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2016年12月 2日 (金)

これはこれで・・・

Title:愛のゆくえ
Musician:きのこ帝国

メジャーデビュー作となる前作「猫とアレルギー」は正直言ってしまって非常にガッカリしたアルバムでした。きのこ帝国といえばインディーズ時代、シューゲイザー直系のギターノイズで埋め尽くした幻想的ながらポップな作風が非常に魅力的なバンドでした。しかしメジャーデビュー作となった前作、その幻想的なギターノイズはほとんど消滅。平凡なメロディーラインのJ-POP風のギターバンドに成り下がってしまいました。

それなので今回のアルバムに関しても正直言ってほとんど期待はしていませんでした。冒頭を飾る「愛のゆくえ」はシューゲイザー直系のギターノイズに幻想的なメロディーラインが非常に魅力的な曲で、お、これは!と思ったのですが、続く「LAST DANCE」はシューゲイザー色が皆無な、どちらかというとシティポップとカテゴライズされそうなポップチューン。やはり平凡なポップスロックバンドになってしまったか・・・最初聴いた時はそう感じました。

ただその後聴き進めていくうちに、「これはこれかな」といった印象に徐々に変わっていきました。インディーズ時代の彼女たちのようなギターノイズが埋め尽くされるシューゲイザー直系バンドではありません。しかしどこかけだるさのある横ノリテイストの楽曲はインディーズ時代のきのこ帝国のイメージをしっかり引き継いでいるものはあり、これはこれできのこ帝国としての個性をしっかりと出しているように感じます。

例えばレゲエのリズムを入れ横ノリのリズムをけだるく聴かせる「夏の影」などはまさにこのパターン。「畦道で」も幻想的なギターサウンドと佐藤千亜妃の透き通るようなボーカルが非常に心地よいナンバーに仕上げています。さらにラストの「クライベイビー」はまたノイジーなギターが登場。シューゲイザー系としての側面を求める方にも楽しめそうなポップなナンバーになっています。

前作同様、J-POPテイストのポップスさが強く出たような曲もあり、(タイトルはJ-POPっぽくないのですが)「死がふたりをわかつまで」などはそんなポップス色が強く出た作品となっています。そういう意味では良くも悪くも「売り」も狙ったメジャーのアルバムだな、という印象は本作でも抱きました。

ただ上でも書いた通りアルバム全体としてはきのこ帝国としての個性も出ており、これからの彼女たちの方向性はこれなんだな、と納得感のあるアルバムになっていたと思います。シューゲイザー好きとしてはこの方向転換は若干残念なのですが・・・もっともけだるく幻想的な楽曲はシューゲイザーフォロワーとしてきのこ帝国を支持していたリスナーも十分楽しめる方向性ではないでしょうか。

とりあえずメジャー2作目できのこ帝国としての新たな方向性が示せたのではないでしょうか。これはこれでもちろん賛否はわかれそうなところなのですが・・・・とりあえずこれからの彼女たちの活躍に期待したいところでしょう。

評価:★★★★

きのこ帝国 過去の作品
渦になる
eureka
ロンググッドバイ
フェイクワールドワンダーランド
猫とアレルギー

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