怒れるMOBY
Title:These Systems Are Failing
Musician:Moby and The Void Pacific Choir
MOBYは怒っています。ドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任するにあたり、かなりインパクトの強いMVを公開しています。
本作にも収録している「Erupt&Matter」のミュージックビデオ。ドナルド・トランプや金正恩、バッシャール・アル=アサドなどといった政治家の演説に対して一般庶民が怒りの声をあたえる構図。その政治家の演説をバックに「We don't trust you anymore」「Your power reign was sick and wrong」「Your time is gone」などといった強烈な歌詞が特大のフォントで登場します。
アメリカのテクノミュージシャン、MOBYの最新作はMoby and The Void Pacific Choir名義でのリリース。上で紹介したミュージックビデオでも明白なように彼は今、世界で台頭しつつある排外主義、極右勢力に対して激しい怒りを抱いています。今回のアルバムタイトル「These Systems Are Failing」はまさに彼の怒りを端的に表現していると言えるかもしれません。またその怒りを表現するかのように今回のアルバムに収録されている曲はいずれもパンキッシュでロックテイストが強いナンバー。MOBYといえばチルアウトな作品が多いだけに本作での方向性には驚かされます。
ノイジーなギターが鳴り響く中、強い四つ打ちのリズムのダイナミックなデジタルサウンドがのる構成。まさに怒りをストレートに表現しているサウンドが特徴的です。直感的に非常に心地よいサウンドで個人的にも聴いていてとても心地よさを感じました。MOBYといえば、その音源から想像される以上に盛り上がるライブが魅力的なのですが、このアルバムに収録されている曲はライブではさらに大盛り上がりが期待できそうです。
ただ一方で残念だったのは「怒り」を表現することが先に立ったのか、アルバム全体としては似たようなサウンドが並んでいてちょっと単調だったように思います。またサウンドにしても聴いてパッと思ったのが、一昔前に流行ったビックビート。正直言って、目新しさは全くありません。
そういう意味では聴いていて素直に心地よいアルバムではあったのですが、ちょっと物足りさも感じるアルバムでした。もっとも今回のアルバム、MOBY自体、あくまでも彼の怒りのメッセージを伝えるのが先で、サウンド自体は二の次、ということだったのかもしれませんが・・・。まあ、そうはいってもストレートに聴いていて心地よいアルバムだったと思います。ビックビートという言葉に懐かしさを感じる方、またロックリスナーも素直に楽しめるアルバムだと思います。
評価:★★★★
MOBY 過去の作品
Go:The Very Best Of Moby
Last Night
Wait for me
Destroyed
Innocents
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