レトロと今が同居
Title:Yes Lawd!
Musician:NxWorries
2016年にリリースされてベストアルバムとして紹介されているアルバムのうち、聴きのがしたアルバムをここ最近、あらためて聴いているのですが本作はその流れで聴いたアルバム。ミュージック・マガジン誌R&B/ソウル/ブルース編で1位と紹介されている作品です。
NxWorriesはKendrick Lamarの「To Pimp a Butterfly」にも参加したプロデューサーKnxwledgeとニュージャージー出身の期待のシンガーソングライターAnderson Paakによるユニット。2015年にリリースしたEP盤も話題になったようですが、昨年リリースした彼ら初のフルアルバムも大きな話題となりました。
楽曲的にはヒップホップソウルという言い方が一番ピッタリ来るでしょうか。60年代あたりの昔ながらもソウルと、今時のHIP HOPテイストのサウンドが見事に同居してるという楽曲が強く印象に残ります。例えば「What More Can I Say」などはまさにビンテージなソウル風のストリングスやホーンのサウンドが胸をうちますし、「Kutless」なんかはレコードのノイズを模していると思われるサウンドが入っており、ある意味レトロ感を前に押し出した楽曲になっています。
一方でリズムには今時を感じさせます。上にも書いた「What More Can I Say」なんかもベースラインを前に押し出したリズムトラックは2010年代ならではでしょうし、「Can't Stop」など今のHIP HOPの潮流も捉えたサウンドに感じました。そんなレトロと今時を両方とも捉えたうえで上手くバランスさせたサウンドが見事でした。
またそれに乗るメロディーラインも非常に心を捉えます。メロディーラインはとてもメロウで心の奥に入り込みじーんとさせるような美しさを感じます。Anderson Paakの歌声は飛びぬけて美声、といった感じではありませんが、伸びやかな歌声が魅力的。トラックとあわせて60年代あたりの王道ソウルの雰囲気を感じさせてくれます。
楽曲は60年代だけではなく全体的にどこか懐かしさを感じさせるのも特徴的。例えば「Scared Money」などはシンセの音の使い方などもろ80年代風。「H.A.N.」はフィリーソウルの雰囲気も感じられ、40代以上にとっては非常に懐かしさを感じるのではないでしょうか。
楽曲は全19曲入りというボリュームながらも1曲あたり3分程度でサクサクすすみ、アルバム全体でも50分程度というボリューム感も良い感じ。次々と楽曲が展開していき、まったくだれずにアルバム通して楽しむことが出来ます。
アルバムの内容としては文句なしの傑作アルバムだと思います。HIP HOPリスナーから60年代ソウル好きまで楽しめそうなアルバムです。まあただ、BeyonceやSolangeを差し置いて年間1位というほどの傑作かどうかは微妙な感じですが・・・。
評価:★★★★★
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コメント
レトロな感触と近未来的な感覚が交錯するヒップホップでしたね、僕は大好きな感じでした。
投稿: ひかりびっと | 2018年5月21日 (月) 07時52分
>ひかりびっとさん
ご感想ありがとうございました。
投稿: ゆういち | 2018年6月 3日 (日) 23時11分