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2017年2月13日 (月)

最期を覚悟した傑作

Title:You Want It Darker
Musician:Leonard Cohen

2016年はミュージシャンの訃報が相次ぎ、多くの音楽ファンに衝撃を与えました。特に洋楽では年初いきなり飛び込んだデヴィット・ボウイの訃報からはじまり、プリンスに年末のジョージ・マイケルと日本でも高い知名度を誇るミュージシャンの訃報が相次ぎました。その中でも特にボウイは、直前に傑作アルバム「★」をリリースしており、まだミュージシャンとして脂がのっている中の突然の逝去というニュースに多くのファンにショックを与えました。

多くの音楽ファンにショックを与えた訃報という意味ではカナダのシンガーソングライター、レナード・コーエンの訃報もそうでしょう。彼の場合、享年82歳であり早世というイメージはありませんが、80歳を超えても積極的な音楽活動を続けており、特に遺作となった本作は各地メディアの2016年年間ベストアルバムでも上位に選ばれており、まだまだミュージシャンとして現役だっただけにその逝去のニュースは驚きをもって迎え入れられました。

今回のアルバム、ちょっとおくればせながら聴いてみたのですが、実はレナード・コーエンについては名前は知っていたのですがアルバム音源をきちんと聴くのはこれがはじめて。毎年年初に、各種メディア等にベストアルバムとして紹介されているアルバムのうち聴き逃したアルバムをチェックしているのですが、その一環として本作を聴いてみました。

そんな本作なのですが・・・まず彼の声がめちゃくちゃ渋くてカッコいい!1曲目はタイトルチューンの「You Want It Darker」からスタートするのですが、楽曲は重厚なコーラスラインのイントロからスタート。おごそかな雰囲気で楽曲がはじまる中、非常に渋いレナード・コーエンの語り口調のボーカルからスタートします。録音のバランスとしてもレナード・コーエンのボーカルをくっきり前面に押し出したようなバランス。また彼も一言一言言葉をかみしめるように、語るように歌っています。このボーカルが、よく映画の(それもファンタジー映画でよくありがちな、異常に重厚感ある)ナレーションのような雰囲気になっており、その声が非常に印象に残ります。

楽曲は、ソウルミュージックの影響を感じつつ、ブルージーな雰囲気の作品やともすればムード歌謡曲的な雰囲気をかもしだすような楽曲などが並んでいます。どの曲も陳腐な言い方をすれば「大人のポップス」という言い方もできそうな非常に雰囲気のある、かつ比較的聴きやすいポップミュージックという印象を受けました。レナード・コーエンの語り気味のボーカルも印象的。ある意味、御年82歳という年齢なりのボーカルなのですが、その年だからこそ出せる深みや渋みのあるボーカルが非常に印象に残りました。

また彼の曲に関してはその詩的な歌詞も非常に評価が高いのですが、今回の作品はまるで当初から遺作ということを覚悟していたかのような歌詞が目立ちます。タイトル曲「You Want It Darker」では「I'm ready, my lord」(主よ、覚悟はできている)という歌詞が登場してきますし、「Leaving the Table」なんていうタイトルの曲も登場したりしてきます。おそらくある程度自分の死期を悟って、その覚悟の上でのアルバムだったのでしょう。

そういう意味ではミュージシャンの意気込みとしてはボウイの「★」と似た意気込みの元、作成されたアルバムだったのかもしれません。そしてそれは、「★」と同様、傑作アルバムに仕上がっていました。こんな傑作をリリースしておきながらの訃報は残念・・・と思うと同時に、遺作とわかっていたからこそ生み出されたと思われる傑作アルバム。あらためて彼のご冥福をお祈りします。

評価:★★★★★

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