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2017年3月17日 (金)

ブルースの歌詞の世界へようこそ

今日紹介するのは最近読んだ音楽関連の本の紹介。今回は日本のブルース研究の第一人者である小出斉氏の書いたブルースの「歌詞」にスポットをあてた一冊です。

タイトルは「意味も知らずにブルースを歌うな!」。かなり刺激的なタイトルですが、そのタイトルの通りブルースの名曲についてその歌詞を掘り下げて紹介しています。内容は3章にわかれており、第1章ではロバート・ジョンソンの「クロスロード・ブルース」やTボーン・ウォーカーの「ストーミー・マンディ」なんていうブルースを聴き始めたら真っ先に出会うような超スタンダードナンバーを紹介。第2章ではB.B.キングの「ロック・ミー・ベイビー」やアルバート・キングの「悪い星の下に生まれて」のような、これまたブルースの有名曲のうち、いかにも「ブルース」らしい素材を取り上げた曲を紹介。そして第3章はちょっと異色で、ブルースの題材としてあまり取り上げられないようなテーマを歌った曲を紹介しています。

1曲につきさかれているページは6ページ程度。1ページ目は楽曲のイメージがイラストで描かれていて、2、3ページ目は楽曲の解説。3ページ目に英文の歌詞が記載されており、欄外では歌詞の中で使われている英単語の訳が数点記載されているほか、コード進行も記載されています。その後はシンガーの紹介、紹介された楽曲が収録されているアルバムの紹介、聴き比べてみたいカバー曲の紹介と続いています。

そんな構成になっているため歌詞についての解説は2、3ページ程度。歌詞の中の要点を絞って解説しているという印象。ただきちんと楽曲の肝は抑えられており、その曲の歌詞のおもしろさはきちんと伝わってきます。特にブルースの場合は歌詞にダブルミーニングが用いられていたり、リアルタイムのブラックコミュニティーの人たちにしか通じないような言い回しが用いられていたりして、英語に詳しくてもなかなか読み取れない部分が多いのですが、そういったポイントもしっかりと抑えられた解説になっています。

ただし、短い内容に要約されているため全訳はついておらず、また背後にある当時の黒人社会の状況への言及もあまりありません。この点に関しては若干物足りなさも感じるような解説もあったのですが・・・ただおそらく著者はブルースのマニア向けに深く掘り下げるというよりは、ブルースを聴き始めた初心者向けに、ブルースの歌詞のおもしろさを伝えることを最優先にしているように感じます。

実際、ブルースをこれから聴き始めようとする初心者にとっては最適な構成になっていると思います。まずブルースを聴くなら抑えておきたい曲が並び、その曲を歌うミュージシャンと曲が収録されているアルバムの簡単な紹介が続いており、ブルースといってなにを聞いたらいいかわからないという方にとっては最適な入門書ともいえる内容になっていました。

もちろん、ある程度ブルースを聴いているような方にとっても、ともすればあまり深く考えず聴いてしまう歌詞の世界をあらためて味わうことの出来る一冊になっていると思います。この本でブルースの歌詞の裏側に広がる世界をもっともっと知りたいというのならば、さらに他の本を読んでみてほしいといったところなのでしょうか。個人的にはそういうブルースの歌詞の世界にはまってしまった人が次に読むべき本をブックガイド的に載せておいてほしかったかも、とも思いました。

そんな訳で物足りなさを感じたような部分はありつつも、とても楽しむことできました。特に紹介されている曲を自分が持っているCDやYou Tubeなどで聴きながら読むと、より楽しめる本だと思います。ブルースの入門書的にも、あらためて歌詞の魅力に触れたい方にとっても要点がおさえられたわかりやすい1冊でした。

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