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2017年4月15日 (土)

今のPOLYSICS

Title:Replay!
Musician:POLYSICS

今年、結成20年を迎えたPOLYSICSの20周年記念の企画盤的アルバム。彼らの過去の代表曲のうち特にライブで盛り上がる曲を厳選しリテイクした上でライブ音源も収録した、特に「ライブバンドPOLYSICS」の魅力を前に押し出した企画盤になっています。

これは折に触れ言っているんですが・・・POLYSICS、20年ですか・・・インディーズ時代から破天荒なライブが話題となっていたバンドだったのですが、どちらかというと勢い重視の彼ら。率直に言って、これほど長く続くバンドとは思いませんでした。

さて今回の企画盤。彼らの代表曲をセレクトしておりまさにベスト盤といっていい内容になっています。ただうれしいのはその長さ。楽曲を厳選に厳選して12曲42分という長さにおさめています。この手のベスト盤、最近は特に3枚組4枚組と長くなる傾向にあります。まあ代表曲をまとめて聴けるという意味ではそれも悪くないのですが、はじめて聴くようなミュージシャンのアルバムとしては聴くだけで体力がいりますし、なにより「代表曲を何曲か聴きたいだけ」という程度だったとすると、逆にそんなボリュームいらないという印象すら受けてしまいます。

それだけに20周年といってもベスト盤的な内容にわずか42分というのは非常に潔さを感じます。またほどよい長さで最初から最後まで全くだれずに聴くことが出来、若干の聴き足りなさを感じる長さで、他のアルバムも聴いてみたくなるというという意味ではちょうどよい長さだったと思います。

そして今回のアルバムに収録されている彼らの代表曲を聴いてみると、POLYSICSってこんなにポップなメロディーを書くバンドだったんだ、ということを強く感じました。おそらくライブで盛り上がるということでよりポップなメロディーが流れている曲を選んでいるということもあるのでしょう。またパンキッシュで勢い重視だった初期に比べるとここ最近はポップなメロディーを書いた曲が多く、バンドとしてポップなメロディー志向に向いているこということもあるのでしょう。サビのフックもしっかり聴いており、歌詞にもインパクトがあり思った以上に初期の作品からきちんとポップミュージシャンとしての実力を見せていたのだな、と再認識しました。

さらに今回の作品、2017年バージョンとしてリテイクされているのですが、楽曲の雰囲気としてかなり変わっているのも特徴的でした。特に多くの曲に共通するのが、ギターやドラムといった生音のバンドサウンドがより重みを増し、サウンドとして重厚感ある腰の落ち着いた音になったという点でした。以前の彼らの楽曲はピコピコサウンドを前に出したエレクトロポップミュージシャンとしての側面をより強く押し出していました。その路線ももちろん魅力的ですし、今回のリテイクに関してももちろんエレクトロポップの方向性は残されています。ただそれ以上にロックバンドとして実力をつけているというのが顕著にあらわれた今回のリテイク。ある意味ピコピコポップという飛び道具的なものに頼らなくても勝負できるんだという自信すら感じることが出来ました。

またこのリテイクにより、オリジナルに比べてよりメロディーラインが前に押し出されたようにも感じます。サウンドのユニークさに必要以上に頼らず、ギターやベース、ドラムスといったバンドサウンドやメロディーラインといった楽曲のコアな部分の魅力をより前に押し出してきたように感じました。今回のアルバムで彼らが意外なほどポップなメロディーを書くバンドだったんだと再認識したのは、そんなリテイクの方向性にもよったのではないでしょうか。

わずか42分という長さといい初心者にも最適なベスト盤ですし、またリテイクという内容上、ファンにとってもPOLYSICSの今の立ち位置を再確認できる企画盤だったと思います。むしろ今のPOLYSICSが奏でているという点において、初心者にとってはこれより過去にさかのぼる必要のない、最初の1枚として機能しているアルバムだと思います。POLYSICSというバンドの魅力がつまったアルバムでした。

評価:★★★★★

POLYSICS 過去の作品
We ate the machine
We ate the show!!
Absolute POLYSICS
BESTOISU!!!
eee-P!!!
Oh!No!It's Heavy Polysick!!!
15th P
Weeeeeeeeee!!!
MEGA OVER DRIVE
ACTION!!!
HEN 愛 LET'S GO!
HEN 愛 LET'S GO! 2~ウルトラ怪獣総進撃~
What's This???


ほかに聴いたアルバム

NEW TRIBE/a flood of circle

途中ベスト盤を挟んで、新作としては約1年半ぶりとなるa flood of circleのニューアルバム。アルバム毎に出来不出来の差が大きい彼ら。前作「ベストライド」はポップ寄りになっており結果、あまり良い出来ではありませんでした。今回のアルバムはガレージ色の強い曲からポップ寄りの曲まで比較的バランスよく配置されたようなアルバム。相変わらずポップ寄りの作品はボーカル佐々木亮介の端整な歌い方もあいまってベタな内容になってしまっています。ガレージ寄りの作品に関しては文句なしにカッコいいだけに、もうちょっとポップな曲はひとひねりが欲しいと思ってしまうのですが。

評価:★★★★

a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-

 

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コメント

POLYSICSの20年で一番大きな出来事は
やっぱりカヨの脱退ですよね。
カヨのヴォーカルとピコピコサウンドの
親和性は非常に高かったというのが
個人的な感想です。
以前のこのバンドのアイコンはと聞かれれば
やっぱりハヤシとカヨと答えてたと思います。
カヨが抜けた1発目、2発目のライブは
行く前はすこし心配な気持ちでした。
ですが当時の3人体制でのライブも非常に
良かったですしこのアルバムを聴く限り
現在も高い質のライブを行ってるんだろうなあ
また行けるようになったらライブに
足を運びたいなあと思わせてくれました。

投稿: Toshi | 2017年4月28日 (金) 01時01分

>Toshiさん
そうですね、確かにカヨ脱退というニュースは私もショックでした。ただその後もがんばっているみたいで、私も久しぶりに彼らのライブを見てみたいですね。彼らにはこれからも変わらずがんばってほしいです。

投稿: ゆういち | 2017年4月30日 (日) 23時53分

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