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2017年1月16日 (月)

昔と今がバランスよく同居

Title:DARKNESS AND LIGHT
Musician:JOHN LEGEND

昨年のグラミー賞で映画「グローリー/明日への行進」の主題歌「グローリー」がアカデミー賞主題歌賞を獲得するなど、相変わらずの活躍と高い評価を受けているJOHN LEGEND。毎回、ソウルフルな歌声と往年のソウルミュージックから強い影響を感じる楽曲で魅了してくれる彼ですが、今回もその期待にそぐわない傑作を聴かせてくれました。

まず1曲目「I Know Better」からまず耳を惹きます。ピアノとオルガンの音色をバックに歌い上げるゴスペルナンバー。力強い彼の歌声に非常に心奪われる作品になっています。「Right By You」などもジャジーなサウンドをバックに聴かせる彼のソウルフルな歌声がたまりません!

そんな「古き良き」サウンドを引き継ぎつつも、きちんと今にアップデートしているのが彼の大きな魅力と言えるでしょう。先行シングルともなった「Love Me Now」では今、注目を集めている新進気鋭のプロデューサーBlake Millsを起用。JOHNのボーカルを生かしたような空間的広がりを感じるリズミカルなトラックが印象に残ります。そのBlake Millsがプロデュースを手掛けたことでも知られるAlabama ShakesのBrittany Howardもタイトル曲「Darkness and Light」に参加。Alabama Shakesを彷彿とさせるようなファンキーでグルーヴィーなリズムが耳を惹くナンバーとなっています。

ゲストで言えば、今、もっとも注目を集めているラッパーともいえるChance The Rapperが「Penthouse Floor」に参加しそのラップを聴かせてくれますし、音的には「Same Old Story」のような音数を絞りつつピアノを美しく聴かせるアレンジに、今風なものを感じます。ちなみにこの曲、途中のボーカルにエフェクトをかけてくるあたりも最近の流行を取り入れているようにも感じました。

アルバム全体としては彼のソウルフルな歌声で60年代ソウルのテイストを色濃く残しつつも、新進気鋭のミュージシャンたちを起用し、2010年代の音にアップデートした作品に仕上げてきています。昔の良さを残しつつ、今の良さもきちんと取り入れるバランス感覚の良さ、前作「LOVE IN THE FUTURE」でもその方向性を強く感じましたが、今回のアルバムではその方向をより強く感じさせてくれました。

前作では、このバランス感覚の良さゆえのある種の無難さも感じたのですが、今回は「今風」の音がより前に押し出されたゆえに、より挑戦心も感じさせるアルバムだったと思います。2016年の最後に登場した2016年を代表しそうな傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

John Legend 過去の作品
once again
WAKE UP!(John Legend&The Roots)
LOVE IN THE FUTURE


ほかに聴いたアルバム

Nina Revisited:A Tribute to Nina Simone

1950年代から活躍し、アメリカを代表するジャズシンガーとして知られるニーナ・シモン。黒人公民権運動にも積極的に参加してきた彼女。そんな彼女の業績をたたえたドキュメンタリー映画「What Happened, Miss Simone」が制作されましたが、その映画と連動する形で彼女へのトリビュートアルバムがリリースされました。

アッシャー、コモン、メアリー・J.ブライジなど豪華なメンバーが参加した本作ですが、このアルバムがなにより話題となったのはあのローリン・ヒルが本作で復帰したということ。非常に力強い歌声を聴かせてくれ、その健在ぶりをアピールしています。ただ彼女の曲に限らず、メロウでソウルフルな歌声が素晴らしいカバーが並んでいます。ニーナの歌声と比べると・・・という部分はないことはないのでしょうが、それを差し引いても素晴らしいソウルアルバムであることは間違いないかと。その歌声に聴きほれるカバーアルバムでした。

評価:★★★★★

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