「もやもや感」は残るものの
Title:Believer
Musician:槇原敬之
槇原敬之のニューアルバムに関して良かったかどうか、と問われると正直なところかなり難しいという返答になってしまいます。まずここ数年来の最高傑作だった前作「Lovable People」に比べると、そこは超えられなかったな、というのがまずは率直な感想。サウンドがかなり充実しておりバリエーションが多かった前作に比べると本作は良くも悪くもいつも通りのマッキーといった感じで目新しさはなく無難にまとめた感じでしたし、メロディーに関しても全体的には前作には及ばなかったかなぁ、という印象を受けてしまいます。
今回のアルバムでもやもや感を覚えたのは歌詞。えっとねぇ、以前から微妙に感じていたことなんですが、マッキーは社会派な歌詞はやめた方がいいと思うんですよ、本当に。
本作で言えば「Souvenir~思い出~」の中で
「保育所に入れない子供が
溢れているとも言ってる」
という歌詞から続いて
「でもこの年になって思う
生まれてから今日まで
一体何度くらい
父や母と触れ合ったのだろうかと」
(「Souvenir~思い出~」より 作詞 槇原敬之)
うーん、ストレートに言っているわけじゃないんで誤解した解釈かもしれないんですが、この歌詞、「子供を保育所なんかに入れないで手元で育てろよ」という歌詞にもとれるんですよね。それってあんまりにも育児の現場を知らない保育所に関して完全に的外れな意見に思えてもやもやしてしまいました。
どうも彼の考え方って、「右寄り」ではないものの「昔ながらもおやじ保守」的な感じで、古臭くて悪い意味で理想の押し付けみたいな部分を感じてしまいます。視点的に全然物珍しくもないし、この方向性はやめた方がいいと思うの、ファンとしては。
ただ一方で今回のアルバムで断然良かったのはメロディーライン。ここに関してはここ最近、かなり充実している印象を受けます。本作に収録されている「超えろ。」なんかは桑田佳祐が「桑田佳祐が選ぶ2015年邦楽シングルBEST20」で1位にするなど大絶賛していますが、それも納得の、名曲が多い彼の作品の中でも上位に入ってきそうな傑作。特に本作に関してはラスト3曲「理由」「超えろ。」「もしも」の流れは鳥肌もの。かなり充実した内容になっています。
歌詞に関しても相変わらずの「キレイゴト」ソングは多いものの、「運命の人」はまさにマッキーのファンなら「キュン」としそうなラブソングになっていますし、逆に「テレビでも見ようよ」は、もうアラフィフになってしまったマッキーだからこそ歌えるような大人のラブソングに仕上がっています。
まあ上で歌詞に関しての「もやもや」を書きましたがアルバム全体としては「もやもや」は残るものの「Heart to Heart」の時の原発ネタみたいに明確に不快感を覚えるようなことはなく、アルバムの中では「ノイズ」程度。そういう意味では若干気にかかる部分はあるものの、アルバム全体としてはマッキーの魅力を楽しめるアルバムになっていました。
個人的にはここ数年のアルバムの中では「Lovable People」や「不安の中に手を突っ込んで」よりは下、「Dawn Over the Clover Field」よりは上といった感じでしょうか。もろ手あげて絶賛できる傑作まではいきませんでしたが、十分に楽しめる良作に仕上がっていました。特にメロディーの充実度はここ最近続いており、今後が楽しみ。そろそろまた大きいヒットソングが生まれそうな予感も。
評価:★★★★★
槇原敬之 過去の作品
悲しみなんて何の役に立たないと思っていた
Personal Soundtracks
Best LOVE
Best LIFE
不安の中に手を突っ込んで
NORIYUKI MAKIHARA SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT CELEBRATION 2010~SING OUT GLEEFULLY!~
Heart to Heart
秋うた、冬うた。
Dawn Over the Clover Field
春うた、夏うた。
Lovable People
ほかに聴いたアルバム
Feast The Beast/THE STARBEMS
ヒダカトオル率いるハードコアバンドの2年ぶりとなる新作。ハードコア、パンク色強いサウンドにヒダカトオルらしいポップなメロというスタイルは以前から変わらず。ただいまひとつメロディーラインの良さが生きていないように感じ、インパクトは薄め。メロディーにもうちょっとインパクトというか、もう一癖ほしいように感じてしまうのですが。
評価:★★★★
THE STARBEMS 過去の作品
SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD
VANISHING CITY
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