュージックからの影響がより強く伝わってきますし、バンドとしての実力もスタジオ録音よりもはっきりした形で伝わってきます。スタジオ録音では若干伝わりにくかった彼女たちの魅力がはっきりと伝わってくるアルバムになっていました。

このライブアルバムを聴いて断然、彼女たちのライブにまた足を運びたくなった・・・と思って公式サイトを見てみると6月からライブ活動再開の告知が(!)。これは機会があれば是非とも足を運ばなければ!これからの彼女たちの活動も非常に楽しみです。

評価:★★★★★

ズクナシ 過去の作品
ただいま
粗品


ほかに聴いたアルバム

1/the band apart(naked)

the band apartがアコースティック編成で活動する時の名義the band apart(naked)。本作は、そのthe band apart(naked)名義での初となるアルバム。基本的には彼らの代表曲をアコースティックにカバーした作品。もともと比較的シンプルかつタイトで、メロディーをしっかりと押し出した彼らの楽曲はアコースティックなサウンドとの相性もバッチリ。とても軽快なカバーに仕上がっています。ただその反面、原曲イメージから大きく逸脱する楽曲はなく、意外性がなかったのはちょっと残念な印象も。

評価:★★★★

the band apart 過去の作品
Adze of penguin
shit
the Surface ep
SCENT OF AUGUST
街の14景
謎のオープンワールド

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2017年5月 4日 (木)

もう20年ですか・・・

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

もうデビューから20年も経つんですね・・・

今週1位を獲得したのがゆず「YUZU 20th Anniversary ALL TIME BEST ALBUM 『ゆずイロハ 1997-2017』」。タイトル通りデビュー20周年を記念してリリースされた初のオールタイムベスト。「初のオールタイムベスト」という名目でリリースされるベスト盤は最近多いのですが、そう言っておきながら、つい5年程度前にも同じようなベスト盤がリリースされているケースが少なくありません。そんな中彼らは4枚目のベスト盤となるのですが、いままで3枚のベスト盤は「1997-2000」「2001-2005」「2006-2011」と期間を区切っていただけに、そういう意味では本当にこれが初のオールタイムベストとなっています。しかし、彼らのストリートライブが話題になり、街中に「なんちゃってゆず」があふれた頃からもう20年ですか・・・早いなぁ・・・。

なお初動売上は17万3千枚。オリジナルアルバムの前作「TOWA」の6万5千枚(2位)より大幅アップ。ベスト盤としての前作「YUZU YOU[2006-2011]」の14万9千枚(1位)からもアップしておりオールタイムベストとしての面目躍如となっています。

2位初登場は、L'Arc~en~CielのボーカリストhydeとOblivion DustのギタリストK.A.ZによるロックユニットVAMPS「UNDERWORLD」がランクインしています。初動売上2万5千枚は前作「BLOODSUCKERS」の3万7千枚(5位)からダウンしています。

3位には松野おそ松&松野カラ松&松野チョロ松&松野一松&松野十四松&松野トド松(櫻井孝宏&中村悠一&神谷浩史&福山潤&小野大輔&入野自由) 「おそ松さん かくれエピソードドラマCD『松野家のなんでもない感じ』 第3巻」がランクイン。人気アニメ「おそ松さん」のドラマCD。初動売上1万3千枚は同シリーズの前作「第2巻」(5位)から横バイ。

続いて4位以下の初登場盤です。4位もアニメキャラによるアルバム。「THE IDOLM@STER SideM ORIGIN@L PIECES 04」。アイドル育成ゲーム「アイドルマスター SideM」からのキャラクターソング。初動売上1万枚は同シリーズの前作「THE IDOLM@STER SideM ORIGIN@L PIECES 03」の9千枚(10位)より若干のアップ。

まず6位にはアニメソングを中心に活動をしている音楽ユニットMYTH & ROID「eYe's」がランクイン。ミュージシャン名はこれで「ミスアンドロイド」と読むそうです。初動売上8千枚。これがデビューアルバムでシングル含めて初のベスト10入り。

そして今週一番驚いたのが7位初登場。ポルカドットスティングレイ「大正義」が初登場でランクイン。女性ボーカル+男性3人のロックバンドでここ最近、注目を集める新人バンド。これがデビューミニアルバムなのですがいきなりベスト10入りしてきました。初動売上は8千枚を記録。

最後10位にはurata naoya(AAA)「unlock」がランクインです。ミュージシャン名通り、avexのダンスグループAAAのメンバー浦田直也によるソロアルバム。これがソロとしては初のベスト10ヒットとなりますが、初動売上5千枚は前作「un BEST」(20位)から横バイ。低水準のチャートに助けられてのベスト10ヒットとなりました。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に。

