アルバムレビュー(洋楽)2016年

2016年12月26日 (月)

18年ぶりの新作はラストアルバム

Title:We got it from Here…Thank You 4 Your service
Musician:A Tribe Called Quest

90年代に一世を風靡したアメリカのHIP HOPグループA Tribe Called Quest。1991年にリリースされた「The Low End Theory」や93年にリリースされた「Midnight Marauders」はHIP HOPの名盤として名高く、いまでも様々なディスコガイドで紹介されたりします。

その後98年に解散したものの何度か再結成を繰り返した彼ら。個人的には2010年、サマーソニックに出演した彼らのステージを見ており、非常に印象深く覚えています。ただ非常に残念なことに今年3月、メンバーのファイフ・ドーグが亡くなるという残念なニュースが・・・。そしてその後、なんと彼らにしては18年ぶりとなる新作をリリース。ファイフ・ドーグも参加している今回のアルバムは残念ながらA Tribe Called Questとしては最後のアルバムとなるそうです。

A Tribe Called Questのアルバムというと私は「The Low End Theory」をサマソニのライブに行く直前に聴いています。ジャジーな要素の強いトラックが印象的で非常にスマートな感覚を覚えるトラックが2000年代になっても新鮮に響きました。

今回のアルバムに関しては正直言うとこの「新鮮味」という要素はあまりありません。ジャジーな要素もあまり強くなく、あえて言えば「Solid Wall of Sound」「Lost Somebody」のピアノのトラックなどでしょうか?「The Low End Theory」のイメージで聴いていたため事前の想像とはちょっと異なった作風になっていました。

ただ全体的にメロウな雰囲気が漂っており、スタイリッシュなイメージがあるという点では「The Low End Theory」の時の感触とは大きくは異ならないといえるかもしれません。

またちょっとラウンジ風の女性ボーカルが入ったポップにまとまっている「Melatonin」、後半の哀しげな歌が印象的な「Solid Wall of Sound」など全体的にはポップで聴きやすい作品。ソウルでメロウな楽曲も多く要所要所に「歌心」も強く感じられます。バスタ・ライムズ、カニエ・ウエスト、ケンドリック・ラマーなどゲスト陣も豪華。様々なアイディアがつまった音も多く、聴きどころも多く作品になっています。上にも書いた通り、目新しさみたいなものは薄いのですが、ベテランらしい安定感のある良作に仕上がっていました。

ある意味、この年齢になったからこそ出来るアルバムと言えるかもしれません。それだけにこれが最後というのは仕方ないのかもしれませんが残念。ちなみに本作、18年ぶりのアルバムながら見事アメリカビルボードチャートで1位を獲得。根強い人気を感じさせるだけにこれが最後というのは余計残念なのですが・・・。

評価:★★★★★

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2016年12月25日 (日)

いかにもメタリカらしい

Title:Hardwired…To Self-Destruct
Musician:METALLICA

メタリカ単独名義の純然たる新作としては8年ぶりとなるオリジナルアルバム。ただ8年ぶりといってもその間2011年にはLou Reedとのコラボアルバムをリリースしているのですが・・・これ、ひょっとしたら「なかったこと」にされているの??日本盤のWikipediaでは一切言及がなかったりするのですが・・・(苦笑)。

今回のアルバム、全70分程度の内容ながら2枚組としてリリースされています。おそらくCD1枚で足りるであろうところをあえて2枚組としているのは、レコードみたいにA面B面とわけて聴いてほしいという意図があったからでしょうか?

