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2017年1月 7日 (土)

新たな一歩

Title:One
Musician:堀込泰行

2013年、突如キリンジを脱退して驚かされた堀込泰行。ご存じの通り、キリンジの名前は兄堀込高樹が引き継ぎ、新メンバー加入後、KIRINJIとして活動を続け、「EXTRA11」含め3枚のアルバムをリリースしています。しかし脱退した堀込泰行の方はその後あまり目立った活動がなく、今年になってようやく洋楽のカバーアルバム「"CHOICE" BY 堀込泰行」がリリースされました。

このカバーアルバムのリリースがひとつの契機となったのでしょうか、ようやくソロアルバムがリリースとなりました。オリジナルアルバムとしてはキリンジ脱退後初、また自身のソロプロジェクト馬の骨としてリリースされた前作「RIVER」からも7年ぶりとなるニューアルバムとなりました。

そんな彼の新作ですが、とにかく明るいポップソングが並んだ陽気なアルバムになっていました。1曲目からホーンにピアノが加わった明るいポップチューン。「New Day」というタイトル自体、彼の新しい一歩を象徴するようなタイトルになっていますが、

「New day 何かが起こりそう
なんだか 誰かにめぐり会えそう」

(「New Day」より 作詞 堀込泰行)

という歌われる歌詞も実に前向きな明るさを感じます。続く「Shiny」もピアノとストリングスで爽やかに構成されたポップチューン。こちらも非常に爽やかな歌詞が印象的なナンバーとなっています。

その後も同じく心機一転を思わせる「ブランニュー・ソング」もホーンセッションが軽快に鳴り響くポップチューンになっていますし、祝祭を意味する「Jubilee」というタイトルがつけられたナンバーもスチールパンの音色が心地よい、とにかく明るいポップチューンに仕上がっています。

堀込泰行といえばキリンジの頃も、お堅い漢語調の歌詞が特徴的な兄高樹に比べて、やわらかい文体の歌詞が特徴的でした。今回のアルバムで感じられる明るさは、そんなキリンジ時代の彼を彷彿とさせるような部分もありました。

ただ今回のアルバムで感じられる明るさはキリンジ時代の堀込泰行楽曲とはまた異なるものを感じられます。キリンジの堀込泰行ではなく、ソロミュージシャン堀込泰行としての新たな方向性を模索した結果でしょうか。以前のソロプロジェクト、馬の骨は「キリンジの1/2」という印象を受けましたが、今回のソロアルバムはあきらかにキリンジとは異なるものを感じました。

また歌詞からソロとして第一歩を歩みだせるという明るさを感じることが出来たのも特徴的。彼自身、ソロ活動に対して不安よりも前向きな希望を抱いていることを感じます。そうなるとやはりキリンジでは自分のやりたいことが出来ない部分があったから脱退したのか・・・とも思ってしまうのですが・・・。もっともキリンジ脱退からソロでの新作までこれだけ時間がかかっていることから、ソロ活動に対して大きな不安を抱いており、それを払しょくするためにあえて明るい曲をリリースした・・・という見方もできないことはないのですが・・・。

そんな訳で非常に明るく楽しいポップソングに仕上がった今回のアルバム。ただひとつ、大きく気になったことがありました。それは彼のボーカル。ソロとしての前作「"CHOICE" BY 堀込泰行」でも非常にヘナヘナなボーカルが気にかかりました。今回のアルバムは"CHOICE"の時のような楽曲の良さを壊してしまうほどのヘナヘナさはありません。ただそれでもキリンジ時代に比べると、ちょっとヘナヘナな感じのするボーカルが正直マイナス要素に。これに関しては久しぶりなだけに声がよく出ていない、というでしょうか。それだけならよいのですが・・・。

ちょっと気になる部分もあるのですが、とりあえずはソロ活動の新たな一歩としてこれからが楽しみになるソロアルバムだと思います。堀込高樹・泰行兄弟が、それぞれ単純にキリンジの1/2となった訳ではなく、プラスアルファを付け加えて活動を続けているのが非常におもしろいところ。兄弟、それぞれの今後にも要注目です。

評価:★★★★★

堀込泰行 過去の作品
River(馬の骨)

"CHOICE" BY 堀込泰行

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