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2017年2月26日 (日)

戦前のエンタテイメント

今回紹介するのは 歌謡曲や舞台・映画音楽などの様々な音源を収録し、戦前の日本エンタテインメント史の様々な側面を紹介する「ザッツ・ニッポン・エンタテインメント・シリーズ」という企画から発売された2組のCD。企画自体なかなか魅力的なのですが、監修として、ここのサイトでも何度か紹介している戦前のSP盤を紹介するレーベル「ぐらもくらぶ」の主宰、保利透氏がつとめており、とてもおもしろそうな企画でしたので、さっそく聴いてみることにしました。

Title:ハリキリ・ボーイ ロッパ歌の都へ行く!
Musician:古川ロッパ

まず1組目は戦前から戦後直後にかけて一世を風靡したコメディアン、古川ロッパのアルバム。同じく戦前から戦後にかけて絶大な人気を得たコメディアン、榎本健一と「エノケンロッパ」として並び称されており、おそらくその名前をご存じの方は少なくないのではないかと思います。

今回のアルバムでは2枚組としてリリースされ、1枚目は「ロッパ・ア・ラ・モード」としてバラエティーソング中心の収録、2枚目は「ロッパ一座特別興行」としてロッパ一座の舞台や時局ソングを収録した内容になっています。

「ロッパ・ア・ラ・モード」は軽快なジャズ風の楽曲が目立ちます。明るくコミカルに戦前の庶民の生活を描写した楽曲がメイン。1940年に開催が決定されながら戦争のため中止となった幻の東京オリンピックの開催を祝って歌った「東京オリムピック」など、オリンピックに期待する当時の雰囲気が伝わってきます。

一方「ロッパ一座特別興行」はタイトル通りの寸劇が多いのと同時に、時局柄、戦争にからんだ曲が多く見受けられます。ただ、戦争にからんだ曲に関しても勇ましさというよりもどこかコミカルでチラッと庶民の本音的な部分も垣間見れる曲が多いのも印象的。ここらへんもDisc1と同様、庶民の声をそのまま拾い上げているという作品が多く収録されていました。

評価:★★★★

Title:ニッポン・エロ・グロ・ナンセンス

こちらは戦前に流行した「エロ・グロ・ナンセンス」というムーブメントに沿った楽曲を集めたコンピレーション。以前、当サイトでも戦前のエロソングを集めた「ねえ興奮しちゃいやよ 昭和エロ歌謡全集 1928~32」思ひ直して頂戴な 昭和エロ歌謡外伝 あゝ哀歌」という2組のアルバムを紹介しましたが、本作もこれらのアルバムを監修した毛利眞人氏監修によるオムニバスアルバムとなっています。

「エロ」をテーマとして全面的に押し出した先の2作と比べると、本作は「エロ・グロ・ナンセンス」という戦前のサブカルチャー全体に焦点を当てているため、露骨なエロソングというのは少な目。特にDisc1については当時、モダンガール略して「モガ」と言われた、戦前のサブカルチャー的な風俗により焦点をあてた楽曲が並んでいます。

今回、このアルバムリリースと同時に、毛利眞人氏による評論「ニッポン エロ・グロ・ナンセンス 昭和モダン歌謡の光と影」が発売されており、今回、このCDを聴くのと同時に、同書も拝読させていただきました。

評論本に紹介されている曲がCDにも取り上げられているなど、同時並行で読むと、評論本もCDもより理解が深まるような仕組みになっています。評論本の方は比較的淡々と事実を丁寧に記述しつつ、当時の風俗を浮き彫りにしています。今の感覚でもかなりフランクリーな文化が展開されていたり、かなり際どい歌詞が登場してきたりとユニーク。また当時の音楽業界の状況や、はたまた海外のヒット曲とのつながりなども記述されており、作者の戦前文化に対する深い造詣を感じられます。

特に後半、徐々に戦時色が強くなる中、「エロ・グロ・ナンセンス」が当局に徐々に規制されていく状況でのレコード会社と当局との攻防戦がなかなか興味深さを感じます。特に当局の規制をあの手この手でのがれようとするレコード会社のたくましさも印象に残りました。

このCDと評論本で「エロ・グロ・ナンセンス」を主軸とした戦前のサブカルチャー文化がとてもよく理解でき、またある意味今の時代とかわらないような庶民文化のユーモラス、たくましさを感じることが出来ました。ともすれば遠い昔、異文化のようにも感じられる戦前の日本なのですが、やはりそこは同じ人間。興味を持つもの、楽しいと思うことなどは今の時代と大差はないんだなぁ・・・あらためてそう感じました。

評価:★★★★★

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