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2016年11月20日 (日)

デビュー15年目のベスト盤

Title:大傑作撰
Musician:森山直太朗

2003年に「さくら(独唱)」のヒットで一躍人気を獲得した森山直太朗のデビュー15周年を記念してリリースされたオールタイムベスト。正直「さくら(独唱)」以降はこれといった大ヒット作もないのですが、チャート的には20位~30位圏内にはコンスタントにランクインしており根強い人気を獲得しています。本作は久々にベスト10ヒットを記録。彼の人気をあらためて世に知らしめました。

森山直太朗については、このブログでは一度もアルバムを取り上げていません。ただ「さくら(独唱)」のヒット以降、初期の作品については実はアルバムを毎回聴いており、2005年にリリースした前のベストアルバム「傑作撰2001~2005」もリアルタイムで聴きました。しかし2006年にリリースした「風待ち交差点」以降、彼のアルバムからは遠ざかっていました。

彼の曲を聴かなくなった理由は主に2つあります。まずひとつはバラード曲ばかりで楽曲のバリエーションが少なかった点、そして、こちらの方が理由としては大きいのですが、彼の書く歌詞がどうも大上段に構えている上から目線のものを感じた点でした。

さて今回久しぶりに聴いた彼のアルバム。以前私が森山直太朗から遠ざかった2つの理由が、今聴くとどう感じるんだろうか、そう思いながらアルバムを聴きました。まず1点目、バラード曲ばかりという理由ですが・・・これは正直、今回のベストでも印象としては変わりません。「夕暮れの代弁者」「よく虫が死んでいる」ようにアップテンポの曲もあるものの、基本的にはしんみりと歌いあげるバラードが主軸。ただ今回のベスト盤に関してはバラードばかりということはあまり気になりませんでした。既にバラードソングが彼の持ち味となっており、15年間、バラードを歌ってきたという自信を感じます。また一言でバラードといってもフォーキーな曲、和風で聴かせる曲、ジャジーな曲などバリエーションも増え、以前ほどのワンパターンさを感じなくなったというのも大きいのではないでしょうか。

ただ2つ目の点、歌詞についてはやはり今回のベスト盤でもどうも悪い意味で気になってしまいました。

森山直太朗の楽曲の歌詞については以前からよくニュースになることが少なくありません。例えば「生きていることが辛いなら」では出だしの歌詞がまるで自殺を教唆するようにも受け取れる歌詞にもなっており議論を呼びました。また「うんこ」なんていう身も蓋もないタイトルと歌詞の曲があったり、タイトルを連呼する不条理的な歌詞が話題の「どこもかしこも駐車場」なんていう曲もあります。

まあ「生きていることが辛いなら」は比較的伝えたい部分を含めてわかりやすい歌詞だと思うのですが、あえて意味深にしてリスナーの深読みを誘うような歌詞についてはどこかわざとらしさを感じました。

例えば「どこもかしこも駐車場」なんかは恋人との別れのシーンの中に駐車場を登場させ「どこもかしこも駐車場だね どこもかしこも駐車場だよ」と延々と歌っていく歌詞。はっきりいって意味不明な歌詞にネット上ではいろいろと文学的に意味付けして大絶賛している方も見受けられるのですが・・・これ、そんなに大したこと歌っている歌詞かぁ??ほかにも「よく虫が死んでいる」なんかもそうなんですが、いかにも「ほら文学的でしょ?」と作詞家がドヤ顔で主張しているような歌詞が目立ち、非常に違和感があります。一言でいえば「文学の押し売り」。「特に意味なんてない。なんとなく言葉の響きがおもしろかっただけ」って言われた方がよっぽど納得がいくんですが。

メロディーライン的には名曲が多い一方で歌詞的には正直鼻につく歌詞が多かった今回のアルバム。ベスト盤だけに内容はわるくはないと思うのですが・・・。はっきりいって周りが歌詞を持ちあげすぎじゃないかなぁ。歌詞に関しても風景が目に浮かぶような美しい歌詞もあり、これはというものも少なくないのですが・・・。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

THIS IS ME~絢香 10th anniversary BEST~/絢香

デビュー10周年を記念してリリースされたオールタイムベスト。2009年の活動休止前にベスト盤をリリースしていますし、活動再開後は2枚しかアルバムをリリースしていないだけにちょっと早すぎるんじゃない?という感じもするのですが・・・。楽曲はロックやソウルの要素が強いものの、具体的に影響を受けたようなジャンルや楽曲が想像しずらく、ルーツレスな感じが良くも悪くもいかにもJ-POPといった感じ。インパクトは間違いなくあるのですが・・・。

評価:★★★★

絢香 過去の作品
Sing to the Sky
ayaka's History 2006-2009
The Beginning
レインボーロード

世界観/クリープハイプ

ボーカリストの名前を冠した形でのリリースとなった1年10ヶ月ぶりの新作。ハイトーンボイスでテンション高く歌われるスタイルは相変わらず。ギターロックメインにジャズ風やHIP HOP風や歌謡曲風にまとめた曲もありバリエーションも豊富。ただ歌詞に関してインパクトあるキラーフレーズがなく、ちょっと薄味だったのが残念なところ。

評価:★★★★

クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう

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