そう考えると1枚目2枚目で微妙にその色合いが違うアルバムになっていました。1枚目のアルバムはサウンドは比較的軽め。アップテンポな曲がメインで疾走感ある楽曲が多く収録されています。2枚目に関してはミディアムテンポでへヴィーなギターリフを主体とした作品が多かったような印象を受けます。

そんな作風の今回のアルバムなのですが、アルバム全体としてはいかにもメタリカらしいという印象を受けます。ギターの音にしてもいかにも「へヴィーメタル」といった感じの印象を受けますし、ギターの早弾きやハイテンポなドラムなどメタリカの熱心なファンではなく私のようにアルバムが出たらとりあえず聴いてみる、といった程度のリスナーにとってはメタリカを聴いたという満足感を覚えるアルバムだったと思います。

また前作「DEATH MAGNETIC」の時も感じたのですが、彼らの楽曲、例えばゴリゴリにハイレベルなプレイを押しつけてくるわけではなく意外とポップなメロディーラインで普段メタルをあまり聴かないような層でも聴きやすく感じられるのも特徴的。個人的には「Now That We're Dead」のようなギターリフ主導の軽快さも感じられるロックナンバーが非常にカッコよく感じました。

そんな訳でへヴィーメタルというジャンル関係なくロック好きなら楽しめそうなアルバム。上にも書いた通り、メタリカを聴いたなぁ、という満足感を覚えた久々の新作でした。

評価:★★★★

METALLICA 過去の作品
DEATH MAGNETIC
LuLu(LOU REED&METALLICA)

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2016年12月19日 (月)

今後のBON JOVIの方向性を示唆

Title:This House Is Not For Sale
Musician:BON JOVI

BON JOVIというと個人的には高校時代を思い出します。当時、まだ日本のヒット曲ばかりを聴いていた高校時代の私。ちょっと背伸びして洋楽を聴いてみよう・・・と思った時にちょうど高校生の間でもヒットしていたのがBON JOVIでした。ハードロックのスタイルはいかにもロック然として洋楽を聴いた満足感を覚える一方、わかりやすいサビを持ったJ-POP的楽曲構造は邦楽しか聴いていない高校生にも非常に聴きやすいポップソングとして機能していました。

それから20年。いまだに第一線で活躍を続けるBON JOVI。2014年に残念ながらギターのリッチー・サンボラが脱退してしまいましたが、このアルバムでもビルボードチャートで1位を獲得。変わらぬ人気を続けています。このアルバムはリッチー・サンボラ不在でリリースされた前作「Burning Bridges」に続く新作。前作は彼らにしては比較的ハードロック色が薄めのおとなしいイメージの作品だっただけに、次の展開が注目されました。

さてそんな新作なのですが、基本的に前作よりはハードロック色が強くなったように感じます。いきなりタイトルチューン「This House Is Not For Sale」からスタートするのですが、こちらは彼ららしいメロディアスでかつダイナミックなハードロックチューン。この曲をアルバムタイトルにするあたり、ハードロック路線で突き進むという彼らの意思を感じることが出来ます。

ただし全体的には前作と同様、泥臭さと渋みの増した内容。またかつての彼らのようなハードロックバンドとしてのスケール感はあまり感じません。30年以上活動を続ける彼らに言う言葉ではないかもしれませんが、大人になったように感じる作品。フックの効いたわかりやすいサビはない代わりに、落ち着いたサウンドを聴かせてくれます。

楽曲的にもゴリゴリの昔ながらもハードロックというよりは「The Devil's In The Temple」「God Bless This Mess」あたり、ギターサウンドにむしろオルタナ系ギターロックバンドっぽい爽やかさすら感じられる楽曲になっており、へヴィー志向のハードロックというよりもポップス志向のメロディアスなギターロックという印象を受ける楽曲もチラホラ見受けられました。

もちろん一方では上でも書いた通りBON JOVIらしさは本作でも健在。そういう意味では基本的にいままでのBON JOVIらしさを維持しつつも、ポップス志向の楽曲を取り入れつつ、落ち着いた大人のロックを指向する、それが彼らのこれからの方向性なのでしょうか。まだリッチー脱退後2作目ということでこれからも徐々にそのスタイルを変えていく可能性もあるかと思うのですが・・・これからのBON JOVIの活動も注目していきたいところです。

