美しくも悲しい世界
Title:LAST WALTZ
Musician:world's end girlfriend
約6年ぶりとなるworld's end girlfriendのニューアルバム。毎回、エレクトロサウンドを軸とした美しくもどこか狂気を秘めたような独特のサウンドとメロディーラインが耳を惹くWEGの世界。そんな中でも久々となる本作はWEGのサウンドがより強烈な独自性を放っていたように感じました。
まずアルバムの中でひとつの軸として流れているのは悲しみを帯びたメロディーライン。美しくも非常に悲しみを感じるメロディーはアルバムの中で統一感を持って流れています。もともと哀愁感あるメロディーラインがWEGの大きな魅力だったのですが今回のアルバムではそのメロディーの美しさと悲しさがより強調されたような内容に仕上がっています。また今回、「in Silence/in Siren」ではゲストボーカルとして湯川潮音を迎えての歌モノとして仕上げており、このメロディーラインがより強調された構成になっていました。
この美しいメロディーラインの中で流れている中、ストリングスやギターサウンド、さらにはエレクトロのサウンドが重ねられて行きます。基本的にはストリングスで美しいメロを奏でつつ、そこにエレクトロサウンドが交錯するようなスタイル。そこにノイジーなギターサウンドが加わりダイナミックに展開するというのが基本的なスタイルとなっています。
このサウンドに関してもいままでのWEGの楽曲と同様のスタイル。ただここに強い実験性を用いてきてひねくれたサウンドを聴かせるいままでのWEGと比べると、比較的「素直」という印象を受けます。様々なアイディアを取り入れつつもアルバムの中で統一感もって流れるメロディーラインをしっかりと支えるようなサウンドになっています。本作ではギターもゲストにdownyの青木裕が参加。ダイナミックなサウンドによりロック色も強く感じられます。最後を締める「LAST BLINK」や「NEW KIDS」にはいままでのWEGらしい実験的でフリーキーなエレクトロサウンドも垣間見れるものの、全体的にそのような方向性は抑えめになっていました。
結果として全体的に美しくも悲しい世界観で統一されたアルバムになっていた本作。なんでも今回のアルバム、自身の名前である「world's end girlfriend」がテーマとなっていて公式サイトの紹介文によると「18年間、作家自身が想い描き続けたその名が持つ根源のイメージ。
3.11後の世界、テロの時代における抵抗と祝福。
これまででもっともパーソナルな哲学と領域に深く踏み込んだ作品となっている。」そうです。そのイメージが具体的にどう表現されていたのかはさておき、アルバム全体として間違いなく統一感のある作品になっていたと思います。
いままでworld's end girlfriendの作品は別名義の作品も含めて様々な作品を聴いてきましたが、個人的には本作はその中でもベストの出来だったように感じます。特にWEGの持つメロディーセンスの魅力がよりよく発揮された傑作になっていたように感じました。次から次へと展開される音の世界に魅了された作品。2016年を代表するアルバムの1枚と言える作品です。
評価:★★★★★
world's end girlfriend(world's end boyfriend)過去の作品
空気人形オリジナルサウンドトラック
Xmas Song(2009年)
SEVEN IDIOTS
Xmas Song(2010年)
Xmas Song(2011年)
LIVE/10/10/2015
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