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2017年5月 3日 (水)

今週も男性アイドル

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

AKB系、ジャニーズ系と続き今週も男性アイドルグループが1位獲得です。

今週1位はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ超特急「超ネバギバDANCE」が獲得しました。タイトル通りの今時なEDM超のダンスナンバー。CD販売・ダウンロード・スクリーミング数(以下「実売数」)及びTwitterつぶやき数は1位でしたが、ラジオオンエア数は20位、それ以外は圏外というちょっと寂しい結果ながらも他に強力譜がいなかった影響で見事1位獲得となりました。ちなみにオリコンでも初動売上7万2千枚で1位獲得。前作「Yell」の2万7千枚(4位)から大幅増。彼らの1位獲得はシングルアルバム通じて初となります。

2位は嵐「I'll be there」がワンランクダウン。PCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数4位が順位を押し上げる要因になった一方、実売数は14位にとどまりました。

3位にはハロプロ系女性アイドルグループJuice=Juice「地団駄ダンス」が初登場でランクイン。こちらもエレクトロ調のダンスナンバー。実売数が2位だったものの、ラジオオンエア数30位、PCによるCD読取数77位、Twitterつぶやき数31位と軒並み下位に。これでベスト3入りは他に強力譜が少なかった影響でしょう。オリコンでは初動3万2千枚で3位初登場。前作「Dream Road~心が躍り出してる~」(5位)から横バイ。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位に島村卯月,小日向美穂,佐久間まゆ,櫻井桃華,双葉杏 「キラッ!満開スマイル」がこちらも初登場でランクイン。アニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ劇場」エンディング・テーマ。まあ典型的なキャラソンといった感じ。先週5位にランクインしてきた多田李衣菜(青木瑠璃子),木村夏樹(安野希世乃)「Jet to the Future」に続いてのランクイン。実売数及びPCによるCD読取数が3位の他、すべて圏外というのはこの手のキャラソンらしい感じ。オリコンでは同作収録の「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS! キラッ!満開スマイル」が初動売上5万2千枚で2位初登場。「Jet to the Future」の3万9千枚(2位)よりアップしています。

7位にはEXILEの事務所LDH所属の女性アイドルグループFlower「MOON JELLYFISH」がランクインしています。実売数8位、Twitterつぶやき数6位の他はラジオオンエア数60位、PCによるCD読取数11位と寂しい順位に。オリコンでは初動1万9千枚で6位初登場。前作「モノクロ」の4万枚(2位)から大幅減。

初登場最後8位初登場はPKCZ(R)「PLAY THAT feat.登坂広臣,Crystal Kay,CRAZYBOY」。PKCZ(R)はEXILEのHIROを中心にMAKIDAIやm-floのVERBAL、DJ DARUMAが参加した音楽やファッションをプロデュースするユニット。彼ら初のシングルが配信限定でリリースされました。実売数4位、Twitterつぶやき数7位以外はすべて圏外となっています。

初登場は以上。全体的に実売数以外は低調な曲が並び、固定ファンのみが支持し、ラジオオンエアやYou Tubeなどを通じて広く支持されているような曲があまり見受けられないようなチャートとなりました。一方今週のロングヒット曲はまずAustin Mahone「Dirty Work」が7位から4位にランクアップ。ただ実売数5位、You Tube再生回数2位の他、ラジオオンエア数38位で他は圏外という若干支持基盤としては弱さを感じます。また先週2位にランクインしてロングヒットの兆しが見えた倉木麻衣「渡月橋~君、想ふ~」は9位にランクダウン。ラジオオンエア数が58位、Twitterつぶやき数50位という低順位で思ったほど支持が広がっていません。

そして今週、ついに星野源「恋」が12位にランクダウン。昨年の10月3日付チャートから30週維持していたベスト10からついに陥落しました。実に7カ月近くベスト10入りしていただけに驚異ともいえるロングヒットだったのですが。もっとも今週でもYou Tube再生回数は1位、PCによるCD読取数も6位を記録しており、まだまだベスト10返り咲きの可能性もありそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2017年5月 2日 (火)

SOUL'd OUTの延長

Title:BEWITCHED
Musician:Diggy-MO'

ご存じ元SOUL'd OUTのMC、Diggy-MO'によるソロとしては4作目、SOUL'd OUT解散後では2枚目となるアルバムがリリースされました。SOUL'd OUTとしては過剰気味ともいえるベタなサウンドと独特な歌い回しで非常に個性的なグループとして多くのファンを獲得しましたが、ソロとなってからのDiggy-MO'のアルバムに関しても基本的にはSOUL'd OUTの路線を引き継ぐ曲が並んでいます。