評価:★★★★

BON JOVI 過去の作品
Lost Highway
THE CIRCLE
GREATEST HITS-THE ULTIMATE COLLECTION
What About Now
Burning Bridges

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2016年12月13日 (火)

中性的なフレンチテクノ

Title:Woman
Musician:JUSTICE

フランスのエレクトロデゥオによる5年ぶりの新作。2007年にリリースされたデビューアルバム「CROSS」が日本でも大きな話題に。フジロックやサマソニでもライブを披露してこちらも話題となりました。

フランス出身の彼らのサウンドは「フレンチテクノ」と称され、特にデビュー作「CROSS」ではその頃話題となったダフトパンクともよく比較されました。ダフトパンク同様、ビートの強くロック色が強いサウンドとポップなメロディーが特徴的。強いビートに反してそのサウンドはどこか丸みと暖かみがあるのが印象的で、ちょっとラウンジミュージックに通じそうなそのサウンドがフレンチポップ的と言えなくもありません。

個人的には前作「AUDIO,VIDEO,DISCO」が未聴のため彼らの作品を聴くのは話題となった「CROSS」以来。そのため比較としては「CROSS」との比較となってしまいますが、話題となったその作品と比べて大きく異なるのは「CROSS」がノイジーなサウンドで構成されておりソリッドな雰囲気を醸し出していたのに対して、今回の作品はノイジーさは薄れ、全体的にはもっと柔らかく、かつ洗練された雰囲気を感じます。

ただロッキンな強いビートのテクノポップといういわゆる「フレンチテクノ」の雰囲気は本作も健在。テンポのよいビートが特徴的な「Fire」「Heavy Metal」もそのタイトル通り、硬質なサウンドで強いリズムを刻むエレクトロポップに仕上がっています。また、「CROSS」では女性ボーカルや子供の声を取り入れてチャイルディッシュな雰囲気を作り上げていましたが今回のアルバムに関してもハイトーンボイスのボーカルが耳に残ります。そんなハイトーンボイスのボーカルによるポップスのため、どこか中性的な雰囲気を感じさせます。「Woman」という今回のタイトルの通り、より女性的な雰囲気を作り出そうとしていたのでしょうか。

また今回のアルバムはボーカルメインのメロディアスな曲が多く、「CROSS」以上にポップで聴きやすい作品になっています。「Safe and Sound」みたいにどこか80年代風を感じさせるサウンドも心地よく、どこか懐かしさも感じさせます。「実験的」という印象も強かった「CROSS」に比べるとポップスさが大きく増した作品。広い層がポップとして楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★

JUSTICE 過去の作品
CROSS

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2016年12月10日 (土)

「映画」のようなアルバム

Title:24K Magic
Musician:Bruno Mars

日本でも大ヒットした前作「Unorthodox Jukebox」から4年、アメリカのシンガーソングライターBruno Marsの待望となるニューアルバムがリリースされました。Bruno Marsといえばデビューアルバム「Doo-Wops & Hooligans」が大ヒットを記録、一躍注目を集めましたが個人的にはこのアルバムに関して、平凡であまりおもしろくない、という印象を受けていました。しかしそれに続く前作「Unorthodox Jukebox」は一転、非常に良質なソウルアルバムへと成長を遂げており、一気に気になるシンガーとなりました。

そしてリリースされた待望のニューアルバム。うーん、まずこのジャケット写真が微妙(苦笑)。正直、ちょっとダサジャケって感じも。さらにタイトルが「24K Magic」・・・なんとなく微妙なものを感じます。

が、しかし肝心の内容については今回のアルバムも前作に続き、非常に良質なポップソングが並んでいました。今回のアルバムに関しては比較的ファンキーな楽曲が多かったように感じます。例えばいきなり1曲目に配置されたタイトルチューン「24K Magic」に続く「Chunky」とファンキーなナンバーが続きます。ここらへんは彼が影響を受けたPrinceやマイケル・ジャクソンあたりからの影響が強く感じます。さらにそれに続く「Perm」はまさにJBばりの踊りだしたくなるようなファンクナンバーに突入。ホーンセッションも入ってご機嫌なこのナンバーに断然テンションもあがっていきます。

