新生bonobos
Title:23区
Musician:bonobos
bonobos2年半ぶりとなる新作。その間、2015年にはドラムの辻凡人が脱退。バンドとして解散の危機を迎えたのですが、キーボードの田中佑司(元くるりのドラマー(!))、ギターの小池龍平、ドラムスの梅本浩亘の3名が加入して新生bonobosとして生まれ変わった彼ら。本作はそんな新生bonobosの第1弾となるアルバムです。
そんなbonobosですが、今回のアルバムではその雰囲気がグッと変わった印象を受けます。前作までの彼らはレゲエやダブなどの要素を取り込み、多幸感あふれるポップソングが大きな魅力的でした。一方、今回のアルバムではジャズやソウルなどブラックミュージックの要素が強く前面にあらわれていました。
例えば「Crusin' Crusin'」は(このタイトルからのイメージできるように)フィリーな雰囲気のあるシティーポップ。「グッドナイト」もムーディーな魅力を醸し出しているジャジーなナンバー。こちらもタイトル通り爽快なサマーチューン「Late Summer Dawn」も軽快なシティーポップのナンバーになっていましたし、最後のタイトルチューン「23区」もしんみりジャジーに聴かせる楽曲に仕上がっています。
様々なジャンルの音を取り入れて幸せな雰囲気を醸し出していた前作「HYPER FOLK」と比べるとアルバム全体、ジャズ、シティーポップ、ソウルなどの要素で統一されていた感のあった本作。そのためいままでのbonobosのイメージとはちょっと異なったタイプとなっており、レゲエ、ダブなど横ノリのリズムを求めていたりすると、期待はずれに感じてしまうかもしれません。
それではいままでのbonobosと全く異なったバンドになっていたか、と言われるとそれもまた否でしょう。前作までのbonobosの大きな魅力、特に聴いていて楽しくなるような幸せあふれる楽曲になっているという点は本作でもきちんと引き継がれています。
1曲目の「東京気象組曲」などはバンドサウンドにピアノを入れて分厚いサウンドのポップソングになっていますが、この様々な音を取り入れたサウンドがとにかくワクワク楽しさを醸し出していますし、続く「葡萄の森」も軽快なポップチューン。ちょっと小沢健二や最近の星野源を彷彿とさせる楽しいナンバーに仕上がっていました。
そんな訳で新生bonobosとして新たな方向性を示した一方、いままでのbonobosらしさもきちんと残した、ある意味理想的な変化形ともいえるアルバムになっていました。今後はやはりこの方向性を進んでいくのでしょうか。まだまだ彼らの活躍からは目が離せなさそうです。
評価:★★★★★
bonobos 過去の作品
Pastrama-best of bonobos-
オリハルコン日和
ULTRA
HYPER FOLK
ほかに聴いたアルバム
PINK/土岐麻子
全編エレクトロサウンドを導入した土岐麻子の新作。エレクトロサウンドを前面に押し出しつつ、「Valentine」のようにストリングスで重厚感を出したり「Rain Dancer」のようにEDMナンバーとしたりバリエーションを持たせているのが楽しいところ。またエレクトロ風味となっていてもメロディーはいつもの土岐麻子。彼女の声を加えることにより、いつも通りのシティポップ路線にまとまっていました。
評価:★★★★
土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~
Bittersweet
&DNA/パスピエ
前作「娑婆ラバ」は非常にポップス色の強いアルバムになっていましたが今回のアルバムはその路線を踏襲した形になっています。前作はそのベタなJ-POPぶりが気になったのですが今回の作品もそのベタさがかなり気になる作品に。アップテンポな楽曲はまるでアニソンみたい。それもある種の突き抜け感が逆におもしろいアニソンと比べると、昔ながらのベタなJ-POPという悪い部分だけが残ってしまったような感のする楽曲に。ちょっと厳しいなぁ。
評価:★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2017年」カテゴリの記事
- 20周年イヤーの最後を締めるアルバム(2017.12.26)
- 5曲中3曲がタイアップ(2017.12.25)
- チャメ~!(2017.12.23)
- 4枚組豪華オールタイムベスト(2017.12.17)
- 赤裸々な本音を強烈なガレージサウンドで(2017.12.16)
コメント