歌詞の世界が印象的
Title:woman's
Musician:My Hair is Bad
これが2枚目のフルアルバムとなる新潟県出身の3ピースロックバンド、My Hair is Bad。最近、人気上昇中でメジャーでのはじめてのアルバムとなる本作はアルバムチャートで5位を記録。一気にブレイクを果たしています。
タイプ的にはどちらかというと悪い方の意味で最近、よくありがちなロックバンド。ハイトーン気味なボーカルにちょっとメロコア的な要素も入っているようなハードだけどシンプルなギターサウンド。なおかつメロディーラインは非常にポップでキャッチー。ジャンル的には「オルタナ系ギターロック」になるのでしょうが、洋楽からの直接的な影響はほとんど感じずルーツレスなサウンドになっています。
ここ最近、このタイプのバンドが雨後のたけのこのように出てきては簡単にブレイクしてしまう傾向が強くなっています。この手のバンドの最大のメリットは幅広いリスナー層が簡単に盛り上がれるという点。要するに完全に最近バブル気味の夏フェス対応のバンドといった感じ。正直言ってしまえば若干「飽き飽きしている」という印象すらこの手のバンドには抱いてしまっています。
彼らに関しても、アルバムを聴き始めたものの正直なところあまりネガティブな感想を抱きつつ聴きはじめました。サビ以外の部分が語りという構成の「戦争を知らない大人たち」やちょっとメタリックな「mendo_931」、韻を踏んだラップ気味なボーカルが印象的な「沈黙と陳列 幼少は永遠へ」などそれなりにバリエーションを出そうとしている部分は感じるものの、全体としては上にも書いた、いかにも夏フェス受けしそうな、という印象は否めませんでした。
ただメロディーとバンドサウンドに関してはさほどポジティブな印象を受けなかった彼らですが、聴いていて楽しめたのがその歌詞でした。歌詞はほぼ全編がラブソング。それもどちらかというと情けない感じの男性の純情的な恋心を描いたような歌詞。具体性があり、どこか四畳半フォーク的な郷愁感も帯びているのが非常に印象に残ります。
例えば同棲していた恋人との別れを描いた「グッバイ・マイマリー」など
「二人でよく行った五百円の飲み放題
薄めで頼んだレモンハイ
たった二杯でほっぺ赤った
酔っ払った君は特に可愛かった
デザートは酒肴になるんだって
得意げに二つ頼んでた」
(「グッバイ・マイマリー」より 作詞 椎木知仁)
なんてどこか2010年代の「神田川」的な雰囲気すら感じてしまいます。また今回のアルバムの中で特に印象的だったフレーズが「真赤」の冒頭。
「ブラジャーのホックを外す時だけ
心の中までわかった気がした」
(「真赤」より 作詞 椎木知仁)
という歌詞なんてなかなかうまい表現だなぁ、と思ったりします。
正直歌詞についても曲によってはありがちな陳腐な表現で、悪い意味でベタだなと感じてしまう曲もありませんでしたが、この歌詞の世界観がMy Hair is Badの最大の強みに感じました。
サウンドとメロディーラインだけならば正直★★★といった感じ。ただ歌詞が良かっただけに↓な結果に。歌詞を含めてまだまだ成長の途上のような印象も受けますが、とりえあずは凡百な夏フェス対応バンドの中では個性は出せているかな、といった印象を受けました。
評価:★★★★
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