その後の中盤以降はメロウで聴かせるナンバーが続きます。特に「Versace On The Floor」「Straight Up&Down」はメロウで美しいメロディーラインが強いインパクトを持つナンバー。ここらへんは80年代あたりのブラックコンテンポラリーあたりを彷彿とさせる楽曲に仕上がっていました。

ラストを締めくくる「Too Good To Say Goodbye」はあのベイビーフェイスと共作した90年代R&B風ナンバー。こちらもメロディーが心に響く楽曲で、非常に美しいポップソングで締めくくっています。

今回のアルバム、ファンキーな楽曲がメインながらも全体的にはポップでメロディアス、ちょっと懐かしさを感じる80年代から90年代のR&B風の楽曲でまとまっているアルバムに仕上がっていました。本人も今回のアルバムに関しては「『映画』を作りたいと思った」と語っていますが、一本の映画のようにアルバム全体に流れを感じさせる統一感ある作品に仕上がっていたと思います。

Bruno Marsのポップシンガーとしてのセンスがフルに発揮された傑作。ちょっと懐かしさのあるメロデイーラインはアラサー、アラフォー世代まで壺にはまりそう。今回も日本でもアルバムがロングヒットを記録していますが、確かに爆発的なヒットというよりは徐々に広まっていきそうなそんな訴求力ある内容に仕上がっていたと思います。幅広い層にお勧めできる非常に良質なポップアルバムの傑作です。

評価:★★★★★

Bruno Mars 過去の作品
Doo-Wops & Hooligans
Unorthodox Jukebox

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2016年12月 5日 (月)

黒さが目立つ

Title:HERE
Musician:Alicia Keys

間違いなくアメリカを代表する歌姫の一人、Alicia Keys。結婚、出産を経験して初となるアルバムである前作「Girl On Fire」から約4年、待望となるニューアルバムをリリースしました。その後、2015年には2度目となる出産を経験。しばらく家庭と両立した活動を続けてきたようですが今年5月に本格的にシーンに復帰。続けてアルバムのリリースとなりました。

まず今回のアルバム、まず強く感じたのが黒い!ということ。イントロからスタートして2曲目はアルバムタイトルそのまま「The Gospel」。静かなピアノのアレンジをバックにゴスペル調のボーカルで力強く歌い上げ、歌姫健在をアピール。続く「Pawn It All」もドスの効いた歌声で静かに力強く歌い上げています。非常にソウル的な要素を感じさせる曲で、この曲もとても黒さを感じさせるナンバーになっています。

今回のアルバムは「原点回帰/故郷ニューヨークへのトリビュート」をテーマにしたとか。前作や前々作「The Element Of Freedom」はR&Bというよりもポップな色合いが濃いアルバムになっていましたが今回のアルバムは一転、R&B、さらにはソウルの色合いが濃いアルバムになっています。「原点回帰」ということもありデビュー当初の彼女のスタイルに近くなったよう。またジャケット写真も印象的で、アフロヘアの自然体な彼女を映した写真は彼女のブラックとしてのパーソナリティーを強調した印象を与えます。非常にスタイリッシュな写真を用いた前作「Girl On Fire」とは対照的なジャケットとなっています。

また黒さを前面に押し出した楽曲はその後も続きます。「Illusion Of Bliss」は70年代あたりのサザンソウルの要素も強く感じるソウルナンバー。いかにもなエレピのリズムに力強いボーカルがのったナンバーになっており、今回のアルバムの中でも特に黒さを感じさせる楽曲になっています。

その後も基本的にソウルフルに歌い上げるタイプの曲が多く、彼女の力強いボーカルが印象的な曲が並びます。アルバム全体としては比較的彼女の歌とメロディーを聴かせるようなシンプルな曲が多く、それだけに彼女のボーカルが強い印象に残るアルバムに仕上がっていました。

