ジャケット写真からは想像できない内容に
Title:Drunk
Musician:Thundercat
今回紹介するアルバムはThundercatことアメリカのベーシスト、Stephen Brunerのアルバム。今、最も話題のベーシストのひとりで、Flying LotusやKendrick Lamarといった今を輝くミュージシャンたちのアルバムにも参加。大きな評判となっています。
このアルバム、まず惹かれるのはこのジャケット。カッコいいかどうかと言われると微妙なのですが、60年代や70年代のレアグルーヴのアルバムを彷彿とさせるような「黒さ」を感じさせるジャケット。正直、今回本作を聴いたきっかけがこのジャケット。話題のベーシストのアルバムということで真っ黒いグルーヴ感あふれる作品を期待して聴いてみました。
しかし、これが全く予想外の方向性のアルバム。オープニングのナンバーに続いて聴こえてくるのは透き通るハイトーンボイスに80年代風のサウンドを感じるメロウなエレピが魅力的な「Captain Stupido」。続く「Uh Uh」もハイテンポでファンキーなベースがさく裂していますが、そこにのっかかるボーカルはハイトーンボイスでフィリーな雰囲気すら感じらせるもの。続く「Bus In These Streets」もおもちゃ箱のような楽しげなエレクトロサウンドがワクワクさせてくれるポップチューンになっています。
全体的には80年代あたりのAORやフィリーソウルあたりの影響を強く感じるメロディアスでポップな楽曲が魅力的なアルバム。「Show You The Way」に至ってはMichael McDonaldが参加。懐かしさを感じる思いっきり80年代のAORサウンドに仕上がっていますし、「Blackkk」も透き通るハイトーンボイスが魅力的。日本人にとっては「Tokyo」なんて曲があるのもうれしいところ。こちらもいかにも80年代あたりのFM局で流れていそうな雰囲気のAORナンバーに仕上がっています。またタイトルチューン「Drunk」のようなジャジーな要素を入れた楽曲も大きな魅力となっています。
そんな80年代なサウンドが魅力的なアルバムですが単純にノスタルジックなアルバムでもありません。もともと魅力的なプレイを聴かせるベーシストなだけにところどころにちゃんとベースの音でグルーヴ感を奏でていますし、なによりもリズムを前に押し出した楽曲の構成やエレクトロサウンドはちゃんと今風にアップデートされています。音を詰め込むよりも空間を聴かせるようなほどよいサウンドのバランスなども見事です。
また全24曲入りという内容ですが1曲あたり2、3分という長さの楽曲が次々と繰り出されるアルバムの構成もいい感じ。変に間延びしたアレンジもなく、次から次へとテンポよく楽曲が展開していくためまったく飽きがありません。ともすれば長くなりがちなブラックミュージックのアルバムの中で54分という長さも長すぎず短すぎずほどよい長さとなっています。
正直、最初ジャケット写真から予想していた内容からはかなりかけ離れたアルバムの内容でしたが、でも予想以上の傑作アルバムになっていました。とにかくメロディーやサウンドが聴いていて心地よさを感じさせる楽曲の連続。間違いなく今年のベスト盤候補の傑作アルバム。ジャケットに逆にひいてしまったような方も、是非ともチェックしてほしいアルバムです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
HYMS/Bloc Party
メンバー2人が入れ替わりあらたなメンバーとなった新生Bloc Partyの4年ぶりとなる新作。エレクトロサウンド主体なのですが、ロック寄りの曲だったり渋く聴かせる曲があったりバレエティー富んだというと響きがいいのですが、全体的にどうもチグハグさを感じる1枚。楽曲的にインパクトが強いキラーチューンがなかったのも大きなマイナス要素。前作も正直ちょっと微妙な出来でしたが、今回のアルバムもちょっと微妙な出来・・・。
評価:★★★
Live In Sweden 1987/Johnny Winter with Dr.John
2014年に惜しまれつつこの世を去ったJohnny Winter。本作はタイトル通り1987年に行われたスウェーデンでのライブの模様をおさめたライブ盤。いまだ若々しい彼の迫力あるギターサウンドが思う存分楽しめるアルバム。「with Dr.John」という名義通り、Dr.Johnがピアノで参加しているものの彼はバックに徹しており、Dr.John目当てだとちょっと期待はずれかも。ただ所々Dr.Johnの個性が光るピアノプレイが入って来たりするのがおもしろいところなのですが。
評価:★★★★
Johnny Winter 過去の作品
Step Back
Dr.John 過去の作品
Locked Down
Ska-Dat-De-Dat:Spirit of Satch
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