再結成後も勢いは衰えず
Title:再結成10周年パーフェストベスト+2
Musician:筋肉少女帯
1999年、ボーカルでメインライターでもある大槻ケンジが脱退し、事実上活動休止となった筋肉少女帯。メンバー同士の軋轢も脱退の原因だったため再結成は難しいのではないか・・・と思われたのですが、その後のメンバー同士の和解もあり2006年にまさかの再結成を果たしました。
その再結成から早くも10年。再結成後にリリースされた楽曲に新曲2曲を追加したベストアルバムがリリースされました。というか再結成から10年も経っているというのが驚き。そもそも筋肉少女帯がナゴムレコードからインディーデビューをしたのが1984年で活動休止までの期間が15年。メジャーデビューから活動休止までは11年。そう考えると10年という期間の長さに驚かされます。今回収録された新曲「めでてえな?(バンド再結成10周年の歌)」はまさにそんな気持ちをストレートに歌った歌。
「予想と違った こんなはずじゃ
もう10年だと 再結成から
このままだと 死ぬときまで
やり続けそうで とってもコワいの」
(「めでてえな?(バンド再結成10周年の歌)」より 作詞 大槻ケンジ)
と、心境をそのまま綴った歌詞がオーケンらしくてとてもユニーク。こんな曲からスタートするあたり、非常に筋少らしいのですが、続く2曲目「仲直りのテーマ」もまさにバンド再結成について歌われた歌で、筋少らしいメタ視点による歌詞が続きます。
さて説明するまでもないかと思いますが筋肉少女帯といえば80年代後半から90年代にかけて「元祖高木ブー伝説」などでヒットを飛ばしたバンド。その後活動休止期間を経て再結成した訳ですが、彼らに限らず80年代から90年代にかけて人気を博したバンドの再結成がここ最近、相次いでいます。
ただ正直なところ、その「再結成組」のほとんどが再結成といいながらも事実上は開店休業状態。ほとんどたまのライブだけの活動だったり、思いついたかのように新曲をリリースしたりするくらいの状態のバンドがほとんどで、積極的にアルバムもリリースし活動を続けているのはユニコーンくらいでしょうか。良く言えばマイペースなのですが、正直、ソロだとお金を稼げないので昔の名前でお小遣い稼ぎをしているだけでは?とイジワルな見方すらできてしまいます。
筋肉少女帯にしてもメジャーデビューから11年でアルバムを12枚リリースしていた活動休止前に比べると再結成後は10年でアルバム5枚と活動休止前に比べるとマイペースな活動状態。ただコンスタントに新曲はリリースしていますし、少なくとも再結成組では数少ない、活動休止前同様、フルに活動を行っているグループと言えるでしょう。
実際、今回のベスト盤を聴いて感じるのは、活動休止前に比べてその楽曲の内容がほとんど遜色ない出来栄えであるということでした。確かに「元祖高木ブー伝説」や「日本印度化計画」のようなインパクトのかたまりのようなユニークな曲はあまりありませんが、前述のような再結成もネタにするようなメタ視点のユニークな歌詞の曲や、「ムツオさん」のようなディスコ調でアップテンポなナンバーながらも元ネタが津山事件の大量殺人者というダークなネタ、「中2病の神ドロシー」のような自意識が肥大した若者の心境を歌った活動休止前の彼らの楽曲でもよく見られたテーマを取り上げた曲など、大槻ケンジの描く世界観は全く衰えていません。
楽曲にしてもメタルやハードコアをメインにしつつ、歌謡曲っぽさも感じる耳なじみあるメロディーラインでポップに仕上げてくるスタイルは相変わらず。メロディーラインのインパクトも十分にありますし、「混ぜるな危険」みたいにダイナミックでアニソンっぽさも感じさせるナンバーがあったりするのも彼らならではと言えるでしょう。
ともすれば活動休止前に比べると再結成後の作品というのは勢いが大きく衰えがちなのですが、今回のベスト盤を聴く限り、彼らに関してはその衰えをほとんど感じさせません。再結成後もコンスタントな活動を続けるのは、バンドとしての勢いが持続しているからなのでしょうし、また2014年にリリースしたアルバム「THE SHOW MUST GO ON」では20年ぶりとなるチャートベスト10入りを果たしていますが、それもやはり再結成後も楽曲に一定以上のクオリティーを保ち続けた結果と言えるのでしょう。
そんな訳で、再結成後の作品しか収録していませんが(「孤島の鬼」「釈迦」はセルフカバーを収録していますが)、十分な聴きごたえあるベストアルバムでした。活動休止前は聴いていたけど最近は・・・という方にも最適な1枚。「このまま死ぬときまでやり続けそう」と歌う彼らですが、再結成10年でこの結果なら、この予感は的中しそうな気が(笑)。
評価:★★★★★
筋肉少女帯 過去の作品
新人
大公式2
シーズン2
蔦からまるQの惑星
公式セルフカバー4半世紀
THE SHOW MUST GO ON
おまけのいちにち(闘いの日々)
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