丁寧な仕事ぶりが好感触
本日の更新は先日読んだ音楽関連の書籍のご紹介です。
タイトルは「ロバート・ジョンソンより前にブルース・ギターを物にした9人のギタリスト」。例によってブルース関連の本です。タイトル通り、ロバート・ジョンソンが活躍した以前、1920年代から30年代に活躍した9人のブルースギタリストの活動を追った評伝。シルヴェスター・ウィーヴァー/パパ・チャーリー・ジャクソン/ブラインド・レモン・ジェファーソン/ブラインド・ブレイク/ブラインド・ウィリー・マクテル/ブラインド・ウィリー・ジョンソン/ロニー・ジョンソン/ミシシッピ・ジョン・ハート/タンパ・レッドという9人のギタリストが紹介されています。
著者はジャス・オブレヒトというアメリカでギター・プレイヤー誌を手掛けたこともある元編集長。アメリカのLiving Blues誌で「Blues Book Of The Year」を受賞するなど大きな話題にもなったそうです。
数多くのエピソードがころだっているロックスターたちと異なりブルースのミュージシャン、特に戦前ブルースのミュージシャンたちはその「生き様」というものがほとんど伝わってきません。ミュージシャンによっては写真すら1枚あるかないかという状況です。
そんな中、同書では知られざる戦前のブルースギタリストの生涯について丁寧に綴っています。様々な参考文献からミュージシャンたちの情報をピックアップしており、かつ出展元も記載。非常に誠実さを感じる仕事ぶりが特徴的でした。情報はあくまでも事実を淡々と記しているイメージで著者の感想的な部分はほとんど入っていません。
また音楽に関しても楽曲の特徴について下手に煽るような形ではなく具体的な描写が多く、ここらへんも著者の誠実性を感じるとともに、ギター・プレイヤー誌の元編集長ならではの記述のように感じます。
取り上げたミュージシャンの生涯を淡々とつづるスタイルのため基本的にはその時代背景や社会性などといった付加的な要素に深く突っ込むことはありません。ただその具体的に淡々と記された事実から、その当時のアメリカ黒人が置かれていた時代背景を読み取るのは比較的容易にも感じます。
さらにこの本で非常に魅力的なのはミュージシャンの写真、当時の広告、レコードのレーベルなどの写真が惜しげもなくつかわれていること。同時代のミュージシャンや関係者の証言も頻繁に使われており、淡々とした書きぶりながらも、登場するミュージシャンの人となりや生き様を知るには十分な魅力を感じる内容でした。
「音楽はあくまでも『曲』が勝負であり、ミュージシャンの人となりなどは関係ない」という意見、確かに正論であり事実だと思います。しかしこうやってミュージシャンの人となりを知ることによって、より曲が魅力的に感じられるのも事実。今回、この評伝を読んであらためて登場するミュージシャンたちの曲を聴きたくなりました。
ちなみに本作、ロバート・ジョンソンの名前が登場しますが原題は「Early Blues-The First Stars Of Blues Guitar」。登場する9人のギタリストはロバート・ジョンソンと直接関係ありませんし、また本書の中でロバート・ジョンションもほとんど登場してきません。おそらく日本で売れるためにあえてロバート・ジョンソンの名前を冠したと思うのですが・・・その点のみご注意を。
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