前作「the First Night」もSOUL'd OUTファンとしてはうれしくなってしまうような楽曲が並んでいましたが本作もそんな印象を強く受けるアルバムになっていました。特にSOUL'd OUTからの王道路線を感じるのが「SHOTTTTEQKILLA」。巻き舌を多用したラップに分厚いエレクトロのサウンド。ある種ステレオタイプに洋楽的な雰囲気をかもしつつ、メロはどこか歌謡曲的。サビに入って直後の「ハー」とファルセットボイスには、そうそう、これこれ(笑)と思ってしまいます。

他にも「ASTRONAUT」なんかもいかにもSOUL'd OUTっぽさを感じるメロディーラインとエレクトロサウンドが特徴的。エロ歌詞がインパクトとなっている歌詞にもインパクトある「先生、」も軽快なラップとエレクトロサウンドが楽しいナンバーとなっています。

ただ前作「the First Night」もSOUL'd OUTっぽい路線を保ちつつ、その中で新たな方向性を模索するようなアルバムになっていましたが本作も同様。たとえば中盤のキーとなる「PTOLEMY」などは高速ラップを聴かせるのはまさにSOUL'd OUTらしい路線なのですが、最初から最後まで高速ラップを聴かせるというかなりトリッキーなナンバーに。彼らしい挑戦心を感じます。

他にもストリングスを入れてスケール感を出した「YOYOY」や、女性コーラスを入れてメロウな雰囲気を出した「CLEOPATRA」、スウィングジャズ風にまとめた「SHE」などちょっと雰囲気の異なる曲を入れつつバリエーションある楽曲の展開が楽しめます。

もっともこれらの曲に関しても基本的には独特な巻き舌ラップやエレクトロサウンド、人なつっこいメロディーラインをしっかりと聴かせてくれており、ベースにはしっかりとDiggy-MO'らしさは健在。そういう意味ではSOUL'd OUTとは全く異なる路線というよりは、もしSOUL'd OUTが解散せず活動を続けていたら作ったであろうアルバムといった印象を受けました。

いい意味でのベタさももちろん健在。SOUL'd OUTのファンなら間違いなく満足するであろうアルバムだったと思います。あのベタベタなアレンジや巻き舌の高速ラップ、本当に癖になるんですよね~。聴いていて純粋に楽しくなってくるアルバムでした。

評価:★★★★★

Diggy-MO' 過去の作品
Diggyism
DiggyismII
the First Night


ほかに聴いたアルバム

シンドローム/鬼束ちひろ

オリジナルアルバムとしては2011年の「剣と楓」以来久々となる新作。ここ最近、その外見の変化やDV事件、Twitterでの暴言騒動など音楽以外の部分が話題になることが多く、音楽活動もあまり目立ちませんでしたが、今回の新作は鬼束ちひろ完全復活を印象づけるような作品。特に全編ピアノとストリングスで彼女の伸びやかな歌声で美しく聴かせる楽曲が並んでおり、「月光」や「眩暈」など全盛期を彷彿とさせるようなナンバーが並んでいます。ファンにとっては待ってましたといった感じの作品でしょうし、こういうタイプの曲がやはり彼女には合っているなぁ、と思ってしまいます。ただ良くも悪くも昔の彼女そのままな感じで、一種のセルフパロディー的にも感じてしまう部分も。まさに「大いなるマンネリ」的なアルバム。今後は結局この方向で進むのでしょうか?

評価:★★★★

鬼束ちひろ 過去の作品
LAS VEGAS
DOROTHY
ONE OF PILLARS~BEST OF CHIHIRO ONITSUKA 2000-2010
剣と楓
FAMOUS MICROPHONE
GOOD BYE TRAIN~ALL TIME BEST 2000-2013

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2017年5月 1日 (月)

ほどよく狂った歌詞が魅力

Title:kitixxxgaia
Musician:大森靖子

大森靖子についてはいままでアルバムを何枚か聴いてきたのですが、正直いまひとつピンときませんでした。狂ったような歌詞の世界観が魅力的・・・といった評価だったのですがいままでのアルバムは、「そんなに個性的か?」と思うほど良くも悪くも優等生的。狂った「ふり」をしているのが強く感じてしまって、音楽誌などの評価と比べていわゆるハイプ的な印象を強く受けていました。

今回のアルバム、もともとは「キチガイア」というタイトルでリリース予定だったそうですが、「キチガイ」という言葉が問題となりタイトル変更。急きょアルファベットで「kitixxxgaia」というタイトルになりました。そういう話題性もともすれば「狙っている」感があり、正直言って今回のアルバムに関してもほどんと期待はしていませんでした。

