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2017年3月14日 (火)

こちらはデビュー40周年

Title:矢野山脈
Musician:矢野顕子

先日、デビュー25周年でオールタイムベストをリリースしたCHARAのベスト盤をリリースしましたが、こちらはそれを上回るソロデビュー40周年!間違いなく日本を代表する女性ソロシンガーの一人、矢野顕子のオールタイムベストがリリースされました。

以前から彼女の曲に関してはちょっと不思議に感じていたことがあります。それは彼女の曲に企業タイアップと密接にからみついたコマーシャルソングが目立ちながらも、それを含めてサブカル系の音楽ファンを中心に高い支持を得ているという点でした。例えば本作でも収録している「ISETAN-TAN-TAN」はタイトルそのままデパートの伊勢丹のオフィシャルソングですし、「あたしンち」もタイアップとなったアニメ映画「あたしンち」そのまんまのタイトル。今回のベスト盤には収録されていませんが、「リラックマのわたし」なんて曲もあったりします。

得てして商業主義的なミュージシャンは特にサブカル系の音楽ファンに忌避されそうなのですが矢野顕子の場合はそんな傾向は全くありません。まあ言うまでもないと思いますが、それは彼女の楽曲が「商業主義」なんて枠組みが全く無意味になるほど優れているからにほかなりません。かわいらしい歌声で歌いながらもあえて音階をはずして自由に歌うことによってジャジーな雰囲気を出しているスタイルや、ポップでかわいらしいメロディーを書きつつも一癖二癖あるメロディーラインは日本のポップスシーンの中で唯一無二のものを感じます。

それだけに彼女の楽曲は非常に個性的であり、その結果、シングルは本作にも収録されている彼女の代表曲「春咲小紅」が大ヒットを記録していますが、それ以降ほとんどヒットとは無縁という状況にあります。それにも関わらず彼女の楽曲が数多くのタイアップに恵まれているというのはシングルヒットには結びつかなくてもリスナーの心をつかむ何かがあるのでしょう。

事実、大ヒット曲がなくてもおそらくこのベスト盤に収録している曲の中には「どこかで聴いたことある」という曲が必ず数曲含まれているのではないでしょうか。例えば「ラーメンたべたい」なんてそのままストレートな歌詞に一度聴いたら忘れられないインパクトを持っていますし、「ふりむけばカエル」「夢のヒヨコ」なんかもそのかわいらしいサビはおそらく一度聴いたら忘れられなさそうです。

さて今回のベストアルバム、通常版は全3枚組の内容となっていますが、1976年から84年の作品がDisc1、85年から97年がDisc2、98年から2016年がDisc3と発表順に並ぶ構成になっています。ただこうやって並べてもデビュー当初からしっかり矢野顕子の色がついておりDisc1とDisc3の曲を比べてもほとんど遜色ない点に驚かされます。

またもうひとつ特徴的だったのがDisc3に他のミュージシャンとのコラボ曲が多く収録されている点でした。それも小田和正のような大ベテランから岸田繁のような(彼女から見れば)若手のミュージシャンまで。また本作には残念ながら収録されていませんがyanokamiと名乗る彼女、実力派のエレクトロニカミュージシャン、レイ・ハラカミとのコラボユニットを立ち上げたりもしています。デビューから40年を経て、なお他のミュージシャンと積極的にコラボして新たな挑戦を続ける彼女の姿勢には感心してしまいます。

ただそれだけ多くのミュージシャンとコラボしながらも本作では矢野顕子の別名義での活動の曲が収録されていないのはとても残念。yanokamiもそうですし、上原ひろみとのコラボとか宮沢和史とのコラボとか・・・オールタイムベストなんだからこういう曲も収録してほしかったなぁ。この点はちょっと残念に感じました。

先日のCHARAのベスト盤もそうでしたが本作も魅力的な作品たくさんで3枚組というフルボリュームながらもあっという間に聴けてしまったベスト盤でした。矢野顕子は上でも書いた通り、名前は知られていても大ヒット曲というのが少ないだけに名前は知っていてもちゃんと音源を聴いたことがない、という方も少なくないかもしれません。そういう方にこそ是非聴いてほしい、矢野顕子の魅力がたっぷりとわかるベスト盤でした。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート
(矢野顕子+ TIN PAN)

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