個人的にはここ数作のポップス路線のアルバムに関してはあまり満足していなかっただけに今回の方向性はとてもうれしく感じました。特にソウルフルで力強い彼女のボーカルには何度もゾクゾクっとさせられます。間違いなく彼女の才能がこれでもかというほど発揮された傑作。とても黒い彼女の楽曲に魅了される1枚でした。

評価:★★★★★

Alicia Keys 過去の作品
As I Am
The Element Of Freedom
Girl On Fire

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2016年11月26日 (土)

大統領選に対する力強いメッセージだが・・・。

Title:THE PARTY'S OVER
Musician:Prophets Of Rage

日本でもテレビ局で選挙速報が組まれるなど大きな注目をもって迎えられ、その結果に衝撃と失望をもたらしたアメリカ大統領選挙。その選挙にあわせて結成され大きな話題となったバンドがありました。RAGE AGAINST THE MACHINEのトム・モレロを中心として結成されたバンド、Prophets Of Rage。この名前はPublic Enemyの曲から取られたのですが、そのPublic Enemyのチャック・Dも参加。他にもレイジからブラッド・ウィルク、ティム・コマーフォードが参加しているほか、サイプレス・ヒルのBリアルも参加しているというスーパーグループに。レイジのザック・デ・ラ・ロッチャが参加していないのが非常に残念なのですがその豪華なメンバーが大きな話題となりました。

今回彼らは、ドナルド・トランプが共和党代表として選出された共和党大会にあわせて新曲を発表。同じくその党大会が行われたクリーブランドでライブを行うなど積極的な活動が目立ちます。RAGE AGAINST THE MACHINEもニューヨーク証券取引所の前でゲリラライブを行い話題となるなど過激ともいえる政治パフォーマンスが話題となったバンドですが、彼らもそのスピリッツを引き継いだバンドと言えるでしょう。

そんなそれぞれキャリアがあるミュージシャンたちの集まりだけあって楽曲は文句なしにカッコいいです。RAGE AGAINST THE MACHINEを彷彿とさせるゴリゴリなギターリフ主導のへヴィーなバンドサウンドに、チャックDとBリアルの2MCもしっかりと息のあったラップを聴かせてくれます。RAGE好きなら文句なしにはまりそうな内容だと思います。

ただ期待通りではあったものの期待以上ではなかった点がちょっと残念。チャック・DやBリアルを迎えたことであらたなケミストリーが産まれたかといわれると若干疑問符がついてしまいます。また大統領選のあわせて急きょ結成、新曲リリースとなった影響か、本作も純然たる新曲はタイトルチューンの「The Party's Over」1曲のみなのもちょっと残念。もう1曲のスタジオ音源「Prophets Of Rage」はPublic Enemyの曲をバンドアレンジでカバーした曲ですし、残り3曲はレイジやPublic Enemyのカバーのライブ音源となっています。

またもうひとつ、今回のアルバムで気になったことがあります。それは唯一の新曲が「The Party's Over」ということ。ここでいうパーティーはこの曲が発表された段階では共和党の代表として選出されたトランプに対してお祭り騒ぎは終わったというメッセージがあったのと同時に、共和党時代に対して「政党中心の政治は終わった」というメッセージを発したというダブルミーニングがあったものと思われます。

しかし今回の大統領選挙、各種報道から考えるとあきらかに既存政党に対して失望していた人々がクリントンではなくトランプに投票したものと思われます。もちろんProphets Of Rageのメンバーがアンチ・トランプなのは明確なのですが、「政党中心の政治は終わった」というメッセージは見方によってはむしろトランプを支持した人たちに対するメッセージにも捉えられかねないものとなっています。ここにどこかProphets Of Rageをはじめリベラル勢の意識と現実とのギャップを感じざるを得ません。

