小室哲哉らしさ満載
Title:Tetsuya Komuro JOBS#1
Musician:TETSUYA KOMURO
小室哲哉の楽曲というと、かつては時代の一歩先を走る楽曲をポップにまとめあげている点が大きな特徴でした。最近、この曲だけが収録されたアルバムがリリースされた「Get Wild」は今から聴くとJ-POPの原点的な楽曲になっていますし、なによりTM NETWORK自体、当時ではまだ珍しかったデジタルサウンドをバリバリと取り入れて、非常に近未来テイストあふれる楽曲に聴いていてワクワクしたものです。
その後の小室系ブームの時も、いまから振り返るとブラックミュージックの要素を強く取り入れ、小室系の後にやってくるR&Bブームを先取りしたような楽曲が多かったことに後から聴くと気が付かされます。このように時代の先端を行っていた小室哲哉ですが、ただ小室系ブームが終わった後は残念ながら完全に迷走してしまった感がありました。
トランスやアンビエントなどを取り入れてそれなりに最先端の音楽をつくろうとする意欲は感じたものの、いまひとつ方向性はチグハグ。正直なところ、最先端の音楽をキャッチアップしようとして無理をして空回りしている、そんな印象すら受けました。その結果、小室系人気は一気に収束。例の詐欺事件にまで落ちぶれてしまいます。
しかしその後の小室哲哉の楽曲はむしろかなり吹っ切れたような印象を受けます。詐欺事件での逮捕後に彼が提供した楽曲はそれなりに今風の音にキャッチアップしつつ、小室哲哉の彼らしい耳なじみやすいキャッチーなメロディーがしっかりと流れるポップな曲がメインとなり、無理に時代の一歩先を進もう、とするような姿勢がなくなり自然体の姿が目立つようになりました。
今回のアルバムは彼がここ最近発表したタイアップ曲や他のミュージシャンとのコラボ曲を集めた、タイトル通り彼の「お仕事」をまとめたアルバム。そもそも逮捕後にリリースされた彼のソロアルバム「Digitalism is eating breakfast 2」や「DEBF3」も彼らしい人なつっこいポップな曲が集まっていましたが、今回のアルバムに関してもファンなら顔がゆるむような、これぞ小室節といった楽曲が並んでいます。
たとえばかのtofubeatsが参加した「#RUN」など90年代小室系全盛期を彷彿とさせるようなガールズポップナンバー。ボーカルとして神田沙也加が参加しているのですが、彼女のボーカルもいかにも小室系のボーカリストっぽいハイトーンボイスとなっており、時代が時代なら彼女、小室系の一員としてデビューしていたかも?大森靖子をボーカルとして迎えた「rever」も均等な四分音符で展開するAメロ部分といい、そこからちょっと雰囲気をかえてくるサビへの展開といい、実に小室哲哉らしい楽曲展開になっています。
タイトルからしてタイアップ曲の「Song for ALPINE SKI WORLD CUP 2016」など最初の一音から小室哲哉だ!とわかるほど癖が強い出だしが特徴的。ワンフレーズ披露した後に転調して同じフレーズを繰り返す構成も彼らしい感じ。楽曲は今風のEDMで、良くも悪くも流行にのっかかったサウンドなのですが、ほどよく今の音を取り入れている点も心地よさを感じます。
楽曲的には良くも悪くもベタな感じで、サウンド的にも時代に寄り添っているというイメージでかつての彼のような一歩先に出ているという印象は受けません(むしろEDMに関してはちょっといまさら感も否定できません)。ただ、ファンならにやりとしてしまう小室哲哉らしさ満載の楽曲が続いており、聴いていて素直にうれしくなってしまいます。小室哲哉がきちんと彼の良さに向き合って、素直に楽曲にその良さを取り入れたといった印象を受ける楽曲ばかり。楽曲的には目新しさがないので★4つといった感じでしょうが、聴いていて素直に楽しめたという意味で以下の評価に。ちなみに新進気鋭のトラックメイカーのtofubeatsや、ヒャダインとのコラボもありますが、楽曲的には小室哲哉カラーになっているあたり、まだまだだなぁ、なんてことも感じてしまいました(笑)
評価:★★★★★
Title:Tetsuya Komuro JOBS#1(INSTRUMENTAL)
Musician:TETSUYA KOMURO
で、こちらは同時リリースされた上記アルバムのインスト盤。といっても、元のアルバムもインスト曲が多数収録されていますし、それ以外の曲に関してもしっかりとサウンドが目立つようになっているだけに、このアルバムで新たに気が付いたような点はあまりなし。サウンド的にはベタな今風のエレクトロサウンドがメインなので、聴き入ってどうこうといった感じでもありまえんし、熱心なファン向けアイテムといった感じでしょうか。だからこそ配信オンリーでのリリースなんでしょうが・・・。ファンが余力があれば、といった感じのアルバムでした。
評価:★★★
小室哲哉 過去の作品
Digitalian is eating breakfast 2
Far Eastern Wind-Complete
DEBF3
TETSUYA KOMURO EDM TOKYO
ほかに聴いたアルバム
脈拍/ムック
ミニアルバムだった前作「T.R.E.N.D.Y. -Paradise from 1997-」から約1年半ぶりとなるニューアルバム。ベタな曲も少なくありませんが、歌謡曲テイストの哀愁感あるメロディーを聴かせつつ、ガレージやへヴィーロック、またアシッドジャズ風な曲があったりトライバルな曲があったりとバラエティー豊か。メジャーデビューから14年が経過したベテランの域に入って来たバンドながらもここ最近、アルバムをリリースする毎に良くなっているように感じるだけに、今後が楽しみです。
評価:★★★★
ムック 過去の作品
志恩
球体
カルマ
シャングリラ
THE END OF THE WORLD
T.R.E.N.D.Y.-Paradise from 1997-
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