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2017年4月22日 (土)

今だからこそ思うことも

Title:19972016
Musician:BOOM BOOM SATELLITES

1997年、テクノの名門レーベルR&Sレコーズからデビュー。ヨーロッパのメロディーメイカー誌に「ケミカル・ブラザーズ、プロディジー以来の衝撃」と称されて日本でも大きな話題となった2人組ロックデゥオ。その後、日本でも絶大な人気を得るに至りました。

しかしボーカル川島道行はデビュー直後に脳腫瘍を発症。その後、何度かの再発に悩まされながらその都度乗り越えてきたのですが、2015年の再発以降、体調が悪化。昨年リリースされた「LAY YOUR HANDS ON ME」が彼らにとって最後の作品となってしまいました。そして昨年10月、わずか47歳という若さで逝去。その人生に幕を下ろしました。

本作は19年に及びBOOM BOOM SATELLITESの活動を総括するベストアルバム。2010年にリリースされた「19972007」のリマスター盤に、その後の楽曲を集めた「20082016」の2枚組を加え、さらに彼らのライブをドキュメンタリー的に総括的に収録したライブDVDがついた全5枚組という内容となっています。

さて、今回のベスト盤にあたって「別冊カドカワ」から発刊された「BOOM BOOM SATELLITES」の総力特集号を読みながら聴いてみました。

彼らから影響を受けたミュージシャンや関係者、そして最後はメンバー中野雅之によるインタビューからBOOM BOOM SATELLITESとはどんなバンドだったか、ということに迫った一冊。バンド活動が終わった今だからこそ語れる話なども多く、非常に読み応えのある内容に仕上がっていました。

この本の中でもあらためて語られているのですが川島道行が脳腫瘍を最初に発症したのがR&Sからデビューが決まった直後。BOOM BOOM SATELLITESの活動の軌跡は川島の病気との争いの軌跡でもあり、彼の病気もまたバンドの音楽性に大きく影響を与えていたことを、よくよく考えれば当たり前の話なのですが、この本でも述べられています。

そういう観点からベスト盤を聴いてみると、いろいろと感じる部分があります。デビュー当初のビックビート的なテクノとロックを融合させたダイナミックな作風から徐々にジャズなどの要素を加えた内省的な楽曲へとシフトしていくのですが、「別冊カドカワ」でも語られているようにこれもまた川島の病気が影響していることもわかります。

特に「19972007」と「20082016」での差は大きく、ロックサウンドのダイナミックにサウンドをベースに様々な挑戦心を感じさせる「19972007」に対して、「20082016」はエレクトロサウンドを中心としてもっと落ち着いた内省的な色合いが強い作風になっています。

また今回のベスト盤を聴いてひとつ感じたことがありました。これは特に「別冊カドカワ」の中でも語られていませんし、私の印象論に過ぎない部分があるのですが・・・「19972007」がアルバム全体としてひとつの流れになっているように感じたのに対して「20082016」は1曲1曲がひとつのドラマのように完結している、そんな印象を受けました。それは1つ1つの曲に関して完成度があがり、1曲で彼らがやりたいことがすべて詰め込まれるようになった結果かもしれません。そのためアルバムとしてもひとつの流れにようなものはあまり感じず、1曲1曲がそれぞれ強い個性を放ち展開していっているという印象を受けました。

これはあくまでも私の印象ですが、バンド活動後期の彼らは、川島の病気もあり、より一層、1曲1曲に悔いのないよう全力で取り組んできたためかもしれないなぁ・・・ということを漠然と感じました。もちろん、この推測は全く誤りかもしれません。また川島の病気よりも、音に対して完全主義的な強いこだわりを持っている中野雅之の曲に対するこだわりが後期になってより強くなった影響もあるのかもしれません。ただ今回、バンド活動を総括して振り返ることにより、BOOM BOOM SATELLITESがどのような軌跡をたどって来たか、バンドが今だからこそ感じることが少なくない、そんなベスト盤になっていました。

DVDの方はドキュメンタリー色が強い内容で、ライブをじっくり見せるというよりもライブを通じたバンドの歩みを紹介するような内容になっています。映像には最後の告知の前日に行われたフジロックの最後のステージの模様や(こちらも「別冊カドカワ」を読んでから見ると、胸に来るものがあります)、最後のライブとなってしまった「WILD BUNCH FEST. 2015」の映像も収録されており、心うたれる展開になっています。

また最後に「別冊カドカワ」の方の感想も追加で。様々な方のインタビューがのっていて非常にボリュームある内容だったのですが、ひとつ不満があるとすれば、影響を受けたミュージシャンのインタビューよりももっと関係者のインタビューにページを割いてほしかったかな、という点。ミュージシャンへのインタビューでは、「そんなに関係しているの?」という人もいたりして、それならもっと関係者へのインタビューを厚く聴きたかったな、と思ってしまいました。

ただ最後の中野雅之のインタビューはファンなら必読。最後の中野にとってのBBSでの「最高の瞬間」という質問に対する答えは感涙モノです。これに限らずベスト盤を聴く上でぜひとも読んでおきたい内容の連続で、ファンなら絶対に読んでおきたい満足度の高い一冊でした。ムック本なので書店にはもう並んでいないかもしれませんが・・・Kindle版はネットで簡単に読むことが出来ますので、今からでも是非!

評価:★★★★★

BOOM BOOM SATELLITES 過去の作品
EXPOSED
19972007
TO THE LOVELESS
EXPERIENCED
REMIXED
EMBRACE
EXPERIENCEDII
SHINE LIKE A BILLION SUNS
LAY YOUR HANDS ON ME


ほかに聴いたアルバム

UNOFFICIAL/THE ORAL CIGARETTES

本作で初のオリコンアルバムチャートベスト3入りを記録するなど人気上昇中のロックバンド。ただ楽曲的にはよくありがちなポップなメロのJ-POP路線でボーカルの歌い方もどこか耽美的でヴィジュアル系の典型例といった雰囲気もあるバンドになっています。それでも前作はインパクトあるメロディーラインにおもしろさを感じたのですが本作はこれといって引っかかりを覚えるようなメロディーもなく厳しい展開に。平凡なポップバンドといった印象でおもしろみは感じられませんでした。

評価:★★★

THE ORAL CIGARETTES 過去の作品
FIXION

もうすぐ着くから待っててね/クリープハイプ

クリープハイプの新作は5曲入りの、事実上のEP盤。ただ彼ら曰く「作品集」らしく、シングルとアルバムの中間に位置する作品ということでしょうか。基本的にギターロックメインの中、「ただ」は情熱的だけどちょっと理屈っぽいラブソングが彼ららしい作品。「陽」は女性視点の心象的で文学的な歌詞が魅力的な楽曲でホーンやギターがちょっとソウル風なのも耳に残ります。ラストは「陽」のKANA-BOON谷口鮪とのデゥオバージョンなので事実上楽曲は4曲。クリープハイプらしいちょっと理屈っぽい感じの歌詞は気になるのですが、ただ短い中に彼らの魅力がしっかりと入った作品になっていました。

評価:★★★★★

クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観

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アルバムレビュー(邦楽)2017年」カテゴリの記事

コメント

クリエイティブな要素がうまく噛み合わずに失速したまま終わってしまったような印象を覚えましたね、オーラルの新作は。

投稿: ひかりびっと | 2017年6月 5日 (月) 19時19分

>ひかりびっとさん
「FIXION」は悪くなかったので期待していたのですが、残念です。

投稿: ゆういち | 2017年6月10日 (土) 00時35分

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