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2017年4月14日 (金)

ミュージシャンとしてはもちろん現役

1990年代後半、「1/2」「桜」「DNA」の大ヒットで一躍時代の寵児となった女性シンガーソングライター川本真琴。しかし2000年代に一時期活動を休止。その後インディーズにその活動の中心を移しました。その後もインディーズではそれなりにコンスタントに活動をしていたものの、知る人ぞ知る的な活動が続き、すっかり「あの人は、今」的な過去の人になっていました。

しかし昨年、本当に久しぶりにお茶の間レベルに川本真琴の名前がクローズアップされることになりました。ただし、それは恋愛スキャンダルという形で。そのちょっとめんどくさい、ストーカー気質なTwitterが大きな話題となりました。正直なところ、めんどくさいストーカー気質というのは彼女のいままでの楽曲や言動からイメージ通りでもあったのですが・・・その相手が・・・狩野英孝とは・・・・・・。

ただそんな騒動とは裏腹に、2016年はむしろ彼女の音楽活動は活発化していました。

Title:川本真琴withゴロニャンず
Musician:川本真琴withゴロニャンず

こちらは川本真琴を中心に、元LABCRYの三沢洋紀、テニスコーツの植野隆司、池上加奈恵、スカートとしての活動で知られる澤部渡で結成された5人組バンドの1stアルバム。豪華なメンバー・・・というよりはむしろ知る人ぞ知るようなサブカル/アングラ勢を集めたようなバンドとなっています。

作詞作曲は川本真琴を中心にメンバー全員が手掛けた内容になっています。ただ楽曲的には意外とストレートなポップ。マニアックなメンバーに反して難解なポップソングになっていなかったのはひとえにやはり川本真琴の影響でしょうか?「music pink」という暖かい雰囲気のポップソングからスタートし、「summertimeblues」は、まあちょっとベタなタイトルですが、ストレートなオルタナ系ギターロックになっています。

ただこの豪華メンバーの個性が出てきて、サウンドに若干ひねりが入って来たのがその後。「私が思ってること知られたら死んじゃう」はタイトルからして例のSNSの騒動を反映されたタイトルでは?なんて思ってしまうのですが、ワウワウギターがちょっとソウルな雰囲気を醸し出すミディアムポップ。「エリエリ」もファンキーなサウンドやラップが入ってきたりとちょっとエキゾチックな雰囲気のあるユニークな作品に仕上がっています。

歌詞にしろメロディーにしろどこかコミカルさ、ユニークさを感じさせる9曲。それぞれポップなメロディーラインにメンバーの個性が入った楽曲に仕上がっていました。ただ全体的にメロディーのフックは抑えめ。そのためポップなメロが流れているといっても、万人向けにアピールするにはちょっと弱さも感じる部分があるのは残念でした。

評価:★★★★

Title:ふとしたことです
Musician:川本真琴

そしてもう1枚、2016年にリリースされたのが本作。デビュー20周年を記念してリリースされたセルフカバーアルバム。ご存じ「愛の才能」「1/2」という大ヒット曲や「タイムマシーン」「やきそばパン」のような懐かしい楽曲をピアノとストリングスという非常にシンプルなアレンジでカバーしています。

「愛の才能」や「1/2」がヒットしたころの彼女のイメージといえば若さあふれる彼女がギターをかき鳴らし爽やかに歌い上げるというイメージがありました。それだけにピアノでカバーというのはちょっとイメージから離れる部分もあるかもしれません。

しかし例えば「愛の才能」。ピアノ1本でジャジーに仕上げているのですが、これがジャズアレンジに驚くほどマッチ。大人の雰囲気となったこの曲は、大人になった川本真琴が歌うにはピッタリのカバーに仕上がっています。「1/2」も持ち味の爽やかさを生かした上でピアノやストリングスでしんみり大人なポップスへとアップデートしています。他の曲に関してもピアノを中心としたアレンジで上手く大人なポップスへと仕上げており、彼女のメロディーメイカーとしての才能を(「愛の才能」は岡村靖幸作曲ですが)再認識させる結果となっています。

そんな中に入っている新曲「ふとしたことです」もなかなか良い出来栄えに。素朴なアレンジのちょっとジャズ風のポップスなのですが、全盛期の彼女の曲と比べても遜色ない出来栄えに。いまだに彼女の才能が衰えていないことがわかります。

彼女自身、自らすすんでメジャーシーンから姿を消した部分があるため、今後再びメジャーシーンにカムバックする可能性は低いのですが、このアルバムを聴く限り、まだまだ多くのファンを獲得できるポテンシャルはあるミュージシャンだと思います。今回の騒動で久しぶりに彼女の名前を聞いた方、せっかくなので久しぶりに彼女のアルバムを聴いてみてはいかがですか?

評価:★★★★★

川本真琴 過去の作品
音楽の世界へようこそ(川本真琴feat.TIGAR FAKE FUR)
The Complete Single Collection 1996~2001
願いがかわるまでに


ほかに聴いたアルバム

Things Discovered/People In The Box

CDリリース10周年を記念してリリースされた2枚組のアルバム。1枚目は新曲に再録曲、さらにはメンバーそれぞれがプロデュースした作品が並ぶ「ニューアルバム」で、2枚目は過去の楽曲をメンバーがセレクトしてリマスタリングした「ベスト盤」という変則的ながらもPeople In The Boxというバンドがわかるような構成になっています。

ポストロックやシューゲイザー、ミニマルミュージックやソウル、ファンクなど様々な要素を取り込み、複雑なリズムやサウンドで組み立てたアレンジを構築しながらも楽曲全体としては爽やかでむしろポップという印象を受ける楽曲を作り上げているのが彼らの特徴。彼らの代表曲も収録された本作はPeople In The Boxの入門盤としても最適な作品。個人的にはもっともっと売れてもいいバンドだと思っているのですが・・・ただ一方、確かに「これは」といったパンチ力にちょっと欠ける点も否めないんだよなぁ・・・。

評価:★★★★★

People In The Box 過去の作品
Ghost Apple
Family Record
Citizen Soul
Ave Materia
Weather Report
Talky Organs

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