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2017年4月18日 (火)

失恋を乗り越えて(?)

Title:Dirty Projectors
Musician:Dirty Projectors

バンド名を冠したタイトルが否応なしに内容への期待が高まるDirty Projectorsの約5年ぶりとなるニューアルバム。前作「SWING LO MAGELLAN」は2012年を代表する傑作アルバムとして高い評価を得ましたが、バンドの中心メンバーであるDavid Longstrethがアルバム後のツアー直後に失恋を経験。そのショックから立ち直れず音楽活動を中断していましたが、その後徐々に様々なミュージシャンへのゲスト参加により活動を再開。ついに久々となるニューアルバムがリリースされました。

その間、バンドメンバーが脱退し、事実上、DavidのソロプロジェクトとなったDirty Projectors。そのため今回のアルバムに関してはバンド色はほとんどなく、エレクトロサウンドを前面に押し出されたアルバムとなっています。もともと前作からポストロック色の色合いが濃かった彼らですが、今回のアルバムに関しても1曲の中に様々な音、アイディアが詰め込まれた作品になっています。特に今回、その軸を担ったのが元BATTLESのTyondai Braxton。ノイジーなエレクトロビートがダイナミックに展開する中、ピアノとストリングスが絶妙に重なる「Death Spiral」などでは特に印象的な仕事ぶりを聴かせてくれます。

今回の作品では事実上のソロとなった影響か豪華なゲスト勢が大きな特徴となっています。「Cool Your Heart」では女性ボーカリストDawn Richardがゲストボーカルとして参加。伸びやかでちょっとトライバルな雰囲気を残しつつ伸びやかでメロウな歌声を聴かせてくれますし、この曲に関してはなんと作詞ではあのSolangeが参加していたります。

また今回のアルバムで一番印象的だったのがパーカッションのリズム。ブラジル出身のパーカッショニストMauro Refoscoがゲストとして参加していますが、「Keep Your Name」「Up In Hudson」では非常に印象的なパーカッションを聴かせてくれます。エレクトロサウンドで無機質なサウンドが多い中、楽曲に暖かみを加えています。

今回のアルバムに関しては、前作に比べてR&Bの色合いが強くなった点も特徴的。David Longstrethのボーカルに憂いを感じられるのも特徴的。特にDavid Longstrethのボーカルにはまだ失恋を引きずっているのか・・・という情けなさを感じると同時に同じ男性としてはその気持ちに同情できるものを感じてしまいます。

ただし、実験的なエレクトロサウンドを奏でつつも基本的にメロディーラインは非常にメロディアスで胸をうつものがあります。特に「Work Together」は様々なサウンドがコラージュ的に組み合わさったような作品でありつつ、メロディーにはとてもポップ。他の曲に関してもしっかりとしたメロディアスなメロディーラインが流れています。

このサウンドは複雑ながらもメロディーはポップというバランスは前作「SWING LO MAGELLAN」から同様。R&B風という方向性も前作からも感じることが出来、そういう意味では根本的な部分においては前作からしっかりと貫かれているものがある作品だったと思います。前作に続きまたもや今年を代表する傑作の1枚となりそうな作品。前作同様、その美しいメロディーラインに惹きつけられたアルバムでした。

評価:★★★★★

Dirty Projectors 過去の作品
SWING LO MAGELLAN


ほかに聴いたアルバム

2016 Grammy Nominees

毎年リリースされるアメリカ・グラミー賞のノミネート作品を収録したオムニバスアルバム。今のアメリカの、ひいては世界のミュージックシーンの動向を知るには最適なアルバム。2016年のノミネート作ではThe Weeknd、Alabama Shakes、Kendrick Lamar、D'Angelo&The Vanguardなどブラックミュージックで実に魅力的な作品が多くリリースされており、その層の厚さ、新たなシーンの予感も感じさせます。一方、個人的に非常に惹かれたのがCourtney Barnettの「Pedestrian At Best」。完全に初耳だったのですが、PIXIESやDINOSAUR JR.の、それも80年代あたりの荒々しさとポップスさを同居させたようなオルタナ系ギターロックが実に魅力的な女性ロックシンガーの楽曲。遅ればせながらはまりました。これはアルバムも聴いてみなくては・・・。全体的にも名曲が多く、シーン全体に勢いを感じさせる2016年のノミネートでした。

評価:★★★★★

Grammy Nominees 過去の作品
2011 GRAMMY NOMINEES
2012 GRAMMY NOMINEES
2013 GRAMMY NOMINEES
2014 GRAMMY NOMINEES
2015 GRAMMY NOMINEES

The Painters EP/Animal Collective

配信限定で急きょリリースされた4曲入りのEP盤。昨年リリースされた「Painting With」と同時期に録音された3曲とMartha & the Vandellasの「Jimmy Mack」のカバーの全4曲を収録したアルバム。前半2曲「Kinda Bonkers」「Peacemaker」はタブラやシタールっぽいサウンドを取り入れたエキゾチックなサウンドが非常にユニーク。一方後半の「Goalkeeper」「Jimmy Mack」はコミカルなサウンドが魅力的でした。

どこかコミカルなサウンドという意味では「Painting With」に通じる今回のアルバム。その「Painting With」はコミカルな楽しさはあったものの聴いていて疲れてしまったアルバムでしたが今回の作品はわずか4曲ということもあって疲れる前に終わってしまうアルバム。それだけに「Painting With」の良い部分のみを抽出したEPになっていました。わずか4曲ですが、彼らのアイディアのつまった個性的な楽曲が並んだ傑作です。

評価:★★★★★

Animal Collective 過去の作品
Merriweather Post Pavilion
CENTIPEDE HZ
Painting With

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