今回トランプが予想外の活躍を見せ、まさかの大統領に選出されてしまったのはリベラル勢の意識やメッセージと、それを受け取ってほしいと思っている一般市民の問題意識や現実とのギャップが大きな要因のように思われてなりません。今回の「The Party's Over」というタイトルにはそんな「ギャップ」を強く感じてしまいました。

トム・モレロはじめ彼らの積極的な活動には敬意を表しますし、多くのミュージシャンが発したメッセージに反してドナルド・トランプが大統領になったのは私も非常に残念に思います。ただこのアルバムではリベラル勢がいま陥っているある種の落とし穴を感じてしまいます。そして翻って日本でも、リベラル勢が似たような落とし穴にはまってしまっており、ある意味、ドナルド・トランプが出てくる前のアメリカに非常に似たような状況を感じてしまいます・・・。このアルバムでProphets Of Rageのメンバーが発したいメッセージとはおそらく異なるとは思うのですが・・・ただそんなリベラル勢が今、全く人気を得られない理由のひとつをまじまじと感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

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2016年11月25日 (金)

奇をてらわない良質なロックアルバム

Title:WALLS
Musician:KINGS OF LEON

アメリカ・ナッシュビル出身の4人組ロックバンド、KINGS OF LEONによる約4年ぶりとなるニューアルバム。アメリカのバンドですがイギリスから人気に火が付き、イギリスでは2007年の「Because of The Times」以来本作まで5作連続でチャート1位を獲得。一方アメリカでも逆輸入的に人気を獲得し、本作では見事初となるアメリカビルボードチャート1位を獲得しています。

以前聴いた「COME AROUND SUNDOWN」のレビューでは奇をてらうことのないシンプルなアメリカンロックが特徴的と書いたのですが、基本的にその路線は本作も同様。シンプル、というよりは奇をてらうことのないメロディアスなロックを展開。ちょっと泥臭い部分を感じる点、いかにもアメリカらしいロックバンドという印象も受けました。

ただ「COME AROUND SUNDOWN」では正直、良質なアルバムだと思うけど個人的にはちょっと壺にはまらないなぁ・・・という感想だったのに対して今回のアルバムはそんな私にとっても非常にはまってしまった作品になりました。今回のアルバムは全体的にサウンド的には軽く、よりポップになったのが特徴的。なによりも軽快なメロディーラインが心地よく、そのアルバムのポピュラリティーの点から非常に心地よい傑作に仕上がっていました。

1曲目の「Waste A Moment」「Find Me」あたりが本作の中でポップなメロディーラインを聴かせる曲の典型例でしょうか。疾走感ある軽快なリズムとインパクトあるメロディーラインが特徴的。またメロディーラインの良さという意味では「Conversation Piece」やタイトルチューンである「WALLS」のようなミディアムテンポで聴かせるナンバーについては、特に彼らの持つメロディーセンスの良さが光る楽曲になっています。

一方ロックバンドとしても、ゴリゴリとしたバンドサウンドを前面に押し出した、といった感じはないのですがしっかり彼らのメロディーを下支えする安定感あるバンドサウンドを聴くことが出来ます。サウンドにもバリエーションがあり、例えば「Around The World」は軽快でシンプルなギターサウンドはちょっとVampire Weekendあたりの方向性も彷彿とさせる今時のインディーバンドみたいな雰囲気も。「Muchacho」ではちょっとハワイアンの影響も感じさせるのもユニーク。また今回のアルバムの中で最もバンドサウンドが前に出ていたのが「Over」で、分厚いバンドサウンドでグルーヴィーなサウンドを展開しており、スケール感あるサウンドが耳に残ります。

そんな訳でサウンドが独特で個性がある・・・といった感じではないのですが、ポップなメロディーラインと心地よいバンドサウンドが実に魅力的な良質なロックバンドといった印象の傑作アルバム。全世界的に売れているみたいですが日本ではいまひとつなんだよなぁ。もっと日本でも売れてもいいバンドだと思うのですが。

