実験的な作風がグッと増えて
Title:22,A Million
Musician:Bon Iver
前作「Bon Iver」が大ヒットを記録。ピッチフォークはじめ各種メディアでも大絶賛。2012年のグラミー賞では最優秀新人賞を受賞するなど、まさに2011年を代表する1枚をリリースしたアメリカのフォークロックバンドBon Iver。そこから5年。久しぶりとなるニューアルバムがリリースされました。本作も売上では前作に引き続きアメリカビルボードでは2位を獲得。まさに待ちに待ったアルバムといった感じでしょう。
ただ今回のアルバムで目につくのは「22,A Million」というタイトルもちょっと奇妙なのですが、まるでパソコンで文字化けしたかのような奇妙な曲名たち。「10dEAThbREasT」(このあとに5の目のサイコロが2つ並びます)に「715-CRΣΣKS」、「___45___」なんて曲もあったりして・・・・・・そもそもこれ、何て読むの??と思わざる得ないような曲が並んでいます。
まあ、こういう曲が並んでいるからある程度は予想できたのですが今回のアルバムに関しては実験的な曲が並んでいました。例えば「10dEAThbREasT」などは破裂音的なノイジーなビートからスタート。「21M◇◇NWATER」も途中、ストリングスや人の声などをサンプリングした奇妙なノイズが流れてきます。「___45___」もフリーキーなアレンジが耳を惹きます。
もちろん前作「Bon Iver」で聴かせてくれたくるおしいほど美しいメロディーラインは本作も健在。「33"GOD"」ではピアノとファルセットボイスで美しいメロディーを聴かせてくれますし(ただここも微妙に不条理風なサウンドが展開しています)「666 ʇ」もファルセットボイスと美しいハーモニーが印象的なナンバー。最後を締めくくる「00000 Million」もピアノと美しいコーラスのハーモニーで心に染み入るポップを聴かせてくれます。
ただ一方アルバム全体としては10曲34分という短さ。1曲あたり2、3分でめくるめく展開していく構成で、かつ1つの曲に様々なアイディアがつまっているため「美しいメロディーをじっくり聴く」というよりも彼らのアイディアを次から次へと聴かされるという印象を受けました。それはそれで十分楽しめたのですが・・・ただ実験的な作風が多く若干聴きにくかったのと、やはりもっとゆっくりと彼らの書くメロディーを聴きたかったなぁ、というのが本音です。
これはこれで非常に興味深いアルバムで、彼らの魅力もしっかりと感じることが出来るのですが、傑作アルバムだった前作に比べるとちょっと物足りなさというか、久々のアルバムにしては彼らに求めていたものがちょっとずれていたというか、そんなことを感じてしまいました。これはこれで良作だとは思いますし、彼らのやりたいことをやったアルバムだとは思うのですが。
評価:★★★★
Bon Iver 過去の作品
Bon Iver
iTunes Session
ほかに聴いたアルバム
Unbreakable/Janet Jackson
ジャネットの約7年ぶりとなる新作。楽曲的には今風のR&Bというよりも一昔前のスタイルというイメージはあるものの、古臭さは全く感じず、ある種の貫録を伴ってしっかりと聴かせてくれるという印象を受けました。楽曲もエレクトロチューンからポップなナンバー、聴かせるバラードからファンキーなナンバーなどバリエーション豊富。どの曲もメロディアスに聴かせるナンバーばかりで、それらの楽曲を易々と歌い切る彼女の実力も存分に感じることが出来ます。久々の新作ですが、女王健在を感じさせる作品でした。
評価:★★★★★
Janet Jackson 過去の作品
Number Ones(ベスト・オブ・ジャネット・ジャクソン)
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コメント
間違いなく温かさと煌びやかさを兼ね備えた良質のゴスペルチックな世界観と音を出していた傑作だと僕は思いました。
投稿: ひかりびっと | 2017年1月25日 (水) 16時27分
>ひかりぴっとさん
ご感想ありがとうございます。確かにゴスペルチックな世界観が魅力的な作品でしたね。
投稿: ゆういち | 2017年2月 6日 (月) 23時15分