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2017年1月27日 (金)

時代を超えて

Title:THE TIMERS スペシャル・エディション
Musician:THE TIMERS

今回紹介するアルバムは、忌野清志郎によく似たZERRYというミュージシャン率いる覆面バンド、THE TIMERSが1988年にリリースしたアルバムの再発盤。まあいうまでもなく当時RCサクセションとして活動していた忌野清志郎の別働バンドなわけですが、もともときっかけはいまでもロック史に残る出来事としてよく語られることの多いRCサクセションのアルバム「COVERS」の発売中止事件。これに抗議する意味でゲリラ・ライブを計画したもののRCのメンバーの賛同を得られなかったため、別のメンバーを集めて結成したのがきっかけだそうです。

THE TIMERSという名前、ザ・タイガーズのもじりということになっているそうですが今回のアルバムにも収録されている「タイマーズのテーマ」などを聴く限り、あきらかに大麻とかけているバンド名。今回の再発、発売から28年目という特に区切りのいい年でなく、また昨今、例の高樹沙耶の事件などで大麻がネガティブな意味で注目される中、あえてこのアルバムを再発したユニバーサルに拍手(笑)。

今回のTHE TIMERSの再発盤、オリジナルの17曲に2006年の再発の時にボーナストラックとして加わった2曲の計19曲が収録されたDisc1に、レア音源などが収録されたDisc2の2枚のCD、さらには彼らが最初に登場した1988年8月の富士急ハイランドでのライブやその年の学園祭ライブの模様、さらにはPVを収録したDVDがセットになった3枚組となっています。

私は今回の再発盤ではじめて本作を聴きました。まず彼らの曲を聴いて感じた感想としては、楽曲にあまり作り込まれていないという意味での「粗さ」を感じました。それは彼らがゲリラバンドというスタイルをとっているからこそ、作り込むよりも本人たちの主張を前面に押し出し、勢いを重視したパンキッシュな曲作りにしているからなのでしょう。

歌詞もその時だからこそ歌えたような歌詞も目立ちます。例えば「偉人のうた」はあきらかに「COVERS」を中止に追い込んだ東芝EMIや親会社の東芝のお偉いさんを皮肉った曲ですし、「税」はちょうど1989年の消費税導入というニュースが背後にあります。また「牛肉・オレンジ」はちょうどその当時騒がれた牛肉・オレンジの輸入自由化が背景にあるだけに今聴くと、なんでこんな歌が歌われたのか不思議に思うかもしれません。

しかし一方で時代を超えて歌い継がれるような曲も収録されている点が忌野清志郎のすごさでしょう。その代表格が「デイ・ドリーム・ビリーバー」。いまでもセブン・イレブンのCMソングとしてテレビから流れ続けているこの曲は、もともとはアメリカのアイドルバンド、モンキーズの曲ですが、いまや清志郎のカバーが日本ではスタンダードナンバーになりつつあります。

また歌詞についても強烈に社会を皮肉った歌詞が今でも十分通用するものも少なくありません。この歌詞について非常にユニークなのは(タイマーズに限らず清志郎の曲に共通する特徴でもあるのですが)、社会問題について真正面から論じるのではなく、どちらかというと社会問題やその時の権力者を斜めから笑いと共に皮肉るような歌詞がほとんどという点でしょう。どちらかというと世間をおちょくったような歌詞が多く、明確な主義主張を唱えるような曲は多くありません。そのため反権力的、どちらかというと左寄りの彼の主張に賛同しなくてもおそらく思わず笑ってしまって楽しめるような曲になっています。

ただそんな中、明確な自己主張を感じるのが「LONG TIME AGO」。この曲の中では明確に原子力発電を否定しています。忌野清志郎は福島原発の事故の前にこの世を去ってしまいましたが、福島原発の事故があった今なら彼はどんな歌を歌っていたんだろうか・・・そんなことを考えてしまいます。

ちなみにDVDの方は、今から見るとかなり粗い映像に。ただその当時の空気感は伝わってくるような内容になっていますし、なによりTHE TIMERSに対する観客からのリアルタイムの反応を知ることが出来るという意味で非常に貴重なドキュメンタリーと言えるかもしれません。

時代性を感じる部分が多い反面、時代を通じて今でも通用する魅力を感じることの出来る作品だったと思います。なによりも忌野清志郎の魅力が存分に伝わってくるアルバムでした。

評価:★★★★★

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