評価:★★★★★

KINGS OF LEON 過去の作品
Only By The Night
COME AROUND SUNDOWN


ほかに聴いたアルバム

HARD II LOVE/Usher

約4年ぶりとなるUsherの新作。前作「Looking 4 Myself」は良くも悪くもヒットチャート王道系のR&Bチューンでしたが今回はエレクトロサウンドはシンプルにまとまっており、しんみりとメロディアスに聴かせるナンバーがメイン。良い意味で奇をてらわない王道な楽曲が並んでおり、大人なR&Bという印象を感じる良質なポップスが並んでいました。

評価:★★★★

Usher 過去の作品
HERE I STAND
RAYMOND V RAYMOND

Looking 4 Myself

The Serenity of Suffering/KORN

アメリカのへヴィーロックバンドKORNによる3年ぶりの新作。全編デジタルサウンドを取り入れた前作から一変、本作はゴリゴリのバンドサウンドが鳴り響くKORNらしいアルバムに。意外とポップでメロディーラインが端正でともすれば耽美的ですらあり日本のビジュアル系みたいな雰囲気すら感じてしまいました。ある意味、聴きやすさもある1枚です。

評価:★★★★

KORN 過去の作品
Untitled
KORNIII:REMEMBER WHO YOU ARE
THE PASS OF TOTALITY

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2016年11月19日 (土)

シンプルなジャケットが逆にインパクト?

Title:Joanna
Musician:Lady Gaga

前作「Cheek to Cheek」はアメリカポピュラーミュージック界の大御所中の大御所、トニーベネットとのデゥオというスタイルだったので単独名義のオリジナルアルバムとしては3年ぶりとなるLady Gagaの新作です。

Lady Gagaといえば(特に日本では)その奇抜なコスチュームが話題にのぼることが多いミュージシャン。いままでのアルバムも奇抜なジャケット写真に強いインパクトがありました。それを考えると今回のアルバムは逆の意味でそのジャケット写真に驚かされます。帽子をかぶった彼女の横顔という非常にシンプルな写真。今回のアルバムタイトル「Joanna」も彼女の本名「ステファニー・ジョアン・アンジェリーナ・ジャーマノッタ」から取られたもの。今回のアルバムは彼女のありのままの自分をさらけだしたアルバムというコンセプトがあるそうです。

それだけに今回のアルバムは比較的シンプルなアレンジが目立ちます。彼女の曲といえばエレクトロトラックを積極的に用いたインパクトあるポップスが多いのですがエレクトロトラックを前面に押し出したのは「Perfect Illusion」くらいでしょうか?冒頭を飾る「Diamond Heart」「A-YO」は比較的シンプルなポップスロックという印象を受けますし、続くタイトルチューンの「Joanne」に至ってはアコギでしんみりと聴かせるナンバー。後半もピアノをメインとしてシンプルに「歌」を聴かせる曲が多く、アルバム全体として非常にシンプルという印象を受ける作品となっています。

ただ、ここでのレビューでも以前から書いているのですが私のLady Gagaに対するイメージは表面的には奇抜なスタイルを装っているものの楽曲自体はとてもオーソドックスなポップスを歌っているという印象。いままでの作品もエレクトロアレンジやPVが派手だったりしたものの楽曲自体は非常にシンプルなポップスという印象を受けていました。

それだけに今回のアルバムに関しても確かに素のままに歌ったようないつも以上にシンプルなポップスが増えたかもしれませんが、基本的にはいつもと同じLady Gagaだな、という印象を受けました。アルバム全体としてのインパクトはちょっと薄れてしまった反面、しっかりと聴かせるポップソングが奇抜なコスチュームに頼らなくても勝負できるというGagaの自信を感じる作品になっていました。

最近は例のアメリカ大統領選挙でのクリントン陣営への応援やトランプ陣営への抗議でも話題となった彼女。このアルバム、売上的には残念ながら前作を大きく下回ってしまったものの、ポップアイコンとしての存在感はまだまだ大きそう。シンプルとなった本作の次はどんなアルバムをリリースしてくるのか・・・まだまだ目が離せないミュージシャンなのは間違いなさそうです。

