一回りして新たな一歩
Title:XI
Musician:ROVO
オリジナルアルバムとしては2012年の「PHASE」以来約4年ぶりとなるトランスバンドROVOの新作。今回もわずか5曲入りながらも1曲あたり10分程度の長尺曲が並んでおり、アルバム全体としては1時間を超える「大作」に仕上がっています。
今回のアルバムタイトルは「XI」(eleven)。もちろん11枚目のオリジナルアルバムだから、という単純な意味もあるようですが、勝井祐二曰く「0まで行って一回りして、また1から新しいことが始まる、みたいなニュアンスが込められている」とか。今回、その「新しいこと」の象徴的だったのがゲストの参加だったとか。本作、「R.o.N」で元スーパーカーのナカコーが楽曲制作に参加しているほか、U-zhaanがゲストプレイヤーとして参加。ナカコーが加わったことによりROVOのメンバーだけがつくる作品とはちょっと異なるフレーズが加わったようですし、またU-zhaanの奏でるタブラの音色が楽曲の中で大きなインパクトとなっています。
また初期の代表作「Kmara」のライブアレンジバージョンが本作では登場。初期の作品がライブを通じてうまれかわり、その今の姿を収録しているという点も、「また1から新しいことが始まる」というこのアルバムのコンセプトに沿った選曲なのでしょう。
そんな新たな要素が加わりつつも基本的な路線はいつものROVOと同様。例えば冒頭を飾るタイトルチューン「XI」はスペーシーで近未来的なシンセのリフからスタート。そこにトランシーなシンバルのリズムが加わります。やがてその中から登場するバイオリンの音色。このバイオリンのフレーズを中心に据えながら、シンセのリフとダイナミックなドラムス、バンドサウンドが展開するという構成はROVOならではのトリップ感あふれる楽曲になっています。
ただ今回のアルバムに関してはトランシーなリズムが迫りトリップするような楽曲、というよりはバイオリンの音色を軸にメロディアスなフレーズが展開するという作品が多かったような印象を受けます。「Palma」などもテンポは比較的ゆっくりめ。軽快なリズムは心地よいものの、どちらかというとチルアウト気味なナンバーになっています。最後を締めくくる「Liege」も20分に及ぶ長い楽曲ながらもバイオリンの音色がとても優しいフレーズを奏で、そのメロディーを聴かせるようなナンバーに仕上がっています。
「Kmara」あたりはライブアレンジということもありトリップできそうな楽曲になっているのですが、アルバム全体としては比較的ポップなメロディーラインが印象に残るようなアルバムになっていました。とはいえ、長尺の楽曲でミニマル的なフレーズが連続するリズムに気持ちよくなるような部分も多く、もちろんROVOの魅力は本作も健在。おそらく、「ポップ」と評した曲もライブでは別の顔を見せてくれそう。今回もとても心地よい傑作でした。
評価:★★★★★
ROVO 過去の作品
NUOU
ROVO Selected 2001-2004
RAVO
PHOENIX RISING(ROVO×SYSTEM7)
PHOENIX RISING LIVE in KYOTO(ROVO×SYSTEM7)
PHASE
Phoenix Rising LP(ROVO and System7)
LIVE at MDT Festival 2015
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