早くもベスト盤
Title:アンコール
Musician:back number
おそらく今、もっとも人気のあるバンドのひとつではないでしょうか。この曲で大ブレイク!といった感じはないのですが、2012年にリリースされた「わたがし」あたりから徐々に注目を集め、気が付けば押しも押されぬ人気バンドとなったback number。デビューからインディーズを含めて8年目、アルバムも5枚という段階ですが、早くも初となるベストアルバムがリリースされました。
今回、このベスト盤もオリコンチャートでは最高位2位にとどまったものの、1位はかのSMAPのベスト盤。また初動売上も27万枚という好セールスを記録しており、週が違えば余裕で1位を獲得できた数値。その後もロングヒットを続けており、根強い人気を見せています。
今回のベスト盤は2枚組全32曲が収録されています。曲順については特に発表順とかではなく、またCDによって特段のテーマ性を与えたものではない模様。アルバムとして全体の流れを重視したような選曲といったところでしょうか。あえて言えばDisc1の方はストレートな楽曲が多く、Disc2の方に若干癖のある曲が多かったように思います。
さて彼らの楽曲の最大の魅力はおそらくその歌詞にあるのではないかと思います。昨今のJ-POPは万人受けを狙うばかりに抽象的な歌詞が目立ちますが、その中でも彼らが歌うのはストレートなラブソング。それもきちんと登場人物の顔が見えるような具体的に描写されたラブソングがほとんど。このドラマ性ある歌詞が大きな魅力となっています。
そんな具体的で物語性ある歌詞が多いのですが、ただベスト盤で彼らの代表曲を聴くとちょっと気になる点がありました。それは嫌でも惹きつけらえるようなインパクトのある歌詞の一節が少ないということ。1曲1曲きちんと耳を傾ければ印象的な歌詞になっているのですが、ただハッと胸に突き刺さるような一節はあまりありません。ドラマのシチュエーションにしても比較的シンプル。もうちょっとひねりがほしいかな、とも思ってしまいます。
もっともそんな中でも「わたがし」なんかは名曲中の名曲。片想いの女の子と夏祭りの会場を歩く、近づきたくてもなかなか近づけないシチュエーションもグッときますし
「夏祭りの最後の日 わたがしを口で溶かす君は
わたがしになりたい僕に言う 楽しいねって」
(「わたがし」より 作詞 清水依与吏)
という歌詞も、まさにこの一文だけで胸にキュンと突き刺さるキラーフレーズとなっています。
またよくありがちな「君は僕のもの」と歌わずに「僕は君のもの」と歌う「僕の名前も」も、ある意味いまどきの恋人関係を描写しているようでインパクト大。ここらへんのレベルの曲をコンスタントに書けるようになればおもしろさがグッと増すと思うのですが・・・。
メロディーラインについても歌謡曲テイストが強く、ベタにストリングスで盛り上げるアレンジが多く見受けられます。ある意味歌詞が売りなバンドなだけにメロディーやアレンジはむしろ多少ベタな方がおもしろいと思うのでこれはこれでありかと思うのですが、こちらももうちょっとインパクトが欲しいなぁ、と感じてしまいます。
いいバンドだし1曲1曲は決して悪くないのですが、アルバムとか、こういったベストアルバムでまとめて聴くと、歌詞にしろメロにしろひとつずば抜けたものがない中途半端さを感じてしまいます。時々、ずば抜けた名曲が生まれてくるあたり実力は間違いなくあると思うのですが・・・。もう一皮むけるとおもしろいと思うんですけどね。これからに期待です。
評価:★★★★
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