前作から方向性を大きくチェンジ
Title:Thank you
Musician:Meghan Trainor
2014年にリリースした「All About That Bass」が大ヒットを記録して一躍話題となったアメリカの女性シンガーソングライター。今年のグラミー賞では新人賞を受賞したことから遅ればせながら日本でも話題となりました。その後リリースされたアルバム「Title」もアメリカ、イギリスをはじめ世界各地でチャート1位を記録するなど大ヒットしたのですが、そこから約1年4ヶ月。早くも次のアルバムがリリースされました。
個人的に「All About That Bass」が非常に気に入り、その後リリースされた「Title」もはまったのですが、当初、このアルバムについてはちょっと聴くのを躊躇していました。というのもドゥーワップ、ソウル、60年代ポップスなどを取り入れたレトロポップが基調となっていた「Title」と比べて今回のアルバムは、某所のレビューで「ブリトニースピアーズみたいな路線を狙ったのか?」なんて感想が書かれていたから。実際、いかにも「All About That Bass」を地で行くようなちょっとぽっちゃり目な女の子風のジャケット写真が印象的だった「Title」に比べると、今回のジャケット写真はいかにも今時のセクシーな雰囲気になっており、その差が際立ちます。
実際、今回のアルバムは前作とは異なり、いかにも今風なメインストリームのR&Bポップスに仕上がっていました。1曲目を飾る「Watch Me Do」もラップが入るリズミカルな作風は今風な感じですし、先行シングルともなった「NO」もちょっとトライバルなリズムを前に押し出したアレンジはいかにも今風。ある種の懐かしさを感じられたレトロポップ路線の前作とは大きくその方向性を変えていました。
うーん、正直言ってこの方向転換にはかなり疑問。彼女自身が意図したのか周りがそうさせたのかはわかりませんが、「Title」のレトロポップという方向性は非常に独自性がありユニークだったのに、それをなぜこんな良くありがちなポップスという路線に変えたのでしょうか。せっかく「Title」で確立された彼女らしさがこのアルバムではかなり失われてしまっていました。とても残念でなりません。
ただ、じゃあ全部が失われてしまったのか、と言われるとそうではありません。前作で聴かせてくれた、無条件で楽しくなるようなポップスセンスは本作も健在。例えば「I Love Me」などは前作につながるような軽快なポップチューンを聴かせてくれるのですが、他の曲でも基本的には聴いていて楽しくなってくるようなポップスが主軸。そういう意味では聴く前に予想していたよりは満足度が高く、十分楽しめたアルバムにはなっていました。
そういう意味では「Title」のようなレトロポップ路線を期待するとちょっと残念に感じるアルバムなのですが・・・ただ純粋に楽しめるポップスアルバムとしては十分期待通りの作品と言えるかもしれません。それでもやはり「良くありがちなR&Bポップ」という印象は否めず、この方向性だと今後は先細りように危惧せざるを得ないのですが・・・。
評価:★★★★
Meghan Trainor 過去の作品
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