評価:★★★★

LADY GAGA 過去の作品
The Fame
BORN THIS WAY
ARTPOP
Cheek to Cheek(Tony Bennett & Lady Gaga)

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2016年11月18日 (金)

実験的な作風がグッと増えて

Title:22,A Million
Musician:Bon Iver

前作「Bon Iver」が大ヒットを記録。ピッチフォークはじめ各種メディアでも大絶賛。2012年のグラミー賞では最優秀新人賞を受賞するなど、まさに2011年を代表する1枚をリリースしたアメリカのフォークロックバンドBon Iver。そこから5年。久しぶりとなるニューアルバムがリリースされました。本作も売上では前作に引き続きアメリカビルボードでは2位を獲得。まさに待ちに待ったアルバムといった感じでしょう。

ただ今回のアルバムで目につくのは「22,A Million」というタイトルもちょっと奇妙なのですが、まるでパソコンで文字化けしたかのような奇妙な曲名たち。「10dEAThbREasT」(このあとに5の目のサイコロが2つ並びます)に「715-CRΣΣKS」「___45___」なんて曲もあったりして・・・・・・そもそもこれ、何て読むの??と思わざる得ないような曲が並んでいます。

まあ、こういう曲が並んでいるからある程度は予想できたのですが今回のアルバムに関しては実験的な曲が並んでいました。例えば「10dEAThbREasT」などは破裂音的なノイジーなビートからスタート。「21M◇◇NWATER」も途中、ストリングスや人の声などをサンプリングした奇妙なノイズが流れてきます。「___45___」もフリーキーなアレンジが耳を惹きます。

もちろん前作「Bon Iver」で聴かせてくれたくるおしいほど美しいメロディーラインは本作も健在。「33"GOD"」ではピアノとファルセットボイスで美しいメロディーを聴かせてくれますし(ただここも微妙に不条理風なサウンドが展開しています)「666 ʇ」もファルセットボイスと美しいハーモニーが印象的なナンバー。最後を締めくくる「00000 Million」もピアノと美しいコーラスのハーモニーで心に染み入るポップを聴かせてくれます。

ただ一方アルバム全体としては10曲34分という短さ。1曲あたり2、3分でめくるめく展開していく構成で、かつ1つの曲に様々なアイディアがつまっているため「美しいメロディーをじっくり聴く」というよりも彼らのアイディアを次から次へと聴かされるという印象を受けました。それはそれで十分楽しめたのですが・・・ただ実験的な作風が多く若干聴きにくかったのと、やはりもっとゆっくりと彼らの書くメロディーを聴きたかったなぁ、というのが本音です。

これはこれで非常に興味深いアルバムで、彼らの魅力もしっかりと感じることが出来るのですが、傑作アルバムだった前作に比べるとちょっと物足りなさというか、久々のアルバムにしては彼らに求めていたものがちょっとずれていたというか、そんなことを感じてしまいました。これはこれで良作だとは思いますし、彼らのやりたいことをやったアルバムだとは思うのですが。

評価:★★★★

Bon Iver 過去の作品
Bon Iver
iTunes Session


ほかに聴いたアルバム

Unbreakable/Janet Jackson

ジャネットの約7年ぶりとなる新作。楽曲的には今風のR&Bというよりも一昔前のスタイルというイメージはあるものの、古臭さは全く感じず、ある種の貫録を伴ってしっかりと聴かせてくれるという印象を受けました。楽曲もエレクトロチューンからポップなナンバー、聴かせるバラードからファンキーなナンバーなどバリエーション豊富。どの曲もメロディアスに聴かせるナンバーばかりで、それらの楽曲を易々と歌い切る彼女の実力も存分に感じることが出来ます。久々の新作ですが、女王健在を感じさせる作品でした。

評価:★★★★★

Janet Jackson 過去の作品
Number Ones(ベスト・オブ・ジャネット・ジャクソン)

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