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2017年3月26日 (日)

1日1曲

今回紹介するのは、今年1年かけてリリースされる興味深いコンピレーションアルバムです。「大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs」と名付けられたこのコンピシリーズは音楽評論家の田家秀樹が企画・構成・パーソナリティをつとめたTOKYO FM/JFN系ラジオ番組「JAPANESE POPS REFRAIN 1945-2015」に由来する企画。日本のポピュラーミュージックの歴史を紐解きながら700曲を選ぼうという番組。そしてその企画で紹介された曲のうち366曲を、1日1曲というコンセプトのもとに12枚のアルバムに収録。その月々の時節にあったテーマを決めて選曲し収録したコンピレーションとなっています。

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「1月 新年」

まずスタートを切るのがこの作品。Disc1は「新年ハジマリの歌」、Disc2は「受験生応援ソング」となっています。どちらもポップスのテーマとしてはあまり題材にならなさそうなテーマで、ちょっと無理矢理感のある選曲も(笑)。どちらかというとDisc1は新年というよりも「始まり」をテーマとした曲、Disc2は前向き応援歌が並んでいます。

さてこのコンピレーションシリーズのもっともユニークな部分は「J-POP」と名乗っていますがここに収録されているのは戦後のポピュラーミュージック全般。それこそ60年代や70年代の歌謡曲から80年代、90年代のニューミュージックやいわゆるJ-POPといった曲が同列に並んでいるのが大きな特徴です。

例えばこのアルバムでもユニコーンの「お年玉」の次に藤山一郎・奈良光枝の「青い山脈」が続いていたり、吉田拓郎と岡村孝子、高石友也にクレージーキャッツ、さらにはウルフルズが同列に並んでいたりします。

それにも関わらず意外とサラッと聴けてしまうのがおもしろいところ。昔と今の曲にも共通項を感じたり、例えばクレイジーキャッツの「ホンダラ行進曲」みたいに今聴いても十分楽しめるようなモダンさを感じたり、ジャンル問わず戦後の日本のポップスを並列に聴けるとても楽しい企画になっていました。

評価:★★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「2月 告白」

同列に並ぶというと非常におもしろいのがこのアルバムの中のDisc1。スノウソングをテーマとしているのですが、都はるみの「北の宿から」からいきなりGLAYの「Winter,again」へとつながります。さすがにド演歌からJ-POPへのつなぎは少々無理があるのを感じつつ、ただ「Winter,again」の歌謡曲的要素の強さを演歌と並べると再認識させられます。

Disc2は「告白バレンタインソング」として告白をテーマとした曲が並んでいるのですが、おもしろかったのは中盤。レベッカの「ラブ・イズ・Cash」から松田聖子、三木聖子、ピンキーとキラーズそして小川知子へと続く流れはガールズポップの歴史を遡っている流れとなっています。軽快なポップスから徐々に哀愁感ただよいムーディーになっていく流れに、日本のガールズポップの流れを感じました。

またなかなか渋い選曲なのがChageの「告白」。チャゲアスの大ヒット曲「SAY YES」のカップリング曲なので、実は知っている方も多いかも?なんとなくチャゲアスの曲が使えないからという事情も感じてしまうのですが、それを差し引いてもChageの実力を知れる名曲で、これはなかなか興味深い選曲です。同様にKANちゃんの「プロポーズ」が入っているのもとてもうれしかったりするのですが。

評価:★★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「3月 卒業」

今回のこの企画、アルバムのCD1枚毎にコンセプトが設定されているのですが、そのコンセプトと選曲がもっともマッチしていたのが本作。Disc1は「出会いと初恋」ということでテーマには事欠きませんし、特にDisc2の「卒業」はポピュラーミュージックのテーマの定番中の定番。「卒業」というタイトルの曲だけで3曲も並んでいますし、基本的に「卒業」というテーマ性だけでほぼ全曲埋まっている選曲となっています。

Disc2なども川嶋あいの次の舟木一夫「高校三年生」を持ってくるなど時代やジャンルを超えた並びになっているのですが、楽曲のテーマが一緒である影響でしょうか、違和感はほとんどありません。テーマ的に時代を超えて似た曲が並んでいるだけに今回の3作の中ではもっともアルバム通じて最初から最後まで違和感なく楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★★

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