Title:P.L.Y
Musician:illion


今年を代表する大ヒット映画となった「君の名は。」。映画と共に大きな話題となったのはRADWIMPSの歌う映画主題歌でした。この映画主題歌により一気にRADWIMPSの知名度もアップ。今年の紅白歌合戦にも初出場を果たし、その名前はお茶の間レベルまで浸透しようとしています。
RADWIMPSとしても「君の名は。」のサントラ盤をリリースしたり、さらには待望のニューアルバムをリリースしたりと積極的な活動を見せていますが、そんな中、なんとボーカル野田洋次郎のソロプロジェクトillionが再始動しました。2013年にアルバム「UBU」をリリース。それもイギリスで先行リリースされた他、海外でもリリースするなど大きな話題となったのは記憶に新しいところでしょう。その後、illionとしての目立った活動はありませんでしたが、RADWIMPSとしての活動が活発になってきた最中、illionとしてもニューアルバムのリリースとなりました。
その前作「UBU」は実験的で個人的な要素の強いアルバムになっており、ある意味ソロアルバムらしいソロアルバムになっていました。そして2枚目となる本作、実験的で個人的な要素が強いという点では基本的に前作から引き継いだアルバムと言えるでしょう。そういう意味で前作に引き続き、ソロアルバムらしいソロアルバムだったと思います。
1曲目「Miracle」はピアノとストリングスの美しい音色に透き通ったボーカルの美しいメロディーラインがのる幻想的で美しいポップチューン。続く「Told U So」「Hilight」はエレクトロビートの実験的なナンバー。「Hilight」ではラッパーS.L.A.C.K.が5lack名義で参加しています。
アルバム全体としてはエレクトロサウンドを大胆に取り入れた楽曲が多い作風。前作より方向性としては統一されている印象がある一方、やはりエッジの効いたサウンドが多く収録されていました。
ただ前作「UBU」では「がんばりすぎ」ということを強く感じました。意欲的な作品である一方、肩肘貼ったような印象を受けたのが前作でした。で、今回のアルバムに関しても同様、「がんばりすぎ」という印象を強く受けてしまいました。
おそらく「がんばりすぎ」と感じた大きな理由としてアルバム全体としていろいろとやりたいことを詰め込んだアルバムになっているということもあるのですが、その結果として「じゃあ、illionとして本当にやりたいことは何か」ということがいまひとつ見えてこないアルバムになっていたことが大きな要因のように感じました。
エレクトロサウンドにしても決して目新しい訳ではありませんし、かといって「こういう音がやりたい」という意思も薄く、ただなんとなく実験的っぽい音をやりたかったというチグハグなものを感じます。今回のアルバム、ポップなメロディーラインを聴かせる曲も多く収録されていましたが、かといってRADWIMPSみたいなインパクトあるポップスに仕上がっていた訳でもありません。
結果として「ただ実験的な雰囲気の曲が並んだアルバム」になっていたような印象を受けてしまいました。ポップのアルバムとして決して悪い訳ではありませんし、ポップなメロディーラインが中心に流れていただけに十分楽しめたアルバムだったと思います。しかし前作同様、がんばりすぎかつ頭でっかちという印象を強く感じてしまうアルバムになっていました。もうちょっと肩の力を抜いたポップスでいいんじゃないかなぁ。
評価:★★★★
illion 過去の作品
UBU
ほかに聴いたアルバム
NANIMONO EP/何者(オリジナル・サウンドトラック)/中田ヤスタカ


Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅのプロデュース、あるいはcapsuleとしての活動で知られる中田ヤスタカ。そんな彼が自身の名前でリリースしたアルバムがリリースされました。2枚組となる本作は、どちらも映画「何者」で使われた曲をあつめたもの。「NANIMONO EP」は主題歌「NANIMONO」とそのリミックスを収録した5曲入りEP。そしてもう1枚は同映画のサントラとなっています。
この「NANIMONO」、あの米津玄師をフューチャーして話題となりました。楽曲自体は良質なポップソングなのですが・・・あまり中田ヤスタカらしさが出ておらず、若干聴いていて消化不良に陥るような内容。米津玄師もあまり生かされていません。サントラ盤の方もいまひとつ。まあ映画のサントラなので必要以上に自己主張は要求されないのですが、それにしても平凡なBGM的な内容で中田ヤスタカらしさはこちらもあまり感じられません。全体的に中田ヤスタカのイメージで聴くとガッカリするような内容かも。ちょっと残念でした。
評価:★★★
daydream/Aimer


ソロ女性シンガーAimerの4枚目となるソロアルバム。「機動戦士ガンダムUC」の主題歌を歌ったためイメージ的には「アニソン歌手」というイメージも強いのですが今回のアルバムではONE OK ROCKのTakaや凛として時雨のTK、RADWIMPSの野田洋次郎といった作家陣を起用し、むしろサブカル(というかロケノン系)寄りの方向性を感じさせるアルバムに。私もその「意図」にのっかかってはじめて彼女のアルバムを聴いてみました。
楽曲はバンドサウンドによるギターロックのダイナミックな演奏に感情込めて歌い上げるボーカルというスタイル。感情たっぷりの彼女のボーカルは魅力的ではありますが、サウンド的にはよくありがちなギターロックといった感じですし、全体的に感情過多な感じもします。Aimerだけが持っているような「これ」といった要素もあまり感じされず、作家陣の知名度にのっかかっている印象も。悪いシンガーではないと思うけど、もうちょっとプラスアルファが欲しいかな、と思うような作品でした。
評価:★★★
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