そして実際に聴いて今回のアルバム。まず結論から言ってしまうと、これが予想外の傑作。正直言ってしまうと、大森靖子の作品の中ではじめて楽しめたアルバムになっていました。

まず1曲目「ドグマ・マグマ」の歌詞から惹かれるものがありました。

「むかしむかしあるところに男と女とそれ以外がいました
むかしむかしあるところに白黒黄色それ以外がいました
むかしむかしあるところにYESとNOとそれ以外があるのに
いつもいつもことあるごと それ以外はなかったことにされました」

(「ドグマ・マグマ」より 作詞 大森靖子)

という歌詞は、ともすれば「中間」「それ以外」を認めない最近の社会を強烈に風刺。かわいらしいポップチューンなのですが、その中に強烈な毒を感じます。

続く「非国民的ヒーロー」は聴いていて神聖かまってちゃん?と思ったのですが、神聖かまってちゃんのの子とのコラボ。作詞は大森靖子本人が手がけ作曲はの子なのですが、このまま神聖かまってちゃんが歌っても違和感のないピッタリなコラボとなっています。社会の枠組みの中に上手くはまりきれない両者の見る世界観は思いのほか近いものであることを感じます。

前半はメロディーラインはポップなのに歌詞が狂ったような歌詞が強いインパクトを受ける作品になっています。「IDOL SONG」はメロディーに関しては今風のアイドルソング。歌詞も素直にアイドルを応援しているような歌詞なのですが、どこか微妙な歪みを感じますし、「JI・MO・TOの顔かわいいトモダチ」もモータウンビートの軽快なガールズポップ風ながらも「乱交」やら「フェラチオ」やら「離婚」やらいきなりドギツイ表現が飛び出したりしています。

メロディーライン的にはポップにまとめつつもその中に強烈な毒を加えてきているのが本作ではより強く感じました。特に前半はその傾向が強く、聴いていてこちらがドギマギしてしまう部分すらありました。

今回のアルバムに関しては多くのゲスト参加も話題に。神聖かまってちゃんのの子もそうですが、「勹″ッと<るSUMMER」ではアイドルグループゆるめるモ!のあのが参加しているほか、「POSITIVE STRESS」はあの小室哲哉が作曲。ただこの曲に関しては大森靖子の色が濃すぎて、あまり小室色は感じませんでした。(サビの入りの部分は小室哲哉っぽい感じはしましたが)

アルバム全体としてアイドルテイストすらあるポップなメロディーが流れていながらも、その中に強烈に狂った部分を感じるのが魅力的な作品。いままでの作品はピンと来なかったのですが、今回のアルバムはかなりはまりました。まあ、個人的な印象で言えば、もっともっと狂っても面白いんじゃないかとすら思うのですが(笑)。いままでネガティブな印象が多かった大森靖子の印象がプラス方向に大きく変わった作品でした。

評価:★★★★★

大森靖子 過去の作品
洗脳
トカレフ(大森靖子&THEピンクトカレフ)
TOKYO BLACK HOLE


ほかに聴いたアルバム

加山雄三の新世界

今年80歳(!)を迎えた加山雄三の生誕80周年を記念してリリースされた企画盤のひとつ。彼の代表曲を様々なHIP HOPのミュージシャンたちがリミックスしたアルバム。サ上とロ吉にスチャダラパー、Rhymesterに水曜日のカンパネラといったメンバーが若大将の楽曲のリミックスを手掛けたほか、ももクロが参加したことでも話題になっています。

ただ正直言ってこのリミックスに関しては加山雄三の曲をつまみ食い的にサンプリングして自分の曲を構築したようなリミックス。正直、個人的に加山雄三の音楽的な魅力っていまひとつわからない部分があるのですが、このアルバムを聴いても加山雄三の音楽が断片的に使われているだけで、その魅力があまりつたわってきません。単なる「素材」として好き勝手やっているといった印象で、あまりリスペクト的なものが感じられなかったのが非常に残念でした。

評価:★★★

2 Tone/蓮沼執太&U-zhaan

音楽家の蓮沼執太とタブラ奏者U-zhaanによるコラボアルバム。蓮沼執太は名前は知っていたものの音源を聴くのはこれがはじめて。U-zhaan目当てに聴いたアルバムだったのですが・・・正直、思ったほどタブラが主役じゃなかった・・・。アルバム全体としてはアンビエントや実験音楽的な要素が強く、ポップな要素は薄め。「スーダラ節」のカバーや「Dryer」などポップテイストの強い曲もあったのですが、全体的にはU-zhaanというよりも蓮沼執太の色が強く出ていたように感じました。

評価:★★★★

U-zhaan 過去の作品
TABLA ROCK MOUNTAIN

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